久しぶりなのに番外編ですみません。
「これは夏休みに入る前、期末テストから数日たったある日の出来事である。
「大変だ!大変なんだよ!」
颯太が寮の食堂でいつものメンバーでダラダラとジュースや飲み物片手に宿題を片付けていた時、大急ぎで駆けこんできた人物、織斑一夏は机に倒れ込むように急停止した。
「降りろ」
「邪魔よ」
「宿題がシワだらけになってしまいますわ」
「危なくジュースをこぼすところだったじゃないか」
箒、鈴、セシリア、颯太の言葉とそれに同意するように頷くシャルロット、ラウラ、簪、楯無。
ちなみに要領よくシャルロットたちは咄嗟に宿題と飲み物とお菓子を退けることに成功していた。
「大変なんだよ!」
空いていた椅子にすとんと腰を下ろした一夏は先ほどとほとんど同じセリフを口にする。
「どうしたオオカミ少年よ」
「本当に大変なんだよ!」
一夏は焦った顔で制服の上着のポケットに手を入れ何かを取り出す。
「下駄箱にこんなものが!」
『これは………』
「ラブレターか……?」
「やっぱり颯太もそう思うか!?」
颯太の言葉に一夏が食いつくように訊く。
一夏の取り出したものは白い封筒だった。封をされているが一度開けられた形跡があり、封をされていたであろう赤いハート型のシールに少ししわがはいっていた。封筒の表面には「織斑一夏様」と書かれている。漫画やアニメでよく見るタイプのTHEラブレターである。
ちなみに机の上にラブレター(仮)が登場した瞬間、箒、セシリア、鈴、ラウラの表情が一瞬にして強張ったが一夏はそのことに気が付いていない。
「この手紙は最初からこの状態だったの?」
「いえ、それは俺が一度開けて中身を確認してこの状態です」
楯無の問いに一夏が返答する。
「ちなみに…中身は……?」
「読んでいいの?」
「あ、ああ。読んで相談にのってほしい」
「ふむ。じゃあ僭越ながら代表して俺が」
コホンと咳払いをした颯太が手紙を開く。
「急な手紙で驚かせてごめんなさい。
織斑君と出会ってから織斑君のことをいつも目で追っていることに気付きました。
誰にでも優しく相手の意見を尊重する織斑君が気になっています。
もしよろしければ放課後、誰もいなくなった教室でゆっくりとお話をしてみたいです。
関口めぐみ」
ふう、と一息入れる颯太。
「うわぁ……」
「これは……」
「なんだか…聞いてるこっちが……恥ずかしい……」
シャルロット、楯無、簪が興奮したように言う。
「以上、関口さんからのラブレターでしたー」
手紙を机に置いた手紙を指さしながら颯太が言う。
「ねえ、関口めぐみさんって確か……」
「うちのクラスのやつだな」
「確かソフトボール部に所属していたな」
「しかも一年生でレギュラー入りしていたはずですわ」
「合同授業の時もなかなか運動神経よさそうだったわね」
「顔もかわいい系の子だったな」
「「「………っ!?」」」
楯無の言葉に驚愕から復活したラウラ、箒、セシリア、鈴が答え、最後の颯太の言葉にシャルロット、楯無、簪が反応するが颯太は特に気付いた様子はない。
「で?」
「で?って、何が?」
「やっぱり、ラブレターだと思うか?」
緊張した様子で訊く一夏。
「これはもう、そうでしょう」
「ラブレターだね」
「疑いの余地なく、ラブレター」
「やっぱりか……」
楯無、シャルロット、簪の言葉に一夏がうなだれる。
「俺どうしたらいいんだろう?」
「YESでもNOでもいいからちゃんと答えてあげることが大事なんじゃないかしら」
「うん。真剣に答えてあげないと…失礼だよ」
「あとは一夏次第じゃないかな?」
「そうか……そうだな!その通りだ!よく考えて、ちゃんと――」
「ラブレターに対する対処について考えるのはいいが、結論付けるのはまだ早いんじゃないだろうか?」
楯無たちの意見に納得しかけた一夏の言葉を遮り、颯太は読み返していた手紙から顔を上げる。
「もう一度読み返してみたけど、この手紙には不審な点がいくつか見受けられる」
「え?何が?」
「よく考えてみろ。この手紙には一言も一夏のことが好きだと書かれていない」
「それは単に口下手だったとか、恥ずかしかっただけなんじゃ……」
「確かにそうかもしれない」
シャルロットの言葉に頷く颯太。
「だが、俺が引っかかったのはそこだけじゃない。ここを見てくれ」
言いながら颯太は手紙を見えやすいように机に置き、指さす。みな颯太の指さした部分を見る。
「気になるのは『誰にでも優しく相手の意見を尊重する織斑君』この部分だ。これは『他人の顔色ばかり気にする風見鶏野郎』と解読することができる」
「!?」
「いや……」
「それは……」
「ちょっと……」
「更に他にもある」
驚愕する一夏。納得いかない様子の楯無、簪、シャルロットの言葉を無視して続ける颯太。
「ここだ。『誰もいなくなった教室』この部分。これはおそらく『邪魔者がいないリング』を指している」
「なん…だって…?」
さらに驚愕する一夏。
「それらを踏まえてこの文章を解読するとこうなる」
手紙を再度手に取り読み始める颯太。
「はたし状
最近お前目立ってんだよ。
他人の顔色ばかり気にする風見鶏野郎が。
目障りなんだよ。
邪魔が入らないところで拳で語ろうじゃねえか。
金棒番長 関口めぐみ」
『……………』
颯太の解読に言葉も出ない様子で驚いている一夏。
「こうして解読すると一見ラブレターともとれる見た目なのも内容を誤認させ、勝負の場でお前の隙をつくのが目的だったのだろうな」
「そんな意図があったなんて……しかもクラスメイトから俺、嫌われていたんだな……」
ショックを受けている一夏に颯太はポンと肩に手を置く。
「今そのことを悔やんだって仕方がない。考えるべきはこれからのことだ。拳で語ろうと言っているが相手は女子だ。お前は女子に拳を振るうのか?」
「そんなこと!」
「じゃあお前はなんとしても話し合いで解決すべきだ」
「!」
颯太の言葉にまるで雷に打たれたかのように衝撃を受ける一夏。
「そうだな……その通りだ!颯太!俺頑張るよ!頑張って話し合いで解決できるように頑張るよ!」
「ああ、グッドラックだ一夏!」
「ああ!ありがとう颯太!みんなも相談にのってくれてありがとう!」
そう言って一夏はいい笑顔で去っていった。
「ふう……。これでよし」
「「「よくないよ!」」」
颯太が額の汗をぬぐう動作とともに言った言葉に楯無、簪、シャルロットがつっこむ。
「颯太さん」
がたんと席を立ちセシリアが言い、箒、鈴、ラウラも立ち上がる。
「ほらみんなからも何か言ってあげ――」
「ありがとうございますわ」
「「「え!?」」」
同じように注意してくれると思っていた三人はセシリアの言葉に驚愕する。
「我々の依頼通りだな」
「やるじゃない」
「期待通りの働きだな」
セシリアに続き、箒、鈴、ラウラも満足そうに頷く。
「ふふん、どういたしまして。ご期待にそえる働きができてうれしいよ」
颯太も口の端に笑みを浮かべて頷く。
「報酬の『RG1/144ストライクフリーダム』はすぐに準備してお渡ししますわ」
「ありがとう」
「礼はいらん。報酬だからな」
「また頼むわよ」
「次も期待している」
「ご期待にそえるよう頑張るさ」
フッフッフッフ、と悪い笑みを浮かべる颯太たちの姿になんとも言えない表情を浮かべる楯無、簪、シャルロットだった。
………っていう夢を見たんだ」
『夢かい!!』
颯太の言葉へのツッコミが食堂に響き渡った。
「いやいや、でもバカにできないよ。やけにリアルな夢でさ。まるで胡蝶の夢みたいだったよ」
「胡蝶の夢?」
「夢の中で蝶になって野原を飛び回っていた男が夢から覚めてふと思うんだ。果たして自分は蝶になった夢を見ていたのか、それとも蝶が自分になった夢を見ているのか、ってね。それが胡蝶の夢だよ」
鈴の疑問にシャルロットが答える。
「でも本当にリアルな夢でさ。それこそ今と同じ状況だよ」
颯太は言いながら周りを見渡す。
颯太の周りには箒、セシリア、鈴、ラウラ、楯無、簪、シャルロットがそれぞれ宿題などの課題を広げお菓子や飲み物を片手に取り組んでいるところだ。
「こうしてみんなで集まって宿題してるとさ、遅れてきた一夏が大慌てで走って来て――」
「大変だ!大変なんだよ!」
と、颯太の言葉を遮るようにダッシュで食堂に現れた一夏は机に倒れ込むように急停止する。
「降りろ」
「邪魔よ」
「宿題がシワだらけになってしまいますわ」
「危なくジュースをこぼすところだったじゃないか」
箒、鈴、セシリア、颯太の言葉とそれに同意するように頷くシャルロット、ラウラ、簪、楯無。
ちなみに要領よくシャルロットたちは咄嗟に宿題と飲み物とお菓子を退けることに成功していた。
「大変なんだよ!」
空いていた椅子にすとんと腰を下ろした一夏は先ほどとほとんど同じセリフを口にする。
「どうしたオオカミ少年よ………って、あれ?」
「ん?どうした?」
「いや、なんかデジャヴが……まぁいいや。で?そんなに大急ぎでいったいどうした?」
「ああ、そうだった!本当に大変なんだよ!」
一夏は焦った顔で制服の上着のポケットに手を入れ何かを取り出す。
「下駄箱にこんなものが!」
そう言って一夏が取り出したのは、赤いハート型のシールで封のされた真っ白な封筒だった。
どうもお久しぶりです。
長い間更新できずすみません。
最近課題やら何やらで忙しくて、さらに若干スランプ気味です。
しかもこれからも当分忙しいので次の更新までまた期間があくと思います。
今回の番外編もスランプ解消のためと息抜きがてら描いたものです。
内容は勘のいい方はお気づきでしょう。
某三姉妹の日常マンガが元ネタです。
とりあえずこれからも暇を見つけて書いていくんで少々お待ちくださいませm(__)m