これもしかしてこの話でお気に入り件数1000行くんじゃね?
と、少しワクワクしている僕です。
いくといいな~。
「――ってなるから、つまりこれは……」
「ふむふむ。なるほど」
夕暮れの教室で、颯太とシャルロットは机を合わせ、肩を並べてISについての勉強を行っていた。
「いや~、ありがとう。シャルロットのおかげで勉強がはかどるよ」
「いいんだよ。でも颯太こそ僕でよかったの?他にも楯無さんや簪さんだっているのに」
「それこそいいんだよ。俺は……シャルロットに教えてもらいたかったんだから」
「えっ!?」
「その……なんだ。嫌な勉強も好きな奴と一緒にやれば嫌じゃなくなるだろ?」
そう言った颯太の顔は赤く染まっていた。それは夕日のせいだけではないだろう。
「颯太……」
「じゃあ……次はこれを勉強しようぜ」
顔を赤く染めたまま颯太は傍らのカバンから新たな教科書を取り出す。それは――
「えっ、これって……!」
その教科書の表紙には「保健体育」の文字が。
「シャルロット!」
「えっ!?」
ドサッと机に押し倒されるシャルロット。
「そ、颯太!?」
「シャルロット、俺と保健体育の勉強をしよう――実技で」
「えっ?えっ?えっ?」
困惑するシャルロットをよそに徐々に颯太は顔を近づいて行き――
「だ、ダメ!!」
ガバッとベッドから飛び起きるシャルロット。そこは夕暮れの教室ではなく、見慣れた寮の自室だった。
「…………――っ!」
自分が今まで見ていた夢に今更ながらに恥ずかしさを感じ、顔から火が出そうなほど赤く染め、布団を頭まで被る。
(きょ、教室でなんて、僕は何を考えているんだろうね……)
ドキドキと痛いほどの早鐘を撃つ胸を押さえながら深く息を吐き出す。
先月の学年別トーナメント以来、本来の性別に戻って生活するシャルロット。
今はもう颯太とも別の部屋となっているが、なぜかそれ以来一週間に二度は似たような夢を見るようになっていた。が、ここまで過激なものは今までなかっただろう。
「あれ?」
ふと、颯太はいないとわかっていても、隣のベッドに目を向けると、本来そこにいるはずの同室の少女の姿が無かった。
「……まあ、いいや」
そんなことよりもさっきの夢の続きだ、とばかりに布団を被り、瞼を閉じる。
(今ならあの夢の続きを……保健体育の実技を――)
「な、何を考えてるんだろうね、僕はっ!」
自分の思考に自分でツッコミを入れ、シャルロットは赤く染まった顔を隠すように頭のてっぺんまで布団を被った。
○
現在俺は目覚めたはずなのに夢としか思えない奇妙奇天烈な状況に立たされていた。
現在の時刻は六時半。今日は大事な用事があったので早めに起きた。
朝を告げる枕元の目覚まし時計を止め、ベッドで上体を起こして、大きく伸びをした俺は、ふと隣のベッドに寝ているはずの同室の男、織斑一夏に目を向けた。
そこには、確かに一夏はいた――全裸の銀髪美少女に押し倒されていたが。
………え?マジでどういう状況?
「そ、颯太!」
「悪いが井口、今は夫婦の時間だ。遠慮してもらいたい」
俺に必死に助けを求める一夏と、顔を一夏に近づけながらこっちに目線だけを向けて言うボーデヴィッヒ。
…………ふむ、なるほど。
「これは夢か」
どうやら起きたと思ったらまだ夢だったらしい。こういうのなんていんだっけ?二重夢?しかも夢だって理解してるから明晰夢ともいうのか?……まあどうでもいいかそんなことは。
「おやすみ。夢の中の一夏、いい夢見ろよ!」
某モノマネ芸人のごとき言葉とともに俺は布団を被り直す。
「いや、ちょっと待って!これ夢じゃないから!マジだから!」
「はいはい。夢はだいたい決まってそう言うんだよ。『これは夢じゃないからね~。現実だからね~』なんて言う時に限ってだいたい夢なんだから」
「いやそうかもしれないけど!じゃあもう夢でもなんでもいいから!見て見ぬふりだけはやめて!」
「……はあぁぁぁぁ」
俺は大きくため息をつきながら起きあがる。ぶっちゃけ夢じゃないことくらいわかってましたよ。先月のキス以来妙にボーデヴィッヒが一夏に積極的だったし、その積極性も日増しにエスカレートしていってたし。そろそろこういうのもあるんじゃないかと思ってましたよ。全裸だったのは予想外だったけど。
ではなぜ夢だと思おうとしたか。ただただこの状況に関わりたくなかっただけだよ。
俺はベッドから起き上がり一夏のベッドの脇に立ち、一夏が使っていたであろうシーツをボーデヴィッヒに掛ける。
「ボーデヴィッヒ。夫婦の時間だって言うなら他所でやれ。ここは俺の部屋でもあるんだけど。てかなんで裸なんだよ」
「夫婦とは互いを包み隠さないものだと聞いたぞ」
「そうかもしれないけど、ここには俺もいるんだ。お前と一夏がどうかは知らないけど、少なくとも俺とお前はただのクラスメイトだろ?だったら包み隠せ」
「うむ。それもそうだな」
俺の言葉に一応は納得したのかボーデヴィッヒが体を起こしながら体をシーツで包む。その姿はなんとなく色っぽかった。
「とりあえず、一夏はシャワーでも浴びてこい。冷汗やら何やらですごいことになってるぞ」
「お、おう」
俺の言葉に頷いた一夏は着替えなどを持ってシャワー室に向かう。その後を当然のようについて行くボーデヴィッヒ。
「ボーデヴィッヒはここ。ちょっと話がある」
「ん?なんだ?」
「ちょっとお前ら夫婦の今後のこと」
「ふむ。まあいいだろう。嫁の友人と仲良くするのも夫の務めだ。貴様の話、聞いてやる」
俺の言葉に素直に戻ってくるボーデヴィッヒ。
「俺、ラウラの嫁じゃないんだけど」
「うるせえ、話がめんどくさくなるからお前は黙ってシャワーでも浴びてろ!」
「お、おう」
グチグチ文句を言う一夏をとりあえず追っ払い、俺は自分のベッドに胡坐をかき、目の前の一夏のベッドに座るようにボーデヴィッヒに示す。
「…………」
俺の示す通り、素直にベッドに腰を下ろすボーデヴィッヒだったが
「………うん。服は着ようか」
相変わらずのシーツにくるまった状態なので服を着てもらう。
「さて――」
ボーデヴィッヒが服を着たことで俺は話を始める。
「まず、お前は日本の文化を色々履き違えてる。まあこの場合はお前って言うよりお前にその知識を教えた人物が、なんだろうけど」
機会があればぜひその人物ともちゃんと話したいものだ。
「でも、今はそのことは敢えて置いておこう。かったるいから」
本当はその辺しっかり解説したい。「気に入ったものを嫁にする」ってのはそういう意味じゃないってことを小一時間かけてしっかりと教えたいが、今は時間の関係上パス。
「ボーデヴィッヒ、確かにお前の積極的な恋愛に俺がとやかく言う資格はない。だがな、一夏にだって好みはある。一夏はもしかしたらここまで積極的なのは嫌いかもよ?」
「うむ。そう言えば先ほどあいつは奥ゆかしい女性が好みだと言っていたな」
「だろ?」
どうやら一夏も俺と同じことを考えたらしい。これでいくらかこいつの積極性が削げないだろうか。
「だが、それはあくまであいつの好みだ。私は私だ」
うわぁ、何この信念の塊。
「………確かにそれは一夏の好みだ。お前はお前であるというのは悪いことじゃないと思う。でもな、男女の関係ってのはそれじゃダメなんだと俺は思う」
「何?」
俺の言葉にボーデヴィッヒがピクリと眉を動かす。
「日本で古来より、『長年連れ添った夫婦は趣味嗜好が似てくる』という現象がある。これはきっと、長く同じ時間を共に過ごすことでお互いのことを知り合い、お互いがお互いに影響し合った結果だろう」
俺の言葉にボーデヴィッヒは何も言わず黙って聞いている。
「決してどちらかが自分の趣味嗜好性格を押し付けるってことではない。お互いがお互いを好き合い、気持ちを合わせた結果、何物にも代えがたい関係が出来上がるのだと俺は思う。だから、奥ゆかしい女性が好きだと一夏が言うのなら、私は私と答えるのではなく、その好みを受け入れ、取り入れることが大事なんじゃないか?そうすればお前と一夏はよりよい関係になると俺は思う。もちろん、お前という存在を一夏に影響を与えることも大事だ。そうやって付き合って行けばいいんじゃないだろうか。少なくとも、これが日本式の交際術だと思う」
「…………」
俺の言葉を黙って聞いていたボーデヴィッヒはすっと俺を見つめる。
「……なるほど。互いが互いに影響し合う。そうやって互いの好みを取り入れ、良い関係を築く。どうやら貴様の言う通りのようだ」
どうやら納得してくれたようだ。ちなみに、ぶっちゃけ男女交際したことない俺が恋愛について語れるわけがない。こんなもの全部憶測だ。
「お前に言われて私も目が覚めた。なるほど、私の行動は少し押し付けすぎていたのだな。夫失格だ」
うん、まあ夫じゃないし一夏もボーデヴィッヒの嫁じゃないんだけどね。
「……うん、まあともかく。ボーデヴィッヒ、お前はちょっと…って言うか大分日本の知識におかしなところがある。よかったら俺がちゃんとした日本の知識を教えようか?というかむしろ教えさせてください」
間違った知識を持たれたままでは日本人として嫌なのでちゃんとした知識を教えねば。
「ふむ……確かに嫁の故郷の国のことはちゃんと知っておかねばな。わかった。ぜひ私に日本のことを教えてくれ」
「ああ。とりあえずこれからよろしくな、ボーデヴィッヒ」
「ラウラと呼べ。これからいろいろと世話になるのだ。名前で呼んでくれ」
「そうか?じゃあ俺のことも颯太って呼んでくれ、ラウラ」
そういってお互いに固い握手をした。
これで前からちょくちょく気になっていたラウラの日本観を直すことができる。………ついでにオタク文化も広めるか。
あーやっぱりスランプです。
思ったことをうまく表現できてない気がします。
とりあえず頑張ります!