IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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本当に…本当に、遅くなってしまい申し訳ありません!!
スランプやらいろいろが重なって更新が滞っておりました!
お待たせしてしまって申し訳ありません!!
最新話です!!
久しぶりなので前回までのあらすじも!!



 簪のクラスにやって来た企業所属の専用機持ちの伊藤加奈。彼女は颯太の小学生時代の元クラスメイトであり、彼の幼馴染の赤木杏をイジメた主犯であり、赤木杏はそのいじめの末に交通事故で亡くなっていた。
 杏へ謝罪をさせるために副会長の座をかけて勝負を挑んだ颯太だったが冷気を操る伊藤の専用機「ニーズヘッグ」の能力によって颯太のIS「火焔」の特性である熱エネルギーによる攻撃を封じられ敗北する。
 敗北に心折られ引き籠る颯太だったが簪の優しさに心動かされ、篠ノ之束の嫌味に奮起しもう一度戦うことを決意する。
 「指南コーポレーション」が伊藤の所属する「ユグドラシル」の傘下に入ることを掛けて再戦する颯太と伊藤。
 伊藤に追い詰められ一発逆転に『ハラキリ・ブレード』を放つ――かに見えた颯太は、新たなる力を発揮する。
 はたして颯太は伊藤を倒し、ここに決着をつけることが出来るのか!?



と言うわけで、最新話です!







ifⅡ-9話 オーバーロード

 

「お前のIS『火焔』のワンオフアビリティである『ハラキリ・ブレード』を転用した能力――仮に『オーバーロード』と名付けようか……それを使えばすべての性能が大幅に向上するけど、反面いくつかの制限がある」

 

 特訓を始めてすぐ、篠ノ之束は今回の秘策としてその『力』について言った。

 

「『オーバーロード』の状態は確かにスゴい。『火焔』のスペックを越えたスピードとパワーを発揮できる。でも、それは人間で言えば常時火事場のクソ力を発揮してる状態だ。機体に負荷をかけ続け、回路と言う回路を痛めつけ続けている状態で動き続けないといけない。これは本来『ハラキリ・ブレード』で瞬間的に放出するエネルギーを機体に留め機体を動かすエネルギーにしてるわけだから仕方がないと言えば仕方がない。ここまではOK?」

 

「……あ、『オーバーロード』って名称がカッコよすぎて聞いてなかったわ。もう一回言ってくれる?」

 

「死ねよお前」

 

 俺の冗談に篠ノ之束は絶対零度の視線で睨む。

 

「はいはいすいませんした。冗談なんで笑って許してくださいよ。そう言うところで器が知れますよ」

 

「……チッ」

 

 俺が笑いながら言うと篠ノ之束はこれ見よがしに舌打ちし話を再開する。

 

「この『オーバーロード』を維持して戦い続けるのは長引けば長引くほどISにも操縦者にも影響が出る」

 

 言いながら篠ノ之束は右手を開いて出す。

 

「……じゃあ、チョキ!」

 

「ジャンケンしてんじゃねぇんだよ」

 

 チョキを出した俺に心底馬鹿にした様子で冷ややかに睨みながらため息をつき

 

「五分…それが『オーバーロード』状態で戦える限界。それ以上は『火焔』にもお前にもよくない」

 

「『火焔』によくないってのはわかるけど、俺によくないってのはどういうことなんだ?」

 

「『ハラキリ・ブレード』はISに残っているすべてのエネルギーを攻撃のためのエネルギーに変換するわけだけど、この『オーバーロード』っていうのは『ハラキリ・ブレード』の状態で動き続けるってこと。つまり、ISに備わった操縦者の生命維持のエネルギーすらも最低限を残して攻撃力や推進力に回され、操縦者はISを纏っていながら無防備に近い状態になる」

 

「でも、それは相手から攻撃を受けなければ――」

 

「問題はそこじゃない。言っただろ?『オーバーロード』の状態は常に機体に負荷を与え続けている状態だって。そこに至るまでに溜めた熱エネルギーのせいで高温に達している上に負荷によってその熱はさらに上昇。操縦者を守る機能が働かなくなると、その高温からも操縦者を守りきれなくなる」

 

「……なるほど――え?それ五分も持つの?」

 

「お前がその熱に耐えられるかどうかはお前の精神力の問題だから私は知らん。お前が本気で相手に勝ちたいなら根性で耐えてみせろ。問題は5分がその最低限残った生命維持用エネルギーの限界ってことだよ」

 

「それって……」

 

「5分を越えると、本当にマズい。それまではちょっと熱いサウナ程度で実際に焼けているわけじゃなかったものが一気に地獄の業火に変貌しお前の身体を焼く」

 

「え……それヤバいじゃん」

 

「だからそう言ってんだろ」

 

 唖然とする俺に篠ノ之束はため息混じりに言う。

 

「だから、この『オーバーロード』状態になったら何が何でも5分以内に倒せ。それ以上は冗談抜きに命の補償はしない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

 

 伊藤――いや加奈ちゃんを指さして言いながら俺は数日前に篠ノ之束から聞かされたこの力、『オーバーロード』の話を思い出していた。そして同時に俺の身を包む尋常ではない熱に歯を食いしばる。

その熱はまるで燃え盛る炎の中に放り込まれたかと錯覚するほどで、ただ立っているだけで全身の毛穴から汗が噴き出すのを感じる。

 これのどこが「ちょっと熱いサウナ程度」だ。あの人類の最高傑作ともいえる天災の肉体ならまだしもただの凡夫な俺の身体じゃこの熱だけで五分と持たず死んでしまう。

 これは5分の時間制限を抜きにしても早期決着を目指さないといけない。

 ――と、人知れず焦りを感じている俺に対して、加奈ちゃんは憎々し気に睨みつけ

 

「……何よそれ」

 

 ぽつりとつぶやくように言う。

 

「何よそれ!!ふざけないでよ!!」

 

 叫んだ加奈ちゃんは両手を噛み合わせ龍の頭のような砲身を俺に向け

 

「シッ!」

 

 俺はそんな彼女の元に一息で駆け、その砲身を蹴り飛ばす。

 

「ぐッ!?」

 

 蹴り飛ばされた勢いで体勢を崩した彼女に

 

「はぁッ!」

 

「ガハッ!?」

 

 拳を叩き込む。

 殴られた勢いで倒れる彼女が地面に着く前に

 

「せいッ!!」

 

「がッ!?」

 

 素早く背後に回り蹴り上げる。

 そのまま空中に浮き上がった彼女の身体へ俺は腰を落として右手の拳を腰に当て、左手を右手に添えて構え

 

「見よう見真似の奥義、七花八裂・改!!」

 

 右の拳を加奈ちゃんの身体に叩き込む。

 

「がはッ!?」

 

 苦悶の声を漏らす彼女の身体にそのまま流れる様に二撃目三撃目…と叩き込み

 

「はぁッ!!」

 

 最後の一撃、右手の手刀を加奈ちゃんの胸に叩き込む。

 

「がぁッ!?」

 

 そのまま吹き飛び地面を転がりながら女の子が出しちゃいけないような苦悶の声を漏らす加奈ちゃん。

 そんな彼女を見ながら俺は荒い息を吐く。

 この超灼熱装備を身に着けたままのこの運動量は冗談抜きに死ぬ。

 正直頭痛で意識が朦朧としてきたけどまだ意識を飛ばすわけにはいかないので頬の裏を噛んで無理矢理意識を覚醒させる。

 

「くッ……」

 

 そんな俺の視線の先でよろよろと加奈ちゃんが立ち上がる。

 

「なんなのよ…そんなに私が悪いって言うの……?みんなだって同じようにイジメてたじゃない!先生も止めなかった!」

 

「加奈ちゃん……」

 

「誰も、誰もやめようって言わなかった!みんな同罪なのよ!なのになのになのに!」

 

 よろけながら立ち上がり譫言の様に叫ぶ。彼女に俺は目を伏せ、しかし、すぐにしっかりと見据えて言う。

 

「……そうだな、お前の言う通りだ。誰も止めなかった。先生もクラスのみんなも、俺も」

 

「それなの私が全部悪いみたいに!みんなみんなみんな!寄ってたかって!!」

 

「うん、お前の言う通りだ」

 

 加奈ちゃんの叫びに俺は頷く。

 

「杏が死んだのは直接の理由は事故だ。でもそうなる原因はお前達がイジメたからだし、お前の言う通り、誰もやめようって言わなかった。先生も、俺も、誰も止めなかった」

 

 言いながら僕は加奈ちゃんを正面から見据える。

 

「お前に言われて、俺も考えたよ。ちゃんと向き合って、自分の罪を受け入れた。だから、自分の罪を数えた。だから、今度はお前の番なんだ加奈ちゃん」

 

「な、何よ!?このままあんたが私を裁くって言うの!?」

 

「いや、それは違う」

 

 加奈ちゃんの言葉に首を振る。

 

「俺はお前を一生許さないし、杏には謝ってほしいからこうして戦ってる。でも、お前を恨むのも、杏の件でとやかく言うのも、今日で最期だ」

 

 加奈ちゃんを見据えたまま言う。

 

「お前を裁くのは俺じゃない。言っただろ?お前の罪を数えろ、って……お前を裁くのは、お前の罪を数えるのは俺の仕事じゃない。お前自身がやるんだよ」

 

「は、はぁ!?」

 

「自分がしたことは自分で向き合うんだ。だから――」

 

 俺は言いながら構え

 

「もう一度言ってやる!さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 全力で駆ける。

 

「ッ!?」

 

 一瞬で加奈ちゃんの目前まで寄った俺はそのまま加奈ちゃんを蹴り上げ

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 そのまま浮かび上がった身体へ蹴り続ける。

 スピードの機体のスペックもあり、また機体そのものが発光しているせいか、俺の蹴り続ける軌跡によって大きなT字が描かれる。

 

「はぁッ!!」

 

 最後に大きく回し蹴りを加えて加奈ちゃんに背中を向けた俺は言う。

 

「――これが、俺達の因縁の決着(ゴール)だ」

 

 その言葉が加奈ちゃんに届いたかはわからない。

 ただ、その瞬間試合終了のブザーが鳴り響き、試合は決したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――颯太!」

 

 ハンガーに戻ってきた颯太を簪は急ぎ足で迎える。簪の目の前でISを解除

 

「……あぁ…簪か……」

 

「そ、颯太……?大丈夫…?なんだか体調が悪そうというか……」

 

「あぁ…うん……だいじょびだいじょび……」

 

 心配そうな簪に颯太は微笑みながらサムズアップする。しかし、その顔にはいつもの覇気は無い。

 

「颯太…?ホントに大丈b――」

 

 言いかけた簪の言葉は

 

「……ぁ」

 

「ッ!?」

 

 笑顔のまま膝から崩れ落ちる。

 

「颯太ッ!!」

 

 慌てて駆け寄った簪が颯太の身体に触れる。と――

 

「すごい熱!それにこの発汗量!颯太、これどういうことッ!?」

 

「ハ、ハハハ……悪い、汗臭いよな……」

 

「そんなこと言ってる場合じゃ――」

 

「なぁ、簪……」

 

「何ッ!?」

 

 冗談めかして弱々しく笑う颯太に泣きそうな顔で簪が訊き返し

 

「……俺、簪の事が好きだ」

 

「え……?」

 

 思わぬ言葉に簪は呆ける。

 

「ちょ、ちょぉッ!?そ、颯太ッ!?にゃ、にゃにをこんな時にッ!?」

 

「…………」

 

「そ、颯太……?」

 

「…………」

 

 テンパっている簪の呼びかけに颯太は答えない。

 

「颯太……?ねぇ…ねぇ!颯太!?返事をして!!」

 

 簪の必死の叫びにも颯太はぐったりと瞼を閉じている。

 

「颯太ぁッ!!だ、誰かぁッ!!」

 

 簪の必死の叫びが響き渡ったのだった。

 

 

 




というわけで、改めまして二年近くお待たせしてしまってすみません!
スランプで書けなくなり、息抜きで書いた鬼滅の小説が思ったより反響頂いたり、また、スランプを抜けるためにISの二次創作をいくつか読んでいたらその中にこの小説の内容をコピペして登場人物の名前だけ書き替えました、みたいな小説を見つけて一気に気分が乗らなくなったりして……などなどいろいろ重なって今日まで更新が滞ってしまいました。
と、言い訳を並べましたが、とにもかくにも本当に遅くなってしまい申し訳ありません!
今後は他の小説との兼ね合いもありますので更新頻度は遅いかも知れませんが読んでいただければ幸いです!
今後ともよろしくお願いいたします!



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