IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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前回はかなり長めだったので、今回は逆に短めです。
そんな訳で最新話です。





ifⅠ-5話 為すべき事

「――おい颯太!」

 

「っ!?」

 

 耳元で聞こえた突然の呼び声に俺は慌ててついていた頬杖を外して顔を上げる。

 窓の外に向けていた視線を声のした方に向けてみれば首を傾げる一夏が立っていた。

 

「あれ……?授業は!?」

 

「とっくに終わったよ」

 

 驚く俺に一夏は呆れた様子で答える。

 周りを見れば四時間目の授業を終え、昼食を取ろうと席を立つクラスメイト達の喧騒にあふれていた。

 昨日あれから織斑先生に聞かされた内容がずっと頭に残っている。その内容のせいで夜もろくに眠れなかった。

 

「なんかお前今日様子変だぞ?」

 

「かもなぁ……あぁ~頭痛ぇ~……」

 

「まああんだけ叩かれてればな……後半千冬姉ぇも面倒臭くなったのか殴り方おざなりになってたぞ」

 

「おざなりにしてあの威力か……」

 

 一夏の言葉に俺は驚愕する。

 一夏の言う通り、今日の俺はちょっとボーっとしすぎかもしれない。午前中の4コマの授業で合計10回は出席簿で叩かれた。

 

「で?今日も楯無さんと昼御飯食うのか?」

 

「ん~……まあそうだな。約束はしてる……」

 

「そっか。ここんとこ毎日一緒に食ってるけど、仕事そんなに溜まってるのか?俺も生徒会役員だし手伝うけど?」

 

「あぁ…いや、実はそんな仕事あるわけでもないんだけど……」

 

「そうなのか?じゃあいつも二人で何してんだ?」

 

「え~っと……まあ強いて言うなら〝乙女ゲー〟?」

 

「おとめげー?」

 

 首を傾げる一夏に、なんでもないと苦笑いを浮かべる俺。

 

「まあよくわかんねぇけど、たまには俺らとも食おうぜ。シャルロットとか簪さんとかも言葉にはしないけど寂しがってるっぽいしさ」

 

「ん……そうだな……」

 

 笑う一夏の言葉に頷く。

 じゃあな、と歩いて行く一夏。そんな一夏に

 

「なぁ、ちょっと訊くんだけどさ」

 

「ん?」

 

 呼び止めた俺の言葉に一夏が振り返る。

 

「もし……もしお前の知らないところで、お前が原因でお前の大事な人が危険を冒そうとしてて、それをたまたま知っちゃったら、お前ならどうする?」

 

「なんだそれ?なんかのアニメの話か?あ、さっき言ってたおとめげーってやつのことか?」

 

「ん~、まあそんなところだ」

 

 俺の言葉になるほどね、と頷く一夏。

 

「俺なら、止めるかなぁ……」

 

「止められないとしたら?その人がそれをしないとたくさんの人に迷惑がかかったり、それをすることでたくさんの人が救われる、みたいなさ。いろんな人の思惑が絡んでるとしたら、さ……」

 

「なんだそのややこしい状態は?」

 

「いいから」

 

 俺の問いに首を傾げる一夏を促す。

 

「まあそんときは……俺もその危険に一緒に飛び込むかな」

 

「…………」

 

「回避できないなら、少しでも危なくないように俺も行く。俺もそれを手伝う、かな」

 

 頷きながら言う一夏の言葉を俺は少し頭の中で反復し

 

「……うん、お前らしいな」

 

「なんだよ、悪いか?」

 

「いんや、褒めてんのさ。主人公っぽくていいと思う」

 

「なんじゃそれ?褒めてんのか?」

 

「ああ褒めてる褒めてる。一夏マジイケメ~ン。一夏マジラノベ主人公~」

 

「なんかよく分からないけど褒められてる気がしない」

 

 ため息をついた一夏は、で…と前置きし

 

「俺の答えはなんかの参考になったのか?」

 

「ああ、まあな。うん……やっぱそれが一番なのかなぁ……うん、ありがとう。助かった」

 

「そうか。ならよかった」

 

「さてと、そろそろ行こうかな。師匠待ってるし」

 

「ああ。俺も箒たちと学食行く約束してるし」

 

「ん。悪いな引き留めて。今度お礼におすすめのゲームでもやるよ」

 

「へ~どんなの?」

 

「剣道部員の気の強い幼なじみと中華料理屋のツインテ幼なじみとイギリス人の金髪お嬢様と気の強いミリオタロリを攻略する学園モノのギャルゲー。おすすめは隠しルートの担任教師してる姉」

 

「ぎゃる…げー……?よく分かんねぇけどオススメってことならやってみようかな」

 

「ういうい」

 

 じゃあなぁ~っと手を振りながら一夏を見送り

 

「さて……あの人に『うん』って言わせるためには……まずは主導権握らないとな~……やっぱあれしかないかなぁ~……」

 

 俺は唸りながら、しかし、覚悟を決めて立ち上がり

 

「よし!いっちょやるか!作戦名『P大作戦』だ!」

 

 俺はルンルン気分で歩き出しながら携帯を取り出し

 

「そのためにもいろいろ準備しないとなぁ~。まずは……一番重要な〝アレ〟を手に入れないと……どこで買おう?やっぱここは誰かに相談するか……誰がいいか……」

 

 俺は携帯のアドレス帳を見ながら候補を考えていく。

 

「サンダーさん…は無いな。貴生川さんと犬塚さんとミハエルさんは……ダメじゃないけど…うん、ここは経験者である春人さんだな!」

 

 俺は相談相手を決定し、すぐさま電話を掛ける。

 会社もちょうどお昼休憩の時間だったのか春人さんはすぐに出てくれた。

 

「あ、もしもし?すいません急に電話しちゃって」

 

『別に大丈夫だよ。どうしたんだい、急に?』

 

「はい、実は相談したいことがあるんです」

 

『相談?わかった、僕で力になれることなら何でも言ってよ』

 

「はい、実は買いたいものがあるんですけどどこで買ったらいいかわからなくて。どうせならいいもの買いたいので、春人さんが知ってる高級店教えてほしいんですよ」

 

『買いたいもの?高級店?なんだろう?何が買いたいんだい?』

 

「アクセサリーなんですけどね?」

 

『アクセサリー?誰かへのプレゼントかな?うん、いいよ。ちなみに予算いくらくらい?』

 

「給料三か月分です」

 

 




一体颯太の言う『P大作戦』とはなんなんでしょうね~(棒)
颯太は給料三か月分の何を買おうとしてるんでしょうね~(棒)

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