颯太のテロによる事件から五年の月日が流れ、世界の科学技術はそれなりに成長を遂げた。
しかし、それによって、ISも飛躍的な進歩を遂げたか、と言えば、答えはNOである。
強いて言えば研究が進み各国の第4世代の試作機の完成の目処がつき始めているくらいだろう。
五年たった今でも訓練機などの量産機は第2世代が主流で、専用機には第3世代や試作の第4世代の機体が用いられる。
そんな中で現在国連直下組織、「S.O.N.G」では第3世代の「操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器」と第4世代の「装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力」の技術を使った新たな機体、第5世代機、通称「シンフォギア」の開発を開始した。
これはISの開発者、篠ノ之束の当初の目的を引き継ぎ、宇宙空間進出を目的に開発が開始された。
身に纏う者の感情や想いに共振・共鳴し、旋律を奏でる機構が内蔵されているのが最大の特徴で、その旋律に合わせて装者が歌唱することにより、シンフォギアはバトルポテンシャルを相乗発揮していく。
シンフォギア・システムには、総数301,655,722種類のロックが施されており、装者の技量、そのバトルスタイルに応じて系統的、段階的に限定解除される構造となっている。
また、それぞれの機体に搭載されている装備にはそれぞれの特性があり、身に纏う者のイメージ・インターフェイスによってその形状を変える特性がある。
例えば、「剣」の特性持つ機体では操縦者のイメージによりその形状を刀のようにも両刃のものにも、ナイフのように小さくも壁と見間違うほど巨大にも変化させることができる。
そして、それら最新の第5世代機使う操縦者たちの素性はその機密性から秘匿されている。
そんな秘匿された最新技術を用いた機体を扱う操縦者たちのうちの三人こそが、今海斗を誘拐しようとする女性たちの前に立つ響たち三人である。
「Balwisyall Nescell gungnir tron…」
「Zeios igalima raizen tron……」
「Various shul shagana tron……」
三人はISの起動に必要な「聖詠」と呼ばれるフレーズを口ずさむ。
その瞬間、三人の身体を光が包み、三人の姿が変わる。
響の身体はオレンジを基調とした黄色や白の装飾の施されたボディスーツに白のガントレット、黄色のブーツ、長い白のマフラーに二本の角のようなヘッドギアをした姿、IS「ガングニール」を纏った姿に。
切歌の身体は黄緑色を基調とした紺色や白の装飾の施されたスカートのような装飾のボディスーツに両肩からについに伸びる緑色のアーマー、まるで魔女のかぶる帽子のような緑のヘッドギアをした姿、IS「イガリマ」を纏った姿に。その手には身の丈ほどの巨大な鎌を握る。
調の身体は濃いピンク色を基調とした白と黒の装飾の施されたスカートのような装飾のボディスーツに両手をピンクの籠手のようなもので覆い、両足にはピンクのブーツ、頭には体の三分の二ほどもあるような長いピンクのツインテールのようなヘッドギアをした姿、IS「シュルシャガナ」を纏った姿に。
「なるほど、それが噂の第5世代IS『シンフォギア』なワケダ」
「なら、こちらも最初から全力で行かせてもらう」
響達が姿を変えたのを見て二人の女性は余裕を崩すことなく懐からそれぞれ何かを取り出す。
サンジェルマンと呼ばれていた白金色の髪の女性はフロントロック式の小銃を、プレラーティと呼ばれていた黒髪眼鏡の女性はけん玉状のものを、それぞれ取り出す。どちらも何の変哲もない小銃とけん玉に見えるが、それぞれ金の装飾が施され、赤いハート型の宝石が取り付けられている。
その赤い宝石が輝くと同時に二人の女性の身体を光が包む。
光が晴れた時、二人の姿も変わっていた。
サンジェルマンは肩やわき腹のあたりの開いた西洋甲冑を思わせる銀の装甲に身を包み、頭には兜飾りを思わせる赤い飾りのついたヘッドギアを纏い、その右手には金の銃を持つ。
プレラーティは全身を覆う黒とオレンジのボディースーツにその上から体を覆い隠すような金の装飾の施されたフードの着いた赤いローブを纏い、その右手には身の丈を超すほどの金色のけん玉状のものを握っていた。
「さあ、さっさと終わらせる。かかってくるワケダ」
「その余裕も!」
「ここまでデ~ス!」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
それぞれの武器を構える二人に向かい、響はその両拳を握りこみ構え、切歌はその手の身の丈ほどの鎌を構え、調は頭から伸びるツインテール状のヘッドギアから回転する丸鋸を出し、三人が駆け出す。
「ふんっ」
サンジェルマンは構えた銃の引き金を引く。
三人の間に着弾した弾丸が爆発する。響達はそれを避けながら響はサンジェルマンへ、切歌と調はプレラーティへと向かって行く。
銃弾を放つサンジェルマンになかなか距離を詰められないまでも地面を転がりながら向かって行く響。
地面を駆けてプレラーティへと向かって行く切歌を援護するように調は大きく上空へと飛び
「『α式百輪廻』!!」
ツインテール状のヘッドギアから回転する丸鋸を大量に飛ばす。
「その程度の攻撃!痛くも痒くもないワケダ!」
対するプレラーティはその大きなけん玉を振るい、飛んできた大量の丸鋸を弾き、そのまま一回転して空中で上手く身動きの取れない調べに向けてけん玉の球を飛ばす。
「あぁぁ!?」
「調!!」
「よそ見をしている余裕はないワケダ!!」
一瞬切歌の意識が調へと向いた隙に飛ばした球に繋がるハンマーを振るい切歌へと球を叩きつける。
「調ちゃん!切歌ちゃん!」
「大丈夫です!」
「響先輩はそっちに集中するデス!!」
吹き飛ばされながらも体勢を立て直した調と切歌が響に返事をしながらプレラーティへと向かって行く。
「はぁぁぁぁぁ!!」
鎌を振るう切歌にけん玉状の武器で応戦するプレラーティ。
そんなプレラーティの脇からブーツから出たローラースケート状の回転するコマで高速移動した調がその両手に握るヨーヨーのような武器を飛ばす。
それを避けて調へと向かうプレラーティ。しかし、飛んでいったヨーヨーが合わさり大きくなり高速回転するそれを伸びるワイヤーを引いて調がプレラーティへと振るう。
「っ!」
が、そのヨーヨーをけん玉で叩き、そのまま調へと球を飛ばす。
「くっ!」
その球を寸でのところで避ける調。しかし、球から伸びるワイヤーを引き、自身のもとへと引き戻した球をハンマーで調に向けて打ち返す。
「きゃぁっ!」
今度はよけることができず球の直撃を受ける調。
「まだまだなワケダ!」
そのまま再び球を引き戻したプレラーティは再度、今度は自身へと鎌を振ろうとする切歌へとハンマーで鎌を弾き、球を飛ばす。
「あぁ!!」
球の直撃に吹き飛ばされる切歌。
「この程度…正直拍子抜けなワケダ!」
「くっ!…まだデス!」
「まだ、私たちは負けてない…!」
不敵に、挑発的に笑うプレラーティに対して切歌と調は立ち上がり、再度向かって行く。
一方サンジェルマンと響の方は、銃を放つサンジェルマンになかなか近づけず一定の距離をとっている。
「明日のために、私の銃弾は躊躇わないわ」
「なぜっ!?どうして海斗君を!?」
「彼と言う存在が私たちの計画に不可欠だからだ。人を支配するくびきを取り壊すために」
「でも!人の手は誰かを傷つけるためじゃなく、取り合うために――」
「取り合うだと!?言われなき理由に踏みにじられたことの無いものが言うことだ!」
響の言葉を遮ってサンジェルマンが叫び、引き金を引く。
サンジェルマンの銃から放たれた弾丸は光線となりオオカミのように形を取り響へと向かって行く。
そんな光線に響は右手を振りかぶる。響の右手のガントレットがガシャンと開き、スラスターのようなものが現れる。
そのままスラスターをふかせ、向かってくる光線へ拳を振るい
「言ってること、全然わかりません!!」
正面からぶつかり合った光線と響の拳は大爆発を起こし辺りに土煙が上がる。
「なにっ!?――くっ!」
「――だとしても」
土煙が晴れた時、サンジェルマンの目の前には寸でのところで留められた響の拳があった。
「あなたの思い、私にもきっと理解できる。今日の誰かを踏みにじるやり方では、明日の誰も踏みにじらない世界なんて作れません」
「お前……」
目の前で言う響をサンジェルマンは睨む。
「私たちは、ともに天をいただけない」
「だとしても、です」
「思いあがるな!」
なおも食い下がる響の手を振り払い、サンジェルマンが後ろに飛び退き距離を取る。
「明日を拓く手は!いつだって怒りに握った拳だけだ!」
そのまま響に向けて飛び掛かり銃で殴り飛ばす。
「がはっ!」
殴り飛ばされた響は地面を転がりながら体勢を立て直す。
「これ以上の問答は無意味だ」
そのまま離れたところから銃を向けるサンジェルマン。同時にプレラーティの攻撃で調と切歌も響のそばに飛ばされてくる。
「終わりだ」
銃を構えたサンジェルマンが引き金を引く。
銃から放たれた黄色の光弾は響達へ向かって飛んでいき
「「「っ!」」」
咄嗟に目を瞑りながら顔を背けると響の顔の脇をかすめるように光弾が飛んでいき
「…………?」
数秒待っても何も起きないことに不審に思った三人が視線を向けると、三人のちょうど真ん中あたりで先ほどの光弾が静止していた。
その光弾が光を増し、
「「「っ!?」」」
三人が咄嗟に避けようと動くが、間に合うことなく
ドカァァァァァンッ!!
大爆発が起きる。
「もぉう、サンジェルマンったらぁ~。急にぶっ放すからびっくりしちゃったぁ~」
「響!切歌!調!」
もうもうと立つ土煙の中、言葉とは裏腹に余裕そうにツインテールのカリオストロと呼ばれていた女性と、彼女に抱きかかえられた海斗が叫ぶ。
カリオストロの姿は先ほどまでと違い、胸元やお腹や太腿の開いた服にフリルのようなスカート、黄色と紫色を基調とし、金色の装飾の施されたスーツ、両手にはメリケンサック状に装着された装備、頭には円形の対になった装飾のヘッドギアが装着されている。
海斗を爆風から庇うためにISを展開したようだった。
海斗の叫びに返事はなく、ゆっくりと土煙が晴れていく。
「っ!」
その光景に海斗は息をのむ。
爆心地と思われる場所には大きなクレーターが出来ており、その周りには響、切歌、調の三人が倒れていた。三人はISを解除され、元の私服に戻っていた。
「響!!切歌!!調!!」
「……ぅっ」
「かい…と…くん……」
「せん…ぱい……」
海斗の叫びに微かに三人が反応する。
「決着は着いたが、どうするサンジェルマン?」
と、響を見下ろすように立つサンジェルマンに隣に並び立ったプレラーティが訊く。
「当分動けないが、これ以上邪魔されないように手か足でも折っておいてもいいと思うワケダ」
「…………」
プレラーティの提案にサンジェルマンは少し思案するように黙り
「待て」
そんなサンジェルマンに鋭いドスのきいた声がかかる。
二人が視線を向けると、二人のそばまで歩み寄っていたカリオストロ、その脇で抱えられている海斗が鋭い視線で二人を睨んでいた。
「何かしら?」
その視線を真正面から受けながらサンジェルマンが問う。
その問いかけに答えず海斗はベッと舌を出す。
「どういうつもりかしら?」
「あんたらの目的は僕だろう?あんたらの計画の内容は知らないけど、無傷で誘拐しようとするくらいだ、あんたらは生きている僕が必要なはずだ」
海斗は言いながら自身の舌を甘噛みするように歯を見せる。
「それ以上三人に危害を加えるつもりなら、僕は今この場で舌を噛んで死にます」
「「「っ!」」」
海斗の言葉に三人が息をのむ。
「ちょ、ちょっと!それは困るわよ!」
「サンジェルマン、どうするワケダ?」
「……もう時間がない。君が大人しく一緒に来てくれるならこの子たちにはこれ以上は手出しをしないと約束しよう」
「……わかりました」
サンジェルマンの言葉に海斗が頷く。
それを見届け、三人がISを解除する。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだな。急がないと思ったより時間を食ったワケダ」
カリオストロ、プレラーティの言葉に頷いたサンジェルマンは揃ってその場を去ろうとして
「ま、待て……」
サンジェルマンの足に違和感が。見ると、弱々しいが響がサンジェルマンの足をつかんでいた。
「海斗…君は……渡さない……!」
「ふん」
抱きつく様に足にしがみつく響を振りほどき、視線を向けるサンジェルマン。しかし
「おい!約束、忘れたわけじゃないだろうな!?」
「……わかっている」
海斗の言葉に頷く。
「海斗…君……!」
「響!僕は大丈夫だから!」
「行くぞ」
なおを追い縋ろうとする響に海斗が叫び、サンジェルマンの言葉とともに三人は海斗を連れて去って行く。
「くぅ……」
去って行く三人と海斗に向けて響は手を伸ばす、が、その手は何も掴めない。
「ぅぅうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
虚しく伸ばされた手を地面に叩きつけ響の慟哭がこだました。
そんな訳で誘拐された海斗君でした。
おかしいな……シンフォギアは最新技術の結晶体のはずなのになぁ……(;^ω^)
ま、まあきっと今後ちゃんと活躍するはずなので、それをお楽しみに!
さて、それはさておき……
ハヤテ「質問が底をつきたな」
……うん
ハヤテ「どうすんの?」
まぁ……次回までに質問来なければ質問コーナーは終了かな?
そんな訳でお待ちしてます!!
ホントに!!
お願いします!!
それではまた次回をお楽しみに!!