IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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前回の話で出たハヤテとクリスの遭遇した事件についてです。
もうちょっと後にしようかとも思いましたが、今書かないと書くタイミングがなさそうだったのでここで。
それではどうぞ!





第216.5話 朽葉ハヤテの事件簿

「着いたぞ、ここだ」

 

「……でけぇ」

 

 住所と近くの駅からの道順を書いた地図を見ていたハヤテが示した屋敷にクリスが思わず呟く。

 その屋鋪はまるで漫画やアニメの中から出てきたように広いお屋敷だった。

 玄関の門から広がる広大な庭。玄関までは五十メートルはありそうだ。庭にはよく手入れされた青々と茂る芝生が広がっている。

 

「お前んちだって大概だろ?」

 

「それはあたしンちじゃなくて翔子さんたちの家で――!」

 

「一緒だろ?あの人たちに引き取られて今はお前んちでもあるんだから」

 

「それは……」

 

 ハヤテの言葉にクリスが言い淀む。

 

「まあそれはいいや。ほれ、さっさと行くぞ」

 

「あ、おい!」

 

 ハヤテは話を区切ってさっさと門の脇のインターフォンに向かう。

 そのハヤテを慌ててクリスが追いかける。

 

 

 ○

 

 

 

「わざわざ来ていただきありがとうございます」

 

 屋敷に通された二人は応接に連れてこられ、待つこと数分。二人の目の前には一人の老婆がソファーに座り、男女一名づつのお手伝いさんらしき人物が立っている。

 老婆は「古谷舞子」と名乗り見たところ70代ほど。真っ白になった髪と年齢分刻まれたような顔のしわ、背中も曲がっており、わきにこの部屋に来るときに使っていたつえが置いてある。

 老婆の座るソファーの背後に控える男女はどちらも日本人らしくない顔立ちで、どうやら異国の出身らしい。30~40代と思われる男性と20代前半くらいに見える女性だった。

 

「それで早速ですが本題に入らせていただいてもいいでしょうか?」

 

「ええ、もちろん」

 

 しわがれた声で答えた老婆はわきに控える男に示す。

 男は持っていた封筒をハヤテの前に置く。

 

「拝見しますね」

 

 言いながらハヤテは懐から白い手袋を取り出し両手にはめ、封筒を手に取る。

 封筒はよくあるタイプの茶封筒で、消印は無く、表に老婆の名前が書かれている。差出人の名前はない。

 封筒の上部分がハサミで開けられており、ハヤテはそこから便箋を取り出す。

 

「えっと……『お前の命をもらう。覚悟しろ』……」

 

「……え?それだけ?」

 

「ああ」

 

 文言を読み上げたハヤテにクリスが訊き、ハヤテが頷きながら手紙の内容を見せる。

 そこには新聞などを切り取って張ったような文字が並んでいた。

 

「筆跡がわからないようにしてるのかな?封筒の宛名も印刷したような文字だし」

 

 ハヤテは言いながら封筒に便箋を戻す。

 

「この手紙はあなたが?」

 

「いえ、ここにいるアドルフが」

 

 老婆が控えている男性を示す。

 

「はい、それは先日ポストに入っているのを、私が見つけました」

 

 視線を向けたハヤテとクリスに答えるように男が答える。その言葉遣いには特徴的なイントネーションだった。

 

「雰囲気やお名前から察するにもしかしてあなた……」

 

「はい、数年前に事情があって日本に来ました。出身はフランス、です。今はこのお屋敷で働かせていただいています」

 

「なるほど。この手紙を見つけた時何かおかしなことはありませんでしたか?」

 

「いえ、とくには……」

 

「そうですか……」

 

 アドルフの言葉にハヤテは頷く。

 

「ちなみにそちらは?」

 

「ああ、彼女はターニャ。彼と同じくうちで家政婦として働いてもらっています。」

 

 老婆が言ってから早口で何かをターニャと呼ばれた女性に話しかけると、ターニャがぺこりとお辞儀をする。

 

「彼女はドイツ出身なのですが、まだ日本語が不得手でして」

 

 アドルフが答える。

 

「そうですか。フランス語ならいけるんですがドイツ語は……。それでは日常的に仕事なんかで困るんじゃないですか?」

 

「ええ、まあ。ただ、身振り手振りでもなんとか意思の疎通はできますので……」

 

「なるほど」

 

 納得したようにハヤテが頷く。

 そんなハヤテを尻目に老婆がどうやらドイツ語らしき言葉でターニャに話しかける。

 ターニャも何かを老婆に答える。

 

「彼女もこの手紙に着いては詳しく知らないそうです」

 

「そうですか」

 

「この家には三人だけなんですか?」

 

 頷くハヤテの横でクリスが訊く。

 

「私の孫娘も同居しています。大学に通うのにこの家から通うのがいいらしくて。今は少し出ていますがそろそろ帰ってくるはずです」

 

「では、帰ってからお話を聞かせてもらうとしましょう」

 

 ハヤテは頷く。

 

「失礼ですが、この手紙が送られてくるようなお心当たりは?」

 

「私は数年前まで大手の会社で社長をしていまして。今は息子に社長の座を譲って隠居していますが、社長として働いていた時のことかもしれませんね」

 

「何か特に思い当たるようなものは?」

 

「とくにはありませんね。正直社長としてあまり大きな声では言えないようなこともしていましたので。正直どれのことなのか見当もつきませんね」

 

「そ、そうですか……」

 

 ハヤテがなんとか頷き、隣でクリスがひきつった顔をしていた。

 

「とりあえず、家の周辺を見せていただいてもいいですか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「また何か各々に訊くかもしれませんがその時はよろしくお願いします」

 

 そう言ってハヤテはクリスを連れて席を立つ。

 

 

 ○

 

 

 

「知らなかったよ」

 

「は?何が?」

 

 庭に出て周辺を見ていたハヤテにクリスが言う。

ハヤテは自身の携帯で動画を取りながらクリスに視線を向ける。

 

「あんたフランス語話せたんだな」

 

「ああ、そのことか」

 

 ハヤテが納得したように頷く。

 

「これでもこの五年で何個か言語を覚えたんだよ。今では日本語いれて五か国語いけるよ」

 

「へ~、どの言語が使えるんだ?」

 

「えっと、日本語、英語、フランス語、ロシア語、あとグロンギ語」

 

「グロンギ語?」

 

 ハヤテの言葉にクリスが首を傾げる。

 

「どこの言語だよ?」

 

「仮面ライダークウガに出てくる敵のグロンギっていう戦闘種族の使う言語で――」

 

「実在しねぇんじゃねぇか!!」

 

 ハヤテの答えにクリスがツッコむ。

 

「ねぇだろそんな言語!」

 

「あるよ!ちゃんと言語になってるんだよ!」

 

「じゃあなんか試しに言ってみろよ!」

 

「クリスパ ルベ・ビ レソン・ゾ ギセデギス パベゼパバギ

ゲギバブ・ド ゴバジ パガララドゼィザ」

 

「おい、今あたしの名前言わなかったか?なんて言ったんだ?」

 

「ひみつ」

 

「言えよ!なんて言ったんだよ!?」

 

「ちょっと、人のうちで何騒いでんのよ?」

 

 と、背後から女性の声が聞こえる。

 二人が振り返るとそこには茶髪に派手なメイクの少女が立っていた。恐らくクリスと同じくらいか少し上くらいだろう。

 

「あんたたち誰?新しいお手伝いかなんか?」

 

「失礼しました。僕たちはこの家の家主から依頼されてやってきた探偵です」

 

「探偵…あぁ、あの脅迫文の」

 

 ハヤテの言葉に少女は納得したように頷く。

 

「失礼ですがあなたは?」

 

「私は古谷美緒。ここの家主の孫よ」

 

「あんたが……」

 

 少女、美緒の答えに納得したようにハヤテが頷き、クリスが何か思うところがあるのか呟く。

 

「で?探偵がなんでうちの周りうろちょろしてんの?」

 

「まあ少し周辺も調べておこうと思いまして。家の周りは高い塀と柵で囲われてますけど、殺人予告するくらいですからどこかしら侵入経路でも用意してるんじゃないかと」

 

「そういうことね」

 

 美緒が納得したように頷く。

 

「そう言えば、これは後であなたのおばあさんにも聞こうと思ってたんですけど、ぶっちゃけこの家にはやっぱり高価な金目のものとかあるんですか?」

 

「まあね。家財道具や調度品とか、あとは亡くなったおじいちゃんが持ってた猟銃とか」

 

「猟銃?」

 

 美緒の言葉にクリスが訊く。

 

「六年前に亡くなったおじいちゃんがやってたのよ。まあおじいちゃんしか資格持ってなかったし、今は誰も使わないから飾ってるけど。いいものらしいから売れば高値がつくんじゃない?」

 

「それ、今も使えるんですか?」

 

「さぁ?私使い方知らないし。でもすぐ近くに弾も置いてるから撃とうと思えば撃てるんじゃない?」

 

「それは今どこに?」

 

「おじいちゃんの部屋よ。おばあちゃんの部屋の隣」

 

「そうですか……」

 

 そこまで話したところで興味をなくしたのか美緒が玄関へと歩き出す。

 

「まあうろちょろするのはいいけど変なことしないでよ。ここ、そのうち私のものになる予定なんだから」

 

「はい、わかりました」

 

 去って行く美緒を見送りながらハヤテが返事をする。

 

「なんかいけ好かないやつだな」

 

「そうかい?」

 

「ああ。だってあの言い方、まるでここの家主にさっさと死んでほしいみたいじゃねぇか」

 

「……そうだね…」

 

 クリスの言葉にハヤテは特に言及することなく頷くのだった。

 

「さて、それじゃあ残り見回って詳しく話を――」

 

 言いかけたハヤテの言葉は

 

 バァンッ!!!!

 

 響き渡った大きな銃声で遮られた。

 

「「っ!?」」

 

 ハヤテはとっさに隣にいたクリスを押し倒すように倒れ、周囲に視線を向ける。

 

「な、何だ今の!?」

 

「っ!」

 

「あっ!おい!」

 

 クリスの言葉に答えずハヤテは屋敷に向かって走り出す。クリスも慌ててその後を追う。

 屋敷に飛び込んだハヤテはたまたま通りかかったらしいアドルフと合流する。

 

「た、探偵さん!今のは!?」

 

「わかりません!とにかく古谷舞子さんのところへ!今どこに!?」

 

「お部屋でお休みになっていらっしゃるはずです!」

 

「案内を!」

 

「ええ!」

 

「あ、あたしも!」

 

 追いついたクリスとともに三人は階段を上り二階へ向かう。

 三人が目的の部屋にやって来た時、部屋の前でターニャがドアをノックして何かを叫んでいた。

 

「××××××!×××××××××!」

 

 しかし、早口のドイツ語で三人にはわからない。

 

「ちょっと、今の銃声何よ!?何事!?」

 

 そうこうしていると美緒もやって来る。

 

「いえ、我々にも何が何やら……」

 

「おばあちゃんは!?」

 

「恐らくその部屋にいるのかと」

 

 美緒にアドルフやハヤテたちが答えている間にターニャはどこかへと消える。

 

「舞子さん!?聞こえますか!?無事ですか!?」

 

 ハヤテはドアへ駆け寄り問いかけるが返事はない。試しにドアノブを回してみるがカギがかかっているらしい。

 

「くそっ!こうなったらこのドアを壊して――!」

 

「待ってよ!そんなの認められないわ!」

 

 体当たりをしようとドアから数歩引いたハヤテ。しかし、それを美緒が止める。

 

「この家はおばあちゃんが死んだら私のお父さんが相続するのよ!その次は私!勝手に壊させるわけにはいかないわ!」

 

「あんたそんなこと言ってる場合か!?今はあんたのおばあさんが危ないかもしれねぇってのに!」

 

「そんなの知らないわよ!とにかく壊すのはダメ!」

 

 美緒の言葉にクリスが呆れたように叫ぶが美緒は聞かない。

 四人が議論する間にターニャが戻ってくる、その手に猟銃を持って。

 

「なっ!?それって!」

 

「さっき言ってた亡くなったおじいちゃんの猟銃よ!」

 

 ターニャの鬼気迫る様子に四人は距離を取る。と、ターニャは四人に目もくれずにドアの前に立ち、鍵穴に銃口を押し付け

 

 バァンッ!!!

 

 躊躇いなく引き金を引いた。

 しかし、これで扉が開くようになったので四人はターニャの後を追って慌てて部屋に入る。

 そこには――

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 美緒の叫び声が響く。

 ドアの前、入ってすぐの所に家主の舞子が倒れていた。その右目のあった場所にはぽっかりと穴が開き、貫通しているらしく、頭の後ろにはカーペットを真っ赤に染めていた。

 

 

 ○

 

 

 

「どうも、警視庁の御剣と言います」

 

「同じく警視庁の君原です」

 

 やって来たのはベテランと思われる無精ひげの生えた厳つい顔の男の刑事とまだ若い女性の刑事だった。

 

「ども、ツルさんにちゃっちゃん」

 

「なれなれしくちゃん付で呼ばないでください」

 

「またお前か……」

 

 親し気に二人の刑事にあいさつするハヤテに二人がため息をつく。

 

「お前これで六回目だろ?いい加減お前が裏から糸引いてるんじゃないかって疑いたくなるぞ」

 

「そんなことしてませんよ~。その証拠にこれまで邪魔したことないでしょ?事件だって解決してるし」

 

「そうですが……」

 

「とりあえずお前も容疑者なんだから大人しくしてろよ」

 

「は~い」

 

 二人はぶつくさ文句を言いつつ現場検証のために移動する。

 

「おい、事件起きたじゃねぇか」

 

 そんな三人のやりとりを見ていたクリスは二人の刑事が去って行くのを見ながらジト目でハヤテを睨む。

 

「おかしいなぁ……今日は大丈夫だと思ったんだけどなぁ……」

 

「あんたの言葉信用してきてみれば、あんな死体見ることになるなんて……」

 

「……悪かったよ」

 

 クリスの言葉にハヤテが素直に謝る。

 

「で?どうするんだよ?」

 

「どうすっかね~……今回の依頼料誰からもらえばいいんだろう?」

 

「そこじゃねぇよ!」

 

 ハヤテの言葉にクリスがツッコむ。

 

「いいか?人が死んでんだぞ!?しかもその犯人もわからないんだ!あたしらだって危険かもしれないんだぞ!」

 

「んなもん心配する必要ないよ」

 

「なんでだよ?」

 

「だって犯人はわかってるから」

 

「…………は?」

 

 ハヤテの言葉にクリスが呆ける。

 

「いま、なんつった?」

 

「だから、犯人はわかってるの。ただ問題は証拠がないんだよなぁ~。それさえ見つかればさっさと帰れるのに」

 

「いや……はぁ!!?犯人わかったのか!?この短時間で!?」

 

「だからそうだって言ってんだろ。……とりあえず長くかかるかもしれないから会社に連絡入れといたほうがいいかなぁ~……」

 

 何でもないことのように答えるハヤテにクリスが言葉を失うが、ハヤテは気にした様子もなくポケットに手を入れ

 

「あれ?」

 

 目当てのものが無かったのかハヤテが焦ったようにすべてのポケットを探り始める。

 

「なんだよ、どうしたんだ?」

 

「携帯がない!どっかで落としたか?……ちょっと探してくる!」

 

「あぁ!ちょっと待て!」

 

 焦ったように走りだそうとしたハヤテをクリスが止める。

 

「なんだよ!?今急いで――」

 

「ほい、これだろ?」

 

 と、クリスが携帯を取り出す。

 

「……なんでお前が持ってんの?」

 

「さっき庭にいたとき、銃声がしてアンタがあたしを突き飛ばしながら倒れた時に落としてたから拾っといたんだよ」

 

「それ、先言えよ!」

 

 クリスから携帯を受け取りながらため息をつくハヤテ。

 

「ん?なんだ、動画回りっぱなしじゃん」

 

「あぁ、そこまで意識してなかった。充電大丈夫か?」

 

「それは問題ないけど……」

 

 言いながらハヤテは撮影された動画を確認する。

 

「声だけでなんも映ってねぇな」

 

「まあずっとあたしがポケットに入れてたし」

 

「これじゃあ証拠になるようなものが映って……いや待てよ」

 

 言いながら動画を消そうとしたところでハヤテはふと手を止める。

 

「どうしたんだよ?」

 

「シィッ!」

 

 クリスの問いに静かにするように示したハヤテは携帯を耳に当てて映像を確認する。

 

「………クリス」

 

「な、なんだよ?」

 

 映像を確認し終えたハヤテはゆっくりと顔を上げる。

 その様子にクリスが訝しむ。

 

「クリス……お前最高だよ!ありがとう!!」

 

「うわっぷっ!?」

 

 突如ハヤテに抱きしめられてクリスは驚きと羞恥で顔を赤く染める。

 

「助かった!お前のおかげで証拠が見つかった!これで帰れるぞ!」

 

「ちょ!?それはいいから離せよ!!!」

 

「おっと悪い」

 

 照れたように叫ぶクリスにハヤテがパッと離す。アッサリ解放されたことで若干もやっとしたクリスだったが気を取り直すように咳払いをする。

 

「それで?その証拠ってなんだよ?なんも映ってなかったんだろ?」

 

「まあね。それに、証拠っていうより、証拠になるかもしれないもの、だけどね」

 

 ハヤテは言いながらニッと笑い

 

「そいじゃこれをツルさんたちに提出して調べてもらってくるか」

 

「えっ?ちょっと?」

 

「あ、お前ここで待ってろ」

 

「はぁ?でも!」

 

「いいから!そいじゃ!」

 

「あっ!ちょっと!?」

 

 クリスの言葉も聞かず、ハヤテは颯爽と走り去って行った。

 

 

 

 

 

 その後、ハヤテの提出した動画が決定的な証拠となり、ハヤテの推理によって家政婦のターニャが犯人として逮捕された。

 

 

 

 

 

 

「で?なんであの家政婦が犯人だって分かったんだよ?」

 

 帰り道の電車の中、並んで座るハヤテとクリス。クリスがハヤテに訊く。

 

「あぁ……見てればわかったろ?」

 

「いや、わかんねぇから聞いてんだろ」

 

 クリスがジト目で睨みながら言う。

 ハヤテが少し考えるそぶりを見せてすぐに口を開く。

 

「いいか?あの家政婦はまず隣の部屋かどこかでピストルを撃つ。これは別に本物じゃなくてもいい空砲で十分だ。そのあとすぐさまあの家主の部屋に行く。銃声の影響であの場にはすぐにみんな集まるから自分が一番になる必要があるんだ」

 

「なんで一番に?だいたいそれだとあのばあさんアタシらが部屋の前に来た時点じゃ生きてることになるだろ」

 

「そう。生きてたんだよ」

 

 ハヤテの言葉にクリスが首を傾げる。

 

「僕らがあの場に着いたとき、あの家政婦はドイツ語でなんか叫んでただろ?たぶんあの時の様子だとあの孫娘もドイツ語分からなかったんだろうな。つまり、あの家でドイツ語が分かるのは家主の舞子さんだけだ。彼女はそれを逆手に取ったんだ」

 

「逆手に?」

 

 首を傾げるクリスにハヤテが頷く。

 

「いいか?あの時彼女は僕らにはわからないドイツ語でこう言ってたんだ、『奥様のことを狙った殺人犯がいます。今警察を呼んだので絶対に誰が来ても扉を開けず、部屋に隠れていてください。だれも信用できません。私の声が聞こえるようにドアの前にいてください』ってね」

 

「でもそれじゃあやっぱりあのばあさんはその時点で生きてたんだろ?でもあたしらが部屋に入ったときには死んでた。それっておかしくねぇか?」

 

「おかしくないさ。彼女が殺されたのは僕らが部屋に入る直前だったんだから」

 

「え?それって……」

 

「あの人は僕らの目の前で殺されたんだよ。あの時、あの家政婦がドアを撃った瞬間にな」

 

「っ!?」

 

 ハヤテの言葉にクリスが息をのむ。

 

「恐らくあの人は家政婦の言葉通りに部屋に鍵をかけ、ドアの前にいたんだ。そして、鍵穴からこちらの様子を見ていたんだ。だから、家政婦がドアのカギを撃ったことで覗き込んでいた右目を撃たれたんだ」

 

「……………」

 

「警察が来た段階である程度おおすじは推理できていた。でも証拠がなかった。決定的な、ね。でも、それもクリスのおかげで解決したんだけどね」

 

「どういうことだ?」

 

「動画だよ」

 

 クリスの問いにハヤテが答える。

 

「クリスが持ってた僕の携帯、動画が撮影しっぱなしだった。あいにくポケットに入ってたから映像は無かったから音声は拾えていた。もちろん、家政婦の彼女がドアに向かって叫んでいた言葉の内容もね」

 

「そうか!それを翻訳すれば……!」

 

「そう。そして、実際翻訳してみればおおすじさっき僕が言ったようなことを叫んでいたようだ。それが決定的な証拠となって逮捕となったわけだ」

 

「…………」

 

「今日だけの付き合いじゃ動機まではわからんが、それは警察の仕事だ」

 

「あの状況でそこまで推理したのか?」

 

「まあね」

 

「……………」

 

 何でもないことのように答えるハヤテにクリスが呆然と呆ける。

 

「とりあえず、今日の報告書帰ったらよろしく」

 

「はっ!?依頼はやってないんだから報告書必要か!?」

 

「事件には関わったからな。上の人にも僕らがあの場にいて事件解決に助力したことは伝わってるだろうから報告書は書かないと」

 

「100歩譲ってそうだとしても、なんであたしなんだよ!事件解決したのお前だろ!?」

 

「僕も書くんだよ。でも、こういう突発的な事件に巻き込まれた時は全員提出するって決まりなんだよ。かったるいけど出さないとそっちの方が面倒でな」

 

「えぇ~……」

 

「文句言うな。僕だってやりたかない」

 

 大きくため息をつくハヤテにクリスも少し考え

 

「わかった。報告書はやる。その代わり教えてほしいことがある」

 

「なんだよ?聞くだけ聞いてやる」

 

 クリスはハヤテの答えに少し考えるそぶりを見せ

 

「さっき言ってたグロンギ語?ってやつ、あれなんて言ってたんだ?」

 

「…………」

 

 ハヤテはその問いに少し考え

 

「ひみつ」

 

 不敵に笑うのだった。

 




はい、そんなわけでハヤテとクリスが遭遇した事件でした。
ちなみに作中でハヤテが言っていたグロンギ語の内容ですが、答え合わせは次回に!
検索すればすぐ解読表が出るので頑張って解読してみてくださいね~!

さて、今回の質問コーナーです!
今回は前回の続き、Goetia.D08/72さんからいただきました!
「現在IS学園の生徒会長やってる人って、どんな人ですか?」
ということですが



現在の生徒会長は「三司あやせ」という日本の国家代表です。
テレビやメディアへの露出も多く、とある事件で取材を受けたのをきっかけに、可愛い容姿も話題となり、ちょっとしたアイドルのような存在となりました。
社交的で明るい人当たりのいい性格でEカップの抜群のプロポーションも人気の要因……ではありますが、本来は面倒臭がりで、引きこもりがち、1人でいる方が好きな人間で、おっぱいもパットもりもりで実際はとても慎ましい胸の持ち主で

三司あやせ「だれが乳部(チブ)・タイラーだ!ぶっ殺してやるぅっ!!」

言ってないだろ。
大丈夫、貧乳でも需要はあるって。
世の中には巨乳だろうが貧乳だろうが気にしない奴だってたくさんいるさ。

三司あやせ「その爽やかな笑顔がうそ臭い。『多少成長したところで巨乳になるわけないだろ。夢のまた夢だな……ハハッ』とか思ってそう」

思ってないって。考えすぎだよ。

三司あやせ「ぐぬぅ~~~……ッッ男はみんな胸ばっか見やがって!人のことを貧乳貧乳と!ましてやムネ・タイラとか無乳会長タイラーとか乳部・タイラーとか、もう一回言ったら……潰す」

と、まあこんな感じの人です。
まあ案の定モデルがいます。
僕が前にやったPCゲーのヒロインです。
個人的に演じている声優さんも好きでお気に入りのキャラの一人です。
ちなみに登場するかは未定です。なんか扱いずらそうなので多分出ません。

三司あやせ「え?待って。私出番これだけ?胸の話しかしてないんですけど?」

…………彼女が本編に登場するかは私の気分次第!
こうご期待!

三司あやせ「え?お願い、潰さないから。胸のこと言っても潰さないから!お願い!出番頂戴!」

それではまた次回をお楽しみに!

三司あやせ「え?待って!話し終わってないから!私の出番超重要だから!お願い本編でも出して――」

お楽しみに~!!
さよう~なら~!!!

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