「ふぁ~……」
「ちょっと、社長からの連絡事項伝達中でありますよ」
「しゃあねぇだろ、ねみぃもんはねみぃんだよ」
朽葉ハヤテの会社「万屋ハヤちゃん」、会社の一室に揃った九人の人物たち。その中で短髪のボブカットの少女が一番の長身黒髪のポニーテールの少女に注意をする。注意をされた少女はため息まじりに答える。
「どうせ遅くまでTVでも見ていたんでしょう?」
「昨日は報告書書くのに時間かかって寝るのが遅くなっちまったんだよ」
「ほぉー、あなたのような方がまじめに仕事に取り組むとは」
「んだよ?何か言いたいことでもあんのかよ?」
「別にぃ?普段不真面目でめんどくさがりのあなたがどういう風の吹き回しかと思っただけですが?」
「面倒だったよ。でもちゃんと書かねぇとあの社長が――」
「んんっ!!」
と、ぼそぼそと話していた二人を遮って咳払いが響く。
ハッとして少女たちが見ると、咳払いをしたであろう苦笑いを浮かべた長髪の少年、ハルト。そのハルトの視線の先にはジト目で少女たちを見ているハヤテの姿が。
ハヤテは大きくため息をつく。
「君たちが反目しあってるのは知ってるし、無理に仲良くしろとは言わない。でもね、大事な話もあるからちゃんと聞いててね」
「は、はいであります!申し訳ありません!」
「……悪かったよ」
ハヤテの言葉に慌ててボブカットの少女――九真城恵が頭を下げ、長身の黒髪ポニーテール少女――井ノ原真紀がけだるそうに謝る。
「というか、マキのことはレナに、グミのことはトーカに任せてるんだから、二人が注意してよ」
「え~、マスター、この二人のことはしょうがないよ」
「そうね、二人は水と油で事あるごとに競ってるんだから、私たちが言ってどうにかなるものじゃないわよ」
苦笑いのハルトの言葉に呼ばれたレナとその隣の小柄な長髪の白髪少女――獅子ヶ谷桐花は答える。
ちなみにグミとは恵のあだ名である。
「ちょっと、あなたのせいで怒られたじゃないですか!」
「知らねぇよ。ぺちゃくちゃくっちゃべってきたのはそっちだろ」
「それはあなたが欠伸をしてたからで」
「欠伸なんて眠けりゃでるのはしかたねぇだろ?ホントお前は規則だなんだとうるせぇな」
「私は普通のことを言ってるんであります。大体あなたは普段からだらしないんであります!もっと組織にいる人間としての自覚を――」
スパーン!スパーン!
「「あいたぁ!?」」
二人の言葉を遮って大きな音と二人の叫び声が上がる。
「マァキ~!グゥミ~!」
二人が顔を上げるとその手に持った大きなハリセンをパシパシと手に当てながら笑顔で立つハヤテの姿があった。
「一度注意されたのに、舌の根の乾かぬ内に君らはすぅぐそうやって……」
盛大にため息をついたハヤテは冷たい視線で見下ろし
「これは、お仕置きが必要かな?」
「「え……?」」
そう言って一層笑顔を浮かべるハヤテ。しかしその笑顔にうすら寒いものを感じた二人が声を漏らし
○
「はい、じゃあ気を取り直して連絡事項にもどります」
数分後、気を取り直して話し始めたハヤテ。その目の前には
「い、痛いであります……!この年でお尻ぺんぺんなんて!しかも先輩たちのいる前でなんて、もうお嫁に行けないであります!」
「あ、あの野郎本気で叩きやがって……!」
涙目で自分たちのお尻をさするグミとマキがいた。
「なかなかいい音がしてたね。あれはかなり痛いよ」
「見ていたこっちまでお尻が痛くなりそうだったね」
その様子を見ていたムラサキと、金髪のショートカットの少女――鯨瀬・クリスティナ・桜子が苦笑いで言う。
「てめぇ、少しは手加減ってもんを――」
「いやいや、これでもハヤテの中ではお仕置きの範囲内だよ」
文句を言おうとしたマキの言葉を遮ってシャルロットが苦笑いを浮かべる。
「ハヤテが本気になったら左足でタイキックしてくるよ。それも一発や二発じゃなく、二、三十発くらいは」
「はぁ?それがどうしたって――」
「あぁ、社長の左足って義足だから。触ったり見た感じじゃわからないけど、あの足芯の部分に超固い金属使ってるもんね」
「そんな足で二、三十発もタイキックされたら冗談じゃなくお尻割れちゃうわね」
「「……………」」
ムラサキとトーカの言葉にマキとグミが押し黙る。
「はい、二人が納得してくれたところで本格的に話を戻します。二人が黙るまでに5分と42秒かかったので心持ち巻きで」
黙った二人を尻目に言いながらハヤテは手元の資料に視線を向ける。
「え~、とりあえず今週は引き続きそれぞれ受け持ちの依頼をこなしてください。マキみたいに依頼が終わってる人は待機。以上が表向きの方の連絡」
手元の書類を見ながら顔を上げ
「ここからは裏のお仕事。二週間後の日曜日、ヨーロッパ圏を拠点に近年勢力を広げて一大企業となった会社の社長が孫娘を連れて日本に来るらしい。なんでも日本政府のお偉いさんとの会談が目的らしい」
これその企業の詳細データね、と言いながらシャルロットが書類を七人に配る。
「僕らに課せられた任務は二つ。一つは日本滞在中の社長の護衛任務。もう一つは会談中の孫娘たちの護衛と遊び相手。社長の護衛の責任者はシャルロットとハルト、孫娘の方は僕」
どっちやりたい?とハヤテが視線を向ける。
「はいは~い!マスターが社長の護衛につくならあたしもそっち!」
「うん、だと思ったから初めからそのつもりだった」
「やった!」
元気に手を上げていったレナにハヤテが頷く。
「社長の護衛にはうち以外にも護衛つくから半分もいけばいい。つまりレナ以外にはあと二人くらいいればいいよ」
「ガキのお守りとか性に合わねぇからあたしも社長の護衛の方にしてくれ」
「却下」
「なんでだよ!?」
「レナが社長の方に行くならお前はこっち。アタッカーのお前ら二人が同じ方にいるとバランス悪いだろ」
「だったら姉さんをお守りの方にすりゃいいだろ!?」
「レナがハルトから離れるといろいろとめんどくさいからダメ」
「じゃあそいつごと!」
「日本政府の役員からハルトにご指名入ったから無理」
「クッソ!」
これ以上は無理だと諦めたマキは嫌そうに顔をしかめる。
「はい、他には?」
「じゃあ私と――」
「私が行きます」
ハヤテの言葉にトーカと桜子が立候補する。
「そうだな、メンバーのバランスを見てもその方がいいか。じゃあ社長の護衛にはシャルロットとハルト、レナとトーカと桜子な――あ、いや待てよ」
言いかけたところでハヤテが何か思案するように押し黙り
「変更。トーカじゃなくグミが社長の方で」
「わ、私でありますか!?」
突然指名されたグミが驚きの声を上げる。
「マキがこっちいるならグミと一緒になるとほぼ100%の確率で喧嘩する。だからトーカがこっち」
「……そうね。それを失念してたわ」
ハヤテの言葉にトーカが納得した様子でため息をつく。
「他に異論は?」
ハヤテは周りを見渡す。
他の面々は特に異論はないらしく黙っている。
「無いようだし、社長の護衛はシャルロットとハルト、レナとグミと桜子。孫娘の護衛は僕とムラサキとトーカとマキ。それぞれみんな二週間後の日曜日までに詳細な資料に目を通しておくようにね」
「「「「「了解!」」」」」
「了解であります!」
「あいよ」
ハヤテの言葉に七人がそれぞれ返事をしたのを確認し
「それでは今日の連絡事項は以上!解散!」
「なんでやねん」
スパーン!
「あいたぁ!?」
大きな音ともにハヤテが叫び声を上げる。
ハヤテの傍らでは先ほどマキとグミを叩いたハリセンを振りぬいた体勢でシャルロットが立っていた。
「何すんのさ、シャルロット?」
「何すんのさ、じゃないよ。一番大事な連絡事項があったでしょ?」
「あぁ~……」
ジト目で睨むシャルロットの視線に顔を反らしながらハヤテが言いよどみ
「僕はめんどくさくて忘れようとしてた」
「いくらあの件に反対だからって決まった以上はちゃんとしようよ」
「え~?」
「え~、じゃない!はい、ちゃんとみんなに紹介する!部屋の外でずっと待ってるんだから!」
「ちぇ~……はい、じゃあ入ってきてぇ~」
しぶしぶ頷いたハヤテの言葉の後に部屋のドアが開く。
「失礼します!」
と、開いたドアの向こうから一人の少女が現れる。
IS学園の制服に身を包み、長い白髪を後ろでピンクのシュシュで二つに括っている少女はズンズンと歩いてきて
「呼ぶのおせぇよ!」
スパーン!
「あいたぁ!?」
シャルロットの持ったハリセンを奪った少女がハヤテの頭に叩きこむ。
「はい、じゃあみんなに自己紹介してね」
「おう」
ハリセンをシャルロットに返しながらシャルロットに促され、呆然とする七人に身体ごと視線を向けた少女は
「IS学園三年の雪音クリス!これから週一回インターンでお世話になります!よろしくお願いします!」
と、クリスはにこやかにお辞儀したのだった。
さてさて、そんなわけでこれまでチラホラと登場していた万屋ハヤちゃんのメンバーがついに一堂に会したわけですが
かと思いきや突然のクリスの登場!
彼女の意図とは!?
それはさておき、今回の質問コーナーは前回の続き、一般有澤社員さんからいただきました二つ目の質問です!
「大同爽さんはナイツ&マジックを知っていますか?
知っていたら、お好きなシルエットナイトは何でしょうか」
ということですが
ナイツ&マジック知ってますよ。
ロボットモノとしてもクオリティ高かったんで好きでしたよ。
私はアニメしか見てないんで原作小説とかでアニメ以降の話で出たようなシルエットナイトは知りませんが
アニメで出てくるシルエットナイトはエルくんの中身がオタクなだけあってカッコいいの多いのでなかなか難しいですが、あえて挙げるならツェンドルグが好きですね。
あのケンタウロスみたいな見た目でガシャガシャ走る感じとか二人で操縦するのとかいいと思いますよ。
それでは今回はこの辺で!
次回もお楽しみに!