IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第207話 改めての自己紹介

「みんな、今日は緊急の招集で来てもらってすまない」

 

 国連所有のとある施設の一室、広い会議室の楕円形の机に座るのは二名の男性――うち一人は風鳴弦十郎、もう一人はスーツ姿の緒川慎次という人物――以外は九人の人物。そのうちの五人は響、未来、調、切歌、クリスのIS学園に通う少女たち。残りの四人はこの五人よりも少し年上の少女というよりは女性と言ってもいい人物たちで

 

「いや、あたしらはみんな今日はそろってオフだったから別に問題ないぜ、弦十郎の旦那」

 

 と、四人の女性たちの中の長い癖のある赤毛が特徴の人物――天羽奏が弦十郎に向けて笑いながら言い

 

「しかし、私たち八人が呼ばれるのはわかりますが、小日向までいるというのが珍しいですね」

 

 と、四人の女性のうち、すらりと背の高い青みがかかった長い髪の人物――風鳴翼が言い

 

「そうね。つまり、新しい任務の話、というわけではなさそうね?」

 

 と、四人の女性のうち、長い髪と猫耳のように留められた髪が特徴的な人物――マリア・カデンツァヴナ・イヴが翼の言葉に賛同するように言い

 

「そもそも全員招集というのが珍しいですね」

 

 と、四人の女性のうち、茶色の長い髪に花のような髪飾りを付けた人物――セレナ・カデンツァヴナ・イヴが言う。

 この四人の人物と響達五人は弦十郎と緒川を上司とし、とある組織の一員である。響達五人はいまだ学生であるが、この四人は表向きの仕事としてアイドル歌手として活動している。

彼女たちが集まるこの施設もその組織のためのものの一つだ。ちなみにこのなかで小日向未来だけは他の八人とは少し違い正規のメンバーではないのだが、今はまた別の話である。

 

「今日君たちにこうして集まってもらったのはほかでもない。ことは一週間ほど前に起こったあの一件に由来する」

 

 弦十郎がそう言った瞬間響達五人はすぐにその一件について見当がついたようで顔つきが変わる。

 他の四人は一瞬何のことかわからなかったようだが、五人の様子にすぐに察しがついたようで

 

「それって、海斗のやつが誘拐されたってやつかい?」

 

 と、四人を代表するように奏が訊く。

 

「ああ。君たち四人にも話は言っていると思うが、先日、君たちもよく知る井口海斗君がとあるテロ集団に誘拐された。当時は彼女たちが護衛としてついていたが、一瞬の隙をついてかっ攫われたらしい。まああれは正直相手の方が手際が良すぎた。彼女たちには責任はない。警戒を怠った我々の落ち度だ」

 

 弦十郎はフォローするものの五人のうちクリスを除く四人が少し落ち込んだように表情を曇らせる。

 

「まあしょうがないって。あたしもまた聞きで聞いた程度だけど、お前らは十分仕事してたんだろう?あんまり気にすんなって」

 

「そうだよ、どんなに警戒しててもやられちゃうときはやられちゃうって」

 

 奏とセレナが落ち込んだ表情の四人に言うが、四人の表情はあまり晴れることはない。

 

「今日こうしてみんなに集まってもらったのは、そのことについて君たちを罰するためじゃない。問題はそのあとのことだ」

 

「そのあと?」

 

 弦十郎の言葉にクリスが多少察している様子ではあるが、あえてそれを口にせずに訊く。

 

「君たち五人は彼が攫われてから救出される過程を実際にその場に居合わせていたから知っているだろうが、彼女たちはどの程度報告している?」

 

「ある程度基本的なことは」

 

 と、弦十郎に訊かれた緒川は答える。

 

「たしか、うちの組織直下の特殊部隊の面々が対処したとか」

 

「どこの部隊かまでは聞いてないけどね」

 

 と、翼とマリアが答える。と、その言葉に五人が驚いた表情を浮かべる。

 

「あ、あの人ここの所属だったんデスか!?」

 

「て、てっきりちょっと裏に通じている程度の何でも屋さんだとばかり!」

 

「あんだけの事やってのけてただの何でも屋なわけないだろ?」

 

 驚く切歌と響の言葉にクリスは呆れた様子で言う。

 

「あ、そう言えばあの時、あの人、〝僕は君たちと似た立場にある〟って……」

 

「それって、そういう意味だったんだ……」

 

 思い出したように言った未来の言葉に調も納得したように頷く。

 

「なんだよ?自分らだけで納得すんなよ」

 

 話の見えない奏は五人に訊く。

 

「あの、一体どういうことなんでしょうか?」

 

 マリアやセレナも首を傾げ、翼が弦十郎に訊く。

 

「うむ、その件に関して呼んでいる人物がいるのだが、そろそろ――」

 

 と、弦十郎が腕時計に視線を向けたところで会議室の扉が開く。

 

「失礼します」

 

 と、一礼して入ってきたのは黒髪の短髪の女性で青い制服に身を包んでいた。

 

「来たか?」

 

「はい。お通ししても?」

 

「ああ、頼む」

 

 弦十郎の言葉に頷いた女性は下がり、四人の人物が現れる。それは――

 

「あのさ、別にこんな大仰にしなくても僕自分で動かせるんですけど?」

 

「ダ~メ。こういう機会でもないとハヤテくん休まないでしょ」

 

「たまには大人しくする」

 

「くっ……あそこでパーを出していれば……」

 

 車いすに座って不満そうな表情の朽葉ハヤテと、その車椅子を押す満面の笑みの更識楯無、その隣を歩くシャルロット・デュノア、後ろから恨みがましい表情で自身の手をピースにして見つめる更識簪の四人だった。

 

「あれ?ハヤテの兄さんにシャルロットさん、楯無の姐さんと簪さんじゃん」

 

 と、四人の姿を見た奏が言う。他の三人も面識があるようで少し驚いた様子で見ている。

 

「え?奏さんたち、ハヤテさんと知り合いだったんですか?」

 

「まあな」

 

「以前何度か私たちのライブに護衛として来ていたことがあるんだ」

 

「毎回ではないけどね」

 

「こうして施設の中であったのは初めてですけど」

 

 と、響の問いに四人が答える。

 

「やーやー、みんなお久しぶり~。元気してた?」

 

「ど、どうも……」

 

 と、楯無と簪があいさつをする。

 

「楯無君と簪君についてはみんなご存知の通り、楯無君はうちの組織と日本政府との仲介役、簪君はうちの技術部門のメンバーだな」

 

 弦十郎が確認するように言う。九人はすでに知っていたことなので頷くだけだ。

 

「そして、彼らが――」

 

「どもども、座ったまま失礼」

 

 と、ハヤテが口を開く。

 

「そちらの四人はお久しぶり。そっちの五人はこの間ぶり。改めまして僕は君たち国連直属組織、通称S.O.N.G.所属、朽葉ハヤテと」

 

「シャルロット・デュノアです」

 

 と、ハヤテとシャルロットが会釈する。

 

「今日君たちに集まってもらったのは他でもない。正式に彼らについての紹介と――」

 

「そこの五人に見られちゃった〝これ〟のことについてちゃんとした説明に来たんだよ」

 

 と、弦十郎の言葉を引き継ぎながら懐から取り出した赤いリングを見せる。それは響達五人には見覚えのあるものだった。

 

「それって…なんなんだ?」

 

 それの正体を見ていない四人は首をかしげる。

 

「これはとあるISの待機状態だよ。そして、僕は先日これを使ってテロリストたちと戦った。そこにいる五人が証人だよ」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 ハヤテの言葉に四人は驚きの声を上げる。

 

「あ、ありえない!だってISは女性にしか扱えないはずだろ!?」

 

「唯一の例外は今は国連所属となっている織斑一夏と海斗君の亡くなったお兄さん、井口颯太だけのはずだ!」

 

「現在でも定期的に世界中で検査が行われてるけど、いまだ新たな男性操縦者は現れていないはずでしょう!?」

 

「まさか秘密裏に発見されていた三人目!?」

 

「いえ、彼は三人目じゃないわ。あなたたちの認識は間違っていない」

 

 四人の驚きの言葉を首を振って否定する楯無。

 

「で、でも私たちはあの日確かに見たデス!」

 

「ハヤテさんは確かにあの日、そのISを…身に纏っていました……!」

 

 切歌と調が訊く。

 

「も、もしかして、男性でもISを使えるようになる何か技術か薬でも開発されたんですか!?」

 

「いいえ、それも違う」

 

 未来が思いついたように言うがシャルロットが否定する。

 

「じゃ、じゃあ一体どうして……?だって、新技術でもない、三人目の男性操縦者でもないなら、いったいハヤテさんはどうしてISを使えたんですか?」

 

「それはね、彼が使っていたISの正体がわかればおのずと分かると思うよ」

 

「「「「ハヤテさんのIS……?」」」」

 

 響達四人やその場にいなかった他の四人が首を傾げる中ただ一人、クリスだけは鋭い視線でハヤテたちを見ていた。

 

「あれ……?そう言えば私、あのISどこかで見たことがあるデス」

 

「そう言えば、私も……」

 

「え?そうなの?私は……ごめん、覚えがないかも」

 

「私も……」

 

 と、切歌と調が考え込む中響と未来は首をかしげる。

 

「おい、あたしらはそれを見てないんだ。一体どんな見た目だったんだ?」

 

 と、奏が訊く。

 

「えっと……ボディは赤と黒で……」

 

「なんか背中にぶっとくて黄色いアームが二本着いてたデス!」

 

「両肩にはオレンジ色の透明なシールドがついてた…よね」

 

「あと、左腰には赤い鞘に収まった日本刀みたいな剣と右腰には鳥の頭みたいな形の紫色のものがぶら下がってました」

 

 響達四人が思い出しながら説明する。それを聞いた四人はその姿を想像し

 

「ボディは赤と黒で……」

「黄色いくて太いアームが二本……」

 

「両肩にはオレンジ色の透明なシールド……」

 

「左腰の刀と右腰の紫色の鳥の頭みたいな形の装備……」

 

「「「「それって………」」」」

 

 四人が顔を見合わせる。

 

「………『火焔(ほむら)』……」

 

『っ!?』

 

 そんな四人と響達四人に向けてぼそりと呟くようにクリスが言う。その名前に八人が驚きの表情を浮かべる。

 

「あのISの名前は『火焔(ほむら)』……だよな?」

 

 クリスが言いながらハヤテたち四人に鋭い視線を向ける。

 

「あ、ありえないわ!」

 

 と、マリアが叫ぶ。

 

「だ、だって、『火焔(ほむら)』はあの一件以来持ち主だった海斗君のお兄さんの身柄と一緒にその所在が不明だったはず!」

 

「ハハハ……面白いことを言うね、マリア・カデンツァヴナ・イヴ」

 

 と、聞いていたハヤテが笑い声をあげる。

 

「ありえない、なんてことはありえない。見ていない君には信じられないかもしれないが、ここに五人も見たやつがいる。それは覆しようもない事実だよ」

 

「で、でも!」

 

 いまだ納得できていない様子のマリアの様子にハヤテたちは微笑み。

 

「もしも、その所在不明だったIS『火焔』が、本当は見つかっていたとしたら?」

 

「え……?」

 

 楯無のニヤリと笑みを浮かべながら言った言葉にマリアだけでなくクリスや事情を知っているであろう弦十郎と緒川を除く面々も驚きの表情を浮かべる。

 

「そう、彼の使うISは正真正銘そのもの……」

 

「そして彼がISを使えるのは新たに見つかった三人目の男性操縦者だからじゃない」

 

「ましてや新技術で男でもISを使う方法を確立したわけでもない」

 

 簪、楯無、シャルロットが言う。

 

「そう、僕は三人目じゃない……僕は〝二人目〟だ」

 

「二人目…って……」

 

「でも……それって……」

 

 ハヤテの言葉に切歌と調が信じられないという表情で呟く。響達他の面々も同様の表情を浮かべている。

 

「それじゃあ、改めて自己紹介といこう」

 

 そう言ってハヤテはにっこりと微笑み

 

「はじめまして、俺の名前は井口颯太――君たちの友人井口海斗の兄であり、五年前に行方が分からないまま死亡が確定された稀代のテロリストの井口颯太だ」

 




ついに明かされたハヤテくんの正体!
同時になんか一気に新キャラが登場しましたが……ま、まあ気にしない気にしない。



さて、おかげ様で新たな質問をいただきましたので質問コーナー復活です!
というわけで質問にお答えしたちと思います。が……すみません、質問をいただきましたsevenblazespowerさん、私「♯コンパス」というものを知らなかったものでその質問にお答えできそうにないです(-_-;)
申し訳ありません。
というわけでその次にいただいていたGoetia.D08/72さんからの質問
「颯太って以前境ホラで危機を乗りきった事が有りましたよね?それで思ったのですが、颯太の好きな境ホラのヒロインは、誰だぁぁぁぁ!」
ということですが……


颯太「ジャッジ!!俺は本多・正純派だぁぁぁぁぁぁ!!普段の男性然としたかっこいい感じで実は女の子とか!!乙女とか!!さいっっっこうのギャップじゃないですかぁぁぁ!!!アニメで主人公が『この中に貧乳好きの方はいませんか~?』って訊いたとき、全力で画面のこちら側から手を上げてましたぁぁぁぁぁぁ!!!俺はどっかの誰かと違って正純が10歳超えていようがあり!!!むしろドストライク!!!貧乳の子が胸がないことを恥じらってる感じとか最高じゃないですかぁぁぁぁぁ!!!
 あ、誤解してほしくないんですが、俺は貧乳が好きなんじゃなくて、貧乳〝も〟好きなだけですのであしからず」

だ、そうです。
ということで今回の質問はこのあたりで。
Goetia.D08/72さんからはもう一つ質問をいただいていますが、それは全く内容が違いますので次回お答えします。
というわけで今回はこのあたりで
また次回もお楽しみに!

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