IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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前回で200話達成し、次回は番外編かなぁ~なんて考えていましたが
内容的にもう少し後にしたいと思います
そんなわけで本編続きでございます





第201話 二度目の問い

 

「さてさて……今日のお昼は何にするべかな~……」

 

 日曜の昼、僕が警察から釈放されてから約一週間が経った。

 僕がいなかった間に溜まった仕事がかなりあるせいで本来なら休日の今日も出勤である。まあこれは自業自得なので誰にも文句は言えんが……。

 それはさておきずっと朝から座りっぱなしで書類仕事をしていたのでリフレッシュも兼ねて昼食休憩として出てきたわけだが……

 

「何食うか決めずに出てきたからなぁ~……どこにするか……お好み焼き……は、昨日食べたし……まあ『ふらわー』のお好み焼きはうまいから二日連続でもいいけど……」

 

 ブツブツと呟きながら考える僕。

 この周辺は飲食店も豊富で目移りする。僕も行きつけの店が「ふらわー」以外にもある。その中からいろいろ候補を考える。

 

「おい」

 

「カレーとか?……アリだな。久しく『ポレポレ』にも行ってないし……」

 

「おい!」

 

「あ、でも久しく行ってないってなると『クスクシエ』とか『ハカランダ』も行ってないしなぁ~……」

 

「おい!!」

 

「う~ん!悩ましい!」

 

「おい無視すんな!ヒョウモンダコ頭!」

 

「…………?」

 

 ヒョウモンダコ頭って何?気になるな、と、周りを見渡してみるが、周りには僕以外の通行人はいない。

 

「あっ!僕か!」

 

 さっきからなんか誰か呼ばれてるなぁ~なんて思っていたから関係ないと思って無視しちゃってた。

 そう言えば僕の頭白と黒がマダラ模様みたいになってるから縞々のヒョウモンダコっぽくはあるか……。

 と、合点がいったところで僕は慌てて振り返ると、そこには肩を怒らせて睨んでくる白髪の少女が立っており

 

「てめぇ、なんかブツブツ言いながらずっとあたしのこと無視しやがって!」

 

「あぁごめんなさい。関係ないと思って」

 

 少女の言葉に申し訳なく想いながら頭を下げ

 

「あれ?えっと…雪音ちゃん、だっけ?僕に何か用?あっ!シャルロットに用があったのかな?ならシャルロットは今会社に――」

 

「ちっげぇよ!今日はあんたに用があって来たんだよ!」

 

「え?僕?」

 

 ビシッと僕の顔を指さす少女――雪音クリスちゃんに僕は首を傾げる。

 

「アンタにどうしても訊きたいことがあんだよ!」

 

 そこで大きく息を吐いた彼女は興奮した様子から落ち着いたようで

 

「とりあえず、ちょっと面貸せ」

 

「うん。それはいいけど……場所は僕が決めてもいい?僕まだお昼が――」

 

 と、彼女の言葉に頷いた僕は言おうとしたところで

 

 クキュゥゥゥゥゥ~……

 

 どこからともなく可愛らしい音が聞こえる。

 

「……………」

 

「……………」

 

 数秒ほど彼女と僕の間に沈黙が流れる。

 その間僕は音の聞こえた場所と真っ赤になった少女の顔を交互に見て

 

「食べたいものある?」

 

「………任せる」

 

「あいよ」

 

 

 

 〇

 

 

 

「ナ…ス……」

 

「『nascita(ナシタ)』。僕の行きつけの店の一つ」

 

 店の前の看板を見る雪音ちゃんに言いながら僕は先に店の入り口へ歩く。後ろから雪音が慌ててついて来るのをちらりと確認しながら戸を開く。

 

「いらっしゃいませ~♪」

 

「ちわ~」

 

 顔見知りの店員の女の子に挨拶しつつ二人であるのをジェスチャーで示して空いていた角の席に座る。

 

「いらっしゃ~い、ハヤテ!久しぶりじゃ~ん!」

 

 と、雪音ちゃんがメニューを開いたところで、麦わら地のチロリアンハットに黄色い丸サングラスをかけた男がニコニコ顔でやって来る。

 

「ごめんよマスター、最近立て込んでてさ」

 

 この男はこのカフェ「nascita(ナシタ)」のマスター、石動さん。ちなみにカウンターにいる僕が最初に挨拶をした店員の女の子はマスターの娘さんの美空ちゃんだ。

 

「久しぶりなんだしゆっくりしてってよ~!っと、こっちは初めて連れてくる子だね?」

 

 と、そこで僕の向かいに座る少女に視線を向けるマスター。雪音ちゃんは軽くマスターに会釈する。

 

「見たところ結構若い…美空くらい?学生かな?……え?なに?もしかして出会い系?援助交際?おじさんそういうの感心しないぜ~?お前にはそんなもん使わなくてもシャルロットちゃんって言う気立てのいい子が――」

 

「そう言うんじゃないです!ちょっとした知り合いですよ!そういうのいいんで仕事してください!」

 

「じょ~だんだって!まあゆっくりしてってくれよ!」

 

 と、シッシッと手を振って追い払う僕に、にやにやと笑いながらマスターがカウンターに戻っていく。

 

「悪いな、あんなんだけどいい人だから――それで、注文は決まった?」

 

「……まだ」

 

 マスターの言葉に呆然としていた雪音ちゃんはメニューに視線を戻す。

 

「ちなみの僕のオススメはこの『カズミンパスタ』。新鮮な野菜たっぷりでうまいぜ」

 

「じゃあ……それにする」

 

「OK――すみませ~ん!」

 

「は~い」

 

 僕の呼びかけにマスターが伝票片手にやって来る。

 

「カズミンパスタを二つ、お願いします」

 

「あいよ。久々に来てくれたから食後に飲み物サービスしてやるよ。何がいい?」

 

「おっ!ありがとうございます!それじゃあ……雪音ちゃん何がいい?」

 

「えっと……じゃあコーヒーで……」

 

「OK。じゃあコーヒーを二つ……あっ!僕にはnascitaブレンドと彼女には…evolブレンドで」

 

「お?」

 

 僕の注文に一瞬目を見開いたマスターは

 

「あいよ!カズミンパスタ二つにnascitaブレンドとevolブレンドね!了解!すぐ作るから待っててねぇ~」

 

 ニヤリと笑って伝票に書き込むとカウンターに戻っていく。

 

「ナシタブレンドとエボルブレンド……?」

 

「あぁ、聞いたことなくて当然だよ。ここのマスター、コーヒーを豆から栽培して独自ブレンドしてるんだ」

 

「へぇ~」

 

「まあ楽しみにしてな。驚くぜ~きっと」

 

 など、あとはパスタが運ばれてくるまでは取り留めのない会話――いや、会話ともいえないかもしれない。僕が振った世間話に彼女がテキトーに返事する。彼女も本題は食後にするつもりなのか彼女の方から何か話を振ってくることはない。

 そのまま十分ほどで注文していたカズミンパスタが運ばれてきたのでそれぞれ食べる。

 予想以上においしかったのか一瞬彼女は目を見開き、おいしそうに食べていた。

 そしてお互いに食べ終わり、皿を片付けてもらったところで

 

「は~い、お・ま・ち・ど~!ご注文のコーヒーだぜ~」

 

 マスターがコーヒーを運んでくる。

 

「ほい、こっちがnascitaブレンドな~」

 

「ありがとうございま~す」

 

 マスターがお盆の上のコーヒーカップを一つ僕の前に置く。

 

「んで、こっちが――はい、evolブレンドね~」

 

「ど、ども……」

 

 と、マスターが雪音ちゃんの前にカップを置く。

 

「…………」

 

「…………」

 

「ほれほれ、飲んでみ。きっと驚くぜ~」

 

 なかなかカップに手を付けない彼女にマスターが笑顔で勧め、僕も笑顔で言う。

 

「じゃ、じゃあ……」

 

 言いながら雪音ちゃんがカップを取り、口を運び口を付け

 

「ぶふぅ~~~!?まっず!?」

 

 盛大に吹き出した。

 

「「あぁ~駄目だったか~」」

 

 その様子に僕とマスターは声を揃えてため息をつく。

 

「んだよこれ!?クッソ不味いぞ!!」

 

「そうなんだよ。びっくりするほど不味いんだよ」

 

「最初の頃に作ったブレンドなんだけど、これがホント不味くてなぁ~」

 

「んなもん飲ませてんじゃねぇよ!!」

 

 僕とマスターの言葉に雪音さんが叫ぶ。

 

「まあまあ。この店に来た以上はこれ飲んどかないと」

 

「知るか!!こんなもん客に出してんじゃねぇよ!!」

 

「まあまあ。nascitaブレンドはちゃんと美味しいから。美空~」

 

「はいはい」

 

 叫ぶ彼女をなだめながらマスターの呼びかけでカウンターから美空ちゃんが別のコーヒーを運んでくる。

 

「ほい。こっちはちゃんと美味しいから」

 

「だったらこっちだけでいいだろ!」

 

「怖いもの見たさにいまだに注文する奴いるんだよ。大抵初めて連れて来たような友達とかに飲ませる目的で」

 

「罰ゲーム扱いじゃねぇか!」

 

「まあまあ。ほれ、飲んでみ」

 

 言いながら美空ちゃんが持ってきたコーヒーを勧めるマスター。

 雪音ちゃんは疑わしそうな顔で僕とマスターを見て、最後に見た美空ちゃんの笑顔に後押しされたのかゆっくりとカップを口に運び、恐る恐る口を付け

 

「うまっ!?」

 

「「だろ~?」」

 

 思わず口を突いて出た彼女の言葉に僕とマスターが声を揃えて言う。

 

「最初の失敗から試行錯誤重ねていろいろ拘ったんだよ!豆から栽培したりして――」

 

「ほら、お父さん!し!ご!と!」

 

「あぁちょっ美空~!」

 

 長いウンチクが始まろうとしたところでマスターが美空ちゃんに引っ張られていのを微笑ましく思いながら見送り、僕もコーヒーに口を付けた。

 

 

 ○

 

 

 

「………それで」

 

 少しの間コーヒーを味わい、ハヤテは佇まいを正し、目の前の少女を見る。

 

「僕に訊きたいことがあるんだっけ?」

 

「……………」

 

 ハヤテの問いにクリスは一口コーヒーを飲みカップを置くと、大きく深呼吸をし

 

「あんたに初めて会ったとき、あたしはなんか初対面な気がしなかった。だから訊いたよな?『どこかで会ってないか?』って」

 

「そうだね。でも残念ながら――」

 

「ああ、あんたは否定した。初対面だってな」

 

「実際そうだしね」

 

 クリスの言葉にハヤテは肩をすくめて微笑む。

 

「でも、あんたあたしの名前を聞いた時言ったよな?アレはどういう意味なんだ?」

 

「………どれのことだい?」

 

「とぼけるんじゃねぇ」

 

 クリスの問いに訊き返すと鋭い視線で睨まれる。

 

「あんたはあの時、あたしの名前を聞いて確かに言った――『ぎゃふん』ってな」

 

「……………」

 

 クリスの言葉にハヤテは黙る。

 

「あたしには昔、どうしても見返してやりたいやつがいた」

 

 何も言わないハヤテをよそにクリスが口を開く。

 

「そいつはあたしのことをさんざんバカにした。子ども体型だとかフラットチェストとか涙が出るほどなだらかだとか……だからいつかそいつ『ぎゃふん』って言わせるほど成長してやるって思ってたし、そう言ってやった……」

 

「……………」

 

「もう一度訊く」

 

 何も言わないハヤテをジッと睨みクリスは再度問いかける。

 

「朽葉ハヤテ……あんた、あたしと前にどっかで会ったことないか?」

 




どっかで見たことあるカフェが出てきましたが……どこで見たんですかねぇ~(すっとぼけ)



さて、今回の質問は前回に引き続きGoetia.D08/72さんからいただいた質問二つ目でございます!
「完全な一般人枠で、北海道の一件の真相や颯太の真意に迫っている人って居たりしますか?人の口に戸は建てられないって言いますし……」
とのことですが


実際のところ納得してなくていろいろ調べてる人たちはいます。
ただ国連や各国政府などが圧力をかけているので真実に辿り着けている人はいません。
ただ都市伝説レベルで颯太の真意が噂されていたりはします。
Goetia.D08/72さんもおっしゃる通り人の口に戸は建てられませんから……
それでも真実が表に出ることは無いでしょう。
なにより、それは颯太の本意ではないでしょうし……



さて今回はこの辺で!
また次回をお楽しみに!

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