IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

180 / 309
どうも、そろそろこの小説に「多重クロス」タグが必要かな、なんて思っている私です。
まあ加えるかどうかは検討するとして、最新話どうぞ!






第156話 彼と僕らの関係

 リビングに降りた僕らは手伝いを申し出たが春人さんにやんわりと断られ、リビングの食卓に座る。

 席は長方形の机に僕と簪が並んで座り向かいには翔子さんと春人さん。僕と翔子さん側の所謂お誕生日席にクリスちゃんが座る形だ。

 数分後には四人分の紅茶と一杯のココア、それと僕らが持ってきたホールのシフォンケーキと生クリームを運んでくる。

 ココアをクリスちゃんの前に置き、僕らの前には紅茶の注がれたカップを置き、シフォンケーキを切り分けてくれる。

 

「お待たせ。それじゃあいただこうか」

 

「「「いただきます」」」

 

「……いただきます」

 

 手を合わせて僕らは言い、クリスちゃんも真似するように一拍遅れて言う。

 

「はい、クリスちゃんのは生クリームたっぷりにしておいたよ」

 

「……ありがとう」

 

 小さく、しかしちゃんとお礼を言ったクリスちゃんはシフォンケーキをフォークで一口サイズに切って生クリームをたっぷりのせて頬張る。

 

「っ!」

 

 瞬間クリスちゃんが大きく目を見開き、心持先ほどよりもフォークを早く動かしてシフォンケーキを食べ始める。どうやら気に入ったようだ。

 

「急がなくてもケーキはなくならないよ?」

 

 春人さんが笑いながら言うがクリスちゃんはフォークを止めない。一心不乱に食べるので、口の周りにクリームやココアがつく。

 

「ほらほら、もっとゆっくり食べなよ」

 

 その様子に僕は笑いながら机の上の箱からティッシュを数枚抜き取ってクリスちゃんの口の周りを拭く。

 

「……………」

 

「あ、ごめんね。嫌だったかな?」

 

「……別に」

 

 口の周りを拭く僕にクリスちゃんがじっと見てくるので恐る恐る訊くと、クリスちゃんはぼそりと呟くように言ってケーキを食べることに戻る。僕らが三分の一食べるころには全部食べきってしまっていた。

 

「……ごちそうさま」

 

「きれいに食べたね。ココアのおかわりはいる?」

 

「……もらう」

 

「うん、ちょっと待ってね」

 

 頷いたクリスちゃんに春人はカップを受け取ってキッチンの方に向かう。

 

「………なぁ」

 

「ん?どうかした?」

 

「何、かな……?」

 

 キッチンに向かった春人さんを目で追いながら視線を戻したクリスちゃんが僕らに向けて口を開く。

 

「……IS学園のシャルロットと簪、なんだよな?」

 

「うん」

 

「そうだけど……」

 

「ってことは……アンタら、井口颯太の知り合い?」

 

「「っ!?」」

 

 クリスちゃんの口から思わぬ名前に僕らは息を呑む。

 

「ど、どうして……?」

 

「訊いてるのはこっちだ。アンタら井口颯太とどういう関係だ?」

 

「そ、それは……」

 

 動揺する僕らにクリスちゃんは訊く。

 

「どういう関係って言われても……一言で言えば仲間、かな」

 

「そうだね、それが一番しっくりくるかな」

 

「仲間……」

 

「うん。それに加えて僕にとっては僕に居場所をくれた大事な人」

 

「私は、ヒーロー……かな」

 

「…………」

 

 私たちの言葉にクリスちゃんは黙って聞いている。

 

「アンタらはそう思ってるけど……その井口颯太本人はどう思ってたんだろうな?」

 

「「え……?」」

 

「だってそうだろ?ちょっと聞いたけど、あの男は何も言わずに消えたんだろ?つまりアイツは誰にも相談せず、誰にも助けを求めずに消えたわけだ。アイツにとってアンタらは何だったんだろうな……?」

 

「「それは……」」

 

 クリスちゃんは鼻で笑うように笑いながら言い、その言葉に僕らは口籠る。

 そのことはなんとなく僕ら自身が感じていたことだ。颯太にとって僕らは何だったのだろうか、颯太はなぜ僕らには何の相談もしてくれなかったのだろうか、と……。

 

「コ~ラッ!」

 

「あてっ!?」

 

 と、クリスちゃんのおでこに翔子さんがデコピンをする。

 

「まったく……今日会ったばかりでそんなこと言っちゃダメでしょ!まあ仲良くなってから言うのもどうかと思うけど……そんなんじゃお友達できないわよ!」

 

「べ、別に友達なんて……」

 

「友達いるいらない以前にその言い方はダメなの!はい!二人にちゃんと謝る!」

 

「なんでアタシが――」

 

「いいから!」

 

「…………ご、ごめんなさい」

 

「う、うん……」

 

「別にそんな気にしてないから、大丈夫だよ」

 

 翔子さんの剣幕に渋々と言った様子で頭を下げるクリスちゃんに僕らは頷く。

 

「アハハハ……ごめんね二人とも」

 

 と、春人さんが苦笑い気味に戻って来る。

 

「クリスちゃん、君も学校に行くようになったらそんなんじゃ困るよ?」

 

「別にアタシは……」

 

「ん~?」

 

「………もう少し気を付ける」

 

 春人さんの言葉にカップを受け取りながら答えるクリスちゃんだったが、翔子さんに厚のある笑顔で見られ、そっぽを見ながらチビチビとココアを飲む。

 その様子に僕と簪は微笑ましくて笑う。なんだか三人の様子は本当の家族のように見えた。

 

「……で、クリスちゃんは、その…どうして颯太のことを……?もしかして颯太のことを何か知って……?」

 

 と、気を取り直して簪が訊く。

 僕も気になるのでクリスちゃんを見る。

 

「………別に、ただの興味本位だよ」

 

「でも……」

 

「アタシは井口颯太とは無関係の赤の他人だ」

 

 もう少し訊こうとしたが有無を言わせぬ様子で言うクリスちゃんに僕らはそれ以上訊くことができなかった。

 

「……それじゃあ、ごちそうさま」

 

 と、クリスちゃんはココアを飲み干し席を立つ。

 

「……なあ」

 

 そのままどこかに行くのかと思ったら、ドアの前で立ち止まって僕らの方に振り返る。

 

「その……ケーキ美味しかった」

 

「うん。また買ってくるよ」

 

「ああ……」

 

 頷いたクリスちゃんはリビングを後にする。

 

「ごめんね。あんな感じで口は悪いけど、嫌わないであげてね」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 春人さんが申し訳なさそうに言うが、僕らも笑顔で頷く。

 

「あの、クリスちゃんは…その……」

 

「アキラさんからお願いされて、引き取ったんですよね?」

 

「ええ、そうね」

 

「アキラさんに保護されるまでに颯太に会ったことがある…とか」

 

「……さあ、何も聞いてないかな」

 

「そう…ですか……」

 

 僕の言葉に春人さんは首を振る。

 

「その…もしかしたらアキラちゃんに保護されたときに、何か颯太君の話でもしたのかもね。僕らも少し聞かれたし」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。興味本位って言うのも本当なのかもね」

 

「そうですか……」

 

 春人さんと翔子さんの言葉に僕らは頷く。

 

「まああんな感じだけど、根はいい子だから、温かい目で見守ってあげて。心開いてくれたらもう少しとっつきやすくなると思うから」

 

「「はい」」

 

 翔子さんの言葉に僕らは頷く。

 

「クリスちゃんはまだ学校には?」

 

「うん。あんな様子だからね、もう少し様子見ようと思って。一応今年から中学校に通う年齢ではあるんだけどね」

 

「学校に行ってない分勉強はさせてるのよ?通うようになってから困らないようにね」

 

「そうなんですか……」

 

「……そっちはどう?IS学園の生活は、新学期になったけどうまくやってる?」

 

「ええ。生徒会もうまくやってますし、僕らも風紀部としてやってます」

 

「新しい部署もできて、しかもいきなりそれを任されるんだから大変だよね」

 

「ええ。でも、やりがいがありますし、颯太が守ろうとした学園ですから……お姉ちゃんもいないし……」

 

「そっか……頑張ってね」

 

「「はい!」」

 

 翔子さんの言葉に僕らは力強く頷く。

 そこからは取り留めのない話題を話しながらおやつを楽しんだ。のだが――

 

「「~~~」」

 

 僕と簪のISが同時にプライベートチャネルの着信を告げる。

 

「はい!こちらシャルロット・デュノア!」「はい!こちら更識簪です……!」

 

 僕らは同時に通信を繋ぐ。

 

『こちらIS学園の山田です!休日にすみません!』

 

「いえ、大丈夫です」

 

「それで、何かあったんですか?」

 

 通信の向こうから聞こえて来た山田先生の慌てた様子の声に僕らは訊く。

 

『緊急事態です!やつらが、『亡国機業』また動きを見せました!』

 

「「っ!」」

 

 山田先生の言葉に僕らは息を呑む。

 

「と、言うことは……」

 

『はい!〝例のサイト〟にも動きが!今お二人の携帯にURLを送ったのですぐに確認してください!どうやら三時半から始まるようです!』

 

 山田先生の言葉に僕らは壁に掛けられている時計に視線を向ける。今の時刻は15時27分。あと三分で半だ。

 

「っ!」

 

 僕は急いで携帯を取り出し、確認する。山田先生からメールが届いていた。

 

「どうかしたの?」

 

 急に通信を始めた僕らに翔子さんが訊く。春人さんも困惑した様子で見ている。

 

「やつらが…『亡国機業』が、また……!」

 

「っ!ってことは……」

 

「はい!〝アレ〟が三時半からあるみたいで……!」

 

「じゃあこっち!携帯を繋げばこのテレビで見れるから!」

 

 春人さんに言われ僕はリビングに置かれたテレビに携帯を通信で繋ぐ。

 テレビの画面には僕の携帯の画面がそのまま映る。

 僕はそのまま携帯を操作し、山田先生から送られてきたURLに飛ぶ。

 すると画面が切り替わるが、まだ時間になってないためか、ポップな字体で「15時30分から生放送!お楽しみに!」という文字が浮かんでいるのみだ。

 時計を確認するとあと数秒で三時半だ。

 息を呑みながら画面に注目すると突如、ノイズが走り、画面が切り替わる。そのまま画面が切り替わり「Y♡Mチャンネル」と言うロゴが浮かぶ。

 直後ポップな音楽とともに画面が切り替わり、一人の人物が映し出される。

 その人物は和服と洋服を合わせたような不思議な服装をしていた。白いフリルのついたシャツのような、しかし襟の部分は和服のようになっている。下は紫色の袴のようなミニスカート。

足には膝下あたりまである真っ白なニーソックスに黒い下駄。手には指の出ている手袋をつけている。

 そんな服の上からピンク地に紫の模様の描かれた着物のようなものを羽織り、その着物についているフードを被っている。

 フードから垂れる髪は黒く、膝のあたりまである長い髪。

 顔には白いキツネのお面をかぶっているのでわからないが、白いシャツを押し上げるふくよかな胸など体系からして女性だと思われる。

 流れているポップな音楽が徐々に音量が下がる。と、同時に女性の朗らかな声が響く。

 

『やぁやぁみなさんこんにちは~!老若男女、紳士淑女の皆さんお待ちかね!『Y♡Mチャンネル!』の時間だ よ~!

 お相手はわたし!皆さんお馴染みの『亡国機業』のボス、〝安木里マユ(やすきさとまゆ)〟がお送りしま~す!イエ~イ!』

 




新たに登場した謎の人物、『安木里マユ』の服装ですが、僕の描写じゃわかりづらいと思うのでぶっちゃけます。
FGOの刑部姫です!第一再臨です!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。