IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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立てぇぇぇぇ!!
立つんだ颯太ぁぁぁぁぁ!!!

颯太「丹下段平かよ」






第133話 颯太の見てない井口颯太

「………なんで……」

 

 俺は師匠の言葉に数秒ほど考えた後、口を開く。

 

「……なんでそのことを俺に言うんですか?」

 

「ん~?そうね~……」

 

 師匠は少し考え込む素振りを見せて

 

「知ってほしかったのよ。自己評価の低い颯太君に、颯太君の見ていない颯太君自身の事を」

「俺の見てない俺?」

 

「颯太君って、他人の好意には気付けても、自分に向いてる好意に鈍感じゃない?」

 

「藪から棒になんですか?」

 

 師匠の言葉に俺は首を傾げる。

 

「……その顔は『俺、どちらかと言うと察しはいい方なのに』とか考えてるでしょ?」

 

「やっぱり師匠、エスパーでしょ?」

 

「颯太君が分かりやすすぎなの――それはさておき、察しのいい人ならシャルロットちゃんや他三人の好意に気付いてもいいんじゃないの?」

 

「……ごめんなさい俺鈍感でした」

 

 俺は師匠の言葉に小さくなりながら言う。

 でしょ?とでも言いたげな様子で師匠がふふんと笑う。

 

「でもまあ、普段の颯太君がそれなりに、と言うか人並み以上に察しがいいのは認めるわ。洞察力もある」

 

 と、肩をすくめながら師匠が言う。

 

「じゃあなんでそんな颯太君が自分のことに対しては察しが悪くなるのか。……颯太君って自分への評価が低いせいで普段の洞察力が自分に対しての事には発揮されないのよ」

 

 やれやれ、と言った様子で師匠が言う。

 

「颯太君ってさ、いつも自分のことを平凡だ、凡人だ、一般人に毛の生えた程度、って言うじゃない?そのせいで、颯太君は自分に向いた好意に対して『平凡で何の魅力のない自分に好意を向けられているわけがない。危ない危ない、勘違いするところだった』って、意識的にか、無意識的にか、そこで思考を止めてるのよ」

 

「……………」

 

 師匠の言葉に俺は口籠る。

 それは、少なからず思い当たる節があったからだ。

 

「つまり、颯太君は自分のことに鈍感なんじゃない。その可能性に自分が行きつく前にその答えを自分で潰しているのよ」

 

「……………」

 

 俺は師匠の言葉を黙って聞いていた。

 何も言い返せなかった。

 少なくとも『平凡で何の魅力のない自分に好意を向けられているわけがない。危ない危ない、勘違いするところだった』と、考えたことは一度や二度じゃない。

 

「それで……そのことがシャルロット以外にも俺に好意を寄せてくれている人がいるって話に、どう繋がるんですか?」

 

「言ったでしょ?颯太君に颯太君の見ていない颯太君自身の事を知ってほしいって」

 

 師匠の言葉の意図がわからず考え込む俺に、師匠が紅茶に口を付けながら笑う。

 

「颯太君は自分に魅力がないって言うけど、颯太君を好きな人が四人もいる。それってつまり、颯太君自身の気付いていない颯太君を見てるってことじゃない?」

 

「でも……俺は……」

 

「昔颯太君に何があったのか知らない。なんで颯太君がそこまで自分への評価が低いのか知らない。――でもね、それで自分の魅力を自分で否定したら、君のその魅力に惹かれてた女の子たちまで否定することになると、私は思うわよ?」

 

「……………」

 

 師匠の言葉に俺はゆっくりと目を瞑り、大きく息を吐く。

 やけに渇いて張り付くのどを潤そうとカップに手を伸ばすが、いつの間にか飲み干していたためにコーヒーはなく、カップは空になっていた。

 初めに出されていたお冷でのどを潤し、ゆっくりと顔を上げて師匠の顔を見る。

 

「………じゃあ、俺は誇っていいんですか?シャルロットに好きになってもらえたことを。師匠が言うあと三人に好きになってもらえた自分のことを」

 

 俺の問いに師匠は

 

「……………」

 

 ただ黙って、ニッコリと笑みを浮かべて頷いてくれた。

 

 

 〇

 

 

 

「それで?颯太君はこれからどうするの?」

 

 喫茶店を出た師匠は振り向きながら訊く。

 

「どう、と言うのは……」

 

「シャルロットちゃんのこと」

 

「あぁ……」

 

 俺は頬をポリポリと掻いて師匠に視線を向ける。

 

「一応折り合いは付けますよ。少なくともここ一週間みたいによそよそしくならないようには気を付けます」

 

「できるの~?ヘタレの颯太君に~?」

 

「ヘ、ヘタレちゃう――!」

 

「んん~?」

 

「いえヘタレですすみません」

 

 師匠の面白がるような笑みに俺は降参のポーズでため息をつく。

 

「とりあえず、今はそういう悩みは一旦脇に置いておいて、私とのデートを楽しみましょう?」

 

「……うっす」

 

 師匠の言葉に頷く。と――

 

「じゃあ……えいっ!」

 

 一瞬で俺の右脇に移動し、俺の右腕に抱き着く様に手をからめる。

 

「あの、くっつきすぎでは?」

 

「あら、いいじゃない。デートなんだし、エスコートしてよ」

 

「はぁ……」

 

 師匠の物言いに、きっと何を言っても無駄なのだろうと悟り、ため息をつきながら身を任せる。

 まあぶっちゃけ肘に当たる柔らかな感触は役得であり――

 

「あ、ちなみにあえて当ててるのよ?」

 

「やっぱり師匠俺の心読んでるでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして俺と師匠のデートは再開した。

 そう言えば、よく考えれば俺ってちゃんと〝デート〟と明言した女性とのお出かけはこれが初めてだったかもしれない。

 と言うか初めてだった。

 こうして俺の人生初のデートの相手は師匠となった。

 




楯無さんの言葉に何かを見出した颯太君。
この一件が今後の颯太君にどれほどの影響を与えるのか……



さて、第十四回質問コーナー!
今回の質問はフラっぴーさんからいただきました!
「楯無さん、簪さん、シャルロットに質問です。颯太君に勧められたアニメ、またはゲームの中で一番好きなものは何ですか?あと、好きになった理由も教えてください!」
とのことですが

楯無「私は『空の境界』かしらね。ストーリーも深いし登場人物も魅力的なキャラばっかりで面白かったわ」

簪「『SteinsGate』。伏線の張り方とかが最高に面白かった」

シャルロット「『CLANNAD』かな。面白くてAfterまで一気に見ちゃったよ。友情と家族愛がすごく深くて登場人物たちみんながお互いがお互いを思い合ってる感じがすごくよかったよ」

楯無「あとはやっぱり颯太君一押しの『AngelBeats!』かしらね」

簪「わかる」

シャルロット「登場人物一人ひとりの抱えてるものとかそこからくる葛藤がよかったですよね」

だそうです!フラっぴーさん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!
ちなみにあと少しでお気に入り件数が3300件なんでもしかしたら次回は番外編になるかもです。

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