「あ、ほら見て颯太君!この服可愛い~」
「そうですね」
「このワンピース、白と紺があるのね……どっちがいいかしら……」
「そうですね」
「あ、この紺色のワンピースならこっちのシュシュと合わせて……颯太君どう思う?」
「そうですね」
「颯太君?」
「そうですね」
「………960年から1279年の趙匡胤が五代最後の後周から禅譲を受けて建国した中国の王朝の一つは?」
「そうですね」
「仏教に帰依して修行する四人以上の集団から転じて個人のことで、広く宗教教団の聖職者にも言うのは?」
「そうですね」
「マーベル社の発行したコミックに登場するハンマーを使う、北欧神話での同名の神トールをベースとしているスーパーヒーローの名前は?」
「そーですね」
「あなたの師匠である私って、ぶっちゃけIS学園でも1,2を争うできる女よね?」
「そうですか?」
「あ、ちゃんと聞いてたのね。――ってそこは肯定してくれないのね!?」
「だって師匠よく仕事サボるから」
「ウッ――って、それは置いておいて……さっきから反応鈍かったけど、いったい何だって言うの?」
「いや……だって……」
ブスッと頬を膨らませる師匠の言葉に言い淀みながら周りを見渡す。
――ここは指波コーポレーション近くのレゾナンスと同じ系列の大型ショッピングモール。その中の洋服、それも女性服のエリアにいる。
と、いうのも、会社にいきなり現れて「デート行きましょ」などと言った師匠に連れられ、今俺はこうして師匠に連れ回されている。
会議室を出るときの春人さん達の目と言えば、またか、とでも言いたげだった。特にアキラさんの目が怖かった。まるで捻り潰さんばかりの目だった。
「……なんで俺こうして師匠と買い物してるのかな、と」
「ちょっと、颯太君!」
「はい?」
俺の言葉に師匠がギロリと俺を睨む。
「これはただの買い物じゃないの!デートなのよ!デート!」
「あぁ……そうですか」
「何よ?こんな美少女とデートしてて何が不満?」
「いや、師匠とのデート自体は不満は無いです。むしろ大歓迎です」
「そ、そう……」
俺の言葉にまんざらでもない様子で顔を少しそむけて髪をいじっている。
「ただねぇ~……今の俺はそれどころじゃないって言うか……」
「それって――シャルロットちゃんの颯太君への気持ちについて?」
「っ!?」
師匠の言葉に俺はドキリとして師匠の顔を見る。
師匠はニッコリと笑い、口元に扇子をあてる。
「とりあえず、喫茶店でも行ってゆっくり話しましょうか」
〇
「それで、話の続きだけど」
ショッピングセンター内の喫茶店の一つに入り、注文した紅茶を飲みながら師匠が口を開く。
「颯太君、知っちゃったんでしょ?シャルロットちゃんの気持ち」
「……ナンノコトデスカ?」
「手が震えすぎてコーヒーこぼれてるわよ?」
師匠の言葉に俺は冷静に答えつつコーヒーに口を付けるが、手が震えすぎて口に運ぶはしからカタカタと音を立てて揺れてその飛沫を飛ばしている。
「ごまかさなくてもいいわよ。もう裏は取ってあるから」
「……どこから?」
「そりゃ、一夏君をごうも――事情聴取して聞き出したのよ」
「今〝拷問〟って言いかけましたよね?」
「気のせいじゃない?――で、事の始まりはみんなで颯太君がシャルロットちゃんに対してよそよそしいって話してて」
「いや、ちょっと待って!みんなって誰と誰!?まさかシャルロットも……」
「そりゃいたわよ。むしろ私たちはシャルロットちゃんに相談されて話してたんだから」
「その言葉から察するに……」
「そうね。私以外には一年生の専用機持ちの女の子たちが揃って女子会してたわね」
「やっぱりか~!!!」
俺は頭を抱えながら机に突っ伏す。
「で、シャルロットちゃんに相談されてたんだけど、途中でシャルロットちゃんが体調不良で部屋に戻っちゃってね」
「え?シャルロットは大丈夫なんですか?」
「他人事ね。颯太君のせいなのに」
「へ?俺?」
師匠の言葉に俺は首を傾げる。
「颯太君が最近シャルロットちゃんによそよそしいせいで、あの子、颯太君に嫌われたんじゃないかって気にして、最近あんまりよく眠れてなかったみたいよ」
「あぁ……」
俺は納得すると同時に少し申し訳なくなる。
俺が自分のことばかり考えてひとり悩みこんでたせいで、シャルロットに迷惑かけてしまっているとは。
「……まあ話を戻すと、シャルロットちゃんが部屋に帰ってからみんなで話してた結果、一夏君が一枚噛んでるって結論に至ってね」
「一枚噛んでるって……いや、あながち間違ってないのか……」
「まあそこにたまたま通りかかった一夏君を確保して、みんなでいろいろ根掘り葉掘り聞きだしてね」
「つまりシャルロット以外の女子メンバーには俺が何に悩んでるか筒抜けになってしまったわけですか……」
俺はため息をつきながらコーヒーに口を付ける。
ある程度落ち着いたおかげで今度はそれほど手が震えることはなかった。
「ところで、前から気になってたんですが、『根掘り葉掘り』の『根掘り』ってのは、わかる…スゲーよくわかるんです。根っこは土の中に埋まってんすから。でも、『葉掘り』って部分はどうなんですかね?葉は掘れないじゃないですか?葉っぱ掘ったら、裏側へ破れちゃいますよね?」
「話逸らそうとしてるのかもしれないけど、逃がさないわよ?」
「……ダメかぁ」
俺はため息をつきながら師匠に視線を向ける。
「で?颯太君の心境としては、今まで何の気なしに言ってたシャルロットちゃんへの言動が口説き文句みたいで、今更恥ずかしくなった、と」
「ウグッ……まあ、それもありますが――」
「こんな正規のルートで知るんじゃなく、ずるしてシャルロットちゃんの気持ちを知っちゃって、シャルロットちゃんに申し訳ない。でも、それで何か自分から言うと告白されたわけでもないのにおかしいって言うのもある――ってところかしらね」
「なんでそこまで見透かしてんですか!?」
エスパーかこの人!?
「エスパーじゃないわよ」
「エスパーじゃないですか!?心読んでるじゃないですか!?」
「さっき口に出してたわよ」
「なんと!?」
無意識に口を突いて出ているとは。
「まあ超能力はさておき、颯太君ならそんな感じで悩んでそうって思って言ってみたんだけど、まさかそこまであってるとは」
「まさかのカマかけられてただけとは!?嵌められた!」
「いつもの颯太君なら引っかからなかっただろうに……これは相当悩んでるみたいね」
笑いながら紅茶を啜る師匠。
「それで?颯太君はどうするつもりなの?」
「……正直よくわかりません。俺はどうしたいんでしょうね」
俺は自嘲気味に笑いながら言う。
「俺だって、健全な男子高校生ですからね。前から言ってますけど、彼女作ってイチャイチャしたいとは思ってました。でも、いざこうして自分に向けられている好意に気付いて、しかもその相手が身近にいて、ってなると……」
「どうしていいかわからない、と」
「まあ……端的に言えば」
師匠の言葉に頷きながらコーヒーを飲む。
「そんな颯太君に朗報で~す」
「はい?」
俺は師匠の言葉に首を傾げる。
「んふふ~、あのね~?」
「……なんとなく師匠がその笑顔の時にはろくなことじゃない気がしますけど聞きましょう」
俺は言いながらコーヒーに口を付け
「私の知る限り、シャルロットちゃんを除いても、颯太君に好意を――あ、もちろん異性としてね――好意を寄せてる女の子があと、少なく見積もっても二人……いや、三人はいるわよ。しかも全員結構颯太君の身近に」
「ンブッ!?」
師匠の本日二撃目の爆撃に俺の心はもはや焼け野原だった。
二撃目の爆弾でもはや颯太君は瀕死!
追い打ちをかける楯無さんの真意やいかに!?
さて、第十三回質問コーナー!
今回の質問はハルカさんからいただきました!
「颯太さんに質問です。最近みているアニメは何ですか?」
とのことですが
颯太「最近新アニメ始まったよね。一個前のシーズンなら賭ケグルイとかプリンセス・プリンシパルとかナイツ&マジックとかかな。今季ならうまるちゃんと鬼灯の冷徹の二期、キノの旅と十二大戦は期待して見てるかな」
ほうほう。
颯太「あ、ちなみにテレビとか関係なく最近マクロスΔを一気見しました」
だそうです!ハルカさん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!