『颯太!お姉ちゃん!大変!』
簪の通信が来たのは、捕らえた襲撃者チームのリーダー格の男にごうm――〝質問〟をしている時だった。
「どうしたの、簪ちゃん?」
「いったい何があった?」
俺はいったん男の耳に入れようとしていたムカデを虫かごに戻す。
『な、何か問題が起きたの!コントロールを奪還しようと、電脳世界に行ったシャルロットたちが、何か攻撃を受けたみたい!このままじゃ目が覚めないかも!』
「なっ!?」
簪の言葉に俺は驚愕の声を漏らし、師匠も顔に緊張を滲ませる。
『解決するためには誰かが入らないといけないけど、私は動くわけにはいかないし……颯太かお姉ちゃん!どちらかこっちに来れない!?』
切羽詰まっているようで簪の声に焦りを感じる。
「そ、そうは言っても、こっちも今襲撃者を捕まえたばかりで、これで終わるかわからないし……」
「襲撃者の侵入を防ぐために俺たちが動くわけにはいかないし……」
俺と師匠は顔を見合わせて言う。師匠の顔には苦悶の表情が浮かび、おそらく俺も同じような顔をしていることだろう。
「いったいどうすれば……」
考え込む俺たちの思考を遮ったのは
『侵入者アリ。侵入者アリ』
侵入者の存在を告げる師匠の携帯のぴーっ、ぴーっという警報だった。
「噂をすれば!簪!悪いが追加の襲撃者が――」
「っ!待って!」
俺が簪に手伝いに行けないと言おうとしたところで、師匠が携帯の画面を見ながら遮る。
「これ……スピード速くてよく見えないけど、この反応、襲撃者じゃないわ!」
「じゃ、じゃあ誰が!?」
「一夏君よ!」
「一夏!?」
師匠の言葉に俺は驚きの声をあげる。
一夏は今日はISを修理しに倉持に行っていて夕方までは帰って来れないはずだった。例え早く終わっていても、それでもまだまだ早い。
「このスピードならそろそろ来るはずよ」
師匠の言葉に視線を通路の先に向けると、通路の向こうに何かの影が見え始める。
耳を澄ませるとスラスターをふかしているような音もかすかに聞こえてくる。
そして――
「あっ!颯太!楯無さん!」
俺たちの目の前で一夏が急ブレーキをかける。
「いったいこれは!?学園に何が起きてるんですか!?」
「説明してる暇はない!」
「一夏君!すぐにここに行って!」
師匠は言いながら一夏に位置情報を送る。
「これは?ここに一体何が?」
「いいから行け!箒たちがやばいんだよ!」
「なっ!?」
「私たちは今ここを動くわけにはいかないの!今彼女たちを救えるのは君しかいないの!」
俺たちの言葉に驚きの声をあげる一夏。
「詳しくは簪に訊け!その場にいるし簪の方が詳しく知ってるはずだ!」
「わ、わかった!」
一夏は頷くと、再び瞬時加速で師匠の送った座標に向かって行った。
「簪!タイミングよく一夏が帰ってきた!五人の救出は一夏に任せろ!」
『織斑君が!?わ、わかった!』
俺の通信に簪が驚くが、切り替えて答える。
「さて、箒たちは一夏に任せるしかない……俺たちは引き出せるだけ情報を引き出しておきますか」
「ええ」
師匠は俺の言葉に頷き縛って地面に座らせている男に向き直――ろうとしたところで
『侵入者アリ。侵入者アリ』
師匠の携帯が再びぴーっ、ぴーっと警報を鳴らす。
「っ!?」
「今度こそ侵入者よ!でも……何この機体……?」
師匠が携帯の画面を見ながら声を漏らす。
「え?それってどういう――」
「来るわ!備えて!!」
「っ!」
師匠の言葉に俺は瞬時に『火焔』を纏い、通路の先に視線を向ける。と――
「あれは……戦闘機っ?」
それは戦闘機のようなフォルムをした機体だった。
大きさは人間ほどの大きさ。白と青を基調としたボディに両翼の下には機首のあたりまで長く伸びた対になったパーツ。
戦闘機としても見たことのない機体だった。
「し、師匠!なんですかあれ!?」
「わからない!ここに来たってことはただの戦闘機ってことはないと思うけど……!」
師匠も困惑気味に答える。
「とりあえず先手必勝!師匠も限定的でいいんでISを起動していてくださいよ!」
「もう起動済みよ!」
師匠の答えに頷きながら俺は《火神鳴》を構えて両腕の荷電粒子砲を放つ。
が、謎の戦闘機はふわりと滑らかな動きで荷電粒子砲を避け
「なっ!?」
くるりと前転するように前方に回転したかと思うと、謎の戦闘機は〝人型に変形していた〟。
戦闘機の翼の下に、正座するように畳まれていた足を伸ばし、両翼の下に伸びていたパーツは足につくほどの、先日の襲撃者のような長さの腕になり、機体の半ばに隠れていた頭部が現れ、機首は体の前面に畳まれ、胸元には青い砲門のようなパーツが現れる。
「なんだあれ!?まさかあれ、ISなのか!?」
「気を付けて颯太君!あんな機体初めて見た!」
「ラジャー!!」
師匠の言葉に頷きながら再度狙いを定め、今度は肩の砲門も含め四門の砲門で狙いを定める。
「これで!どうだ!!」
四門同時に荷電粒子砲を放つが、またもやひらりと攻撃を避ける謎の機体。
と、謎の機体の胸元の銃口のようなパーツが青く輝く。それはまるで《火神鳴》の砲門にエネルギーが溜まっていく様子に似ていて
「っ!師匠っ!」
俺は咄嗟に師匠を抱くように庇いながら《火打羽》を展開する。
その瞬間、《火打羽》を青い光が包み、俺たちを襲う。
「くっ!なんだこの衝撃!?まるで《火神鳴》の荷電粒子砲並みだな!」
衝撃が止むと同時に耐えながら展開していた四基の『八咫烏』で敵機を囲み、機銃を放つ。
「はぁぁぁぁ!!」
『八咫烏』の攻撃に気を取られている敵機に瞬時加速で近づき近くにいた一基の『八咫烏』を右腕に装着し
「ぶっ飛べ!」
『エキゾースト・ヒート』を敵機のボディーに叩き込もうとするが一瞬早く敵機が両腕を前に突き出す。
敵機の両腕の先からエネルギー・シールドが展開される。
「そんなもので!!」
構わず殴りつけると、強い衝撃とともに地面を転がりながら敵機が吹き飛ぶ。
最接近し、敵機の脚を《火神鳴》で掴み
「オラァァァァァ!」
そのまま持ち上げて地面に叩きつける。
見ると、先ほどの『エキゾースト・ヒート』の影響か、敵機の両腕はひしゃげてねじ曲がっていた。
地面に叩きつけられた敵機はあまり悶絶する様子もなく地面に大の字に倒れ伏す。
その様子に俺は既視感を感じる。
それはまるで五月、そして先日学園を襲った襲撃者、無人機にどこか似ているように感じた。
「まさか…お前もあいつらと同じ――」
俺の言葉を遮るように敵機がその長い腕を鞭のように振るって俺に打ち付けてくる。が、一瞬早く反応し、《火打羽》で防ぎ、倒れ伏す敵機の胸に装着したままの『八咫烏』の右腕を振るい、『エキゾースト・ヒート』を叩きこむ。
敵機の胸の砲門がひしゃげる。
「ふんぬっ!!」
そのまま通路の先に投げ飛ばし
「師匠!」
「準備できてるわよ!」
師匠に向けて叫びながら見ると、俺と敵機の戦いの最中、襲撃してきた謎の部隊たちを安全なところまで運び終わったらしい師匠が頷いていた。
俺はすぐさま師匠の下まで瞬時加速で行き、《火打羽》で包むように展開する。と、同時に師匠がまるでスイッチを押すように右腕の親指を下ろし
「カチッ」
師匠の言葉の直後、通路の先に投げた敵機の周りが陽炎のように歪み、直後、敵機を大爆発が襲った。その衝撃は強く、《火打羽》を展開している俺たちのところに届くほどだった。
「ふう~」
衝撃が止み、息をつきながら敵機の様子を見ると
「くっ、直前に逃げられたようね」
先ほど倒れていたところには敵機はいなくなっていた。
「……師匠、さっきのやつ………」
「憶測でものを言うことはできないわ。でも――」
俺の言葉に頷きながら師匠が屈み、何かを拾い上げる。
それは青い、先ほどの俺の『エキゾースト・ヒート』時にひしゃげさせた敵機の機体のパーツの一部のようだった。
「きっと、颯太君の思っていることと、私の思っていることは同じだと思うわ」
「じゃあやつは……」
「ええ――」
頷いた師匠は俺の顔を正面から見据え、
「さっきの機体、無人機の可能性があるわ」
今回の話で出て来たオリ機はVVVから持ってきました。
いったい誰が、どこの組織が送り込んできたのか……
さて、第七回質問コーナー!
今回の質問はクロンSEED さんからいただきました!
「颯太君に質問です。もし火人以外のISに乗るとしたらIS学園のメンバーの誰の機体がいいですか?
また、自分で1から作るとしたらどんなISを作り乗りますか?」
ということですが
颯太「ん~……難しいけど、そうだな……師匠の『ミステリアス・レイディ』かな」
ほうほう
その理由は?
颯太「あの水のナノマシンを操る感じがすっごくきれいでカッコいいじゃん?しかもナノマシンを霧状にして辺りにバラまけば視認しずらくなって罠はれるし。水を固めて虚像を作れるって言うのもいいよな」
なるほどなるほど。
じゃあもし自分で機体を1から作るならどんな機体を作る?
颯太「そうだな……俺の機体の『火焔』って近接系の武器が主体だし、逆に超長距離型とかかな。狙撃用のスナイパーライフルをメイン装備にして、もちろん中近距離の銃も積んで、近接ブレードも積んでさ。狙撃の最大射程も地球から衛星軌道上まで狙えるくらいほしいかも」
OOのデュナメスじゃん
颯太「あ、ホントだ。でもあのくらいの狙撃できる機体がいいな。どうせなら開き直って単一仕様能力で『トランザム』使えるとかいいかもな」
だそうです!クロンSEEDさん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!