「さて、と」
破壊した防壁からひょいと抜け出た俺と師匠は軽やかに着地する。
「全校生徒は大体の避難が終わったみたいですね」
「ええ。だから、暴れても問題なさそう、ね」
俺の言葉に師匠が頷き、ニヤリと笑う。
俺もその笑みに答えるようにニヤリと笑みを浮かべる。
師匠がパッと扇子を開くと、そこには「迎賓」の文字が。
『侵入者アリ。侵入者アリ』
と、師匠の携帯がぴーっ、ぴーっと音を立てる。
「来た、みたいね」
「ですね。それじゃあ――ここからは手はず通りに」
「ええ」
師匠と俺は頷き合い、同時に動き始める。
〇
六人の侵入者はゆっくりと銃を構えて進む。
六人は枯葉のようなものを付けた見た目は「けむくじゃら」なスーツを着ていた。
一見すると森林地帯擬態服(ギリースーツ)のようにも見えるそれは、周囲の風景を撮影して表面投影する最新型の光学迷彩である。
枯葉に見えるものはすべて可動する特殊フィルムで、通常は葉っぱのようだが、迷彩をオンにするとそれぞれが閉じて装着者を包み込む。その上に周囲の風景を投影して、迷彩効果を発揮するというものだ。
現在六人はスーツの機能で迷彩を起動している。
周りを警戒しながら進んでいた六人の戦闘の人物が手を横に伸ばして後方の五人を止める。
六人の視線の先には一人の人物が立っていた。
まるで六人を待ち構えていたかのようなその少年が口を開く。
「ようこそ。初めまして。そして――」
少年の言葉を遮るように六人は構えていた銃の引き金を引く。
ぷしっ、ぷししっ。
短い音が鳴り、特殊合金の弾丸が少年に向けて飛ぶ。
しかしそれらは、すっと右手を挙げた少年の掌の前で止まる。
「――そして、さようなら」
そのままニッと口元に笑みを浮かべた少年――颯太はパチンと指を鳴らす。
その瞬間、大爆発が廊下を飲み込む。
目の前でいきなり弾丸を止めた颯太の姿に困惑していた六人はその爆発に巻き込まれる。
「すみませんね。今こういう状態でして、大したおもてなしもできませんで。まあ――迷わず逝ってください」
そうにこやかに言いながら颯太は自身の身を光に包みコンマ何秒で『火焔』を纏う。
そして、そのまま展開した《インパクト・ブースター》を六人の襲撃者に向けて飛ばす。
六人の襲撃者を連携が取れないように四基の《インパクト・ブースター》で分断しながらまるで六人が翻弄される姿を楽しむように口元に笑みを浮かべて腕を組んで立っている。
「は、班長!このままでは――」
「うわあああああっ!?」
訓練された兵士、その中でも最高スペックの男達がいとも簡単にやられていく。
別ルートで侵入したらしい別の班も合流してきたが、それは一切役に立たない。
「ひ、退け!退けーっ!」
班長と呼ばれていたリーダー格の人物叫ぶが、それを遮るように《インパクト・ブースター》からの攻撃は勢いを増し、ときどき荷電粒子砲まで飛んでくる。
「ハッハッハ~!どこへ行こうと言うのかね!?」
颯太は高笑いをしながら肩口の砲門や《火神鳴》を撃つ。
二十人近い歴戦の兵士たちがたった一人の、たかだか16歳の少年にまるでおもちゃのように遊ばれている。
「ハ~ッハッハッハ~!!見ろ!人がごみのようだ!」
燃える炎のなか、満面の笑みを浮かべ高らかに笑うその様子は、まさに悪役のそれだった。
〇
「ふぃ~、ちかれたちかれた」
特殊ファイバーロープで特殊部隊の男達を全員縛り上げた颯太は大きく伸びをしながら一つ息を吐く。
「いやはや、なんか弱い者いじめしてたみたいで心が痛んだわ~」
そう言いながら頬を掻く颯太の顔は満面の笑みだった。
「さてさて、とりあえずここは片付いたし、次の場所に行きましょうかね」
そう言って颯太はISを解除し、待機状態に戻す。
一つ大きく伸びをした後、一歩、歩き出す。
その瞬間、消音機で発射音の押さえられた銃から放たれた銃弾が颯太の腹部を貫通する。
「え……コフッ!?」
ぶしっと噴き出した血。ゆっくりと腹部に手を当てた颯太は真っ赤に染まった手を見ながら、口から血を吹きながらゆっくりと膝から崩れ落ちていく。
「やっと隙を見せたな……」
縛り上げられていたはずの男達がにやりと笑いながら立ち上がる。
どうやら隠し持っていたプラズマカッターでロープを切り落としたらしい。その四肢は自由に動いていた。
「どうしますか?」
「そうだな、こいつはおそらく情報にあった井口颯太だ。他のやつはISとともに持ちかることになっているが――」
言いながら班長の男は倒れ伏す颯太に銃を向ける。
「こいつだけは暗殺命令が出ている。ここで始末してしまおう」
「ワオ?俺だけ殺すの?そいつは何とも嫌われたものですね~」
『っ!?』
と、銃を向けた班長の背後で声が聞こえる。
その場の特殊部隊の男達が一斉に声の方に視線を向けると、そこにいたのは
「痛いの嫌なんで何とか殺さない方向でお願いします」
そうのほほんと言いながら笑みを浮かべるのは、『火焔』を纏った井口颯太の姿だった。
口元には先ほど吐いたはずの血の一滴すらついていなかった。
「お、お前、何故!?さっきお前は――」
「血を吐いて倒れたはず、ってか?」
言いながら笑顔で颯太が指さす。
男たちがそちらに視線を向けると、そこには先ほど撃たれた颯太が倒れており――
ぱしゃり
突然水音と共に颯太が――先ほどまで颯太だったものが透明な液体となって水風船のように弾ける。
『なっ!?』
突然の現象に男たちが驚きの声をあげる。
「颯太君を仕留めたと思った?残念、水でできた偽物でした~!」
『っ!?』
突然の声に男たちが視線を向ける、と――
「どうも~」
にこやかに笑みを浮かべた少女、楯無が先ほどまで誰もいなかったはずの颯太の右横に立ってにこやかに手を振っていた。
「お、お前は――!?」
「どうも~!改めまして自己紹介!IS学園生徒会長の更識楯無と――」
「その弟子、井口颯太で~す!」
にこやかに手を振る二人に呆然と男たちが見つめる。
「いや~颯太君もなかなかの悪役っぷりだったわよ~」
「そういう師匠だって、はじめの爆発は最初に言ってたより大きくてびっくりしちゃいましたよ~」
まるで昨日見たテレビ番組の内容を語り合うように、上手くいった悪戯を語り合う様に笑みを浮かべて言う二人。
「お、お前!い、いつから……!?」
「それは、いつから偽物とすり替わっていたんだ!?と言うことでしょうか?」
「さて、いつからでしょうね~?」
班長と呼ばれていた男の問いに茶化すように笑いながら言う二人。
「さて、せっかく縛っておいたのに抜け出すんですから。今度はもっとちゃんと縛っておかないとですね」
「いやいや、また縛っても道具使って切って抜け出されるかもしれないわよ」
「そうですね~。それじゃあ――」
言いながら、笑みを浮かべて颯太が視線を男たちに向ける。
「今度は抜け出ても動けないように、二、三本手足の骨折っておきますか」
そう言って笑みを浮かべた二人の顔は悪役を通り越して、悪魔のようだった。
なんだかんだで似たもの師弟。
特殊部隊の人たちは五体満足でいられるのか!?……まあ無理でしょうね(^-^;
さて、第六回質問コーナー!
今回の質問は蓮零さんからいただきました!
「颯太君と一夏君に質問です!二人からして千冬さんはどんな印象でしょうか?また、彼女が結婚するとしたらどんな男性が似合うと思いますか?」
とういうことですが
一夏「頼りになるけどなんでか俺に厳しい大事な家族、かな」
颯太「鬼」
ほうほう
じゃあそんな千冬さんが結婚するなら?
一夏「そうだなぁ~……千冬姉ぇって家事とかできないし家のことやってくれる人がいいんじゃないかな。てかホントにそろそろ結婚でもしてくれれば俺も楽できるんだけどなぁ……」
颯太「え?織斑先生が結婚?できるの?なまじできるとしたらどこのゴリラ?www」
なるほどなるほど。
千冬「なるほど。お前たちがどう思っているかよくわかった」
一夏「なっ!?千冬姉ぇ!?」
颯太「ななななななんでここここここにいるんですか!?」
あ、ごめん言い忘れてた。
同じく蓮零さんから
「千冬さんは颯太を見てて、どんな風に思いましたか?もちろん、颯太君の便利なところなどもあれば!」
っていう質問も来てたからどうせなら一緒に答えておこうと呼んでたんだった。
一夏&颯太「先に言えよ!」
すま~ん!すま~ん!
千冬「おい、一夏。私は別に結婚する気がないわけではない。前にも言ったかもしれんが、手のかかる誰かさんが独り立ちすれば結婚でもなんでもしてやる」
一夏「お、おう……」
千冬「そして――井口ぃ!」
颯太「は、はいぃぃぃ!!」←(逃げようとして襟を掴まれた)
千冬「私の結婚相手はゴリラがお似合いか?」
颯太「い、いや~…それは別に本当のゴリラと言う意味ではなくて、俺のやっているFGOと言うゲームにガウェインと言うキャラがいるんですが、このキャラが強くて、ネット界隈でゴリラと呼ばれておりまして。そんな感じで織斑先生の結婚相手はやはり織斑先生より強い男性がいいのではないかと思った次第でありまして、はい!」
千冬「ほう?そうか。それは勘違いをしてしまったな」
で、千冬さん。
颯太君のどんな風に思ったかと便利なところは?
千冬「そうだな、印象は手のかかる問題児、だな。便利なところは――」
大同&一夏&颯太「便利なところは?」
千冬「気晴らしにサンドバッグにしても教育的指導で通せるところだな」
颯太「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」←(千冬に引きづられながら退室)
あ~颯太……雉も鳴かずば撃たれまいに……
――さて!だそうです!蓮零さん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!