「――なるほど。そんなことがあったのか」
「だから昨日、食堂の前で正座されていたんですのね」
日曜の一件があった翌日。俺は教室で箒とセシリア、ラウラに昨日の正座の件について説明をしていた。
「正座か……私もあまり得意とは言えんな」
「海外の人だとそういう文化がない国の人は特にな。箒とか正座とか得意そうだよな」
「まあな」
俺の言葉に箒が自信あり気な様子で胸を張る。
「セシリアなんかは前に臨海学校の時に夕食で無理して正座してたよな。一夏の隣に座りたいがために」
「なっ!?べ、別に一夏さんのとなりがよかったわけでは――」
「「「へ~………」」」
セシリアが慌てて否定するが俺たち三人は疑わしい視線を向けながら言う。
さて、普段ならここにシャルロットと一夏がいるのだが、今日は諸事情によりいない。
と言うのも、シャルロットは前の時間が二組との合同授業だったのでその資料の片付けを鈴と共にしている。
先日の襲撃のせいか専用機持ちの面々はよほどの事情がない限り二人以上での行動が義務付けられている。
まあ普段から昼食は専用機持ちの面々で行動することが多かったので特には大きく問題はない。
この学園で今一人で行動できるのは師匠と、代替機を借りて昨日には『火焔』の修理の終わっていた俺くらいだろう。
そして、今日に限っては一夏も単独行動を許されている。
と言うのも今日は先日言っていた通り一夏のIS、『白式』の修理のために倉持に行っている。
その結果の今のメンバーなのである。
「しかし、あの生徒会の布仏先輩に彼氏か……」
箒が感慨深げにつぶやく。
俺と一夏が所属している関係か、一夏の誕生日会にも来ていたからか、箒たちも虚先輩とは面識がある。
知り合いに彼氏ができたという情報が三人の十代の乙女たちにはなかなかに重要ニュースのようだ。
「三人も他人事じゃないだろ。いい加減アプローチの仕方を変えないと一夏には気持ち伝わらないんじゃないか?」
「「「なっ!?」」」
俺の言葉に、そんなふうに言われるとは思っていなかったのか、三人が少し慌てたように息を呑む。
「三人だってわかってるだろ?あの唐変木オブザ唐変木の一夏には変に変化球で攻めるより直球ど真ん中ストライク狙いじゃないと」
「「「そ、それは……」」」
俺の言葉にいたいところを突かれたと言いたげに顔を歪ませる三人。
「で、ですが!そういう颯太さんはどうなんですの!?」
「はぁ!?俺っ!?」
と、急にセシリアがハッと何かに気付いたように言う。
「そ、そうだ!颯太はどうなんだ!?お前にだって彼女はいないだろう!?」
「我々にえらそうに言うがお前だって恋人を作ろうと行動している様子がないじゃないか!」
「あ~……それはな~……」
三人に詰め寄られて、少し困惑しながら俺は頬を掻く。
「俺はいいよ、少なくとも今は」
「〝今は〟?」
「なんだ、その煮え切らない感じは?」
「どういう意味ですの?」
俺の言葉に三人がよくわからないと言った感じで首を傾げる。
「いやね?俺も恋愛はいいと思うよ?むしろ彼女欲しいよ?可愛い彼女作ってデートしたりイチャイチャしたいよ?でもさ~……リスキーじゃん?」
「リスキー…とは?」
「リスク。危険度や被害を被る可能性のことだよ」
「い、意味は分かってるぞ!?」
箒の問いに答えると、箒が不満げに叫ぶ。
「そうではなく!どういうリスクかってことだ!」
「はぁ~……」
これは言わないとこの話題を終わらせることが出来そうにないので、嫌々ため息をつきながら口を開く。
「いいか?まず俺が告るだろ?で、フラれるだろ?」
「それ確定してるんですの!?」
「それだけじゃない」
セシリアの言葉に頷きながら俺は続ける。
「次の日クラスみんながそのことを知ってるのは当然だよな?知ってるだけならいい。けどな?ちらほら聞こえてくるんだよ。――『〇〇って井口に告られたらしいよ~』『うわぁ~、○○かわいそう~!アタシ、アドレス教えなくてよかった~』――みたいなおしゃべりのネタにされ、ちょっぴり傷つくリスクがある」
「や、やけにリアルな話だな?」
「それだけじゃないぞ?仲いいやつに告るとそれ以降の関係が――」
「も、もうわかった!」
俺の言葉を遮ってラウラが叫ぶ。
「まあそんなわけで、今はいいよ。それに――」
「それに?まだ何かあるのか?」
俺の言葉に辟易とした様子で箒が訊く。
「こんなもん全部言い訳だ。本当に好きならそんなもん関係なく想いを伝えたくなるだろうさ。そうなってないってことは、俺はまだ本気で想いを伝えたい相手がいないんだろう」
「「「…………」」」
颯太の言葉に三人は微妙な顔で何か意味ありげな視線で俺をじっと見ていた。。
「………なんだよ?」
「い、いや……」
「なんと言いますか……」
「あいつらも苦労しそうだ、と思ってな……」
「??? 〝あいつら〟?いったい何の話を――」
三人の言葉に意味が分からず、首を傾げながら訊こうと口を開く、が、俺の言葉は最後まで言うことはできなかった。
教室の電気がいきなり消えたからだ。
教室だけではない。廊下も電子掲示板も、すべてが一瞬で消えたのだ。
当たり前だが今は昼間。完全に真っ暗になることはない、と、思っていた。
「っ!?防御シャッター!?」
「な、何故急にそんなものが!?」
困惑する俺たちをよそに教室や廊下の窓を覆うように斜めスライドの防壁が下がってくる。
教室の中も廊下からもざわざわとした声が聞こえてくる中、すべての防壁がおりきって、IS学園は闇に包まれた。
「……二秒経ったな」
「ああ、緊急の電源にも切り替わらない」
「非常灯もついていませんわ」
「何か異常事態が起きている、と見て間違いなさそうだな」
ISの一部の機能を起動し、視界にステイタスウィンドウを呼び出す。同時に視界を暗視界モードに切り替え、ソナーと温度センサー、動体センサー、音響視覚化レーダーなどの機能をセットする。
ISが自己修復中で一部機能が制限されている三人もローエネルギーモードで起動して同じ機能を起動しているようだ。
「ラウラだ。シャルロット、無事か?」
「鈴さん、今どこですの?」
「簪、無事か?今どこにいる?」
『颯太。こっちは平気。今教室にいる』
俺が簪に呼びかけるのと同時にラウラとセシリアが二人にプライベート・チャネルで呼びかける。
二人とも何事もなかったようで返事が返ってきたらしい。
どうやら資料の片付けが終わり、教室に帰る途中の廊下にいるようだ。
簪の方もなんともないようだ
と、俺の耳に割り込みで通信が入る。他の三人にも同じ通信が入ったようだ。
『専用機持ちは全員地下のオペレーションルームに集合。今からマップを転送する。防壁に遮られた場合、破壊を許可する』
織斑先生の静かだが強い声。
その声の様子がこの学園にまた何か事件が起きたことを物語っていた。
一週間ほどしてまたすぐに事件。
もうちょっと警備とか警戒を強めるとかできないのか、IS学園(^-^;
さて、やってきました第四回質問コーナー!
今回の質問はnaviさんにいただきました!
「颯太に質問です 好きな仮面ライダーは?」
とのことですが……
颯太「ん~、クウガかな。あ、もちろんオダギリジョーの時のな。なんか平成の原点って感じでストーリーもよかったからな~」
ほうほう、なるほど。
ちなみに一応聞いておこう。
最新――と言うか一個前のエグゼイドではどのライダーが好き?
颯太「レーザーだな。あの主人公のエムをサポートしたり何気に活躍しまくってるし、ああいうタイプ好きだな。あと、ネタキャラとして社長」
だそうです!naviさん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!