IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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前回二話の番外編を挟んでの本編です。

原作の話の前にちょっと息抜きのギャグの流れへ。






第119話 狭いところって落ち着くよね

「はぁ~この感じ……おかえり!って感じだなぁ~」

 

 俺は大きくため息をつきながら言う。

 俺の右手には数日ぶりの赤いリング。

 無人機による襲撃事件から数日たった日曜日、今日は修理中だった『火焔』を受け取りに指南コーポレーション本社に来ていた。

 

「あぁ~!この手首に触れる感じ!右手にかかる重み!おかえり『火焔』!」

 

「颯太が壊れた……」

 

「疲れてるのね……」

 

「お姉ちゃん、颯太の仕事もう少し、減らしてあげたら?」

 

「三人ともヒドイ!」

 

 右手のリングに頬擦りする俺を冷ややかな目で見る三人に叫ぶ。

 

「そりゃ変なテンションなのは認めますけど!なんていうか五月からほぼ毎日24時間右手に着けてたものがないって言うのは結構変な感じがするんですよ!」

 

「なるほど、それはわかるかも」

 

「あるのが当たり前だったわけだもんね……」

 

「例えるなら私たちがうっかりブラし忘れちゃった感じかな?」

 

「反応に困る上に男の俺にはよくわからない例えはやめてくれますかね師匠!?」

 

 三人が納得したように頷いてくれるが師匠のその例えはどうなんだろうか。

 

「いやぁ~、でも本当ありがとうございました!――で、なんでアキラさんはそんな遠いうえに隠れてるんですか?」

 

「っ!?き、気にしないで……」

 

 俺は言いながら視線を向けると、少し離れた位置から積み上げられた段ボール箱の影で体をびくりと震わせてアキラさんが答える。

 ここはアキラさんの作業用の部屋なのになんでその部屋の主がすみっこの段ボールの影にいて、客側の俺たちが部屋の真ん中にいるのか。

 

「と、というか……なな、なんでIS学園の生徒会長とかっ簪さんがいるの?」

 

「あぁ、『火焔』の修理が終わったから取りに行くって言ったらついでに買い物に付き合えって、ついて来たんですよ――てかもしかして初対面じゃないのにまだ緊張してんですか!?」

 

「き、緊張なんてしてない!」

 

 俺の言葉に全力で叫ぶアキラさん。

 

「でも膝が生まれたての小鹿のように震えてますよ?」

 

「こ、これはき、緊張とか人見知りでふ、震えてるんじゃなくて……!その………これは……」

 

「これは?」

 

「これは……そ、そう!た、楽しくて膝が笑っているのさ!」

 

「それほどうまいことは言えてない……」

 

 俺は呆れ半分でため息をつきながらアキラさんの方に歩を進める。

 

「ほら、別に師匠たちは噛みつきゃしないんですからそんなに警戒しなくても――」

 

「キシャァァァァ!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 俺がそっと手を伸ばす背後から気勢を上げながら顔を出す師匠にアキラさんが叫ぶ。

 

「ホント何してんですか!?」

 

「いやぁ~ごめんごめん。アキラさんって反応が面白そうだと思ったらつい。案の定面白かったわ」

 

 満面の笑みで満足げに頷く師匠に俺はため息をつく。

 

「ほらぁ~、師匠が脅かすからアキラさんが……」

 

 言いながら視線を向けるとアキラさんの姿は消え、目の前には大き目の段ボール箱が鎮座していた。

 

「メタなんとかの主人公の潜入スタイルみたいになっちゃってる……こうなるとなかなか出てこないんですよ?」

 

「なんかごめんなさい。やりすぎちゃったかも」

 

 少し困った様子で師匠が言う。

 

「アキラさ~ん。出てきてくださいよ~」

 

「…………」

 

 トントンと段ボール箱をノックするが反応はない。

 

「ダメだこりゃ」

 

 俺はため息をつきながら部屋の隅に置いていた荷物のところに行き、目当ての物を持って戻って来る。

 

「出てこなくてもいいんで、これだけ受け取ってもらえないですかね~?」

 

 言いながら俺は紙袋を段ボール箱の前に置く。

 

「………な、何これ?」

 

 段ボール箱のちょうど持ち手として開けられている穴から目だけを覗かせてアキラさんが訊く。

 

「アキラさん前に言ってたじゃないですか、最近ガンダムSEED見たって。アキラさん意外とプラモデルしたことないって聞いてたんで、『火焔』治してもらったお礼も兼ねてプレゼントです」

 

「…………」

 

 数秒の沈黙の後に段ボールが少し持ち上がり、そこから手が伸びてきて紙袋を段ボール箱の中に引っ張り込む。

 

「………MGのストライク……」

 

「はい。入口にするなら主人公機かなって思いまして」

 

「わ、私、ルージュの方が好きなんだけど……?」

 

「それはいいことを聞きましたね。じゃあ次に俺が『火焔』を大破させたときはそれでご機嫌伺いに来ます」

 

「に、二度と壊すなっ」

 

「ラジャーです」

 

 俺はニッと笑って頷き、立ち上がる。

 

「それじゃあアキラさん、社長にもあいさつしに行くんで俺たちはこの辺で。修理、ありがとうございました」

 

 深くお辞儀をして部屋を後にしようと歩きはじめる。と――

 

「そ、颯太!」

 

 振り返るとアキラさんが恐る恐ると言った様子で段ボール箱から体を出していた。

 

「そ、その……あ、ありがとう……。だ、大事に作る…から……」

 

「はい。今度は00でも見てみてください。あっちの機体もカッコいいの揃ってますから」

 

 アキラさんの言葉に頷きながら言い、俺たちは部屋を後にした。

 

 

 〇

 

 

 

「はぁ~相変わらずすごい社長さんね」

 

 会社から出ると、師匠が笑いながら言う。

 

「師匠とは違う意味で人たらしですよね」

 

「あら?私はそれほどカリスマないわよ?」

 

「どの口が言いますか、どの口が」

 

 IS学園の生徒から超支持されてるくせに。

 

「さて、俺の用事は終わりましたし、シャルロットの方は?結果は?」

 

「僕も軽くIS見てもらったけど、順調に回復してるみたい」

 

「そっか。ならよかった。で?ここからどうするんですか?」

 

「近くのレゾナンスに向かう予定」

 

「あそこの中のお店でウィンドウショッピングしましょ」

 

「了解です」

 

 言いながら三人で最寄りの地下鉄に移動し、レゾナンスの最寄り駅で降りたのだが

 

「――ん?あれって……」

 

 俺はふと見覚えのあるバンダナを見かける。

 

「あ、やっぱり、弾だ」

 

 赤毛にバンダナを巻いた一夏の友人、五反田弾を見つける。

 

「弾君って確か一夏君と鈴ちゃんの中学の同級生だったわね」

 

「だね」

 

「前の一夏の誕生日会にも来てましたね」

 

「買い物かな?お~い、だ――」

 

 声を掛けようと手を挙げたところで俺はふと弾の横に連れらしき女性がいることに気付く。

 

「あれ?あの人……」

 

 その後ろ姿からは一瞬誰かわからなかった、が、一瞬連れの人物の女性の横顔が見え――

 

「う、虚先輩!?」

 

「虚ちゃん!?」

 

「な、なんで虚先輩が?」

 

「っ!そ、そう言えば、この間本音が言ってたかも……」

 

 と、簪が思い出したように口を開く。

 

「本音がこの間、最近お姉ちゃん好きな人がいるみたいなんだ~。でもまだ付き合ってはいないみたい~、って!」

 

 興奮したようで、いつもより声に力が入った様子の簪。

 

「なんだかんだであれから上手く行ってたんですね……」

 

 前に少しだけ間を取り持ったことを思い出す。取り持ったと言っても連絡先を教えただけだが。

 

「さて、じゃあ行きますか」

 

「え?行くって?」

 

「フッ、決まってんだろ?そんなもん――」

 

 俺の言葉にシャルロットと簪が首を傾げる。

 

「Let’s尾行タイム!」

 

「「ちょっと颯太!?」」

 

 サングラスをスチャッと付けながら言うと二人が全力で止めにかかる。

 

「颯太、それはどうかと思うよ!?」

 

「こういうのは、ヘタに関わらない方が……」

 

「ばっきゃろう!気になるだろうが!」

 

 俺は二人に言う。

 

「それに、もし何かあった時に近くにいれば手助けできるだろうが!」

 

「それ余計なお世話じゃないの!?」

 

「いやいやいや、このままだと虚先輩、のほほんさんの世話を焼き、師匠に迷惑かけられて婚期を逃し、友達の結婚式の二次会で二回連続で遊園地のペアチケットを当てて計4枚手に入れて、『一人で二回行けるね』って二回も言われ、一人で四回行った後案外楽しくなっちゃって五回目六回目も一人で行く未来を迎えるかも入れないじゃん!それを回避するためにもこのチャンスを逃しちゃいけない!」

 

「そ、それが余計なお世話だって……」

 

「やけに妄想が具体的……」

 

 俺の言葉に呆れ顔の、しかし想像してしまったらしく微妙な表情を浮かべるシャルロットと簪。

 

「もう!楯無さん!」

 

「お姉ちゃんからも何か――!」

 

 二人が助けを求めようと師匠に視線を向ける。が――

 

「何してるの三人とも!虚ちゃんたちもう行っちゃうわよ!はやくはやく!」

 

「お姉ちゃん……」

 

「楯無さん……」

 

 ノリノリでサングラスをかけた師匠がいい笑顔で手招きする姿に二人はなんとも言えない表情を浮かべていた。

 




と言うわけでLet's尾行タイム!
虚さんの悲しい未来を回避するために頑張れ颯太たち!


さて、ここでお知らせです。
活動報告の方に平凡な…の質問コーナーを作りました。
颯太君に訊きたいこと、質問や疑問ドシドシどうぞ~
あ、もちろん颯太君以外のキャラへの質問も受け付けてますよ~
些細なことでもいいですよ~
例えば、――ヘイ颯太君!

颯太「はいはい、なんざんしょ?」

颯太君の好き女優は?

颯太「ん~……米倉涼子?」

抱かれてもいいと思う俳優は?

颯太「オダギリジョー」

こんな感じのでいいですよ~
よろしくお願いします!
あ、期限とかは設けてないんで

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