IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

126 / 309
どうも、記念すべきお気に入り件数3000件です!
……なんですが………ちょっと見ない間にいきなりお気に入り件数が40件ほど増えたんですが、いったい何か起きたんでしょうか?(;^ω^)

それはさておき番外編です!


お気に入り件数3000記念「ドキドキデート大作戦♡」

 それはある日の夕食後、俺の部屋で師匠、簪、シャルロットの四人で二対二のカードゲームに興じていた時のことである。

 

「行くぞ師匠!簪!俺たちのターン!場にいる俺のボルメテウスサファイアドラゴンでシールドをトリプルブレイク!さっきシャルロットの使った呪文の効果で俺のサファイアはブロックされない!」

 

「くっ!」

 

「やるわね!」

 

「サファイアの効果でシールドトリガーを焼き尽くす!行け!サファイアドラゴン!」

 

「更に僕のエルフェウスでダブルブレイク!」

 

「シールドで受けるわ!」

 

 シャルロットの攻撃をシールドで受けた師匠は破壊されたシールドのカードを手札に。

 

「来たわ!シールドトリガー発動!『デーモンハンド』!颯太君のボルシャックドラゴンを墓地へ!」

 

「ボルシャック!!……くっ!ターン終了」

 

 最後の攻撃の用に置いていたボルシャックが破壊され俺たちのターンは終了。

 

「フフフ、少しひやひやしたけどもうこれで終わりよ」

 

「何っ!?でもそっちはもうシールドはないし、こっちはまだ半分のシールドが残っている!ブロッカーだってそっちのクリーチャーより多いんですよ!?」

 

「この場面をひっくり返せるって言うんですか!?」

 

 師匠の言葉に俺たちが返すと、師匠と簪が不敵な笑みを浮かべる。

 

「颯太君たちは何もわかっていないようね」

 

「お姉ちゃんの使う文明は闇。さらに私たちのマナは今10ある……この意味が颯太ならわかるよね?」

 

「ま、まさか!?」

 

「気付いたようね!簪ちゃんマナ全部使わせてもらわよ!」

 

「うん!」

 

 師匠の言葉に力強く頷く簪。師匠は不敵な笑みを浮かべたまま手札からゆっくりと一枚のカードを抜きだす。

 

「いでよ闇文明最強のクリーチャー、悪魔神ドルバロム!場にいるデーモン・コマンドから進化!」

 

「しまった!」

 

「闇に染まりなさい!」

 

 俺は火と光の混色デッキ、シャルロットは光オンリー。対して師匠と簪はどちらも水と闇の混色デッキ。戦況が一気に逆転し俺とシャルロットは絶望的状態に陥る。

 

「さあこれで終わりよ!」

 

「颯太、シャルロット……覚悟…!」

 

「くっ!」

 

「ち、ちきしょ~~!!!」

 

 俺たちは敗北目前に絶望した、俺たちの負けはほぼ確定していた――のだが

 

「颯太!助けてくれ!」

 

 そんなカードゲームを中断させたのは一夏の乱入であった。

 

 

 〇

 

 

 

「で?つまりどういうことだって?」

 

「その……」

 

 突如乱入してきた一夏に戸惑いながらもあまりの一夏の慌てように俺たちはカードゲームを中断。

 一夏に事情を聞いたのだが

 

「……箒、セシリア、鈴、ラウラとそれぞれ遊びに行く約束をしたんだが…思いっきり日程がかぶった」

 

「師匠、簪もう一度やりましょう。次は負けませんよ!」

 

「リベンジマッチだ!」

 

「フッ!いいわよ!また闇に沈めてあげる!」

 

「何度やっても同じこと……」

 

「話を聞いてくれよ!俺困ってるんだって!」

 

「いや、それお前の自業自得だし」

 

 俺の腰にしがみ付いて来る一夏を冷めた目で見ながら言う。

 

「そんなもん正直に話してどうにか諦めてもらうしかないだろ」

 

「箒には買い物頼まれて!セシリアは映画のタダ券を手に入れたらしいんだが期限がその日までらしいんだ!鈴の遊園地のチケットもラウラの和菓子バイキングの無料券も!使わないともったいないって言われて……!」

 

「はぁ~……まあ行く気満々になってるあいつらを断るのも無理な話か……」

 

「下手すれば一夏君…殺されるかもね」

 

「殺されるだけですめばいいけど……」

 

「あの四人なら、死より恐ろしい目に合わせるかもね……」

 

 俺たちは四人はその光景を想像する。

 

 

 

『一夏……言いたかったことはそれだけか?』

 

『お覚悟はよろしくて?』

 

『……殺す!』

 

『目標を補測。これより掃討に移行する』

 

 

 

 ハイライトの消えた瞳の四人を想像して俺は背筋を震わせる。

 

「怖すぎなんですけど……」

 

「なぁ頼むよ颯太!楯無さん!簪さん!シャルロット!俺に力を貸してくれ!どうにかみんなの怒りを収める形で!」

 

 泣きついてくる一夏にため息をつく。

 

「仕方ない……こうなったら――!」

 

 と、師匠が言うと同時にどこからともなく大きな移動式のホワイトボードを持ってきて文字をかき込む。それは『ドキドキデート大作戦♡』と書かれていた。

 

「殺されない、死なないためのタイムテーブルを考えるしかない!」

 

「ですね!」

 

「「「おお!」」」

 

 俺と同じ案を言った師匠に賛同しながら頷き、一夏、簪、シャルロットは驚嘆の声を漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――できたわ」

 

「完璧ですね」

 

 俺と師匠で考えたタイムテーブルを見ながらふたりで満足げに頷く。

 

「いいか、一夏!当日はこの通りに行動しろ!」

 

「お、おう!で?どうすればいいんだ!?」

 

 力強く頷いた一夏が訊く。

 

「まず当日は7時起床!」

 

「おお!」

 

「九時にはレゾナンスでセシリアちゃんと合流!セシリアちゃんを映画館につっこんでトイレに立つふりをして、その間に同じレゾナンス内で行われる和菓子バイキングのためにラウラちゃんと合流!」

 

「遊園地に置き去りにした鈴とは二時間おきに姿を現してはそのたびに迷子になる!」

 

「すげぇ!一部の隙もないロジックだ!」

 

「だろう?遊園地で迷子になるのは常識だ」

 

 俺の案に一夏が感嘆の声を漏らす。

 

「確かに納得できるわ。颯太君、悪魔ね」

 

「師匠だって悪魔的だ。セシリアを正午に帰宅させるなんて斬新すぎる!」

 

「約束は映画だけ!心苦しいけどセシリアちゃんには我慢してもらいましょう!」

 

 くちびるを噛むように心苦しそうに言う師匠の言葉に俺は頷く。

 

「さらにセシリアが映画を見ている間にレゾナンスで箒とショッピング!」

 

「まったく…映画館と同じ敷地内とは、恐れ入ったわ、颯太君!」

 

「そして――「夜はみんなで夕食だ!」」

 

 師匠と主に力強く言いながら一夏を見る。

 

「どう!?これならいけるわ!」

 

「ああ!行けますよ!」

 

「………いけるかな?」

 

「ちょ~っと無理があるんじゃ………」

 

 簪とシャルロットの言葉に俺と師匠はゆっくりとホワイトボードに視線を戻す。

 

「ねぇ…やっぱりこれ……」

 

「無理…ですね……」

 

 少し悪ノリが過ぎたようだ。俺も師匠も途中から面白半分で作っていた。

 

「まあさすがにこれは実行するには無理があるわね~」

 

「やっぱり無難に正直に話すしかないでしょうね~。こんなもん実行不可能だ」

 

 師匠とともにアハハ~と笑い合っていた俺は気付かなかった。このとき真剣な表情でノートにこのタイムテーブルをかき込んでいる一夏の姿を……。

 

 

 〇

 

 

 

「さて……皆さんに確認したいことがあるんですが……」

 

 数日後、一夏の言っていたブッキングしたお出かけの前日。俺たちはもう一度集まり、ある一つの懸念について話し合っていた。

 

「……今日さ、やけに鈴がご機嫌だったから訊いたんだよ、何かあったのかって。そしたら、『明日一夏と遊園地行くのよ~』って上機嫌に言ってたんだ」

 

「……今日箒ちゃんが目に見えてご機嫌だったの。訊いてみたら、明日一夏君とお買い物行くらしいわ」

 

「……この間セシリアが上機嫌に評判のいい映画訊いてきたから…わけを訊いたの。そしたら……明日織斑君と映画見るんだって……」

 

「……さっきラウラが服を選びながら僕に感想を訊いてきたから、明日はどこか行くの?って聞いたんだ。そしたら、嫁と和菓子バイキングだって……」

 

『……………』

 

 俺たちはお互いに顔を見合わせる。三人の顔色が悪くなっていく様子から、同じ結論に行き当たり、きっと自分も同じような顔をしているのだろうとわかる。

 

「これって……」

 

「一夏……颯太と楯無さんの半分ふざけて作ったタイムテーブルを実行しようとしてるんじゃ……」

 

「さ、さすがの一夏君でも、あれが無茶だって気付いてるわよ、きっと!」

 

「そうそう!いくらなんでもあんな冗談みたいなものを実行するわけが………!」

 

『……………』

 

 この時俺たち四人の思考が完全に一致した。一夏ならやりかねない、と三人の表情が物語っていた。

 

「みんな明日は全力で一夏君をサポート!それぞれ女の子たちについて動向を監視しながら逐一報告し合いましょ!」

 

「俺は一夏にその模様を連絡しながら一夏をフォローする!」

 

「「了解!」」

 

「いい!?明日はなんとしてもあの無茶なタイムテーブルを実行するわよ!でなきゃこの学園に血の雨が降るわよ!」

 

『おぉぉぉぉ!!!!!』

 

 

 

 〇

 

 

 そして、作戦当日。

 

『ブラボー1から各員へ、それぞれ配置についたか?オーバー?』

 

『ブラボー2、目標、箒ちゃんを補測、オーバー』

 

『ブラボー3…目標、セシリアを補測、オーバー』

 

『ブラボー4、目標、ラウラを補測、オーバー』

 

『オーバー。これより作戦を実行する。各員、健闘を祈る』

 

『『『了解(ラジャー)』』』

 

 俺たちはISのプライベートチャネルで通信をしあいながらそれぞれの監視対象に視線を向けながら言う。

 

『と言うわけで今日は一日俺たちがお前のフォローをする。くれぐれもお前はボロが出ないように全力で挑め』

 

『お、おう……すまん、助かる』

 

『ホントだよ。お前あれを実行しようとするとか馬鹿じゃねぇのか?』

 

『しょ、しょうがないだろ!みんなにばれないようにするにはあれしかないと思ったんだよ!』

 

『……言ってても仕方がない。一夏、とりあえず健闘を祈る』

 

『お、おう』

 

 俺の言葉に少し離れた先にいる一夏が頷いているのが見える。

 と、言っている間に映画館に着く。見るとセシリアはもう来ていたようですぐに一夏と合流した。きっと近くで簪もどこからか見ていることだろう。

 

「お待たせ、セシリア!」

 

「いえいえ、むしろ早いくらいですわよ」

 

 一夏の言葉に微笑みながら言うセシリア。

 

「さて!早速映画館入るか!」

 

「え?でも、まだ上映時間まで早いと思いますわよ?」

 

「いいんだよ!はやめに入っておこう!なぜなら速さは正義だから――」

 

 一夏がセシリアと一緒にスクリーンの方に入ろうとすると

 

『ブラボー2より各員へ問題発生!目標が予想より速く到着!このままでは映画館のところで出会ってしまうと思われる!』

 

『っ!?』

 

 俺は視線を巡らせる映画館の入り口に箒が見えた。箒がふと視線を上げた先に一夏を捉えたように見えた。

 

「あ……」

 

 あぁぁぁぁ!!!

 

『一夏マズいぞ!箒だ!箒が予定よりも速く着いた!しかも箒はお前を視界に捉えたぞ!』

 

『なっ!?――マジだ!』

 

 一夏も箒に気付いたらしく慌て始める。

 

『ど、どうすればいい!?』

 

『と、とにかくセシリアを先にスクリーンに向かわせろ!お前は飲み物でも買ってくると伝えてな!』

 

『お、おう!』

 

 一夏がそれを実行し、箒が寸でのところでやって来る。

 

「よ、よう箒!」

 

「どうしたんだ?誰かと話していたのか?」

 

「何を言ってるんだ?俺は一人だったぞ?」

 

 周りを見渡し箒に一夏がとぼけながら言う。

 しかしこれで問題は

 

『ブラボー4から各員へ!問題発生!ラウラが――』

 

「ん?一夏?」

 

『『何ィィィ!?』』

 

 通信越しに俺と一夏が驚愕の声をあげる。シャルロットの通信よりも早く映画館入口に立つラウラが見えたからだ。

 

「っ!箒!買い物の前に映画でも見よう!パンフレット買ってきてくれ!」

 

「なっ!なんだ急に――」

 

「急に箒と映画見たくなったんだ!今すぐ一緒にパンフレットが読みたいんだよ!」

 

「わ、わかった。そんなに言うんだったら……」

 

 少しまんざらでもない様子で照れたように物販のスペースに歩いて行く箒。そしてその直後――

 

「おい、一夏」

 

「よ、よう、ラウラ!」

 

「どうしてこんなところにいるんだ?待ち合わせまで時間があるし、待ち合わせ場所はバイキング会場の前だっただろう?」

 

『少し早く着いたから見て回っていたと言え!』

 

『お、おう!』

 

 俺の言葉に返し、

 

「早く着いたから色々お店を覗いてたんだ」

 

「そうか」

 

「少し早いが行くか?」

 

「そうだな。そうしよう」

 

 言いながら一夏はラウラとともにバイキング会場へ向かって行く。

 どうにか危機を脱した。

 このまま上手く回していかなければ。

 

 

 

 

 

 その後。

 

 

 

 

 

 箒と一緒にホラー映画を見ながら……

 

「おっと、俺ちょっとトイレ行ってくる」

 

「なにっ?」

 

 少し怖い雰囲気になって来て一夏の手に自分の手を置こうとしていた箒は驚愕の声をあげる。

 

「わ、悪い、我慢してたから漏れそうで……」

 

 言いながらトイレに立ち、そのまま急いでセシリアの元に。

 

「フフッ、大慌てですわね、一夏さん。でも、まだ始まっていませんわよ?」

 

「い、いや…挙動不審になるくらい楽しみでさ!」

 

「わたくしも楽しみでしたわ。こうやって一夏さんと映画に来れるなんて……」

 

 嬉しそうに微笑むセシリア。と、映画開始を告げるブザーとともに周りが薄暗くなりはじめる。

 

「あ、始まるみたいですわ――」

 

「そうだ!喉が渇いたな!飲み物を買ってくるからセシリアはこのまま見ていてくれ!」

 

 そう言って立ち上がった一夏は急いで次の目的地へ。

 ワンフロア上のバイキング会場へ。

 

「遅かったな、一夏。長いトイレだったな」

 

「あ、ああ!ちょっと混んでてな!」

 

 全力疾走で走り回る一夏は大変そうだが、正直に言おう、俺もきつい。なぜって俺の監視対象が一夏なので俺も否応なしに同じように走り回らなければいけないのだ。

 とりあえずはラウラはこのまま和菓子バイキングにいれば何とかなるだろう。

 

 

 

 その後も一夏と俺は走り周り――

 

 

『女なんて、映画館につっこんでおけばいいんだよ』

 

 映画の中のチャラ男が笑いながら言う。

 

「まったく、この男性最低ですわね。いつか刺されますわ。ね?一夏さん?」

 

「あ、ああ……そうだな……」

 

 全力疾走でバテバテになりながらセシリアの感想に頷き

 

 

 

 

「おお!すごいな、このアクションシーン!素晴らしい殺陣だ!」

 

「あ、ああ……かっこいいな……」

 

 映画のアクションシーンに感嘆する箒に同意しつつ

 

 

 

 

「うむ、やはり和菓子はいいな。上品な甘さでいくらでも食べられる」

 

「そ、そうか~……よかったな~……」

 

 和菓子の大量に盛られた皿にホクホク顔のラウラに疲れた笑みで頷く。

 

 

 

 

 

 ここまでは順調だ。

 

(このままいけば行ける!行けるぞ!)

 

 一夏を追いかけながら安心しきった俺。しかし――

 

(でも……なんか忘れているような……)

 

 そんなことを考えているとポケットの中で携帯が震える。

 

「はい、もしも――」

 

『――ちょっと颯太!一夏知らない!?』

 

 ろくに相手を確認せずに電話に出ると耳にキーンとくるくらいの音量で凛の声が聞こえてくる。

 

 そこでふと俺は窓の外に視線を向ける。

 晴れた青空の下、近くの遊園地の観覧車の窓がきらりと煌めき――

 

(アァァァァァァァ!!!!しまったぁぁぁぁぁぁ!!!!素で忘れてたぁぁぁぁぁ!!!!)

 

「あ~……一夏?さぁ~……知らないなぁ~……。俺も今日は用事があって出かけてるんだが……」

 

『そう……さっきから連絡してるんだけど電源切ってるのかひとっつも出ないのよ!なんか思い出したり一夏と連絡着いたらよろしく!』

 

「お、おう……」

 

 俺の返事を聞いて鈴は通話を切る。そのあとすぐに急いで一夏にプライベートチャネルを繋ぐ。

 

『一夏!!マズいぞ!鈴との遊園地!!!』

 

『…………しまったぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 俺の言葉に一夏も思い出したようで焦った声が聞こえてくる。

 

『ブラボー1より各員へ!緊急事態発生!鈴を待ち惚けさせてしまっている!』

 

『『『――あぁぁぁぁ!!!』』』

 

 どうやら全員失念していたようだ。

よく考えたら初めに気付くべきだった。

 俺たち四人に対して一夏も含めれば五人を監視しなければいけなかった。なのに一人につき一人監視していたのでは誰かがあぶれるに決まっている。

 しかし、焦っていた俺たちはそのことに気付けなった。

 

『ここは多少強引でも――!』

 

「せ、セシリア!これから遊園地に行こう!今すぐ!」

 

 一夏が俺の伝えた作戦を実行する。

 ちょうどいいタイミングで映画の終わったセシリアを遊園地に誘う。

 

「へ?きゅ、急にどうしたんですの?」

 

「セシリアと遊園地に行きたいんだ!」

 

「そ、そこまで言うんでしたら――」

 

「おい、一夏……何をしている?」

 

 と、一夏の背後から冷たいさっきを帯びた声が聞こえてくる。

 見ると腕を組んで仁王立ちする箒がいた。

 

「なかなかトイレから戻ってこないから私も用を足すついでにと様子を見に来たら……これは一体どういうことだ?」

 

「い、いや……これは……」

 

 焦ってアタフタする一夏。どうにか言い訳をと、考えていた俺だったが――

 

「おい、颯太。こんなところで何をしている?」

 

 ビクッ!

 

 突然背後から声がかかると同時に肩に手を置かれる。

 

「ラ、ラウラ……」

 

 振り返った先にはラウラが立っていた。少し視線を巡らせると慌ててつつ隠れているシャルロットの姿が見きれた。

 

「いやぁ~…その……なんと言いますか……」

 

「ん?あれは一夏と……セシリアと箒?」

 

 と、一番見られては行けないものを見られてしまった。

 

「………おい」

 

「は、はい!?」

 

 鋭い視線で俺を睨むラウラの迫力に俺はビシッと姿勢を正す。

 

「お前…何か知ってるだろう?」

 

「いやぁ…何の事だか……」

 

「とりあえず合流して、話を聞かせてもらおうか」

 

「…………はい」

 

 

 

 〇

 

 

 その後一夏とともに遊園地に連行され、鈴と合流した俺たちは

 

「で?どういうことか説明してもらえるか?」

 

 睨みを利かせた箒の言葉に俺と一夏は震えあがる。

 

「その……みんなから遊びに誘われたのはいいんだけど……予定がブッキングしてて……」

 

「だから言っただろ!正直に言っておけばこんなことには!!」

 

「颯太、ちょっと黙っててくれる?」

 

「はい!」

 

 鈴の凄みに俺は大きく返事をして口を押える。

 

「さて一夏さん?何か言い残したことはありまして?」

 

「とりあえず殺す。とにかく殺す。何はなくとも殺す」

 

「楽に死ねると思うなよ?」

 

「覚悟はいいか?」

 

 全員が怒りで背後に般若を纏っている。

 やっぱり無茶だったんだな。南無阿弥陀仏、一夏。迷わず逝けよ。

 

「うう……すまん、颯太。せっかくお前が考えてくれたタイムテーブルだったのに……」

 

「「「「へ~?」」」」

 

 心の中で一夏に合掌していた俺はぐりんっとこちらに向く四人分のハイライトのない無機質な視線に言い表せない恐怖を感じる。

 

「なるほど……貴様が諸悪の根源か……」

 

「颯太さんが一夏さんに変なことを吹き込んだんですのね?」

 

「殺される準備はできてる?」

 

「断罪してくれる」

 

「おいぃぃぃぃ!!!一夏ぁぁぁぁぁ!!!?俺巻き込むなよ!!!もとはと言えばお前が泣きついてきたんだろ!!!」

 

「でも、颯太が考えてくれたのは事実だし……」

 

「俺あの時無理だって言ったよね!!!?これ実現不可能だって言ったよね!!!?言ってない!!!?いや、言った!!!!」

 

 俺は叫びながら俺はプライベートチャネルで頼もしい仲間たちに助けを呼ぶ。

 

『ブラボー1より各員へ!って言うか師匠!簪!シャルロット!助けて!!!マジで!!!本気で!!!HELP!!!SOS!!!』

 

 俺は全力でどこからか見ているであろう三人に助けを求める。が――

 

『ブラボー2より各員へ。作戦終了。これより帰投する。各員撤収!』

 

『ブラボー3、了解』

 

『ブラボー4、了解』

 

『ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!!?』

 

 非情な通信に泣き叫びたくなる。

 

『ブラボー1、健闘を祈る』

 

『頑張って……』

 

『死なないでね』

 

『いやいやいや!!!!せめて師匠はこっち側でしょ!!!?アンタ俺と一緒に面白がってタイムテーブル考えてたじゃん!!!!』

 

『以上、これにて通信を終了する』

 

『おいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』

 

 その後も何度も呼び掛けたが通信に答える者はいなかった。

 




改めましてお気に入り件数3000件記念です!
元ネタは某シリアスなゲームのギャグしかないアニメです。

さて、気付けばお気に入り件数が3000件。
ここまで書いて来れたのも読んでくれている皆さんのおかげです。
これからも応援よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。