IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

122 / 309
第104話 小惑星の力学

 

「くあっ!」

 

 迫りくるビーム。俺へと届くその直前、俺とBTライフルの最大出力の間に入り俺の代わりに受けたのはシャルロットだった。

 

「っ!」

 

 シャルロットを気遣いながら眼前に浮かぶ襲撃者に視線を向けると、再びサイレント・ゼフィルスが攻撃を仕掛けてくる。

 

「やらせませんわ!」

 

 と、俺に向かってBTライフルを向けていたサイレント・ゼフィルスにセシリアが最大出力で突進。そのままサイレント・ゼフィルスをアリーナのシールドバリヤーに何度も叩きつけるように突進し、バリヤーの壊れた四回目の突進とともに市街地の方角へと飛び去る。

 

「シャルロット!大丈夫か!?」

 

「な、何とか……でも、ガーデン・カーテン改が……」

 

 言いながら振り返るシャルロット。

 ブースターを外したシャルロットの手には先ほどの攻撃を防ぎながら、これ以上の防御力の見込めないガーデン・カーテン改が。

 

「悪い、助かった」

 

「うん。無事でよかった」

 

 シャルロットを気遣いつつ立ち上がりながらセシリアの飛んでいった方に視線を向ける。

 

「颯太!シャルロット!無事!?」

 

「なんとか!」

 

「そう!じゃあセシリアを追うけど、行けそう?」

 

「もちろん!」

 

 鈴の言葉に頷き、シャルロットに視線を向ける。

 

「ありがとう、助かった」

 

「うん。僕はブースターがさっきの攻撃でダメになっちゃったからいけないけど……気をつけてね」

 

「ああ!」

 

 シャルロットの言葉に力強く頷き、鈴とともにセシリアの空けた穴からセシリアたちのとんでいった方向へと向かう。

 すごく嫌な予感がする。

 装備の性質上仕方ないとは言え、先を行く鈴に食らいつきながら、俺は幽かに自身の胸中に広がる不安を無理矢理押し込める。しかし――

 

「セシリア!」

 

 俺と鈴がセシリアたちの姿を視界にとらえた時

 

「あああああっ!」

 

 ザクッ、と銃剣がセシリアの二の腕を貫通していた。

 そのままセシリアは貫かれた右腕をそのままに、何も持っていない左腕をゆっくりとサイレント・ゼフィルスに向ける。

 

『バーン』

 

 手で作ったピストルとともに、声は聞こえなかったが、セシリアの口がそう動いた気がした。

 次の瞬間襲撃者の背中を四本のビームが貫いた。

 

「あれは!?」

 

「BTエネルギー高稼働率時だけしか使えない偏向射撃……あんな隠し玉があったのね……!」

 

 鈴とともに驚愕しながらもやっとセシリアたちに追いつく。

 

「鈴!セシリアを頼む!」

 

「あんたは!?」

 

「決まってんだろ!」

 

 機体を崩壊させながら落ちていきそうになるセシリアを鈴に任せて、俺はここまでの加速したスピードのままサイレント・ゼフィルスに《火人》とともにぶつかる。

 

「っ!」

 

 ライフルの銃剣で《火人》を受け止められるが

 

「まだ!こっちがあるんだよ!」

 

 左手で《火人》を押し込みながら右手に握った《火遊》をサイレント・ゼフィルスに叩き込む。

 

「っ!?」

 

 《火遊》の能力で動かなくなった自機に戸惑いを滲ませるサイレント・ゼフィルス。

 《火遊》を腰の定位置に戻すのももどかしく、放り投げるように右手を自由にし、『八咫烏』を装着した右手を握りこむ。

 

「お仕置きの時間だぜ、Girl?」

 

 動きの止まっているサイレント・ゼフィルスのがら空きの顔面にエキゾースト・ヒートを叩きこむ。

 

「がっ!?」

 

 苦しげな声をあげながら地面に叩きつけられるサイレント・ゼフィルス。

 

「くっ!」

 

 ISに絶対防御があっても衝撃自体は殺しきれなかったらしく、軽くよろめきながら立ち上がろうとするサイレント・ゼフィルスに

 

「おっと、まだ終わってないぜ?」

 

 四方に『八咫烏』を配置し、全機同時に弾幕を張る。

 

「っ!」

 

 シールドビットで防ぎながらもそのすべてを防ぎきることはできず、さらに

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 肩の二門の《火神鳴》の荷電粒子砲とバレルフィンで射撃を放ちながら瞬時加速でサイレント・ゼフィルスに接近する。

 

「お前のシールドビットは厄介だ。でもな――」

 

 ガシッと残っている右の《火神鳴》のアームでサイレント・ゼフィルスの身体を掴む。

 

「零距離でなら?」

 

「っ!貴様――」

 

「防げるもんなら防いでみな」

 

 ズドン――と掴んだまま最大出力でアームから荷電粒子砲を放つ。

 

「ぐあっ!」

 

 地面にもんどりうって転がっていく襲撃者を見ながら

 

「痛かったか?でも――セシリアも右腕刺されたときは同じように痛かったんだよ」

 

 ゆっくりと身を起こすサイレント・ゼフィルスを睨みつけながら吐き捨てるように言う。

 

「……やってくれるじゃないか。やはり貴様は――面白い」

 

 今まで無表情だった襲撃者はバイザーに隠れた顔を、その唯一見えている口元を歪ませるように笑う。

 さて――これからどうしよう。ワリと本気で。

 今のは不意打ち&配置のおかげで割とうまくハマったが、今ので倒しきれなかったとなると結構やばいかも。

 

「………」

 

 ゆっくりとBTライフルを構えるサイレント・ゼフィルスに内心冷や汗を流しながら虚栄で何でもないように睨み返しながら《火人》を構える。

 

「――スコールか、なんだ?」

 

 突如サイレント・ゼフィルスに通信が入ったのか何か口走りはじめる。

 

「…………。わかった、帰投する」

 

「何……?」

 

「………ふん……」

 

 サイレント・ゼフィルスはふわりと浮かび上がり俺に背を向ける。

 

「待てよ。逃げるのか?」

 

 あえて俺は挑発する。内心乗って来ないでくれと祈りながら。

 

「………次は殺す」

 

 ぼそりと俺を一瞥して呟くと俺の挑発に乗ってくることなく、飛び去って行くサイレント・ゼフィルスを見送りながら俺は――

 

「………怖かった~~~~~!!!!」

 

 その場にへたり込む。

 

「なんだよあいつ!?初対面の時のラウラがかわいく見えてくるくらい怖えじゃん!マジで今回ばかりは死んだかと思った!」

 

 その後俺は数分後に鈴たちがやって来るまで、いまだ粘つくように体に纏わり憑くやつのプレッシャーに立ち上がれなかった。

 




そんなわけでサイレント・ゼフィルスと『亡国機業』を追い返すことができました。

ちなみに今回の話で颯太君がした零距離射撃はFGOのとある英霊の宝具技を模倣した〝颯太君の見よう見まねシリーズ〟の新技です。
本当は技名出そうと思ったんですが、よく考えたらその技名ネタバレだったんでカットしました。

さて、誰の宝具でしょう?
ヒントは題名です。


次回は一夏の誕生日会の予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。