IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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どうもお久しぶりです。ゴールデンウィーク以降少しやることがあって一週間ほど更新できずすみません。
そんなわけで平凡なの101話目――

???「どうも読者のみなさん!平凡なは前回まででおしまい!今回からは私、井口楓子が主役の、『IF~平凡な私の非日常~』が始まるよ~!!」

始まりません。

楓子「始まらないの!?」

颯太「始まるわけないだろ」

楓子「あんなに設定作ったのに!?あれはちゃんと書くフラグでしょ!?」

颯太「そういう無駄に凝ったことをするのが俺たちの生みの親のこの作者だぞ。知らなかったか?」

無駄って言うなよ。

楓子「そんなぁ~!せっかく出番だと思ったのに……。でももうすぐお気に入り件数3000件だしまた番外編があれば私にも出番が――」

いや、ないから。
次の番外編のネタはもう考えてあるけど、これ以降君らIF勢には出る予定ないよ?

楓子「ええ!?そんなぁ~!」

颯太「てか前書きが長い。本編はよ」

楓子「えっ!?そんな!まだ言いたいことたくさん――」

始まるよ!♪


第101話 開幕

 さて、時は流れてとうとう大会前日。

 今日まで授業や放課後には師匠やシャルロットとともに高機動戦闘の特訓をした。

 新たに追加されたスラスターによって『火焔』の稼働時間が増えたことで機体運用にも余裕ができた。

 そして今は寮の食堂で師匠、簪、シャルロットとともに夕食を食べている。

 

「とうとう明日だね」

 

「ああ、はやいなぁ」

 

 シャルロットの言葉に頷きながら俺は今日の夕食のメンチカツを齧る。サクサクの衣とジューシーな肉汁が最高においしい。

 

「私は今回はでないから…二人とも頑張ってね」

 

「おう、任せろ」

 

「ありがとう、頑張るよ」

 

 簪の言葉に俺とシャルロットが頷く。

 

「それにしてもやっぱり指南コーポレーションってやっぱりすごいわね」

 

 言いながら師匠は定食の煮魚を食べる。

 

「既存の増設ブースターをシャルロットちゃん用に調整して専用ブースター並みの性能にしたり、颯太君の『火焔』用の新型スラスターだって今まで問題だった熱暴走による制限をある程度改善させて稼働時間を倍以上にしたわけだし」

 

「ホント開発部の人たちサマサマです」

 

「アキラさんや貴生川さんは結構『火焔』のエネルギー効率とか計算して一番効率のいいエネルギー循環とか一から見直したらしいですよ」

 

 おかげで今回の大会も熱暴走をあまり意識せずに戦えそうだ。

 

「でも、練習見ててもやっぱりほかのみんなもすごそうですよね。負けてられないですよ」

 

 俺がしみじみと言っているとなんだか学食の入り口の方が騒がしくなってくる。

 見ると一夏がラウラをお姫様抱っこで現れたせいだった。いや、何してんだよ。

 

「一夏は何考えてるんだろうねぇ~……いや、何も考えてないのか」

 

 考えてたらあんな不用意に女の子をお姫様抱っことかしないだろうな。

 

「そう言えば颯太君って一夏君への誕生日プレゼントは決まったの?」

 

「前に買い物行ったときは結局決めかねてたよね」

 

 師匠とシャルロットの言葉に頷く。

 

「まあ一応は。さっき確認したら届いてました。明日に間に合ってよかった」

 

「何を買ったの?」

 

「うちの地元のお菓子。いろいろ迷ったけど一夏はオタクじゃないしそういうのがいいなかなって」

 

 簪の問いに答える。

 

「颯太君にしては無難なものを選んだね」

 

「俺にしては…って失礼な」

 

「アハハ……でも、僕もてっきり颯太はマンガとかアニメのDVDとかを贈ると思ってた」

 

「私も……」

 

「ブルータス、お前らもか!」

 

 シャルロットと簪まで師匠の言葉に苦笑いを浮かべながらも言う。

 

「それも考えたけど、そういうのはまたの機会にするさ」

 

 俺は肩をすくめながら言う。

 

「まあ俺だって常識ってものを弁えてますよ」

 

 

 

 〇

 

 

 

「――さて、仕込みを始めますか」

 

 部屋に戻った俺は一人ニヤリと笑みを浮かべながら今日届いた二つの荷物を見る。

 一つは先に述べた俺の地元のお菓子。そしてもう一つは………

 

「常識?何それ美味しいの?」

 

 俺は一人笑いながら一夏へのプレゼントに手を加えていく。

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大会当日。

 

「ファ……」

 

「でかいあくびだな」

 

「ちょいと昨日作業してたもんでね」

 

 キャノンボール・ファストの会場で一夏とともに秋晴れの空を見上げながら言う。

 と、一夏はなぜかキョロキョロと観客席を見回している。

 

「どったの?」

 

「いや……蘭に招待状送ったんだよ。ちゃんと来てるかなぁって思ってさ」

 

「なるほどね」

 

 一夏の言葉に納得して頷く。

 このイベントも学園祭の様に一人につき一枚、一人だけ呼べる招待状がある。どうやら一夏はそれを蘭にあげていたらしい。

 

「そう言えば颯太は誰かに招待状あげたのか?」

 

「アキラさんにあげた。潮とかにあげるのも考えたけど、この間学園祭に来たところだし、交通費もバカにならないからさ。指南の社長たちは企業で来てるだろうけど、アキラさんは招待状とか上げないとモニターで済ませそうだったからさ」

 

「ふ~ん」

 

 まあアキラさんは基本引きこもりだから、こういう機会でもなければ自分から出かけることも少ない。

 

「一夏、颯太、こんなところにいたのか。速く準備しろ」

 

「おう、箒」

 

「いやなに、すごい観客だなって話してたんだ」

 

「ああ、例によってIS産業関係者や各国政府関係者も来ているようだしな警備も相当な数だ」

 

 箒の言葉に頷きながら俺も準備を始める。が、一夏は今だ蘭を探しているようでいまだ視線をさまよわせている。

 そんな一夏の元につかつかと歩み寄った箒は一夏の耳を無理矢理つかみ引っ張って移動を始める。

 

「いてててっ!?」

 

「さっさと来い!まったく……子供じゃあるまいし」

 

「あ、あのなあ!子ども扱いしているのはそっち……いててて!」

 

「お前が来ないと私が怒られるんだ!」

 

「わかった!わかったから離してくれ!」

 

「まったく」

 

 赤くなった耳を擦る一夏。

 

「まあしょうがないよ。一夏も可愛い後輩の前でかっこ悪い姿見せられないからさ。どこにいるか探してたんだよ」

 

「何!?おい、一夏!どういことだ!?」

 

「いやどういうも何も――」

 

 俺がわざと投下した爆弾に一夏を問い詰めようと詰め寄る箒とそんな箒から逃げようと歩を進める一夏。

 そんな二人を楽しみつつ俺はふと観客席に視線を向ける。

 

(こんなに人多くて、アキラさん大丈夫かな?)

 

 

 

 〇

 

 

 

「えっと、Fの45……Fの45……」

 

 マップと自分の座席番号を確認しながら、蘭は視線を下げたままに歩を進める。

 

 ドンッ

 

「きゃっ!?」

 

「あら?」

 

 案の定人とぶつかってしまった。

 蘭は慌てて姿勢を戻し、前の人物に頭を下げる。

 

「ご、ごめんなさいっ」

 

「いえ、いいのよ。気にしないで」

 

 相手の女性は美しい金髪をたなびかせる年上で、大人の色気を溢れんばかりに放っている。

 年は二十代後半だろうと思われる、豪華な赤色のスーツに身を包み、女盛りといった雰囲気だ。

 シャープな造形のサングラスで目元を覆っている女性だった。

 豊満なバストにくびれた腰、キュッと引き締まったヒップが性別問わず目を引く。

 

「ケガはない?」

 

「は、はいっ。すみませんっ」

 

「そう、よかった。それじゃあ気をつけてね」

 

「は、はい」

 

 金髪の女性は小さく手を振ると、蘭の横を通り過ぎていく。

 すれ違う寸前、その耳に着けたゴールドのイヤリングが小さく光る。

 蘭は数秒その女性の後姿を見つめ、自身の胸元を見ながら何か考え込んでいたが、すぐに思考を切り替え座席を探し出し座る――のだが

 

「……っ!……っ!」

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 蘭は隣に座る人物に声をかける。

 その人物は自分の物よりも濃い赤毛を後ろで纏めたの小柄な、少し挙動不審気味に震える少女だった。目元にはクマがあるが整った顔をしているが、その顔は緊張に凝り固まっている。

 

「む、無理……人、多い……やめとけばよかった……」

 

 緊張した面持ちでブツブツ呟く少女。

 

「あ、あいつに貰ったからって……来るんじゃなかった……」

 

「あいつ?」

 

 少女の呟きに首を傾げながら蘭はそっと少女の背中に手を添えて擦る。

 

「っ!?」

 

「あ、すみません。こうした方が落ち着くかなって……」

 

「あっ……いや……その……」

 

 その時になってやっと蘭の存在に気付いたのか挙動不審の少女は少し視線をさまよわせる。

 

「その…………あ、ありがとう……」

 

「困ったときはお互い様ですよ」

 

 顔を赤らめ俯く少女に笑顔で言う蘭。

 

(この人……高校生くらい?私と同じでIS学園の誰かに招待されたのかな?)

 

 隣の赤毛の少女の背中を擦りながら蘭は開会の瞬間を迎える。

 その顔はさながらサーカスの始まりに心躍らせる子供のようだった。

 


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