IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第97話 新たなイベント

「なっ!?一夏さん、誕生日は今月なんですの!?」

 

「お、おう」

 

 寮での夕食でいつものメンバーで食事をしながら談笑をしていると、突然セシリアが声をあげた。

 話題の過程でなんとなく誕生日の話題になったのだが、そんな時一夏が「そう言えば、俺もうすぐ誕生日だ」と言う爆弾を投下したのである。

 一夏本人は、そんなに騒ぐことか?みたいな顔で首を傾げてる。

 

「へ~、いつなの?」

 

「九月の二十七日だよ」

 

「へ~…ってことは日曜日だね」

 

 シャルロットがカレンダーを頭の中に描いているのか、うんうん頷く。

 

「一夏さん、そういう大事なことはもっと早く教えてくださらないと困りますわ」

 

「え?お、おう。すまん」

 

 憤慨するセシリアに一夏は困惑しながら頭を下げる。

 

「とにかく二十七日の日曜日ですわね」

 

 セシリアは純白の革手帳を取り出すと、二十七日に二重丸を書き込んだ。

 

「お前はどうしてそういうことを黙っているのだ」

 

 シャルロットの隣でラウラがむすっとした口調で言う。

 

「え?いや、別に大したことじゃないかなーって」

 

「ふん。しかし、知っていて黙っていたやつもいることだしな」

 

「「うっ!」」

 

 ラウラにギロリと睨まれ一夏のダブル幼なじみが固まる。

 ちなみに俺も知っていたがそれを言うと藪蛇なので黙っておくとしよう。

 

「べ、別に隠していたわけではない!聞かれなかっただけだ」

 

「そ、そうよそうよ!聞かれもしないのに喋るとKYになるじゃない!」

 

 箒と鈴はそんな言い訳をしながらパクパクとご飯をほおばっている。

 こいつら普段仲いいけどやっぱ恋敵同士だからかたまにこういう牽制のしあいが起こるよな。

 

「とにかく!九月二十七日!一夏さん、予定は空けておいてくださいな!」

 

「あ、ああ。一応、中学の時の友達とか颯太が祝ってくれるから俺の家に集まるんだけど――」

 

 と、一夏が言った瞬間セシリアとラウラから「お前も知っていたなら教えろ」という鋭い眼光が飛んでくるが、俺はどこ吹く風で「情報収集を怠ったお前らが悪い」とぼそっと呟くことで躱す。

 

「みんなも来るか?」

 

「も、モチロンですわ!」

 

「何時からだ?」

 

「えーっと、四時くらいかな。ほら、当日って〝あれ〟があるだろ?」

 

 一夏の言葉に全員「そういえば」と言う顔をする。

 一夏の言う〝あれ〟とはISの高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』のことだ。本来なら国際大会なのだが、IS学園があるここでは少し状況が違う。

 市の特別イベントとして催されるそれに、学園の生徒たちは参加することになる。

 まあ専用機持ちが圧倒的に有利なので、一般生徒の参加する枠と専用機持ち限定の枠に分かれている。

 学園外でのIS実習となるこのイベントでは、市のISアリーナを使用する。臨海地区に作られたそれはとてつもなくでかく、二万人以上を収容できるらしい。

 ちなみにそのアリーナで近々流木野サキのコンサートが予定されている。チケットは即日完売。さすがの人気である。え?俺?以前共演したことで本人からシャルロットとともに最前列のチケットいただきましたとも。

 

「ん?そういえば明日からキャノンボール・ファストのための高機動調整をはじめるんだよな?あれって具体的には何をするんだ?」

 

「ふむ。基本的には高機動パッケージのインストールだが、お前の白式には無いだろう?」

 

「その場合は駆動エネルギーの分配調整とか、各スラスターの出力調整とかかなぁ」

 

 と、一夏の問いにラウラとシャルロットが答える。

 

「ふうん。確か高機動パッケージって言うと、セシリアのブルー・ティアーズにはあるんだったよな?」

 

「ええ!わたくし、セシリア・オルコットの駆るブルー・ティアーズには、主に高機動戦闘を主眼に捉えたパッケージ『ストライク・ガンナー』が搭載されていますわ!」

 

 と、誇らしげにその腕で胸を押さえるセシリア。相変わらずのモデルようなポージングがばっちり決まっていた。

 先日の学祭での一件以来どこか元気がなかったが、少しは元気になったのだろうか?

 詳しくは聞いてないが、先日取り逃がした敵がイギリスから奪取した『ブルー・ティアーズ』の姉妹機を使っていたことに何か関係があるのだろう。

 先日の一件はなかなかに根の深いもののようだ。

 『亡国機業』――『ファントム・タスク』と呼ばれるこの集団の情報は少ない。

 目的不明。

 存在理由不明。

 規模不明。

 拠点不明。

 何もかもが不明だらけだ。

 一説には第二次世界大戦のころからある組織だ、なんて噂もあるくらいだ。

 まさに亡霊、謎が多いというより謎しかない組織である――と、先日ミハエルさんに教えてもらった。

 ひとつわかっているのは近年世界各国で起こるIS関連のテロや事件にはいつも『亡国機業』の影がちらついているらしい。

 そんなことを思い出しながら俺は思考をキャノンボール・ファストに戻す。

 みんなの話を聞いているとセシリア以外は鈴は『甲龍』の高機動パッケージは間に合いそうもないらしい。

 ラウラは『シュヴァルツェア・レーゲン』の姉妹機の高機動パッケージを調整して使うそうだ。

 シャルロットは『リヴァイヴ』は第二世代でもともとこれ以上の開発はないため増設ブースターで対応することになるらしい。しかし、もともと速度面は増設しやすくなっているらしく、さらに指南の開発部の人たちがシャルロット用に調整をしているらしい。

 

「てことは俺と箒、颯太と簪さんは追加なしで調整することになるのか」

 

「私は最近ISが完成したばかりだし…まだ微調整があるから、今回は見送ろうかと思ってる……」

 

「あ、そうなのか?」

 

 簪の言葉に俺は驚きながらも少し納得した。

 夏休みに入ってやっと完成したと聞いてるし、大会に出る前にしっかりデータ収集をしたいのだろう。

 

「じゃあ俺と箒と颯太が――」

 

「フッフッフ~、残念ながら俺も新戦力投入だ」

 

「何!?」

 

「まだ増えるの!?」

 

 俺の言葉に箒と鈴が叫ぶ他のメンバーもシャルロット以外は驚いた顔をしている。

 

「と言ってもスラスターを新型の物に調節してエネルギー分配の効率を上げるってだけだけどな。これで最大2.4倍も稼動時間を獲得できるようになるらしい」

 

「まあ颯太の『火焔』は仕様が面倒だしな」

 

 ラウラが納得したように頷く。

 

「アキラさん達が色々検証してやっとここまでできるようになったんだよ。しかも稼働時間を伸ばすだけじゃなく出力の稼動限界を超えた領域へと強制的に引き上げることも可能だからブレーキとアクセルにもなるわけだ。これでもうちょっと戦いやすくなる」

 

 アキラさんや貴生川さんにはホント頭が下がる。

 




少し中途半端ですがここで区切ります。
続きは速ければ今日中に更新できるかも……

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