IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第88話 俺の考える最強の出し物

 俺の就任発表と文化祭についての連絡のあった全校集会と同じ日、その放課後。

 俺たちのクラスは文化祭での出し物を決めるために特別HRを行っているわけだが……

 

「えーと……」

 

 クラス代表として会議をまとめていた一夏が黒板に並ぶ案を見ながらため息をつく。

 黒板には『織斑一夏のホストクラブ』『織斑一夏とツイスター』『織斑一夏とポッキー遊び』『織斑一夏と王様ゲーム』の文字が並んでいる。

 ………俺は!?

 こういうの求められても困るけど求められないとそれはそれとしてなんかムカつく!

 まあそれはさておき……

 

「却下」

 

 一夏の言葉にえええええー!!と大音量でブーイングが教室に響く。

 なんていうか、どっちの言いたいことも分かるからめんどくさい。

 

「私は嬉しいわね。断言する!」

 

「そうだそうだ!女子を喜ばせる義務を全うせよ!」

 

「織斑一夏は共有財産である!」

 

「他のクラスから色々言われてるんだってば。うちの部の先輩もうるさいし」

 

「助けると思って!」

 

「メシア気取りで!」

 

 とまあこんな具合だ。

 一夏は助けを求めて視線を動かしているが助けてくれそうな人もおらず、織斑先生も先ほど

 

『時間がかかりそうだから、私は職員室に戻る。後で結果報告に来い』

 

 と、一夏に言い残し去って行った。

 あの人担任のくせに興味なさすぎじゃね?

 

「ああもう!山田先生、ダメですよね?こういうおかしな企画は」

 

「えっ!?わ、私に振るんですか!?」

 

 教室の横に控えていた山田先生が急に振られておろおろと答える。

 

「え、えーと……うーん、わ、私はポッキーのなんかいいと思いますよ……?」

 

 あらら……まあこれは頼る相手間違えたな。

 

「颯太!お前からも何か言ってくれよ!」

 

「え?俺?俺に振っちゃう?名前の挙がらない哀れなフツメンの俺に振る?」

 

「………なんかごめん」

 

「謝んなよ!お前それ、謝っちゃったらすっごく嫌味だって自覚あるか!?」

 

「いやな……ちょっとよくわからないけど謝るべきかと思って………そうじゃなくて!俺はただお前ならまともな案を出してくれるかと思って……」

 

「案……案ねぇ~………じゃあ、はい!」

 

「はい、颯太!」

 

「喫茶店でどうよ」

 

「まとも!そういうのが欲しかった!」

 

 俺の意見に一夏が嬉しそうに頷く。

 

「甘いぜ一夏!ただの喫茶店で売り上げが見込めると思うか!?だから喫茶店にプラスしてもう一つ要素を加える!」

 

「何っ!?そ、それはいったい……?」

 

 俺の言葉に一夏が興味深そうに訊く。

 

「それは………」

 

「そ、それは……?」

 

『それは……?』

 

 俺は言葉を溜め、みんなも続きを催促するようにごくりとつばを飲み込む。

 

「………マンガ喫茶だ!」

 

『…………』

 

 ふっ。あまりの良案にみんな言葉もないようだ。

 

「えっと……どういうことだ?」

 

「いいか一夏。文化祭……確かに学校側から各クラスに補助金はでるだろう。しかし!金は有限!それを有意義に使うにはどうすればいいか……削れるところは削る!」

 

 俺はビシッと指さしながら高らかに言う。

 

「喫茶店であれば文化祭にやって来た人たちの休憩の場となり飲み物代や軽食で経費を回収できる!さらに特別なプランを用意し一時間ドリンクバー付き○○円と設定すればあとは飲み物は勝手に自分でドリンクバーに通ってくれるから店員が手を回す必要性は減る!ドリンクバーの原価は低いからマンガに使うお金も増える!さらにマンガはみんなが持っているものを持ち寄れば種類は増える!飲み物に使う経費は少なくなるから浮いたお金で古今東西さまざまなマンガを買いそろえられる!どうだ!?」

 

「あぁ……うん……それは……」

 

「おっと?もしかしてドリンクバーの機械を用意する心配をしてるのか?安心しろ。うちの会社の食堂に置かれていたものが倉庫に眠っている!壊れたのではなく食堂の改装で新型を導入したことで仕舞いこまれただけでまだまだ現役だ!会社から借りればタダ同然、むしろタダ!どうだ!?抜かりないぜ!?」

 

『…………』

 

 フッハハハ!俺の圧倒的な良案にみな絶句だな!

 

「颯太……」

 

「ん?」

 

「却下」

 

「なんでさっ!?」

 

 一夏の言葉に思わずガタリと立ち上がる。

 

「いやダメだろ!」

 

「ダメ?話題にはなるだろ?」

 

「いやいやいや!話題にはなるかもだけどもっとこう……なっ!?」

 

 一夏がため息まじりに苦笑いで言う。

 

「ていうかアレだろ?本当は経費で集めたマンガをもらうのが目的だろ?……なんて、そんなわけないかぁ~、なぁ?」

 

「…………あ、当たり前じゃないか~。俺を何だと思ってんだよ~?」

 

「おい、目を見て言え、目を見て」

 

「もちろん!そんな事ミジンコほども考えてないぞ!!」

 

「おう!言い切りはいいけど目が盛大に泳いでるぞ?」

 

 くそう!俺の思惑を言い当てられて思ったより動揺してしまった!落ち着け俺!まだ挽回できるはず!

 

「誰か他にないか~?マンガ喫茶含めて今までに出た案以外で何かないか~?」

 

 あ、ダメだった。

 

「何かもっと普通の意見をだな――」

 

「ではメイド喫茶はどうだ?」

 

 と、一夏が頭を抱え始めた時、思わぬやつから思わぬ意見が出た。

 その意見を言ったのはなんと……ラウラだった。

 ラウラを除いてクラスの全員が呆然とする。

 

「先ほどの颯太の意見……喫茶店というのは悪くなかった。だから喫茶店にプラスする要素をマンガではなくメイドにすればどうだ?」

 

「え、えーと……みんなはどう思う?」

 

 少し理解に時間がかかったのか一夏がゆっくりと周りに問いかける。

 

「いいんじゃないかな?一夏には執事か料理が上手いし厨房を担当してもらって、颯太も執事をしてもらえばオーケーだよね。あと、颯太ってマンガとかアニメ好きだからそういう知識は多そうだから監修してもらえばいいし」

 

 シャルロットのラウラへの援護射撃はクラスメイトにヒットしたようでどんどんと賛同の声は広がっていく。

 

「織斑君と井口君の執事!いい!」

 

「それでそれで!」

 

「メイド服はどうする!?私、演劇部衣装係だから縫えるけど!」

 

 みな乗り気で少し変わった案だが一夏もそれを沈めることはできそうにない。

 というかこういうメイド喫茶みたいな案って俺たち男子が出すものではないだろうか?

 


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