最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
今回は流れからして【過去編②】を掲載する予定でしたが、書いている途中で深刻な八色不足に見舞われた為、先にこちらを掲載する事としました。
【後半】と【過去編②】も、大体頭の中では出来上がっておりますので、近いうちに掲載したいと思います。
「ハァ…ハァ……っ…ハァ…」
私達、一年C組仲良し美少女4人組は、現在ただただ走っている。
「てかさぁ…マラソン大会終わってんのに、まだ授業が持久走とか手ぇ抜きすぎじゃね…?高木のヤツ……」
「マジそれだよねー…あー…お腹空いたー…」
そう、私達は現在4時限目の体育で、絶賛持久走中なのである…
お昼前の持久走マジ堪えるわー。まじパないわー。
と、特に面識のない戸部先輩がまた私の中に降臨していると、前を行く紗弥加と智子の体育教師の高木への悪態が新たな盛り上がりをみせる。
「…てかさぁ、高木、私らが走ってると思いっきり胸見てくんだけどぉ…特に智子の激しく揺れてる乳を…」
「うっそ…!マジでぇ…?…マジきも〜い…暑いけどあたしジャージ着て走ろっかなぁ…」
と心底不快そうにギャーギャー騒いている。
うわぁ…まじか…前々からなんか視線がキモいとは思ってたけど…
ホント近頃の教員ってまじヤバくない?何がヤバいってまじヤバい。教師の選別はしっかりやってよ〜教育委員会〜…
あ、そういえば隣にちょっぴり権力持ってるヤツが走ってた。
「ねぇ、いろはぁ!会長権限でなんとかなんないの〜?変態教師の体育見学禁止令とかさぁ」
んな事出来るわけないが、冗談混じりに尋ねると、いろはは謎の返しをしてきた。
「ん〜……やっぱり男ってさぁ、おっきい方がいいのかなー…?」
………は?急に何言いだしちゃってんのこの子。
てかおっきいって何よ。その言い方だと変な意味にも捉えられるんですけどもっ!?
怪訝な表情で見つめていると、「でもなー、あっちはちっちゃいしな〜…」とかブツブツ言ってる。
「い、いろはさん?何の話してんの!?」
いよいよもってマズい方向に話が向かっていっているのではないかと心配になり声を掛けると
「例えば、例えばなんだけどさぁ、すごく魅力的な2人の女の子が居るとするじゃない?」
「………はぁ」
「で、片方が巨乳で片方が絶壁。それだったらやっぱり巨乳の方を選ぶのかなぁ? 」
ホッ…どうやら胸の話なのねと何故だか安心する私。
いやマジでお父さん本当に心配しちゃったよ〜…
……ん?…絶壁……!?
「いや…それは好みの問題なんじゃ…」
「だよねー。でも絶壁な方もそこ以外ではとんでもなく魅力的な女の子でね。……でねでね!そんな魅力的な女の子達の中に、魅力も負けてるわ胸の装備も平均的(希望的観測)だわの女の子が割り込んでいって、どうやったら一歩リード出来んのかなーってさ。まあまずは同じラインに並ばなくちゃなんだけど………。あ、例えばの話ね?例えばの」
知らんわ………大体そんな具体的な例えばなんて初めて聞きましたよ私。
てか希望的観測と言われましても答えづらいし……あ、うん。まあ確かに希望的観測かもしれませんねとチラリといろはの胸部を一瞥してみる。
しかしあれだけ恋愛の楽勝人生を歩んでたいろはが、急にこんなおかしな事を言いだすほどのお悩み中とはねぇ。
いろはが本気出して落ちない男子なんて、葉山先輩くらいなもんなんじゃないの?
あの人ってそんなに難易度高いのかなー。
そんな不毛な無駄話で無駄に体力を消耗しながら、体育は無駄に終わっていった。
× × ×
「あー…疲れたー…しばらくちょっと動けないかもー…」
「あんたら乳だのなんだので無駄に話しすぎだからぁ…んじゃああたしら先に教室帰って、お弁当の準備しとくよー。飲み物も買っとくからねー」
ありがとー、と言う私といろはを置いて、紗弥加達は一足先に教室に帰って行った。
いや、乳の話はあんたらが言いだしたんですけどね?
しばらく休んでから私達も教室に向かっていると、そこには戦場が広がっていた…
「いやー…マジで購買って戦場なんだねぇ…」
「ねー、わたし達お弁当持ちで良かったよねー」
いやホントもう漫画かアニメかよ?ってくらいの殺伐とした戦場っぷり。
こんなの現実にあったんだね…普段こんな時間に購買なんか近づかないから知らなかったよ…
戦々恐々と購買を横目に見ながら、ふと持久走の疲れを思い出し、目をキュッと瞑って伸び〜〜〜っとしてみる。
くー!伸びるー!気持ちいー!
「そういえばさぁ…」
いろはに話し掛けながら目を開けると、そこにはもういろはの姿は無かった……
え!?なに急にホラーな展開なの!?
Anotherなら死んでるの!?
と若干古めなアホな事を考えていたら、いろははいつの間にかかなり前方の男子生徒の元へと猛ダッシュしていた。
さっきまであれだけヘタってたのに……
× × ×
「せんぱーい!」
「…おう一色か、珍しいな」
「さっきまで体育で持久走してたんですよー…汗臭くないですかぁ…?」
あ、比企谷先輩を発見したのね。
うわー…あの嬉しそうな悪顔…胸元ぱたぱたしたりして上目遣いでニヤニヤと身体を寄せ付けて比企谷先輩の様子を伺ってるよ…
「え?いや別に…」
「なに照れてるんですか気持ち悪いですよ先輩」
わざと照れさせておいてその言い草。ホント生き生きしてますね。
「照れてねーよ…てか汗臭いかどうかなんて嗅がせようとしてくんじゃねーよ…恥じらいってもんが無いのかね。近ごろの女は」
「大丈夫ですよ。しっかり制汗スプレーしてありますし。鼻腔をくすぐる爽やかで甘い香りしかしませんよー」
「じゃあなんで汗臭くないか嗅がせてくんだよ…あざとすぎだろ…」
「なに勘違いしちゃってるんですか可愛い後輩に女を意識しちゃってますかそうですか」
「お前に女なんか意識しねえよ。お前ちょっと小町と被ってるから、せいぜい妹くらいにしか見えねえっての」
「はっ!ドン引きするほどのシスコンの先輩が妹みたいってまさか一生一緒に居てくれって意味ですかいくらなんでもまだそこまでは早すぎますごめんなさい」
「ちげーよ…ま、もうなんでもいいや…」
やばい…このままだと私の存在感が皆無!
「あ…あのー…」
声かけ辛っ!これ私会話に割り込んじゃって良かったのかしらん…
でも割り込まないとこのまま空気だったし致し方ないよね…
「わ!ごめん香織!せんぱいせんぱい。この子友達の家堀香織です」
「……うっす」
「あ、初めまして!比企谷先輩。いろはの友達の家堀と申します」
「これはこれはご丁寧にどうも…。……ってか何で俺の名前知ってんの?」
「いろはから色々とお話伺ってるんで!」
「色々って……どうせこいつの事だから、ろくな事言ってねえんだろうな……ぼっちだのシスコンだの」
いや、その情報は以前あなたの口から聞きましたけどね?
「てか、………一色って俺の名前知ってたの?」
……え?そこから?
「いやいや、知らない訳ないじゃないですかー!わたしと先輩こんなに仲良しじゃないですかー……本当に先輩は私の事なんだと思ってるんですかねー…」
ぷくっと頬を膨らませるいろは。
でもこの先輩にはそのあざとさは通じないんだよねぇ。
「え?俺と一色って仲良かったの?……そもそも知ってたんなら先輩の前に名前付けろよ…」
呆れ顔でいろはを見ながらも、なぜか私をチラチラ見てくる比企谷先輩。え?なに?惚れちゃった?
「あのー…何か?」
「お、おうスマンな。一色にもちゃんと同性の友達が居るんだなとちょっと驚いてな。なんなら全同性に嫌われてるまである、と思ってたからな」
お、Oh…なかなか手厳しい先輩で…
「友達事情は先輩にだけは言われたくないんですけどねー…」
心底馬鹿にした目で先輩を見るいろはも大概だけどね…
「ま、まあ確かにいろはは同性には妬まれちゃったりイジられちゃったりしてますけど、私とあと2人の親友は仲良くさせてもらってます」
ペコリとうやうやしくお辞儀してみる。
いい?いろは。後輩ってのはこういうもんだって、しっかりと目に焼き付けておきなさい?
派手なトップグループに所属しているとは言え、私は結構こういう所はきちんとしている方なのだ。
「そうか。じゃあこれからもよろしくやってあげてくれると助かるわ」
そう言う比企谷先輩は、ちょっとだけ優しい笑顔を見せた。
へぇ…目が淀んでてパッと見は確かに印象悪いけど、こういう表情もするんだな…この人。
ちゃんといろはを大切に想ってるんですねっ。
そんな優しげな笑顔で自分の事を頼まれてるいろはも、ちょっと頬を染めちゃったりして嬉しそうに比企谷先輩に微笑んでる…
なによもうっ♪爆発しろっ♪
しかし、そんな和やかな空気を吹き飛ばすかのように、可愛らしく元気いっぱいの声が私達……というか比企谷先輩の元へと届いた。
「あ!ヒッキーこんなとこに居たーっ」
ピンク掛かった茶髪に染め上げられた頭の上で、特徴的なお団子をゆらゆら揺らし、たわわに実った存在感たっぷりの2つの凶器をバインバイン揺らし、子犬のようにパタパタと比企谷先輩へと走って来る一人の女の子。
美しき豊穣の女神が今まさにここに舞い降りた…