最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
いろはすファンなので10.5巻の発売が待ちきれず、初めてSSを書いて見ました。
八幡に出会ってからのいろはすの心情の変化を、第三者視点から見たらどんな感じなんだろう?と思って書いてみました。
駄文極まりないとは思いますが、もしお時間に余裕がございましたら、読んでみていただけたら幸いです。
校内に4時間目終了のチャイムが鳴り響き、本日のお昼タイムが始まる。
私、家堀香織(かほりかおり)はクラスの女友達4人でいつものようにお弁当を広げた。
その友達の中のひとり、一色いろはが、ここ最近ちょっと様子がおかしい。
この一色いろはという女は、恵まれた容姿の上に一年生にして生徒会長という肩書きを手に入れ、今や学校の超有名人、雪ノ下先輩や葉山先輩と並ぶ程の有名人だったりする。
なにがどうおかしいかと言うと、ここ最近すっかりいろはの代名詞とも言うべき『あざとい女』がナリを潜めている。
この一色いろはという女、とにかく男子に人気がある。その恵まれた容姿に加え、天性とも呼べる程の男たらしの才能で、クラスはもとより学年中にファンが居る。
打算的で計算的であざとい「私の可愛さアピール」に、お馬鹿な男共はコロコロ騙される騙される(笑)
意中の男子をたらし込まれた女子も一人や二人、十人や二十人では無いってくらい、手広く恨みを買ってるみたい!
その上、勘違いさせるだけ勘違いさせて、いざ告られるとバッサバッサとなぎ払う…女の敵でもあり男の敵でもあるような、そんな女だ。
じゃあなんでそんな女とつるんでるかって?
最初は私達も打算だったんだよね。
もともと私香織とおな中の友達、紗弥加と智子の3人は中学でも派手目なグループだった。トップでは無いけれど。
で、こんな男子(のみ)に人気な美少女をグループに取り込めば、トップグループになれるんじゃない?ってワケ。
女子の反感買ってヤバくなったら切り捨てちゃえばいいしね♪
最初はそんな軽い気持ちで誘ったんだけど、いざ付き合ってみたら、予想外に良い奴!
始めの悪印象との対比も相まって、気付いたら仲良しになってました(笑)
コイツ男の前ではあんなだけど、女の前ではサバサバしててすごく話しやすいんだよね〜。
今では私らグループの中心になっちゃったよ。
男の前で急にぶりっこしても、私らの中ではまたかよコイツ〜ってな感じ。
でもやっぱりこの女が良いヤツって理解してるのは私らだけで、大多数の女子には嫌われてる。
イジリ(イジメでは無い)で、勝手に生徒会長に立候補させられちゃうくらいだしね〜でも今やその逆境を逆手に取って学校中に知られる美少女生徒会長となってしまうあたり、やはりこの女は中々に侮れない。
× × ×
そんないろはが、ちょうど三学期が始まったあたりから、すっかり『あざとい女』を見せなくなった。
以前ならどんな時でも周りの男子に可愛さをアピールする事は忘れなかった。
甘い猫なで声で挨拶、目が合えば魅惑的な笑顔で悩殺。
頼みごとがあれば上目遣いでお・ね・が・い☆
でも今はもうそんな素振りは一切ない。
もちろん仲の良かった男子と顔を合わせれば挨拶はするし無視って訳でもない。
ただ、そこには以前のようなあざとさは無く、周りの男子には興味が無くなっちゃった感じなんだよね。
そんないろはの変化にクラスの連中も首をかしげていたのだが、決定的だったのがD組の中西翔太君がいろはを訪ねてきた時だ。
中西君は、バスケ部の次期エースと目されるファンの多い爽やかイケメンだ。
ちなみにそんな中西君が、いろはに夢中になった事でアンチいろはの空気が決定的になったと言えなくもない。
いろは的にも中西君はお気に入り(利用価値的に)だったようで、数多く居る休日お出掛け荷物持ちの中でも、かなり利用頻度が高かったっけな。それはもういろはが所属しているサッカー部のパシリ、戸部先輩ばりに…
………こうやって冷静に考え直すと、いろはすマジぱないわー
でも、ここ最近全然お声が掛からない事が不安で不満だったらしく、ついに先日自ら我がクラスまでお誘いに来たのだ。
『なあなあいろはー。最近全然遊んでないじゃん。また買い物付き合うから、次の休みにでも遊びに行こうよ〜』
そんな中西君に、いろははあざとい笑顔をするでもなく、いつもの猫なで声で惑わすでもなく、冷めた笑顔と淡々とした口調で、こう言い放ったのだ。
『あ、翔太君ごめんね。最近生徒会の仕事忙しいし、そっちに集中したいから、もう【そういうの】やめたんだ。』
その冷めた態度にクラス中絶句!中西君も絶句!
静まり返るなか周りの目を気にしてか、「そっかぁ…」と大人しく自分のクラスに戻っていったけど、その背中は確かに泣いてたね(涙)ふぁいとっ!
× × ×
お弁当を広げながら、ずっとみんなが思っていた事を口にしてみる。
「いろはさー、なんか最近変わったよね」
「そ?別に特に変わんないと思うけどー。あ、でも意外と生徒会の仕事楽しくて、結構充実はしてるかも」
うーん。そんだけかなぁ?紗弥加と智子も、なんか納得してないカンジ。
そんな事を考えながら卵焼きを突いていると、視界の端の扉んトコで、見知らぬ男子がうちのクラスの地味男(あいつ名前なんてったっけ?)と話してるのが見えた。
チラっとそっちに視線をやると、アレ?なんか見たことあるな、あの人。
あ、前にいろはが生徒会長に決まるちょっと前くらいに、あんな感じでいろはを訪ねてきた二年生か。
生徒会の人なのかな?
そういえばあの時はいろはの表情変化は凄かったな(笑)
二年生に呼ばれてるって聞いた途端、目をキラッとさせてグルンと凄まじい勢いでそっち見たかと思ったら、ほんの一瞬だけ悲壮感漂うガッカリ顔。
でも次の瞬間には営業用スマイルを張りつけてパタパタ走ってったっけ。
ま、二年生って聞いて、おおかた目を付けてる葉山先輩が訪ねてきたのっ!?って期待したんだろうけど、でも流石にあのガッカリ顔は無いわー(笑)先輩に対して…ってか人として?
今回もあんな早ワザ表情変化で笑わせてくれるかなー?ってワクワクして見てると、地味男がオドオドといろはに声を掛けてきた。
普段私らトップグループに話しかけたり出来ないから、緊張しちゃうんだよねごめんねー
予想通りいろはは二年生に呼ばれてるって言われたその瞬間…
キラッ!と!
グルンっ!と!
そしてガッカ……あれ…?
あれ?なにその表情…
期待したガッカリ顔はどこいったの?
超嬉しそうな満面の笑顔なんですけどこの子。
あれあれ?訪ねてきたの前と同じ人ですよね?後ろに葉山先輩でも居たの?
その二年生の姿を確認すると、すでに地味男の存在など忘れているのか始めから見えてなかったのか、一直線にパタパタ駆け出したいろはさん。そして…
「せんぱーい!どうしたんですかー?」
甘い!甘すぎる!
久しぶりに聞いたよいろはの甘い猫なで声!
ここ最近ナリを潜めていた甘い甘い甘え声。
でも、若干の違和感。甘い猫なで声ではあるんだけど、いつものあざとさをあんま感じない。
ただただ可愛い甘え声。
クラスの連中も久しぶりのいろはスウィートボイスにビックリして、様子を伺ってる。
おのずと室内が静かになり、いろはとその二年生の会話がよく聞こえる…
× × ×
「先輩がわざわざわたしに会いに来るなんて珍しいですねー。あ!もしかしてぼっちランチが寂しくて、可愛い後輩と一緒にお昼したくなっちゃいましたかー?」
「は?プロのぼっちなめんなよ?何年お一人様ランチを楽しんできたと思ってんだよ」
…プロのぼっちってなんですか…
「さっき購買行く途中、たまたま平塚先生に捕まっちまったんだよ…なんか生徒会に緊急召集が掛かったらしいから、ついでに一色呼んできてくれって」
「えー…仕事の話ですかー。つまんないですね先輩って」
「いやいや、貴重な昼飯時間を割いてわざわざ呼びに来てやったのに、俺責められちゃうの?大体呼び出しなら、校内放送かなんかで呼べばいいじゃねえかよ…」
「あー、でも平塚先生が校内放送使ったら放送事故になっちゃうかもですよねー。色んな意味で(笑)」
「お前酷いから!先生ああ見えてメンタル超弱いんだよ?超泣いちゃうよ?」
「まぁそんな事より…」
「いやお前そんな事って」
「先輩さっきからなんで若干キョドってんですか?なんかうっすら照れてて直視出来ないくらいキモいんですけど」
「あ?一年生の教室来て女子呼び出すなんてそうそう経験あることじゃ無いから緊張してんだよ。…てかお前の言葉の刺が鋭すぎて今度は俺が泣いちゃうよ?」
「ごめんなさい我慢して直視します」
「もう泣いちゃおうかな…てかお前年下女子で良かったな。年下男子…てか大志だったら今ごろ確実に埋めちゃってるとこだわ」
「タイシ?タイシって誰ですか?」
「あー、うちのクラスの川…川…川島?ってどっかで一回会ったことあったよな。アイツの弟だ」
「川島?川崎さんなら会ったことありますけど…クリスマスイベントの時に保育園で会った、ちょっと目付きが危ない人ですよね?………てかなんでぼっちの癖して、クラスメイト、しかも女子の弟をファーストネームで呼ぶほど親密な仲なんですか…?もしかして川崎さんて人と仲良いんですかー…?」
…あれ?いろはさんなんか途中から声のトーンが低くくて怖いんですけど…
「は?ちげーし。大志は妹の友だ…いや、妹にまとわりつく羽虫だ」
「うっわ…出たシスコン…てか妹さんて小町ちゃんですよね?いい加減紹介してくださいよー。わたしだけなんですけど。面識ないの」
…なんかさっきから話が脱線しまくってただの世間話になっちゃってますけど、緊急召集の方は大丈夫なんですかね…
「私だけって…なんでお前普通に仲間内みたいな顔してんの?そもそもお前と小町なんて恐くて会わせられるかよ。自慢じゃないがうちの妹はあざといんだよ。可愛いけど。そこにあざとマスターの一色なんか会わせてみろ。あざとシスターズ結成で不幸な未来しか見えん」
「わたしと小町ちゃんでシスターズって、それってもしかしてプロポーズのつもりですかさすがにまだそこまでは考えられませんごめんなさい」
「アーハイハイソーデスネー……てかいつまでもお前と世間話なんかしてる暇ねえんだよ。早く購買行かないとパン無くなっちまうじゃねえか」
「あー!だったら召集終わったあとで私のお弁当分けてあげますから一緒に食べましょうよー」
「は?いやいらねえし。大体お前のあざとさ100%の可愛らしくちっちゃい弁当なんか分けてもらったら、お前の旺盛な食欲が満たされなくて、午後の授業で腹鳴りまくってクラスメイトの皆さんが授業に集中出来なくて迷惑掛けちまうじゃねえかよ」
「……先輩、それもうセクハラの域ですよ?クラスメイトの前でセクハラされて辱めを受けたって雪ノ下先輩と結衣先輩に言い付けちゃいますよ」
「勘弁してくださいすみませんでした。…とにかく俺はもう行くからな。パン無くなっちまう。お前も早く生徒会室行ってくれよ…あんまり遅いと俺が平塚先生からお叱りを受けるんだよ、物理的にな」
「え!?ちょっと待ってくださいよー!せっかくだから一緒に行きましょうよー!」
「いや俺は別に生徒会室行かないし」
「えー…でもちょっとそこまででもいいから一緒に行きましょうよー!」
「そこまでって、生徒会室と購買逆方向じゃねえか…ったく、じゃあな」
「ちょ!ちょっとー!!」
お!凄い勢いでいろはが走ってきた!
せかせかと広げたお弁当片付けながら
「香織達ごめん!急ぎで生徒会の仕事が出来ちゃったからもう行くね!」
「う、うんがんばってねー…」「がんばってねー…」「行ってらっしゃーい…」
猛ダッシュで教室を出て、生徒会室とは逆の方向に走って行きながら遠くの方で喚いてる。
「…待ってくださいよー!せんぱーい!」
なんかあんないろは初めて見た気がする…
今まで男と喋ってて、あんなに楽しそうだったっけ…?あんなに生き生きとしてたっけ…?
紗弥加も智子も同じ事考えてるのかポカンとしてる。
クラスの連中も呆気にとられてるみたいで静まり返ってたんだけど、次第にザワついてきた。
「え?なにあれ…?一色サンてあんなんだったっけ?」「最近大人しくなったかと思ってたんだけどー」「てかあれ誰?あーゆーのが好みなん?」「だって葉山先輩狙いじゃないの?あの人」「どうせいつもの媚びてパシって使い捨てでしょー(笑)」「でもなんかそんな風に見えなかったけど…」「いろはすマジかよー(涙)」「うわー…もう死にてー…」
なんて好き勝手言いたい放題でクラス中祭り状態になってるよ!
そんな様子を見てる私達も、顔を見合わせてぎこちなく笑う。
「いろはが最近おかしかったのって…」
「ね、アレ見ちゃうとねぇ…」
「やっぱそういう事だよね…」
果たしていろはが帰ってきた時、このクラスの空気はどうなってるんだろうか…ちょっと心配…