最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
「ほわぁぁぁ〜……」
鏡に写るのは、まだあどけなさを残しつつも、光沢のある黄色いドレスに身を包んだ華やかなる淑女。いつもならば元気よく外っ側に跳ねているクセッ毛も、今日ばかりは上品な編み込みが施され、華やかさの中に可愛らしさも同居している。
たとえ鏡に写し出された美しい淑女が自分自身の姿であっても、そのあまりにも普段とは掛け離れた己の姿に、口から漏れだすのは、ただただ感歎の溜め息ばかり。
「……やっべ、私ってば超可愛いくね?」
「……ねぇ、まだ次が控えてんだけど。早くしてくんない?」
「アッハイ」
綺麗にドレスアップした自分にうっとり見惚れ、おかしな事を口走りつつ虫歯ポーズでゆめかわ! っていると、おっそろしく冷たい声に一喝されて一発でお目々ぱっちりしちゃいました!
やだ! ヤンキーに絡まれてる時の心境って、こんなんなのねっ?
「ま、まぁまぁ沙希、そりゃこんなに美人さんになっちゃったらビックリもしちゃうってば。ねー、香織ちゃん! ……やー、あたしも早く着たいなぁ!」
「うひゃ、ありがとうございます、由比ヶ浜先輩!」
レディース総長のような圧を発するポニーテールの先輩にビクンビクンしていると、隣で作業していた由比ヶ浜先輩から優しいお声をかけてもらえました。
あ、やっぱ由比ヶ浜先輩もそう思っちゃいますー? 私ってばなかなかイケてますよねー?
ふひっ、長年私の中で燻り続けていた乙女心が激しく荒ぶるぜぃ! 恐るべし、ドレスアップの魔力。
そしてこんなにも綺麗に着飾った私は、ついにバージンロードへと足を運ぶのです。こんなに美しく健やかに育ててくれて、ありがとうお母さん、ありがとうお父さん。香織は……香織は今日、愛しの彼のもとへと嫁ぎます……っ!
ってなんでやねん。トリップしてないで周りをよく見て香織! ドレスアップして着飾ってんのは、なにも私だけじゃないから! みんなキラキラに輝いてるから!
──現在私は、このあとに控えるプロムの紹介動画撮影のエキストラ……通称ガヤとしての役目を果たすべく、体育館のステージ袖にある控え室にて、普段着ることなど有り得ないドレスなんかを着ちゃってるのであります!
ふふふ、ガヤ中のガヤであるクイーンオブモブの私には、正にうってつけの大役大役ゥ!
ってうるさいやい! 私だってヒロインに憧れる、お年頃の女の子だい!
そして動画に出演するのは当然のようにドレスなど着慣れてない子たちばかりなので、控え室で由比ヶ浜先輩とヤンキー先輩が着替えやら髪のセットやらを手伝ってくれているのだ。
「うん、香織ちゃんはもうばっちしだね。ステージの方に出てていーよー」
「はい! ありがとうございました」
そんな由比ヶ浜先輩達に、スカートの両裾を摘んでぺこりんっと可愛くお辞儀をしてみました。これぞ女の子が憧れるお姫様お辞儀、通称プリンセスぺこり。なんだよプリンセスぺこりって。初めて聞いたわ。
でもほら、女の子ってこういう格好したら一度はやってみたいもんじゃん?
「なんかさ……一色といいその友達といい、奉仕部の知り合いって変なのしか居ないわけ……?」
「や、やはは〜……」
そんなプリぺこってる私を冷え冷えとした眼差しで一瞥し、呆れたように問い掛けるヤンキー先輩と、それに対して特にこれと言った否定もせずに苦笑する由比ヶ浜先輩の囁き声を背に受けながら、私は涙を拭って舞台へと駆け上がるのだ。
……いやいや奉仕部の変な知り合いってのはあなたも含まれてますよ、川崎先輩! それに由比ヶ浜先輩、そこは否定してよぅ……! と、心の奥底で嘆きながら……
控え室を出てまばゆいステージに立った私の瞳に飛び込んできたのは、フラワースタンドやバルーンアート、ミラーボールで飾り立てられたパーティー会場さながらの体育館内。
普段の体育やら全校集会でのシンプルな体育館の姿しか目にしたことのない私からしたら、その様相はなんとも非現実的な煌めき。
「うひゃぁ……やっぱすげ〜」
控え室に向かう際に一度通った時も思ったんだけど、こうして改めて見るとやっぱ凄い。マジでおいくら万円かかってんでしょ、この会場設置費用!
いくら卒業生の為とはいえ、その事前準備の為だけに一体どれだけの大枚(たいまい)が動いてんのやら……。そしてそのマネーを一体どこから引っ張ってきたのよ……。私気になります!
そんな異空間めいた体育館をぼんやり眺めつつ、私は過去を振り返る。一体なにゆえにこんな事態に陥ってしまったのかを。
ま、端的にいうと…………、どうしてこうなった?
× × ×
「ねぇねぇみんなー、ちょっと踊ってみないー?」
「は?」「は?」「は?」「?」
これは、あの盗み聞きから幾日か過ぎた日の、とある生徒会長の謎の一言から始まった日常のひとコマである。そして、アホ面晒してぽけっとしている襟沢以外、ようやく掴んだ初セリフの瞬間でもあったのだ! ようやくの初セリフが一文字だけとか泣けるッ!
「えーとね、ちょーっと意味が不明すぎるんだけど。まず主語から入ろうぜ、いろはさん」
「え? いやいやだからさー、わたし今雪乃先輩とプロム開催に向けて頑張ってるじゃない? だからそんなわたしを助けると思って、ちょっと踊ってみれば? って話」
「全然わかんねーよ」
なにか思うところがあったのだろう、あの日の翌日には雪ノ下先輩から雪乃先輩へと呼び方が変化していたいろは。
そんないろはの謎過ぎる説明に、被せ気味に真顔で返しちゃったけどしょうがないよね。いつものことだし、いろはからの唐突な発言には頭が追い付かないってのは理解してるけど、今回ばかりは追い付かないってレベルじゃねーぞ!
置いてきぼり過ぎて、思わず迷子センターに足が向いちゃうレベル。ほらほら、香織ちゃんが迷子になってますよー?
それから詳細を聞いてみたんだけど、要約するとプロムを卒業生達に周知してもらう為、プロムとはどんなモノかをご理解いただく為の紹介動画を撮影して公式サイトにアップするという計画らしく、動画が寂しくならないようダンスシーンのエキストラを絶賛募集しているとのこと。
洋ドラ映像での説明だけだと実感が湧きにくいから、『実際に日本人高校生でプロムをやってみた』的な事らしい。
ぐへへ、可愛い女子高生踊らせて大量の再生回数ゲットだぜ! 目指せ、ユーチューバー生活! 働けよ。
しっかし、プロム計画のこのスピード感にはホントびっくりするよね。
だってさ、今日っていろはがプロムとかって寝言ほざき出してから、まだ半月も経ってないわけよ。
それなのにもう動画を撮影して公式サイトにアップするトコまで計画が進んでるって事は、それってつまり撮影自体が予行演習的なものでもあって、会場設置やら衣装準備やら、実際に開催出来るまでの手筈はすでに整ってるって事でしょ……?
おいおいマジ有能すぎんよ雪ノ下先輩……。半月そこらで費用面から設置面から全て揃えられるって、それって現実なのん? 思わず私達の世界がフィクションなのかと疑っちゃう!
そうそう、もう一つ意外だったのは、どうやらこの計画には奉仕部自体は噛んでないらしい。なんか部としてではなく、雪ノ下先輩個人でのお手伝いらしいのよね。
確かにあの時あの人は言っていた。では、やりましょう──と。
私はそのあとすぐ盗み聞きから撤退したからどういう流れでそうなったのかは知らないけど、てっきり奉仕部としての活動の一環かと思ってた。
それにそもそも今回のプロム計画の目的って、プロムそのものには無いんじゃなかったっけ? あくまでもプロム開催を通して、奉仕部の生ぬるい現状をぶっ飛ばしてやる! ってのが目的なんじゃなかったのん?
それなのに奉仕部……というか、メインターゲットの比企谷先輩を巻き込まないで計画を進めちゃって、そこに意味ってあるんだろうか……?
……まぁその問題は今は横に置いておこう。そんなの私がいくら考えたって、どうせ分かるわけないんだもんね。それが分かるのもそれを決めるのも、全てはいろはだけなのだから。
今はそんな事よりも、いろはの唐突なお誘いにNOを突き付けねばいけないのである!
「い、いっやー、私はパスで〜……。だ、だってさ、ああいうのって、ドレス着てうぇいうぇいやるんでしょ……? 人前でダンスとか、ちょっと私の大和撫子キャラ的に、ハズいっていうかなんていうか……」
人前でドレス着てうぇいうぇい踊るとか、ああいうアメリカナイズなノリって無理無理〜。
私一応リア充グループですけど、うぇい勢とは違うんですよ。急に人前で戸部先輩みたいにはしゃげとか言われても、常人にはキツいっしょ?
するといろはすったら、「ハッ(笑)大和撫子って(笑)」とばかりに鼻で笑いやがった。
「香織って普段あんなに恥ずかしいことばっかやってんのに、今更恥ずかしいこととかあんの?」
「酷でぇ!?」
……え、私ってそんなに恥ずかしいことしてんの?
「それにカラオケ行った時とか、なんかよく分かんないアニメのアイドルの真似して、フルでガチダンスしてんじゃん」
いやん! ……ち、違うの! あれは悔しいけど身体が勝手に反応しちゃうだけなのっ☆
「大体あのとき言ったよねー? なんでもやるから遠慮なく言ってねって」
「うぐっ」
そう、私は言ってしまっていたのだ。まさかうぇいうぇい踊れとお願いされるとは夢にも思わず、安請け合いなあんな一言を……!
マ、マジかぁ……、ああいうノリに付き合わなきゃならないのかぁ……、きっついなぁ……
「ま、いいんじゃない? なんか面白そうじゃん。それにほら、ドレスアップとかしたら、十六年前に旅立った香織の乙女が帰ってくるかもよ? ぷっ」
「ねー! もしかしたら帰ってきた乙女がきっかけになって、新しい彼氏出来ちゃうかもよー? ぶふっ! ……ってかそんなことより! そ、それってとも君呼んでもいーのかなぁ!?」
などととっても失礼な事を言ってるけど、それにしてもこの紗弥加と智子、意外にもノリノリである。
うるさいわ。十六年前に旅立ったって、それ、生まれた時からずっと旅立ちっぱなしだよ!
あと学内イベントの紹介動画に他校の男呼ぼうとしてんじゃねーよ、アホか。いいわけないだろ、アホか。ようやく喋ったかと思ったら相変わらずかこの女、アホか。早く別れろ。
「やっばぁい! 私そんな気ぜんぜんないんだけどぉ、気が付いたらクイーンになっちゃってそぉ!」
──こうして、すでに撮影参加が決定事項になっちゃってるらしい襟沢のお花畑発言により、私たち一年C組トップグループのプロム(予行演習)参戦が決定したのであった!
× × ×
何日か前の教室での出来事に思いを馳せながら、煌びやかに飾られた体育館の様子をぽけっと眺めていると、ドレスアップが済んで私より先に控え室を後にしていた、普段見慣れない、とても見慣れた連中の姿を発見した。
変な言い回しになっちゃったけど、毎日見慣れ過ぎて若干見飽きた感のある紗弥加と智子の、普段見ることの出来ないドレス姿って意味ね。
……ほっほう、私もかなーりイケてますが、さすがあの二人もなかなかイケてるじゃあーりませんか♪
スカイブルーのドレスに身を包む、スレンダーで背の高い紗弥加はなんともクールビューティーで、由比ヶ浜先輩ほどではないにせよ、豊満なバストを強調するように胸元が結構開いたショッキングピンクのドレスに身を包む智子は…………、うん、なんかすっげービッチ臭い。いや、いい意味で。
いい意味でビッチ臭いってなんだよ。全然フォローになってないよ!
そんな二人も、控え室から出てきたばかりの私の姿を発見したようで、「ほぉ〜」っと感心するような眼差しをビシバシぶつけてきた。
うふふ、二人ともプリパラチェンジしちゃった私の可愛さに驚いちゃってるのかしらっ? みーんな友達! みーんなアイドル!
てなわけで美しく変身してしまった私は、しゃなりしゃなりとしなをつくって彼女らにゆっくりと近付いてゆき、右手を頭に、左手を腰に添えて、あっは〜んポーズで紗弥加達を誘惑しちゃうのさ。
「ふへへ、どぉどぉ? 私けっこーイケてなーい?」
「……あー、うん、今ので全部台無しになったわ」
「……やっぱ香織って……あ、うん、なんかごめんね……」
なんか謝られてしまった。解せん……。どうやら惑は惑でも、誘惑じゃなくて困惑だったようです。
そんなにダメだっかしら、私のセクスィーポーズ。
「にしても香織ってば、あんだけ嫌がってた割に結構ノリノリじゃなーい?」
「いやー、それがさぁ、いざドレス羽織ってみると、なんかこう気分が盛り上がっちゃうっていうの? やっぱ私も、なんだかんだ言っても女の子なのよね〜」
智子が言う事ももっともではあるのだが、ドレス着て気分がアガらない女の子なんて居るわけがない。
あれだけアメリカナイズなうぇいうぇいパーリー撮影を嫌がっていたのも今は昔、今なら先陣切ってお立ち台の中心でうぇいうぇい踊っちゃいそうまである。
……そしてそれがいつの日か、目を逸らしたいほどの黒歴史となることでしょう……。ノリって怖い。
「まぁたかがドレス一枚じゃ香織の滲み出る残念さを覆い隠すのは難しかったみたいだけど、それでもま、黙って立ってる分にはなかなかイケてんじゃん」
「うるさいよ、残念がデフォみたいにゆーな。……ひひ〜、でも自画自賛しちゃうけど、マジけっこーイケてるよねー! もちろん紗弥加もイケてるよっ! あ、智子はちょっとビッチ臭いけど」
「酷くない!?」
「これヤバくね? こりゃ今日の撮影会、私達がみんなの視線を独占しちゃうんじゃね?」
いやもうホントそれね。
さすがは一年C組が誇る美少女グループ。エキストラなのに、私らで今日の主役食っちゃうんじゃね?
などと、ドレスアップの魔力で気持ちがデカくなっている私が調子に乗ってうぇいうぇいしていると、やれやれと首を振る智子が私の肩をポンっと叩いた。
「……香織さー、あっち見てもそう言えんの?」
ヘッ、と自傷気味な苦笑を浮かべる智子が指し示す方向に目をやると、そこに居たのはなんとも見目麗しい美少女軍団。なにを隠そう、我が校が誇る才色兼備な二年J組女子一同だったのです。
そう。本日撮影会のエキストラ役として呼ばれたのは、いろはの友人の私達だけではなく、雪ノ下先輩のクラスメイトもたくさん呼ばれていたのだ。あとついでに戸部先輩とサッカー部一年男子。
「おうふっ……!」
な、なにあれ!? めっちゃレベル高くね!?
普段は突出しすぎた雪ノ下先輩という存在の影に隠れててあんま目立たないけど、そもそも二年J組ってのは、もしもそのクラスに雪ノ下先輩が居なかったとしても、やはり学内でも特別なクラスなのである!
「ぐぬぬ……」
いや、ぶっちゃけルックスレベルだけで言えば、私達だって決して負けてないのよ。いやマジで。うん、ホントホント。いやだからホントマジだってばぁ……!
でもこう、なんかねー……、醸し出してるお上品な雰囲気とかがなんというか、馬子にも衣裳がドレス着て歩いてるようなパチもん臭い私達と違って、あっちは本物の余裕っていうの? なんかこう、オーラが違うんだなぁ……
あとはそう、数の暴力ね。
いくらルックスレベルでは負けてないって言っても、しょせん私らはたった三人の烏合の衆。
それに対してヤツらはほぼ一クラス分の美少女が参戦してるもんだから、これまたなんとも華やかなのよ……。てか一クラスでみんな結構な美少女揃いって、……なに? J組って書類選考から始めてんのかな? わたしが知らないうちに友達が勝手に応募しちっちゃってぇ〜、とか言っとけばいいの?
くっそう! なんだよぅ! なんであの人たち頭いい上に美人揃いなんだよぅ! なんかもう敗北感しかないよぅ! って、……あ、れ?
「ん? 三人?」
あれ? そういえばなんか忘れてね?
「ごめぇん、お待たせぇ! 支度に時間掛かっちゃったぁ!」
そんな時、不意に後ろから私たち負け組一年C組トップグループに救いの女神の声が降り注いだ。
そう、私達はすっかり忘れていたのだ。私らにはもう一人強力な戦力が居たじゃないか!
バカだけど、ルックスだけに関しちゃ我が校が誇る人気生徒会長一色いろはレベルの美少女が! バカだけど。
常であれば「別に誰も待ってねーよ」とツッコミを入れるベストポイントではあるけども、今日ばかりは事情が違うのだ。むしろ「待ってました!」とドンドンパフパフしちゃうまである!
グループとしての精神的完全敗北を喫してしまった、この二年生のお姉さま方との圧倒的戦力差を少しでも埋めてくれるであろう一人の美少女へと向けて、私は勢いよく振り返る。ウェルカム襟沢!
……しかし私はまだ気付かない。位置的に、私よりも先に襟沢の姿を見咎めた紗弥加達の顔が、ゆっくりと歪んでいくのを……
「……マ、マリーアントワネットや……、マリーアントワネットがおる……っ」
振り向いた先でにこやかな笑顔を振りまいていたのは、正しくクイーン。
ベロア調の紫のドレスを身に纏い、未だ縦巻きの残る栗毛色の髪をたなびかせて現れた、真なるクイーンそのもの。
……エリエリ、それはプロムクイーンちゃうよ! それガチもんの女王陛下や! もうプロムクイーンとは違うベクトルのクイーンになっちゃってるよ! プロムナード(舞踏会)は、ベルサイユ宮殿で行われる晩餐会じゃねーぞ。
てかそもそもそんな本気のドレス用意してあったっけ……? てかなんでお前だけティアラとか付けてんだよ。え、私物?
う、うわぁ……二年J組のお姉さま方が眉を顰めてヒソヒソしてらっしゃる……! これじゃコイツと一緒に居る私達まで完全に色モノだよぅ!
「えへへ、ど、どぉかなっ?」
「……」「……」「……」
ほんのり頬染めて「ど、どぉかなっ?」じゃないわよ……答えづらくてなんも言えねぇ……
嗚呼……襟沢が来れば形勢逆転出来るかもとか思ってた数秒前の自分を殴りたい。
──こうして襟沢のおかげで、まるでコスプレ大会にでも変貌してしまったかのような茶番な空気漂う、とてもザワついた撮影会となってしまったのでしたー。
「おぉぉぉ〜……!」「わぁ……!」「素敵〜……!」
と、こんなしょーもない襟沢オチで終わったりしないのが、今回のプロム撮影の内容の濃いところなのです。
普段ならきっちりオチるであろうこの茶番でさえ、これから起こる真のザワつきの単なる前座でしかなかったのだ!
そこかしこから小さな歓声が上がり始めたことにより、訝しげに襟沢含む我らグループを眺めてザワついていた会場内の視線が、引き潮のようにサッと引いていった。それはまるで、襟沢オチなんかよりもずっと興味深いナニカに一瞬で心を奪われ、私達の存在など初めから無かったかのように。
そしてその視線達を釘付けにし始めた新たなるナニカは、会場内に別次元のザワつきをもたらした。
どよめく会場。そのザワつきは、場違い感たっぷりの襟沢に向けられていた笑撃のザワつきなどではなく、羨望と熱望、感歎の溜め息混じる黄色いザワつき。
ドレスアップし、あとは撮影が始まるのを待つばかりだったJ組女子一同を筆頭に、サッカー部の一年、そして私達の歓声と視線を一身に集める先に居たのは、つい今しがた控え室から会場へと姿を現わした、間違いなく本日のクイーンとキング。
鮮やかなオレンジ色のドレスをその身に纏い、隣を歩く紳士に向けてうっとりと恍惚の表情を浮かべるクイーン・一色いろは。
そしてそんなクイーンに腕を貸し、紳士的にエスコートする、とんでもない……とんっでもない美少年なキング様なのでした!
え? 誰?
続く
てなわけで今回もお待たせしてしまいましたがありがとうございました!
次回でついに完結……かな?(^皿^)
さて、多分お察しだとは思いますが、今回のお話は最新刊でのゆきのんのセリフ「それと、女性陣もうちのクラスの人と一色さんの友人にお願いしたわ」を一目見た瞬間に
「これは書かねば!」(゜Д゜)ガタッ
と思い立ったお話です笑
なにせこれなら合法的に原作のワンシーンに香織を放り込めますからね☆
そしてついに撮影シーンへと突入しましたので、ようやく次回辺りで物語を〆られそうです!
ラストの更新はさらにさらにお時間いただいてしまうかもしれませんが、次回またお会いしましょうっノシノシ