最近友達の一色いろはがあざとくない件について   作:ぶーちゃん☆

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一年ほど前は「あ、いろはすSS書く人だ」と認識されていたはずなのに、今や「あ、いろはすオチ書く人だ」に認識が変わってるくさいどうも作者です(白目)



そんな作者が一周年記念として書き始めたはずのこのSSも、なぜかスタートから二週間以上が経過して、今回で3話目になってしまいました。
そして今回でようやくこの10.5巻のデート裏編(if)も終了です!
ほ、本当にこれで終わりですよ?完結ですよ……?





【if】ちゃっかりと私の友達は逢引をエンジョイしまくりやがる

 

 

 

ふっほー!満腹満腹〜。てか糖分摂取し過ぎて糖尿病一歩手前だぜっ!

 

……そんな想いで胸がいっぱいになるくらいに八色夫婦漫才をお腹いっぱい堪能し、私達がカフェを出る頃にはすでに辺りはすっかりと夜の闇に包まれていた。

 

 

いやー……盛り上がりすぎじゃないですかねいろはすさん。

いくら真冬で日が落ちるのが早いとはいえ、私達がカフェに入店したのって確か1時過ぎくらいよね……?何時間イチャイチャ楽しんでんのよ。

 

ふふっ、でもまぁずっと夢見てたカフェデートだもんねー!まさかあの時は、そのデートの相手が噂のあの二年生になるだなんて夢にも思わなかったけどもっ。

 

「いろはちゃんすっごく楽しそうだったねぇ」

 

「ひひっ、これだからやめらんないのよー」

 

「……そ、そこは程々にしといた方がぁ……」

 

「うっさいわね。あんただってさんざん楽しんでたじゃん」

 

 

カフェをあとにした私達は、映画を見終わった後の感想批評でも語り合うかのように夫婦漫才の話題に花を咲かせつつ、夜の闇に上手く紛れながら駅までの尾行を続けていた。

もう夜ということもあり、遊び回ってうぇいうぇい騒いでる人たちや仕事帰りのリーマンさんOLさん達で込み合う道路の人込みにも紛れられるという事で、かなり追跡しやすい状況なのである。

覗き見のプロたる私にかかればこれはもうイージーモード。アマチュアモードまである。

ふふふ、いつ発見されちゃうかドッキドキな昼間の尾行と違って、今ならもっと近くに寄って、歩きながらの会話だって楽しめちゃうのだよ♪

 

 

絶対に慣れていないであろう休日デートに若干お疲れのご様子の比企谷先輩。

駅に向かう最中、くあ〜っと欠伸をひとつ。

おやおや、可愛い女の子とデートの最中に欠伸をするなんて感心しませんなぁ!

が、そんなリラックスした空気にほだされたのか、あろうことかいろはも可愛くくあっと欠伸を漏らす。

 

……い、いやぁ……あのいろはが男の前であんなに油断するだなんてねぇ。超びっくり!

いろはが男の前で油断した姿を晒すのは、あくまでも「わたし居心地良すぎてつい油断しちゃったっ!恥ずかしいよぅ……えへへ☆」てな具合に、男を手玉に取るジャグラーテクニック上級編のはずなのに、今のいろはのは超素だったよね。

だって、先輩に欠伸顔見られちゃったいろはの「やばっ……!」って表情も、そのあとのバツの悪そうな表情も思いっきりガチなんですもん。

 

 

──恋愛ってさ、確かに相手にときめきを求めたりきゅんきゅんを要求したりするところがあるけどさ、でも結局のところ、最終的には二人の空気感がどれだけ居心地よくて安心出来るかってところにあると思うのよね。たぶん、それが恋から愛へと変化していくことなんだと思う。

だから、男の前では常に可愛いわたしを演出しているがゆえに、常に気を張ってなくちゃいけないんであろういろはのあの緩んじゃってる素の気持ちこそが、先輩に対する想いの全てを表してるんじゃないのかなっ?

 

……などと、全日本乙女選手権代表(笑)の私 家堀香織が、愛についてワケの分からない想いを供述している模様です。

いやん私ってばなにげに恋愛マスターじゃね?

はい。妄想だけなら誰にも負けません。ドヤァ。

 

 

…………ちょっとだけ虚しさが胸に押し寄せてきちゃった私ではありますが、それはそれ、これはこれ。いま重要なのはイタい自分を鑑みることではないのでありますよ!

そう、いま重要なのは、油断して欠伸を漏らしちゃったいろはが、バツが悪そうにこほんと咳払いで誤魔化しているその先の流れ。

私はそれを聞き漏らすまいと、うへへっ……も、もちっと近こう寄らんか、と、女中をくるくる回すエロお代官様のようにバカップルにいやらしくにじり寄る。

あ〜れ〜、ご無体な〜。

 

「まぁ、今日のところは10点って感じですかねー」

 

おっと、声が聞こえるくらいまで近付いてみたら、いきなりデート批評会が始まってました。

にしても、居心地の良さに油断しちゃったいろはちゃんを誤魔化す為の採点とはいえ10点て……

 

「一応聞くけど何点満点?」

 

「もち100ですよ」

 

ふふん!と勝ち誇ったかのように、薄い胸を一生懸命に張って100点満点採点だと言い切るいろは。

 

「なんでそんな低いんだよ……」

 

うんざり顔で尋ねる先輩に、「えーっとぉ」と指折り数え始める。

 

「まず葉山先輩じゃなかったのがマイナス10点」

 

「最初から無理難題なんだよなぁ」

 

「それから、言動もろもろ含めてマイナス40点ですよねー?」

 

「それはまぁ妥当だな」

 

妥当なんだ!?そこは即答せずにねば〜る君くらいはもうちょっと粘ろうぜ!?

ふっ、まぁいくら粘ったところで、キミでは我らが千葉の英雄ふなっしーの後釜は荷が重いと思いますがね。もはや下火感は否めませんけど。

 

てかその点数の割り振りで言うとさ、憧れて狙ってるはずの葉山先輩であるってメリットがたったの10点しかないんですけど。

まずはそこに気づけよ比企谷八幡!

 

「一応、自覚はあったんですね……」

 

溜め息交じりに呆れるいろはと、それとは違う溜め息を吐く私。

まったく、やれやれですなー。

 

そしていろはもやれやれと呆れながらも、「あとはー」と次なる減点へと話題を向けた……かと思ったら、突然ぎゅっと拳を握り、とりゃっ!と先輩の脇腹に鉄拳制裁!

 

「女の子に呼ばれてほいほいついてきちゃうあたり、マイナス50点です」

 

ほほー、まぁ分かってた事とはいえ、やっぱいろはのお誘いで実現したおデートだったんだねー。

しかも“女の子に呼ばれてほいほいついてきた”って問題が今回の試験での最高得点問題でしたか。

それ、今後は簡単に女の子とデートするんじゃありません!っていう、世に言うやきもちってヤツですよね分かります。

 

「お前が呼んだんだろうが……。ていうかゼロになっちゃったしさ」

 

するといろはは「ふふっ」と軽く微笑むと、並みのバストをえへんと張る。

 

「まぁ、でも、楽しかったのでおまけで10点あげます」

 

「……それはどうも」

へいへいと、苦笑を浮かべ謝意を述べる先輩に声を大にして言いたい。

 

ちょっと!?葉山先輩じゃない=マイナス10点、比企谷先輩とのデートが楽しかった=プラス10点て、葉山先輩であることのアドバンテージ無くなっちゃってるんですよ!?気付いて!?

 

そしていろはにも。

まったくぅ、そこは分かりやすく11点あげれば良かったんじゃないっ?

 

 

× × ×

 

 

それからしばらく歩き、千葉駅のロータリーへと続く短い階段に差し掛かった時、本日の得点を発表してからしばらく黙ってしまっていたいろはが不意にこう問いかけた。

 

「先輩は、どうでしたか?」

 

それは、先ほどまでの楽しげな声とは打って変わって、とても控えめでとても不安そうな問いかけ。

そんな問いかけをしたいろはは、俯きがちで表情を見せようとはしない。

 

男と出掛けても、相手に気を遣わせるだけ遣わせて、相手が楽しめようが楽しめまいが、自分が楽しけりゃおけおけおっけー☆ないろはだけど、今日のデートは先輩にも楽しんでもらいたい!って想いが強かったんだろう。

“先輩はわたしと一緒に居て楽しめたのかな?”って不安な気持ちがひしひしと伝わってくる。

 

そんないろはの不安な気持ちが、鈍感王の比企谷先輩にちゃんと伝わってるとは到底思えないんだけど、それでもその問いかけをしっかりと受け取った先輩は、お得意の照れ隠し奥義・頭がしがしで一旦心を落ち着けると、相変わらずの捻くれを交えつつこう返すのだった。

 

「まぁ、俺もそんな感じだな。……ちょっと疲れたけど」

 

……ふふっ、楽しかったとはっきり言わないわ照れ隠しで疲れたと付け足すわで、ホント捻くれてんなぁ、この人!

でもっ……どうやらその答えは、捻デレ先輩に惚れこんでるいろは姫に対しては及第点な答えだったようですね♪

 

「疲れたとか正直すぎませんかね……別にいいですけど。それだけちゃんとわたしの相手をしたってことですし!」

 

俯いていた顔を上げたいろはは、きゃるんっ!としたあざとい笑顔で、愛しい人をからかうようにそう言い放った。

すると、つい今しがたまでの様子とのあまりの変貌ぶりに、比企谷先輩はこの上ないほど引きつった苦笑いを浮かべる。

 

「なんですかその超めんどくさそうな顔……」

 

もう!わたしがせっかく褒めてあげたのにぃっ!と言わんばかりにぷくっと頬を膨らませたいろはは、ぷいっとあざとくそっぽを向くと、早足で先輩の少し前を歩いて拗ねたようにこう宣った。

 

「めんどくさくない女の子なんていませんよ」

 

あはは、そりゃ確かに!

まぁいろはのめんどくささは、数多く居る女の子の中でも群を抜いてるけどねー!

主に比企谷先輩関連で。

 

「……そうだろうな、めんどくさくない人間がそもそもいないし」

 

うっわ……こっちもやっぱめんどくさっ!

 

「うっわ、先輩めんどくさっ」

 

おっとまさかのシンクロ率。使徒も泣きながら裸足で逃げ出すレベルのめんどくささ。

……このめんどくさい同士、やっぱあんたらお似合いだぜ!

 

 

 

そんなこんなで駅までの珍道中もついに終わりを告げる。二人はついにお別れの刻。

別れを惜しむからなのか、いろはが歩く速度を若干落としはしたものの、無情にも二人は朝の待ち合わせ場所でもあり本日の解散場所でもあるのであろうビジョン前に到着してしまう。

 

「とりあえず、今日は参考になりました。ありがとうございます」

 

「お、おう……こっちこそ……なんだ……あれだ」

 

……私も軽くびっくりしたんだけど、いろはの素直な謝意から続く流れるような恭しいお辞儀に、比企谷先輩が戸惑った様子でごにょごにょとどもらせた。

いろははそんな先輩の慌てた姿を見て可笑しそうにくすっと笑うと、とても優しい笑顔を向ける。

 

「……先輩もちゃんと参考にしてくださいね?」

 

──先輩も参考に──

それはいろはにとって何を意味しているのか。

 

『今度はもうちょっと知り合いが少ないところにしましょうね』

 

さっきカフェで次のデートの約束を無理やり取り付けてたし、次のデートではちゃんとリードしてくださいねっ!って意味なのかな。

それとも、あの人達との煮え切らない関係を後押ししようとしてるのかな……

 

それはいろはにしか分からない。でも、優しい笑顔のその言葉の裏には、ほんのちょっぴりのピリ辛スパイスが混じっているようだった。

 

「……ああ。まぁ、なに、今日はサンキュな」

 

「それじゃあ、また学校で」

 

「気をつけて帰れよ」

 

「ふふっ、せんぱいも♪」

 

 

お別れの挨拶を済ませ、いろははエスカレーターでモノレールのホーム階へと向かう。

徐々に離れていくいろはの背中を優しく見送っている比企谷先輩に、不意にくるっと振り返るいろは。

まだ立ち去らずに、自分の姿が見えなくなるまでは見送ってくれてるんだってことを確認したいろはは、にこぱぁっとキラキラ輝く笑顔になると、姿が見えなくなるまで嬉しそうに胸のあたりでぴょこぴょこと小さく手を振っていたのだった。

 

 

 

 

────さてさて、これにて本日の逢引きとそれに伴う嬉し恥ずかし追跡劇が、無事に幕を閉じたのでありました!

 

 

× × ×

 

 

 

嬉しそうに手を振るいろはを優しく見送った私と襟沢は、お互いに優しく微笑み合うとうんと頷く。

 

「よし、行くわよ襟沢」

 

「がってん!」

 

そして私達はいろはの姿が見えなくなった方向へ、未だ優しげな眼差しを向けたままの比企谷先輩の横をするりと擦り抜けると、全力でエスカレーターを駆け上がる。

 

ふはははは!そりゃこのままいろはを逃がすわけがない!ここはもちろん突撃インタビューしちゃうに決まってるじゃないですかー?

当然の如く私達の身に危険が及ぶような素人さんみたいな真似はしないのよ?

ちょうど今そこで比企谷先輩と別れたところ目撃しちゃったんですけどー?って体で話し掛けるに決まってんじゃないですかー!

 

あんたもその辺ちゃんと理解してんでしょうね!?とアイコンタクトを送ると、あいあいさー!と可愛くウインクを返してくる襟沢。

不安で仕方ない。

 

 

でもあんまりこの件に触れてると余計なフラグを立ててしまいそうなので、あまり触れずにいるのが吉と見た。

……ほらそこのキミ!それもうフラグ立ちまくっちゃってるZE☆ハハーっとか言わないの!だったら先にちゃんと打ち合わせしときゃ済む話だろ?って?

だって急がないといろはがモノレールの改札に入っちゃいそうなんですもの。

 

 

そしてようやく前をとぼとぼと歩くいろはの背中に追い付いた。なんかいつもよりもちっちゃいな、このとぼとぼと歩く背中。

どうやらデートがあまりにも楽しすぎて、お別れをしちゃったあとの孤独感が半端ないご様子ですな。

 

そのしゅんっとした小さな肩をポンッと叩くと、一瞬ビクリとしたいろはが、それはもう物っ凄い勢いで振り向いた!

 

 

その首はグルン!と!

その瞳はキララぁっと!

 

そして私達の姿を認識した瞬間、そのキラッキラ輝いていた瞳は、どよんとこの世の終わりを告げるかのように腐れ落ち、そのキラッキラ輝いていた表情は、深遠を覗いちゃって、その深遠さんに覗き返されちゃったかの如く酷く青ざめる。

 

「……な、なんで居んの……?」

 

もしかしたら先輩が追い掛けてきてくれたのかもぉ♪なんて淡い期待から、デート終わりにまさかの友達との遭遇という恐怖のずんどこに落とされてしまったという余りの気持ちの落差に、とてもじゃないけど人前ではしちゃいけないような顔で私と襟沢を見つめるいろはすマジやばい。やばいろはす。

 

「いやぁ、今日二人で買い物してたんだけどさぁ……、そろそろ帰ろうか?って話してたら、そこでいろはと比企谷先輩がお別れしてるトコ見ちゃってさぁ……なになにー?もしかしてデートでもしてたのぉ?」

 

やばいろはすに若干ビビりつつも、なんとかからかうようにそう言ってみた。

するといろははあわあわと慌て始め、いろはすピーチも真っ青なくらい頬をピンクに染め上げた。

その染め上がった頬っぺといったら、それはもうスパークリングでサイダーってくらいにしゅわっしゅわ!

まぁ全部透明なんですけどね。

 

「ちちち違う違う違うから!べべべ別にデートとかじゃないし! ただフリペの取材で先輩を利用してただけだってば!」

 

 

──ほっほぉう、今回のデートのお題目はそういった理由付けでしたかぁ。

そーいやこないだ『余った予算をとっとと処分して、わたしの予算が削られる前に証拠隠滅しなければっ!』とかなんとかアホなこと吐かして、フリペでも発行しちゃおっかなー、とかどうでもよさげに言ってたっけなコイツ。

 

「……へぇー、そっかそっかぁ。成る程そういうことねー。じゃああくまでも仕事であって、別に楽しんでたワケじゃ無いってことかー」

 

「そ、そうそう!……ほら!先輩って超便利だからさー、こういうとき上手く利用出来るから今日は先輩を持ってきたみたいなー……?」

 

……コイツもホント強情よねー。フリペ取材に利用するだけだったら、戸部先輩とかの方がよっぽど便利なのに。だって財布にもなるわけだし?

ふひひっ、取材に付き合わせて、オマケに財布にもなるその他大勢の男子諸君を置いて来て、敢えて比企谷先輩を持ってきた理由ってなんなのかなぁ〜?

それにそもそもあんなに楽しんじゃってる姿をあれだけ晒したあとに、「ただ利用してただけー」なんて言われましてもねぇ、ぷっぷー!

 

とはいえ、ずっと見てたよんっ、なんて言えるわけがないから、これ以上無理に突つくと藪蛇にかぷっと噛まれちゃいそうだし、今日はこの真っ赤に照れまくって無駄に否定してる面白いろはを見れただけで満足としておきま…

 

「ぷぷぷ〜っ、またまたいろはちゃんてばぁ! 朝から盗撮とか卓球とかラーメン屋さんとかカフェとか、あーんなにすっごい楽しそうにデートしてたくせに、お仕事だなんて言っちゃってぇ!」

 

……おいまてお前。

 

 

「…………………………………………は?」

 

「……あ」

 

あ、じゃねーよ。うっかり☆じゃねーよ。やっぱお前バカだろ?

そりゃそう言ってやりたかった気持ちは分からんでもないけどさ?私も我慢しきれずニヤニヤしちゃってたけどさ?…………あんたなに口走っちゃってんのぉぉぉ!?バカなの?死ぬの?

 

「…………え?ちょっと待って?……あれあれぇ?ごめんねー?わたし今ちょっと混乱しちゃってるんだけどさー……、え?どゆこと……?」

 

そう襟沢にお尋ねなさってるいろはすさんは、ほんのりピンクに頬を染め上げた可愛いろはさんから、血のように赤黒い赤鬼いろはさんへとメガ進化していらっしゃいました。

 

「ち、違うの!いろはちゃん違うのぉ!……私はデートを尾行るなんてやめようよって止めたんだよぉ!?……でっ、でも香織ちゃんが『ばっかお前、あの二人が行動を共にしてるトコ見ちゃったあとで、キャッキャウフフとセルフミニファッションショーなんか楽しめると思ってんの? 今頃どんな面白可笑しいやりとりを繰り広げてんのかしらと気になっちゃって、服なんかに意識持ってけるわけねーだろjk』とかワケ分かんないこと言って私を無理矢理っ……!」

 

……私、売り渡されました。

なんでお前一言一句間違えずに覚えてんだよ。間違ってなさすぎて否定出来ないじゃんよ。

 

「ちょっと待て!私あんたに、じゃあ先に帰ってれば?って言ったよね!?言ったよね!? なに?無理矢理とか失敬にもほどがあんでしょ!」

 

「ち、ちがっ……! いろはちゃん聞いて!?か、香織ちゃんなんてね、最近のマイフェイバリットがいろはちゃんと比企谷先輩の面白やりとりをこっそり覗くことだなんて胸張って言ってるんだよぉ!? 私はひとつも悪くないもぉん!」

 

「襟沢ぁ! じゃあ言ってやっけども、今日の尾行は途中からあんたの方がよっぽど楽しんでたじゃんよ!? 頼んでもないのに変装セット買ってきたりあんぱんと牛乳買ってきたりぃ!」

 

「ひぃぃ!言わないでぇ!香織ちゃんの裏切りものぉ!」

 

「どの口が言ってんのよこのバカエリ!」

 

「バカって言う方がバカなんですぅ!」

 

 

 

……とんだ泥仕合である。

もうやめようよ……誰も幸せにはなれないよ、こんなの……

 

 

私達の醜い言い争いをぷるぷると聞いていたいろはは、光が一切宿らない目のまま、不意にバッグからスマホを取り出して何処かへと電話をしはじめた。

あっれー?通報でもされちゃうのん?

 

「……あ、お母さん?急で悪いんだけどさー、今日友達を二人泊めることになったからー。……うん。うん。あ、ごはんなら大丈夫ー。別に一食くらい抜いたって死なないしー。……え?そんな突然じゃ布団が無い?大丈夫大丈夫大丈夫ー、今夜はオールだからー」

 

……どうやら電話した先は警察じゃなくって処刑場だったみたいです☆

 

「はーい、はーい。んじゃそろそろ帰りまーす。ばいばーい。…………………………じゃ、行こっか♪」

 

とっても素敵な笑顔で私達を処刑場へと誘う執行人いろは。

でも、語尾に音符を付けるような目ではなかったです(白目)

 

「や、やー……そそそそんな急にお泊まりとかになっちゃっても、いろはんちにご迷惑お掛けしちゃうし……?」

 

「そ、そうだよぉ!そ、それに私、パパとママに怒られちゃうしぃ……?」

 

「そっ!それにホラ!下着とかの替えなんて持ってるわけないしさー!……ね!ね!襟沢!……や、やっぱ花も恥じらう乙女が下着も替えないとかありえなくなーい……?」

 

 

そんな必死の訴えをようやく理解してくれたのか、いろははとってもとっても慈愛に満ちた素敵な笑顔で、私達にこうおっしゃられるのだった。

 

 

 

「……ノーパンで過ごせ」

 

「……か、かしこまっ★」

 

 

 

 

拝啓お母さま。いかがお過ごしでしょうか?

あまりにも突然のことで大変びっくりさせてしまうかもしれませんが、香織は今日は帰れそうもありません。

ふふっ、今夜はとても長い長い夜になりそうです。

 

 

 

 

 






というわけで、一周年記念の特別なSSもこんなしょーもないいろはすオチでの終幕と相成りました!
すいませんね、こんなんで(吐血)



さてさて、この『最近友達の一色いろはがあざとくない件について』も、これにて遂に完結となります!
まぁ誰一人として信じてはくれないかとは思いますが。
少なくとも俺ガイル最新巻が発売されるまではもう書くことはないでしょう(^皿^;)


ではでは本当に長い間お世話になりました☆
またいずれどこかでっ!


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