最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
はいはい、安定の中編ですってよ(吐血)
そして今宵、この世界に新たなカップル誕生の予感ッ!?
あー、やっぱたまに食べるあんぱんとか超おいひぃ!
そしてただ美味しいだけじゃなくて、空腹と疲れた身体に染み渡るこの炭水化物と糖分の組合わせの妙と言ったらもうっ……たまらん!
そりゃ「ぼくの顔を食べて元気になってよ〜」ってCV恵子に言われたら、食べあとが若干グロくなっちゃうって分かってても、誘惑に負けてカバオくん達もついつい戴いちゃうわよねー。
まぁカバオくん達がお腹空かせて毎日のように道端で泣き叫んでいるという、ネグレクトの疑いさえも掛かり兼ねない家庭環境には、些かの不安要素が残る案件だけれども。
それにしてもあんぱんと牛乳ってなんでこんなに合うんでしょ!?口内にまとわりついたあんこのねっとりとした糖分を、クリーミィに優しく包み込んでくれる牛乳のこの優しさよ……
ああっ……あんこと牛乳がまろやかに混ざり合って、私の身体のナカを駆け巡るようにトロけていくぅ〜!
…………星 み っ つ!!
…………どうしよう。なんかちょっと悲しくなってきちゃった。
寒空の下で冷たいあんぱんと牛乳を食しながらLet’sストーキンしてるのがいくら虚しいからって、冒頭からあんぱんと牛乳の食レポだけで尺使いすぎじゃないでしょうかね?
いまだかつてラブコメというジャンルにおいて、こんな舐めたスタートがあっただろうか?いや、無い(反語)
そんなやりきれない絶望感に一人打ちひしがれていると、ようやく比企谷先輩といろはがほっこりツヤッツヤした顔で地下店舗から階段を上ってくる姿が視界に捉えられた。
なんだよいろはす。あれだけ不満顔でぶーぶー入店してたくせに、なんだか満腹満足幸せスマイルになってんじゃんよ。
ちくしょう!私もあったかいラーメン食べたいよぅ!
てか今更だけど、襟沢のヤツなんで冷たい牛乳買ってくんのよ。お腹ごろごろしちゃったらどうしてくれんのよ。
そしてほっこり温まった幸せな一行と、ひんやり冷えきった悲しい一行は次なる目的地へ。
は、早くどこかのお店に入って……!寒くて死んでまうっ!
「か、香織ちゃん……さぶいぃ〜」
だから妙な雰囲気醸し出すためだけに牛乳とか買ってこないで、ホットなドリンク買ってくりゃいいでしょっつの。
先を行く二人はすでに次なる目的地が決まっているのか、中心街を抜けて落ち着いた街並みをずんずん進む。正確にはずんずん進むいろはに比企谷先輩が引っ張られてるって感じかな?
──あれ?この方向ってもしや……
先を行く二人が楽しそうにお喋りしながらしばらく歩いていると、とあるカフェの近くで立ち止まる。
うわっ、やっぱそっか〜……
「い、いろはちゃん達ようやく止まったぁ……! わぁ、なんか可愛いぃ。あそこのお洒落なカフェが次の目的地なのかなぁ?……や、やっとあったかいトコ入れるぅっ……」
「うん、そうみたい。……へぇ〜」
「ど、どしたのぉ?」
「いや、あのカフェ私らのお気に入りのカフェでさ、ずいぶん前にいろはが『いいな〜!彼氏……んー。彼氏とまでは言わなくても、大好きな人とこのお店でデザートつつきあったり他愛の無いおしゃべりたくさんしたりして、まったり幸せな時間過ごしたいなぁ』とかなんとか言ってたお店なんだよねー」
「うひゃあ!」
うっひょー!キタコレ!!と目を輝かす襟沢。
てかあんた尾行楽しみすぎじゃないかしら。
ま、あんなセリフを宣ってたいろはが、自らずんずんと男を引っ張って連れて来ちゃうくらいですもんねー!そりゃ期待も高まるばかりですなー。ふひっ!
そしてなにより、ようやく私たちもあったか空間に有り付けるってもんだ。
っべー!いやが上にも盛り上がりまくりっしょ!
店内へ早よ!と祈りにも似た想いでヤツラを見守っていると、ちょうど退店しようと店から出て来たカップルに慌てて足を止めて、比企谷先輩の背中にコソッと隠れるいろはす。
なんだよリスかよ可愛いなこんちくしょう。
どしたのん?とそちらのカップルに目を向けてみると…………お?おお!?な、なんか見たことある二人だぞ!?このカップル!
……ハッ!?そうだ!書記の子と副会長さんだ!確かいろはが書記ちゃんと便利屋って言ってたっけな。ひでーよ。
なんなの?こいつら付き合ってんの?仕事するか爆発しろ!
いやぁ……なんてニアミスなんざましょ!生徒会役員の3人がこんなオサレなカッフェ〜で鉢合わせだなんて。唯一かやの外の会計先輩涙目待ったなし!
にしてもいろはすってば、前はあんだけ色んな男ととっかえひっかえ堂々と遊び回ってたクセに、なんで比企谷先輩とのデートだけはコソコソ隠れちゃうんですかねぇ(ゲス顔)
うふふー、遊びじゃないリアルな恋愛だと恥ずかしいのぉ?(ゲス顔)
……ま、それはそれと致しまして……、フハハ!思わぬニアミスで同職場カップルに意識が集中している隙を見逃す私ではないのだよ!今こそ近づくチャーンスっ!
すすっと二人の後ろに着けて会話をスティールする私。もう盗み聞きのプロといっても過言ではない。
なにそれ自慢にならない。むしろイタい。
「なに、あの二人付き合ってんの?」
ですよねー。やっぱそう思っちゃいますよねー。
しかしいろははそんな比企谷先輩と私の意見には真っ向から反論なご様子。
「さー?違うんじゃないですか? だいたい遊びに行ったくらいで付き合ってるとかちょっと単じゅ……」
と、そこまで言うとハッとする。
こ、この流れはもしやっ……
「はっ!なんですかもしかして今わたしのこと口説いてましたか一回遊びに行ったくらいでもう彼氏面とか図々しいにもほどがあるのでもう何回か重ねてからにしてもらっていいですかごめんなさい」
ぴしぃっ!と両手を前面に押し出して、はぁはぁと息を切らしてまで一息で言った恒例のお断り芸がこれである。
なんかもうね……
「……ああ、うん、もうなんでもいいんだけどさ……いいから入ろうぜ。外寒い」
「あ、ちょっと待ってくださいよー」
心底呆れた様子でとっとと店内へと入っていく先輩の背中を、ぱたぱたと音が出そうなくらいにあざと可愛く追い掛けていくいろはを見ながら私はこう思いました。
……いやいや呆れてんのはこっちだから!比企谷先輩もいい加減お断り芸の内容ちゃんと聞き取りなさいよっ!あんたいろはに「どうぞどうぞ!先輩がもっと積極的になってくれれば彼氏面カモンですばっちこいです。むしろ推奨しちゃうまである!」って言われてんのと同義でしょうがそれ!
「さぶいぃ……」
なに『断られるの通算何度目か数えるのも馬鹿らしくなってくるよ』みたいな間の抜けた顔してんのよ。こっちが馬鹿馬鹿しいわ。
「……さぶいよぅ……」
──ん?でも……あれ?
もしかしたらこいつらもうコッソリ付き合っちゃってんじゃね?とかまで思ってたけど、このお断り芸をいつも通り披露するってことは、思ってたよりあんま進展とかしてないのかな?
「……がおりぢゃぁん……、私だぢもそろそろ入ろうよ"ぅ……」
誰ががおりぢゃんだよ。
「そ、そうねっ……」
ちょっと私、仕事熱心過ぎて寒さ忘れてたわ。まぁちゃんとお仕事しないと私の存在意義が根底から崩れちゃうから仕方ないけどもっ!
どうやら襟沢ももう限界らしく、真っ赤になった鼻をズビズビ鳴らして泣きそうになってることだし、とりあえず疑問は一旦脇に置いといて、ポンコツ眼鏡女子コンビもコーヒーと紅茶の香るあたたかいカフェへと身を委ねることにしたのでした。
おぉっ……ここは正に常夏パラダイスの玉手箱やぁ……!
「……あ、店員さーん。私たちあのカップルの裏側にしてくださーい……」
そうホールの女の子にコソッと耳打ちすると、当然の如くめっちゃ怪しまれました。
やめてっ、そんな目で私を見ないで!なにかに目覚めちゃいそう!
なんも目覚めねーわ。
× × ×
ボサノバ調の穏やかなBGMが優しく流れる店内へと足を踏み入れると、そこはもうまどろみの空間。
扉を一枚隔てただけで、まるで非現実的なくらいにゆったりとした時間を手に入れられるこのカフェが、私はとっても好き。
こんな素敵なカフェだもん。のんびりとソファに腰掛けて、コーヒーや紅茶の香りに包まれたり、可愛い雑貨やお洒落な調度品が飾られた店内を眺めたり、ナチュラル系BGMに耳を傾けながら美味しいスイーツとダージリンでティータイムを楽しんだりと、贅沢な時間を堪能したいところだよね。
ただ……うん。なにせ今日は目的が非常に残念なアレなもんでして……。いやもうホント宝の持ち腐れ的なカンジ?
ごめんよぉカフェ〜……!今日はお前さんを楽しめないんだよぉ……。次に来店した時は心行くまで癒しておくれ〜……?
変装しているとはいえ、襟沢はともかく私は一応比企谷先輩にも顔バレしてるから、とにかく慎重に気付かれないように案内された席へと通される私。
なんならほふく前進したいくらいな緊張感。うひょっ!一発でバレますね!
ホールの子に連れられていろはの後ろの席に座る頃には、すでに注文を終えているいろはが肘掛けに頬杖をついて幸せそうに小さくハミングしてた。
あ、これいろはが最高にご機嫌なヤツや。ふふっ、今幸せいっぱいなんだろうな、いろはのヤツっ。爆発しちゃえ♪
そんないろはの幸せなハミングに耳を傾けながら、いろはの様子を盗み見たり窓の外の景色を眺めたりしてる比企谷先輩も、なんだかとっても穏やかな表情を浮かべている。
これがいろはの求めてた幸せティータイムかぁ。良かったじゃん!夢が叶ってさっ。
「……なんだか素敵なお店だねぇ……」
「……でしょお?」
ひそひそではあるけれど、お気に入りのカフェを襟沢も気に入ってくれたみたいで何よりですな。
「……今日はこんなんだけど、今度はみんなでゆっくり来たいなぁ……」
「……ま、次の機会にねー……」
ひそひそ声でひとしきり会話したあとは私たちも注文を済ます。どうやらいろはもこの素敵な時間にご満悦のようで、意識が周りに向くような勿体ない時間の過ごし方をしなさそうだしね。
キャラメリゼされた見た目がとても綺麗な、オレンジのシブーストとダージリンティーのケーキセット。これが私のお気に入り。
襟沢はとちおとめのミルフィーユとロイヤルミルクティーのセットかぁ。なんだよこいつ乙女なお嬢様かよ。もちろん私もひとく……ふた口以上は食べるからよろしこー。
「この店、生徒会で使ったりするのか?」
注文を終えた私たちが聞き耳を立てていると、まったりとハミングを聞いていた比企谷先輩が不意にいろはに問い掛けた。
「あー、副会長と書記ちゃんのことですか」
ふむ。どうやら比企谷先輩は先ほどの遭遇がちょっと気になったみたい。私も気になります!
いろはによると、生徒会室で雑談してた時に話の流れでここの事を話す機会があったみたいだね。
今日のデートの為に「休みの日はどんなとこ行くんですかー?」とかそんな事を副会長に聞いてるうちに、自分のお気に入りのカフェの話をしてみたんだそうだ。
つーかいろはなんかデートくらい慣れてんじゃないの?わざわざ草食系利屋先輩に聞かなくたって大丈夫そうなもんだけども。
……ああ、そっかぁ。いろはからすれば、普段のオトコ遊びは、あくまでもいろはす教の信者への奉仕であって、それをデートとは捉えてないってことなのかな?
大好きな比企谷先輩にせっかくのデートを楽しんでもらいたいからって事前にリサーチしとくなんて、いろはのヤツめ。中々いじらしい乙女をやってるじゃないかね!
ただいかんせん残念なのは「今日のために。今日のために!」と、上目遣いでいじらしさをアピールしてるトコだな。比企谷先輩もそのあざとアピールに呆れてんじゃないのよ。……ったくぅ、それさえ無きゃねぇ……
それにしても……後輩女子に教えてもらった店をさっそく他の後輩女子とのデートに使うとか、ああ見えてあの副会長なかなかのやり手だな……。シチュ的に誘いやすい上に断られづらいという抜け目のなさ。見るからに無害そうな草食動物オーラを放ってるくせにっ。草食動物顔してるくせにっ!
私が副会長への不信を募らせてる間に、ここからが本題だぁ!とばかりに、いろはがコロッと話を変える。
そしてその時、いろはの目がキラリンっと光った!いろはすフラーシュ☆
「まぁ、ニアミスしちゃったのは正直予想外でしたけど……」
そこまで言うと、別に誰が聞いてるわけでもないのに(実はあなたの友達が後ろで聞いちゃってますけども!)、ニコリとはにかんだいろはが口に手を添え、こしょっと秘密めかしてこう囁いた。
「今度はもうちょっと知り合いが少ないところにしましょうね」
キタコレ!!次のデートのお誘い頂きましたありがとうございます。
『一回遊びに行ったくらいでもう彼氏面とか図々しいにもほどがあるのでもう何回か重ねてからにしてもらっていいですかごめんなさい』
などと自分から言っといて、その舌の根も乾かない内に自分から誘いやがったよこの女!
とても迅速丁寧なご対応ですね。どんだけ早く彼氏面して欲しいんでしょうか。
「次があるのか……」
もちろんそんないろはの真意に気付くハズもないプロのぼっちは、ちょっとめんどくさそうに顔をしかめる。
やー……いろはからのデートのお誘いにそんな態度が取れるのは比企谷先輩くらいなもんですよー……
もちろんいろははぷく〜っとごりっぷく〜!
「なんでちょっと嫌そうなんですか」
「や、別に嫌なわけじゃなくてだな……まぁ、そのなに、善処できるよう前向きに検討する方向性で調整しとくわ」
行く気ねぇ〜……
いろはすふぁいとっ!
「まったく現実味のなさそうな返事ですね……」
せっかくのお誘いを無下にされたいろははもっと怒ると思ったんだけど、はぁ……と溜息を吐いて呆れながらも、どこか楽しげな苦笑いで先輩を見つめてる。
その表情を見る限りでは悲観の様子なんて一切なく、──まったくこの先輩はほんっとにしょーもない先輩ですねー。ま、嫌がったってその内また強引に誘っちゃいますからね♪──ってな顔してるよ。ふふふ、強いねー、いろはは!
その時が来たら今度は事前に教えてよね、私の友人よっ!なにせ尾行るには色々と下準備が必要だもの☆
また尾行る気かよ。はい、大事なお仕事です。
……とりあえずここまで盗み聞いた限りでは、この二人の仲ってまだ全然進展してみたいなのよねー。ちょっと残念なようなちょっと安心のような。
べ、別に私よりも先にいろはに素敵な彼氏が出来ちゃったわけじゃなくてホッとしたって意味じゃないんだからね!?
「おっ」
呆れた苦笑いを浮かべていたいろはが急に色めきたつ。どうやらようやくお待ちかねのスイーツが到着したようだ。
マカロンサンドケーキを前にしたいろはは、キラッキラと大きな瞳を輝かせてスマホで撮影したりしてる。
おいおいそのスマホ、比企谷先輩の盗撮写真が入ってること忘れんなよ?
その後比企谷先輩のジェラートやらコーヒーやらも撮影会したいろはは、店員さんを呼んで比企谷先輩とのラブラブツーショット写真とか撮って、それはもうホクホク笑顔でご満悦でした!ちょー顔とか近いでやんの。爆発しろ。
そんなイチャイチャしてる様子を羨ましげに見つめながら、私はお通夜状態でただケーキセットを待つのみだったのです。ホント爆発して。
こらこらエリちゃんや?ツーショット撮影の様子と私をもじもじと交互に見つめるのをやめなさい?
い、言っとくけど私らはツーショット写真とか撮らないんだからね!?
…………た、ただ心を許した友達とのああいう行為と記念写真に憧れてるだけだよね?お願いだからあんたのお姉さま属性の対象を私に移すのだけは勘弁してください。私ゆり属性とか皆無だかんね……?
てかD組の中西くん狙いとか、もう死に設定だろコイツ。
いやん設定って言っちゃった!
× × ×
「ふふっ、それにしてもホント先輩ってどーしよーもないですよねー」
「あん?」
「デートで映画見に行って別のを観ようだなんて、わたしの16年の人生の中でも超レアですよ。超初耳ですよ」
「あのな、映画ってのは別に同行者と時間を共有する為に行くもんじゃねーだろ。自分が楽しめるものを観ないで、相手に合わせて観たくもねぇもん観たって、それは映画に……ひいては制作委員会の方々に失礼ってもんだろうが」
「……うっわ、めんどくさー……。だいたい映画なんて観終わった後に、感想やら批評なりを相手と語り合ってなんぼじゃないですかー」
「めんどくさい言うんじゃねーよ。そもそも共感出来ない他人同士が感想なんか言い合ったって一切意見なんか合わねーよ。ただ不毛なだけだ」
「……やっぱめんどくさっ……」
襟沢からの熱視線をなんとか掻い潜り、いろは達の面白可笑しいお喋りをBGMに、美味しいスイーツとお茶で午後のひとときを楽しむ優雅な時間。メシウマだぜ!
てか先輩……、いくらなんでも劇場で僕と握手!ならぬ劇場で僕らは解散!は無いですよ……さすがの私でもドン引きですわ……
そりゃいろはが即引き返すわけだわ。やはりプロのぼっちは伊達じゃない!
「やー、それにしても卓球とか超盛り上がりましたよねー。わたしよくトロそうとか言われちゃうくらいなんで、ホントはあんまり自信なかったんですけど…」
おっといきなりの話題転換!女の子の自由トークはマジで目まぐるしいわね。
「その「トロそうとか言われちゃうんでー」とかあざとさ凄いから。なんなの? 運動オンチキャラってあざと界ではウリになんの? そういうの間に合ってますんで」
「むー!あざとくないですぅ!ちょお素ですぅ! てかあざと界とか意味わかんなくてキモいですし超失礼じゃないですかねー?」
「はいはい、素素」
「むーっ」
やっべ、やっぱ超面白いわ、この二人!
最近あざとさを封印してるいろはが、比企谷先輩にだけはこんなに必死にあざとくアピールしてんのも微笑ましいし、それを軽くあしらう比企谷先輩の冷めた返しもまた最っ高!
そんな素っ気ない返しを受けて、ぷくっと膨らみながらもどこか満足気な微笑を浮かべるいろはは、あざといキャラに対して、こんな風に小気味よい返しをしてくれる比企谷先輩とのやりとりが本当に楽しくて仕方ないんだろうなって思う。
なんだかんだ言って総武高ベストカップルなんじゃないでしょうかね、こいつらってば。
「……えへへ、なんかすっごい楽しそうだねぇ……」
そんな様子をニヤニヤと眺めてた襟沢も、ついつい楽しげに小声を漏らす。
「……でっしょお?これが私の最近のマイフェイバリットなのよねー……」
「……香織ちゃんってオタ趣味だけじゃなくて他の趣味も残念すぎ痛いぃ!モガモガっっ……」
「……バカ!でかい声やめい……!」
リア充真っ盛りの私には一切身に覚えの無い失敬なことをぬかす襟沢に、つい強烈なアイアンクローを食らわせちゃった私もほんのちょびっとだけ悪いんだけど、でかい声で叫びかけた襟沢の口を塞ぎながら、超びくびくで意識をいろはに集中させる私。
ひぃっ……!見つかってまうぅ!
……………………ふぃ〜、あっぶね。どうやら先輩とのお喋りに夢中すぎて気付かなかったみたい!
てかこんなにくんずほぐれつしてたら、周りから見たら私と襟沢もカップルに見えちゃうんじゃないかしら?ゆるゆり〜。
ありゃ、暴れるからちょっとおっぱい触っちゃったじゃない。
…………う、うへへ、なかなか良いチチしてはりますなぁ〜……。完全に変態そのものである(キートン感)
いやいや冗談だから。ゆりゆりカップルとかならないから。
……だからあんたは頬をほんのり染めんのやめなさいってば。
そんなゆるゆり空間と化してしまった私達の後ろでは、八色漫才がさらに加速する。
「にしてもあの時わたしのスマッシュ超見事にキマリましたよねー! あはは、先輩ってば冷や汗ダラダラで、ただ茫然と見送ることしか出来なかったですもんねー」
あんたスマッシュなんて決めてたっけ?
「おい、ついさっきの記憶をこんなに早く捏造すんな。お前のはスマッシュじゃなくてホームランだから」
ですよねー。今日は一体何本の場外ホームランを目撃したことか。
「なんですか目だけじゃなくて脳も腐っちゃったんですか? 都合のいい記憶の改変でわたしを洗脳しようとするのやめてくださいー。……はっ!その都合のいい記憶改変洗脳を利用していつの間にかわたしと先輩が彼氏彼女だって洗脳する気でしたかいくらなんでもそれは姑息すぎて無理ですどうせなら男らしく真正面から思いっきりドンッとぶつかってきてくださいお願いします」
とうとうお願いしちゃったよ。
「いやお前それはさすがに持っていき方が強引すぎだろ……そこまでして振りたいんですかね」
……あんたこそそこまで徹底して気付かない体でお断り芸をスルッとスルーすんなら、いっそのこと「え?なんだって?」でいいよもう……この唐変木めが。
────その後も二人の幸せトークは尽きることもなく、
「最初ラーメンとか信じらんないこのダメ男とか思っちゃいましたけど、意外や意外、結構美味しいモノなんですねー! わたしびっくりしちゃいましたよー。えへへ、先輩なんて脇目も振らずにラーメンにガチ集中してましたもんねー。ふふふっ、まぁしょーがないからアレだったらまた付き合ってあげてもいいですよー?」
「…………」
「ちょ、ちょっとぉ!先輩今聞いてましたかー?てか今寝てませんでした!?」
「……へ? あ、や、聞いてた聞いてた。超聞いてたわ。ね、寝るわけねーだりょ……」
「やっぱり寝てたんじゃないですかー!」
などなど終わることなく続き、そんなこんなでカフェでの素敵な時間はこうして甘く幸せな空気に包まれ、のんびりまったりのんのんびよりに過ぎて行くのでした〜!
あ、ちなみに襟沢は私の腕の中でぐったりしてました。
ウフフ、口を塞ぎすぎて危うく口を封じちゃうところでしたよ?てへっ☆
続く
安定の中編ありがとうございます。
そりゃあんぱんだけであんなに尺使ってりゃ、無駄に文字数も増えますよ(白目)
ちなみに今回の後半の八色漫才は、10.5巻デートの可愛いデフォルメ挿し絵を参考に書いてみました☆
さて、誰一人として予想しえなかった展開(まさかの3話構成!)になってしまったワケなのですが、もともと1話で終わらす予定だったあざとくない件の為に、物語の〆を待つSSが他に三本ほど放置状態になってしまってます(汗)
このまま先にあざとくない件を書いてしまって良いのか!?
それとも他の作品の〆を先回しにした方が良いのか!?
現在ちょっと悩み中なんで、もしかしたらあざとくない件ifデート回後編は、ちょっと更新まで開いちゃう可能性があります><
てか複数連載はエタへの予兆と囁かれる中で、いくらなんでも同時に色々やりすぎだろ……
大変ご迷惑をお掛け致しますが、もしなかなか更新されなかったらゴメンなさい(ガクブル