最近友達の一色いろはがあざとくない件について   作:ぶーちゃん☆

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どうも。完k(ry


いやいや、どれだけ完結詐欺のそしりを受けようとも、今回ばかりはやらなきゃイカンのですよ!

なぜなら!なんと!
今日は私がSSを初めて投稿してからちょうど一年っ!
つまり執筆活動一周年記念日でもあり『あざとくない件』一周年記念日でもあるのです☆


そんな一周年記念日に選んだお話がこちら!

いろはすファンなら誰しもが映像化を夢見てその夢が散った(まだワンチャンあるはず!……だよね?涙)あのストーリー!
そう、あの伝説の10.5巻千葉デートをあざとくない件的目線から描いてみましたよっ?もしよろしければ10.5巻片手にお楽しみください(^^)


でも今回のお話をあざとくない件正史としてしまうと、あざとくない件本編ストーリーと整合性がとれなくなっちゃうんで(ゆきのん初登場回とかエリエリ視点回)、一応if世界線ってことでオナシャス!





【if】ちゃっかりと私の友達は逢引きをエンジョイする

 

 

 

年が明けてひと月ほど経ったとある土曜日。私 家堀香織は、女友達二人で千葉に遊びに来ていた。

ふふふ、多少オタな血が流れているとはいえ、流行に敏感なリア充女子高生ともなると、1月末から2月頭の、一年で一番寒いと思われるこの時期には、早くもスプリングハズカムに向けて春物ファッションのチェックに向かわねばならぬのでありますよ。いやいや私オタクとかじゃないんですけど。

ちなみにもちろん冬物バーゲンの余り物探索も怠りませんよー?目指せ!80パーOFF!

 

 

「ねぇねぇ香織ちゃーん。なにさっきから1人でブツブツ言ってんのぉ? ちょっとキモいし周りの視線もあるから自重し痛いっ!?」

 

ペシッと優し〜くデコをどついて溜息ひとつ。なんでよりによってその女友達が襟沢なんだよ……他にも色々居るじゃん?兄貴にアキバ連れてかれた女とか彼氏とラブラブちゅっちゅ中のウザ腹黒女とか。

 

そう!上記の二人は残念ながらそんな上記な理由で本日は欠席なのだ。上記上記って、上記で済ませちゃうなんてちょっと紗弥加と智子に対して手を抜きすぎじゃないですかね。

何はともあれ、そんな事情で今日は余り物の二人でのお出掛けとなってしまったのです。余り物って言っちゃった!

でもまぁなんだかんだ文句言っても、コイツと二人でも遊びに来ちゃう辺りが、実は私ってこのアホそんなに嫌いでも無いんじゃね?……なんて、己のツンデレ加減にちょっぴり萌え萌えなんかしちゃったりしてね!きゅんっ☆

 

 

 

 

あ、今更ではありますが、いろはのヤツも不在なのでありますよ。ゆうべお誘いの電話入れたら、なんかあいつも今日はどうしても外せない用事があるとかなんとか。

三学期に入ってからのあいつは、それまでよく行っていたオトコ遊び(荷物持たせ)を止めてたみたいだから、ここ最近の休日はちょくちょく遊んでたんだけどねぇ。

なんか電話越しにウヘヘへエヘヘヘと不気味な笑い声をあげてたんだけど、一体なにがあることやら。

 

「チッ、襟沢なんかと二人でってトコが若干気に食わないけど、せっかくだしとっととショッピングでも楽しんじゃいますかね♪」

 

「酷い!?…………って、あ、あれ……?」

 

「ん?どしたの?」

 

「……あれ、いろはちゃんだよねぇ……?」

 

そう私に問い掛けながらもじぃっとそちらを見たまんまの襟沢。その指差す先には、真冬だというのに生足ミニスカートに高めなヒールのブーツという、なんとも気合いの入った格好をした我らが一色いろはが、壁ぎわにコソコソ隠れてある一点を見つめてすっげーによによしていました。

 

 

× × ×

 

 

「な、なにしてんのあいつ……」

 

「さ、さぁ……」

 

なんだよあの怪しさ満載っぷり。でもあの怪しい覗きっぷりはなんか見覚えがあるな……。んーと、どこでだっけ?

…………あ。

いやん!見ちゃった家政婦モードの自分自身でした!てへっ☆

 

現在午前10時の千葉駅前。土曜ということもあり、かなりの賑わいを見せるこの大都会!千葉!の駅前で、一人によによと壁に寄り添っている美少女はマジやべぇ。いくら美少女でも通報されちゃうレベル。

 

っておいおい。あいつ薄ら笑い浮かべながらスマホ取り出して、なんか撮影始めちゃったよ。なんなの?本日のどうしても外せない用事って盗撮なの?

 

「か、香織ちゃん……あ、あれっ……」

 

と、襟沢がまた新たな方向へと指を差す。

いやいやその驚愕の表情やめなさいよ。この危険すぎる光景を目にしたあとでも、まだそんなに驚ける事態が私を待ってるのん?もうお腹いっぱいで胃がもたれちゃいますよ私。

 

でももう乗り掛かっちゃった船なんだからしゃーない。たとえその船が泥製品であろうとも!

そして私は、襟沢の生意気にも超綺麗な指先と盗撮いろはのスマホのレンズが交錯する方向へと嫌々目を向けてみた。

 

「…………あ」

 

そこには、待ち合わせ場所に相手がなかなか現れない事態に、何度もスマホで時間をチェックしているといった空気を醸し出している、とある人物がうんざり顔で立っていたのでした。

 

「比企谷先輩だ!」

 

 

× × ×

 

 

……えっと、一先ずこの状況を整理してみようかな。

本日は比企谷先輩が誰かと待ち合わせをしてて、たまたま通りかかったいろはが、待ちぼうけして目を腐らせている先輩の姿に萌え萌えムラムラしちゃって、ついつい盗撮しちゃったよ?えへへっ!っていう構図で合っているのだろうか?

なんかもう色々とおかしいよその構図。

 

あんたゆうべウヘウヘして、明日わたし用事あるよ宣言してたじゃん。まさか本気でその用事って盗撮なの?

前日から決められていた用事→盗撮=ストーキング。

ほらほら!素敵な公式が出来上がっちゃいましたよっ(白目)

 

 

……い、いろは、あんた……

二人して戦々恐々と様子を窺っていると、撮影に満足したのかスマホをポケットにしまったいろはが、おもむろにバッグからコンパクトを取り出して前髪をちょいちょいと整えたりリップ塗り直したり笑顔の練習したりと、その姿、デートに赴く前の恋する乙女が如し。

ま、まさか……

 

最後にコンパクトに向かってぱちりとウインクをかますと、こっそりと比企谷先輩へと向かっていくいろは。その姿、静かなること林の如く。

 

そんないろはを発見した比企谷先輩の視線をばっちり確認したいろはは、今ここに到着したばかりですけど何か?って面構えで、とてとてっと比企谷先輩へと小走りで駆け寄る。その姿、侵略すること火の如し。

 

 

………………ってオゥイ!比企谷先輩の待ち合わせ相手ってやっぱお前なのかよ!?

はぁ?意味分かんないんだけども!?あんた待ち合わせ相手をわざわざ待たせといてなにやってんの!?

 

 

私達といろは達の居場所は距離があるから声なんてもちろん聞こえないんだけど、あの女は比企谷先輩とのやり取りに、むーっとむくれたり、やれやれと溜め息吐いたり、不満げに口を尖らせたりと、出会い頭からあざとさ全開の仕草でひとしきり先輩を攻め立て、さらにわざとらしく肩を落としたかと思えば、すぐさま勝手にカツカツと歩き始める。

比企谷先輩に背を向けた瞬間に緩んだ口元と、舞うような軽い足取りを見る限り、その背中は如実にこう語っているようだった。

 

『ほらほらー、時間もったいないから早く行きますよー?せーんぱいっ♪』

 

と。

 

「ね、ねぇ香織ちゃん……。いろはちゃんさ、比企谷先輩と待ち合わせしてたってのはまぁ分かるんだけど……、その前のアレ……なにやってたのかな……?」

 

「……知んないわよ。ま、まぁ大方、休日の待ち合わせに敢えて遅れてきて、自分を待っててくれてる先輩を覗いて楽しもうとか思ってたら、その姿につい嬉しくなっちゃったか萌えちゃったかして、ついつい記念として写真に収めたくなっちゃった☆とかじゃねーの……?」

 

ほら、女ってデートの待ち合わせは、男を待たせとくことこそが正義!とかって面倒くさい人種なんでしょ……?知んないけど。

女の思考って謎すぎて難易度高過ぎィィ!……あ、私も一応女の子だったんじゃなかったかしらん?

 

 

……しっかし……まさか休日に二人でデートしちゃう仲にまで発展してたなんてねぇ。

最近のいろは見てたら、コイツって本命には意外と奥手なんじゃね?ぷっぷー!とか思ってたのに、なかなかやるじゃあーりませんか。

 

 

歩き始めた二人の背中を見送る私と襟沢。

さて、今日はせっかく千葉まで春物ファッションチェックの遠征に来たワケだし、次なる行動といえば……

 

「よし、尾行るわよ」

 

「なんの躊躇もなく!?」

 

てか尾行る以外の選択肢なんてあるのかしら。買い物?なにそれ美味しいの?

 

「……ちょ、ちょっと香織ちゃん……いくらなんでも常識的に考えてそれはマズいんじゃ……」

 

やだ!私ってば襟沢ごときに常識について語られちゃってるわ?

 

「ばっかお前、あの二人が行動を共にしてるトコ見ちゃったあとで、キャッキャウフフとセルフミニファッションショーなんか楽しめると思ってんの? 今頃どんな面白可笑しいやりとりを繰り広げてんのかしらと気になっちゃって、服なんかに意識持ってけるわけねーだろjk」

 

「……じぇ、JK?じょ、女子高生……? なんで急に女子高生が出てくんのか分かんないけど……、だって香織ちゃんって普段ならあんなの見てたらテロ予告するタイプじゃない……」

 

だれが過激派だよ。

 

「うっさい!仕方ないでしょ!? 私には八色を監視しなくちゃいけない使命があんのよ! それ怠ったら私の存在意義が根底から崩れちゃうのよっ!」

 

いやいや大人の事情ぶっちゃけすぎでしょかおりん……。ホラ、襟沢がドン引きしてんじゃん。

 

「……よ、よく分かんないよぅ……」

 

「……はぁ……まぁいいわよ。んじゃ私一人で行くから、あんたもう帰っていーよ」

 

「やぁだ〜!せっかく今日を楽しみにしてたんだもぉん! 行くぅ!行きますぅ!」

 

なんだよコイツ、そんなに今日を楽しみにしてたのかよ。いきなりデレやがって、ちょっぴり可愛いじゃないのよ。

 

「……しゃーないわね……んじゃまた明日買い物付き合ったげるわよ……」

 

「マジでぇ!?やた!」

 

いやん私もちょっとデレちった☆

こいつアホのくせに見た目だけは妙に可愛いから厄介なのよね。グループのマスコットゆるキャラかよ。

 

 

 

こうしてデレりんとエリっしーによる、いろは比企谷追跡ロードムービーが幕を開けたのでした!

 

 

× × ×

 

 

駅前から歓楽街へと続くメインストリートを、二人仲良く肩を並べて歩くバカップル。

や、よく見ると比企谷先輩が半歩くらい先を歩いてるわね。たぶんアレ、可愛い女の子と並んで歩くのが恥ずかしいのね。可愛いヤツめ。

 

そんな少し斜め前の照れた横顔を見てにんまり微笑みながら、恋する乙女はその半歩を一生懸命に詰める。

ホントは繋ぎたそうな右手をふわふわと彷徨わせながら。

 

 

「……爆発すればいいのに」

 

「じゃあやめればいいのに!?」

 

だって仕方ないじゃん!?

好きな男とお喋りするいろはのコロコロと変わる表情がすげー楽しそうで、見てるだけで大量の砂糖吐きそうなんですもん!

ブラックを!ワシのもとにブラックコーヒーを持って参られぇい!

 

 

そんな爆発寸前のカップルを憎々しげにストーキングしていると、映画館に吸い込まれていったかと思ったら、すぐさま映画鑑賞を取り止めてなにやら相談しているご様子。

……くっ、せっかく尾行してるってのに、近付けないから何言ってんのかよく聞き取れなくてもどかしい!

 

「っ!?」

 

なん……だと?

突然いろはが比企谷先輩と向き合って距離を詰め始めた!

え!?なに!?こんなトコでいきなりちゅーしちゃうの!?ちっす!?ちっすなの!?

と思ってドキドキしてたら、どうやらいろはもその顔の近さにようやく気が付いたようで、慌てて距離を戻すとほんのり頬を染めていた。

 

……ふぅ、あっぶね。ど、どうやらちっすじゃ無かったみたいね……。くそっ、焦らしやがって紛らわしい……!

なんか二人していろはのブーツ見たり指差してるみたいだし、普段よりも目線が近いことを確かめてただけみたい。

たかだか目線の高さを確かめてただけなのに、なに二人して照れ照れに俯いちゃってんのよ、中学生恋愛かよ。

そんな、中学生日記でアオハルなご様子を、ちゅーしちゃうのかと思って手に汗握ってドッキンドッキンしてたDJ家堀香織が皆様にお贈りしております☆

 

「……ごっきゅんっ」

 

唾を飲み込む大きな音に視線を横に向けると、真っ赤な顔したエリエリがはぁはぁ言っていた。ここ中学生しかいないのかよ。思春期真っ盛りだなおい。

 

 

自分たちの純粋無垢な乙女っぷりに愕然としていると、突然ターゲットが動き出す。

チラッと比企谷先輩へと視線を向けて、ほんのり染まった頬を誤魔化すようにえへへっ、と可愛くはにかむいろは。そんなあざとさのカケラもない照れた笑顔に恥ずかしくなっちゃったのか、すっと目を逸らす比企谷先輩。とっとと先を行くと、いろははペコりんと小さく返事をして、ちょこちょことその背中にピットリくっついていった。

やだもうホント爆散して。

 

 

ん?どうやらボウリング場の方へと向かっているご様子ですな。ああ、だからヒールの高いブーツを二人して気にしてたんだね。香織納得!

 

 

そして私たちはみんなでボウリング場に向かうのでありました。

注・ターゲットと追跡者をみんなとは言いません。

 

 

× × ×

 

 

ボウリング場、かぁ……

ここはストーキングにはなかなか不向きなトコだぞ……?

なにせ隣のレーンとかだとすぐバレちゃうし、そもそも混んでたらレーンなんて選べやしないし。

そして最悪ボウリングに夢中になりすぎて尾行を忘れちゃうまである。それボウリング場関係なく単なる自分たちのさじ加減次第です。

 

だがしかし、ボウリング場に入店したターゲット達は、まさかのボウリング総スルーで卓球台へと一直線。

なん……だと……?

……は?なんなの?将来しっぽりと温泉旅行にでも行ったときの為の予行練習なのん?ぽこぺんぽこぺんと軽く打ち合って汗かいたあとは、お部屋に戻って布団の中でぽこぺんぽこぺんと激しい打ち合いをお楽しみですか?……ケッ。

なんか今日の私、ちょっと荒みすぎじゃないかしら?

 

「だからやめればいいのに……」

 

しかもモノローグが口から漏れてたみたいですっ。キャッ!恥ずい!襟沢の口を封じなくっちゃ♪

 

 

周りに自販やソファが置かれた、場内の隅にある卓球台に移動したことにより、ボウリングよりは若干観戦しやすくなったものの、結局危険過ぎて近寄る事も出来ず、ミニスカをヒラヒラさせながらぽこぺんしてるのをただ遠巻きから眺めるだけの私。

ほらほらいろはす、あんまり夢中になりすぎてアツくなっちゃうと、そのヒラヒラと舞い躍ってるミニスカから勝負パンツがチラリズムしちゃうわよ?

てかさっきから比企谷先輩がそのチラリズムにプレーに集中出来ずに、集中力が持ってかれちゃってるじゃない。まぁいろはすったら策士さんなんだから!

 

もちろんこれだけ離れてると会話なんか聞こえるはずもなく、たまに聞こえてくる声と言えば「たあ」「ほい」「うりゃ」「死ねぇ!」などの、いろはから発せられる楽しげでのどかな声ばかり。

若干のどかと言うには相応しくないのも混じってますけども。

 

 

──はぁ、どうしよう……なんかちょっと虚しくなってきちゃったよぅ……てかなんで卓球で特大ホームランかっとばしてドヤ顔してんだよぉ……

んー……、残念だけどこんな楽しそうなラリーをただ見てるだけだなんて、ただただ不毛だし精神衛生上よろしくないですよねー。

……しゃーない。そろそろお開きにしますかね、と思ってたところで、存在をすっかり忘れてた襟沢に肩をポンっと叩かれた。

 

ん?と振り替えると、なんかすげーキラキラした笑顔で私にナニカを差し出してきた。

 

「香織ちゃん香織ちゃん!近くの100均でこれ買ってきたよっ!ホラホラ早くこれ着けてもっと近くに行こうよぉ!」

 

嬉しそうに差し出してきたのは伊達眼鏡とマスク。いわゆる変装セットでした。

 

…………こいつアホだろ。

 

さっき私に常識を語ってきたのって、私の記憶に間違いがなければ確かあんただったよね……?

なにコイツいつの間にか尾行楽しくなってきちゃってんの?しかもいつの間に買ってきたんだよ……アグレッシブすぎんでしょ。

 

「これでニット帽に髪しまっちゃえばバッチリだねぇ!えへへ〜」

 

私が軽く引きつってる間に、襟沢は早くも準備おっけーでご満悦なご様子。

お前、やっぱ大物だわ。大物とバカが紙一重だとするならば、やっぱバカなんだろうけど。

それにしてもメガネっ娘姿が無駄に可愛いのもなんか腹立つなこいつ。

 

「……ったく、しゃーないわね……。とうっ!なんちゃらプリズムパワー!メーイクアーップ☆」

 

かくいう私もこのノリノリ具合である。そしてチョイスが古いのもご愛嬌。そこはせめてプリキュアにしとけよと。

……まさかとは思うけど、やっぱ私も残念な子なのかしら……?

 

 

メタモルフォーゼを完了させて残念美少女戦士なんちゃらムーン的ななにかになった私たち二人は、こそこそとターゲットに近寄っていく。フハハハ!見つかってももう安心!

あ、でもかおりんメガネっ娘バージョンがとってもキュート過ぎて、逆に目立っちゃったらごめんねっ?

しかし残念ながら時すでに遅し!もう卓球終わって二人してソファで休憩してました!

……やっぱ変身シーンで、尺の時間稼ぎにバンクを多用しすぎるのは視聴者に不快感を与えちゃうからダメね……

 

 

やれやれ……でもまぁやっと会話が聞こえてきたよ。

はてさて、なにを喋ってんのかなぁ?

 

「だから、しばらくは……」

 

ようやく聞こえたいろはの声は甘い甘い砂糖まみれ。

そしてそっと比企谷先輩の耳元にぷるツヤな唇を寄せて、いたずら心たっぷりに小悪魔乙女な一言ともう一匙のお砂糖をプレゼント。

 

「こんなことするの、先輩にだけですよ♪」

 

 

ぐはぁ!あまりの甘さに爆発予告も忘れてポッと頬を染めちゃう乙女な私っ。

 

──こんなことするの、先輩にだけですよ──

 

比企谷先輩は、そんな意味深な問題発言をかましてくすっと笑いかけるいろはを、ただただ苦笑いで見つめていた。

なんか、私らが想像してなかったトコロで、かなり関係進んでんのかな!?つい先日のマラソン大会の、あの凹み具合はいずこに!?

 

 

 

──そんなこんなでボウリング場をあとにした我々ご一行様は、次なる目的地へと向かう。

注・ターゲットと追跡者をご一行様とは言いません。

 

どこへ行くのやらと思ってたら、まさかのなりたけでした。

おいおいマジかよ!あのいろはがデートでラーメン屋だと?

男がデートの食事にそんなチョイスをしようもんなら、

 

『(いやいや、さすがにデートでラーメンってギャグでしょ笑) ごっめーん!わたし用事思い出しちゃったからもう帰るねー。たぶんもう遊びに行くこと無いと思うけど、すっごく楽しかったよー(棒)』

 

と、今後の二人の関係に一切の希望を与えることなく、素敵な笑顔で永遠のサヨウナラをすること請け合いなあのいろはが!?

あ、いや、さすがにいろは引きつってるけどね。さっきまでくいくいとあざとく引っ張ってた袖から、すっと手を離すくらいには。

 

それでも、ぶーぶーと文句を言いながらも、いろはは比企谷先輩の背中を追うようにオレンジ色の看板でお馴染みのなりたけへと入って行ったのでした。

 

 

× × ×

 

 

「……あー、お腹減った〜……」

 

時刻はお昼過ぎ。本来であればどっかのサイゼかMなバーガー屋あたりで食事してるとこなんだろうけど、この場を離れてる間にターゲットを見失ってしまっては本末転倒なのである。

うーん。張り込みってたーいへん!

 

てかなんでせっかくの休日にこんなことしてんだっけ私……と、いろは達を発見しちゃった時の、謎の気持ちの盛り上がりに少なからず後悔し始めた私の肩が、またもや存在をすっかり忘れていた襟沢によってポンっと叩かれる。

 

今度はなんだよ……、と振り返ってみると、襟沢がウッキウキでまたまたナニカを差し出してきた。

 

「香織ちゃん香織ちゃん! はいどぉぞ! コンビニで買ってきたよぉ」

 

 

……あ、あんぱんと牛乳……

…………こいつやっぱアホだろ。今日び刑事ドラマでもこんなチョイスしたらギャグにしかなんねーよ。

 

真冬の寒空の下、あんぱんもきゅもきゅ牛乳ちうちう、友人のデートの様子をコソコソと張り込む美少女リア充女子高生二人の図。

そんな自分たちの姿を多角的な視点で客観的に捉えながら、私 家堀香織はこんなことを思うのです。

 

 

 

やはり私の青春ラブコメは正解の要素がひとつもない。

 

 

 

続く。

続いちゃうのかよ。

 






というわけで、一周年記念日だから書いたってのになぜか続いてしまう千葉デート編でした!
ホントは1話で済ますはずだったんですけど、1話で済ますとなるとかなり長くなっちゃいそうだったんで分割しちゃいました(汗)

それにしても、まさかSS執筆を一年もやってることになるとは夢にも思いませんでした(^^;)
飽きっぽい性格なんですけどねー。

そしてちょうど一年前の初投稿日、調べてみたら初日にお気に入りしてくださったのは33名様だったみたいです!まっこと有り難いことでございます(*> U <*)
はたして初日の33名の猛者さま達は未だに読んでくれてるのかな……?もう読んでないのかな……?
もしも一年前のあの日から、未だに読者さんで在り続けていてくれているのなら嬉しい限りです♪



後編投稿はこれまた一周年記念日(完結詐欺始まりの日、つまり当初3話で締めるハズだった今作の3話目を投稿した日)でもある17日の予定です☆


ではではまたお会いいたしましょう!



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