最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
スミマセンでした><
活動報告には記載したんですけど、執筆する時間があんまり取れなくて、シリーズの締めだというのに更新遅れちゃいました(汗)
長らくお待たせしてしまいましたが、ようやくこれでラストになります!
ではではどぞ☆
花も恥じらう恋する乙女が一年間待ちに待ち望んでいた日……
そう。今日はバレンタインデー!
そんな、恋する乙女の祭典たる今日この日、乙女代表と言っても過言ではない私 家堀香織は、とても素敵なお気に入りのカフェで絶賛デート中なのっ!
「香織ー」
二人っきりの空間は、とっても幸せショコラ色。
甘ぁいホットチョコレートと甘ぁいケーキの香りに包まれて、私たちは愛を語らい合ってるのっ。
「ねぇ香織ー」
うふふっ、なにかとっても素敵なことが起こりそうな よ・か・んっ♪
「ちょっと香織ー?聞いてんのー?返事しないとあと三時間くらいは余裕で語っちゃうよー」
「アッハイ……」
一体いつからデートの相手が男だと錯覚していた?
残念!相手はいろはちゃんでしたー!
もうかおりんを解放したげてよぅ……
なにが悲しくてバレンタイン当日に、女二人でお洒落なカフェでホットチョコレート飲まなきゃいけないっつーのよ。
しかも今ならもれなく愛の語らい(愚痴)付き!
そりゃ現実逃避でもしなきゃやってらんなーい☆
チクショウ!やっぱ来るんじゃなかったぁ!
× × ×
バレンタインを明日に控えた今日も、私はいつもと変わらぬ夜を過ごしていた。
まぁいつもと違う事と言えば、明日は平日にも関わらず、入試の為に学校が休みということくらい。
そーいやシスコン比企谷先輩の妹さんが、明日うちを受験するとかって風の便りで聞いたっけな。
風の便りと言っても、休み時間とか昼休みとかに、隣から勝手に情報が流れ込んでくるんだけど。
いやはや受験生の皆さんっ、試験頑張ってね!かおりん、心から応援し、て、る、ヨ?ちゅっ☆
うわきつ……と自分自身に愕然としていると、不意にスマホから、キャハっ!ラブリー17歳♪と、大音量でウサミン星人の歌声が響き渡った。
うん。私きっついわー。
「誰ぇ?こんな時間にー」
机に置いたままのスマホを覗いてみると、ディスプレイに表示された文字は…………一色いろはだった。
──いろはは件のお料理教室の後はずっと不機嫌だった。特になにを言うわけでもなく、常にぷりぷりしていたっぷり。
まぁイベントでなんか気に食わないことでもあったんだろうけど、こっちからその話題を振ると面倒くさそうだから、私たちはそっとしておいたんだよね。まぁいずれ話してくんだろ……と。
『いずれ話してくんだろ』……その予想が当たったのが休日の前日、しかもバレンタインの前日とか、もう嫌な予感しかしない。端的に言うとめんどくさそう。
ごっめーん!寝ちゃってたぁってヤツにしとこうかな?
どうしよっかな〜と、しばらくのあいだ息を潜めて一色いろはの文字を眺めてたんだけど、あ、やべっ、留守電にセットしてなくね?
これ電話出ないといろはが諦めるまで鳴り続けるやつだ。
もう嫌な予感しかしない。
私は幾度のメルヘンチェンジを果したのち、諦めて電話に出る事にした。
ラブリーな17歳のエターナルハーモニー(永遠のリピート地獄)はさすがにキツすぎんよ(白目)
あんたどんだけコールすれば気が済むのよ……着信するだけで充電切れちゃう!
「……あ、も、もしもしいろはー?ご、ごっめーん!ちょっと寝て…」
『あー香織ー?「あ、これめんどくさいヤツだ。電話切れるまで気付かなかったフリしよーっと」ってスマホをただ眺めてた件については不問にしてあげるから、明日お昼に千葉に集合ねー。あ、ちなみにサシだから』
いやんバレテーラっ!
「か、かしこま…」
って言い切る前に切りやがった。まだ語尾に星も付けてないってのに……
語尾に星付けるってなんだよ。
大体明日は花も恥じらう乙女の祭典バレンタインデーなのよ?
乙女の私にちょっとは気を遣っても良かったんじゃないかしら?
あ、私だからこそバレンタインに気を遣う必要がなかったんだね!むしろ一人寂しい私に気を遣って呼んでくれたまである。
どうしよう独神女教師まっしぐら!
「はぁ〜……やれやれ、あー、めんどくせー」
溜息混じりにそうボソリと独りごちながらも、なぜだかちょっと顔が緩んでしまう私である。
──ふふっ、ようやく観念して喋る気になったのかぁ?あんにゃろめ♪
だったら仕方ないから色々と聞いてあげましょうかね!色々とねっ。
「ふっふっふ、よぉっし」
であるならば、私は私で明日の準備をしておこうじゃあーりませんか!
お料理教室以来元気が無かった我が友達を、少しは元気にしてやりますかね!ふひひ。
× × ×
そう思ってた時期が私にもありました。
例のカフェに連れ込まれてから、かれこれもう二時間くらい愚痴られて魂抜け掛けてるどうも私です。
これは私の想像を遥かに超えて蓄まってますわ。
「……ほんっと、人の気も知らないで自分たちの世界でウジウジしちゃってさぁ……!イチャイチャしてくれるんなら、もういっそ清々しいんだよ!?なのにさぁ、なーんかお互いの距離を計りかねてんのかなんなのか知んないけどさー、ちょっとわたしがちょっかい掛けたくらいで不機嫌になるくせに、ちょっと部外者にからかわれたくらいでモジモジモジモジしちゃうわ、ちょーっとボウル落として拾おうとした時に手が触れ合いそうになったくらいで真っ赤になってあたふたしちゃってさー…………マジで小学生かよって感じ……!」
「…………」
「なんか最近ホントもどかしいっていうかなんていうか、変な空気になっちゃってるからさー、いっそ掻き回しちゃえ!って思って、大魔王をゲストに呼んだのも失敗だったのかも知んないけどさー…………あー……もうほんっとイラつく……」
「…………」
「だったらもうお前ら付き合っちゃえよ!って感じなんだよねー……いや、そりゃホントはやだけどさー……でもでも、あんなんじゃわたしには割り込む隙なんて全然無いじゃん……?あんな状態でいくらわたしが頑張ったって、わたしの方になんて振り向いてくんないしさー……仮にそれであの関係の決着から逃げ出して一時的にわたしを見てくれたとしたって、そんなの……絶対本物なんかじゃないもん……わたしが欲しい本物はそんなんじゃないじゃん?」
「い、いや、だからね?……ないじゃん?……って言われましても、私にはなんのことだか…」
「なのにあいつらと来たらさ、今のぬるま湯な関係を保つ為に、なんも先に進もうともしないんだもん……なんとか少しでも張り合ってやろうって張り切ってるわたしがバカみたいじゃん……」
「…………」
「あー……もうっ!せっかく頑張って色々と準備したのになぁ……もうわたしどうすればいいのかなぁ…………ってちょっと香織聞いてんの!?」
ええ、聞いてますよ聞いてますとも。てかこの長っがいくだり、カフェに入ってから三回目くらいだし。
それにあんた私がなんか意見言おうとしても聞きゃあしないじゃないのよ……
嗚呼……これだから女の愚痴ってやつは嫌なのよ……
ぶっちゃけ聞き手の反応なんてどうだっていいのよね。
ただ言いたいことをつらつらと述べて、聞き手はいい感じで相づち打っときゃ満足なんだから……
だから聞き手がその愚痴内容をちゃんと理解してるかどうかなんてどうでもいいのよね。
……はぁ……これ完全に疲れたOLの居酒屋愚痴トークのノリだよ……まさか前話の冒頭が最終回のフラグになるだなんてっ……
ぜ、前話の冒頭とか最終回って、一体なんのことかしらん?
しかし私もこのままおとなしく聞いてるだけの夢見る少女じゃいられないのでありますよ。私の場合どちらかというと夢見る処じゲフンゲフン!ゲっフンゲっフーンっ!
なんか黙って聞き流しちゃいけないことなんかも口走っちゃってるしねこの子。
「あのさー、いろは」
「……なに?」
いやいや、あんたなんでそんなに攻撃的なのよ。
愚痴トーク中に水差されちゃったのがそんなにおこなの?
「そもそもひとつお聞ききしたいんだけどー」
「……だからなに?」
「とりあえずさ、あんたの本命は比企谷先輩ってこと前提で話を進めちゃっていいんだよね?」
そう。もうマジで今更過ぎることだけども、そこを認めてくんなきゃ話が進まないんですよねー。
するといろはは途端にカァッと真っ赤になって、両手の指をくるくるさせながら俯いて、上目遣いでこう言うのだった。
「……ど、どうぞ」
あっさり認めちゃったよ。
まぁここまで来て「せ、先輩のことなんてなんとも思ってないんだからねっ?」とか言われても、すぱこーん☆とスリッパではたきたくなっちゃいますけれども。
ふふっ、でも真っ赤に俯いて上目遣いで「ど、どうぞ」だなんて、なんかちょっと可愛いじゃないあなた。
「へぇ、あんだけ葉山葉山言ってたわりにはあっさり認めたわね〜」
「ま、まぁどうせバレてんのなんて知ってるしぃ……、いい加減認めとかなきゃ満足に愚痴も言えないじゃん」
あんたは愚痴って満足しても、私には不満しか残んないんですけれども……
「ってかバレてんの分かってんなら、なんで紗弥加達も呼ばなかったの?なんで私だけ?」
被害者を最小限に抑える算段ですかね。まぁお優しい!……私以外に。
「……だぁってさー」
もじもじと居心地悪そうにすると、いろははチラチラと私の様子を窺うように視線を向けてくる。
「み、みんなに好きな人の話を聞かれたら……その……は、恥ずかしいじゃん……?」
あらやだ可愛い!
なるほどねー、比企谷先輩への愚痴をぶちまけるって事は、それすなわち嫉妬心をぶちまけると同義だもんね。
恥ずかしいからホントは打ち明けたくないけど、どうしても愚痴らずにはいられないから、聞かせる相手は少なくしたかったわけだ。
「……だからまぁ、バレンタイン当日ってこともあるし、バレンタインとは一切無縁の香織をセレクトしちゃったっ!てへ☆」
ぐはぁ!聞きたくなかった衝撃の真実!
ちょ待てよ!オトコ居んの智子だけじゃん!紗弥加だって今は居ないよ!?
……いやまぁ仲良しな千葉の兄貴が居るけどさ。
でも襟沢は!?襟沢なんて私以上な残念っ娘なんですけど!?
自分が残念って認めちゃったよ。
「……私帰る」
「嘘嘘嘘!香織にしか話せないからだってばぁ」
「嘘つけ、この女……」
おいおい、いろはの席の後ろに座ってる三人客笑ってんじゃねーよ。肩がプルプルしてんの丸見えだぞコラ。
……あぁ〜あ、ったくしょうがないわね〜……
まっこと不本意ではありますが、最後まで付き合ってあげますかね。
ふふふ、最後まで……ね。
× × ×
さて、ようやく私のターンになったわけだ。
ではでは香織いっきまーす。
「あのさ、いろはは結局どうしたいの?さっきから聞いてると、あんたが腹立ててんのって、比企谷先輩だけじゃなくて、雪ノ下先輩にも由比ヶ浜先輩にも……って感じだよね」
「……うん」
「うーん……まぁ私には詳しい事はよく分かんないけどさ、いろははあの三人の関係性が気に食わないってわけなんでしょ?」
「……そ。なんか、生ぬるいって言うかなんというか……三人が三人、お互いがお互いを傷付けないように、びくびくしながら触れ合ってるっていうか…………。なんか三人でウジウジしちゃってさー。あんなんじゃ、いつまで経ったって前に進めないっての……」
はー……なるほどねー……
ま、あの人達ってなーんか複雑そうだしね。
三人で居る時間が大切過ぎて、ヘタに動いてそれが壊れちゃうのが恐いのかな。
んー……確かに壊れるのが恐いからって、お互いに気を遣い合う関係なんて、そんなの本物とやらじゃないのかもね。
「で、いろはは今のまま、あの三人が前に進まないままじゃ、あんた自身も先に進めないからイラついてる……と」
「うん……」
「んで、仮に現状であんたが先輩を攻め落とせたとしても、そんなのはただ奉仕部の関係を壊さない為の逃げ道でしかないから、そんなのいろはが本気で欲しがってるものじゃない。だから攻めるに攻められない……と」
「……そ」
あぁ……これは厄介ですなぁ……
ちょっと前までのいろはなら、ターゲットとライバルがウジウジしてるんなら、むしろ好機!とばかりに横からちょちょいとかっ攫っちゃえばおけおけおっけー!ってな感じだったはずだけど、今のいろははそういうの求めてないんだね。
元々勝ち目なんてオブラートくらい薄いくせに、その本物とやらを手にする為には、奉仕部の決着から逃げ出すんじゃなくて、ちゃんと答えを選んで欲しいってことか。
「だからさー、目の前で先輩にちょっかい掛けてあげれば、あのウジウジした二人も張り合ってきてくれるかなー……なんて思ってね?味見お願いするフリして無理矢理あーんってやってみたり、ちょっと前なんて、二人でこっそりデートしてこのカフェで撮ってもらった時のツーショット写メをわざと見せたりだってしたんだよ?……でも、張り合ってくるでも無く、ただ単に不満たらたらに先輩を睨み付けるだけで、ホンっト子供みたいにウジウジするばっかでさぁ……」
いくら張り合おうとしても、張り合うことの意味の無さにご立腹ないろはは、ぷくっと頬っぺでムカつく思い出に記憶を巡らせている。
でもそのぷくっと頬っぺには、いつものあざとさとかは全然無い、ホントに心からの膨れっ面。
今まで色んないろはの顔みてきたけど、こんなにももどかしそうないろはは初めて見る。
じゃあ結局は目的もはたせてないのかな?
「……で、結局チョコってあげたの?」
「あげたよ?」
「マジ!?」
なんだよ、ぐだぐだ言うわりにはやる事やってんじゃん。
「うん……クッキー1枚」
「…………は?」
あっれー?なんか豪華お菓子詰め合わせをあげちゃう!とか言ってなかったっけ?
「やー……ホントはさ?二人の前で明らかに本命っぽいのを先輩にあげて、少しは危機感煽ってやろうって張り切ってたんだよ……?でもさ……はるさん先輩……ああ、雪ノ下先輩のお姉さんね?とか、先輩の中学の時の同級生とか、あとはわたしのちょっかいとかホント色々あって…………色々あったのに、それでも全っ然動こうともしないあの人達見てたら、なーんかバカらしくなっちゃって、葉山先輩用に用意しといた義理の方を先輩にあげて、豪華詰め合わせの方を葉山先輩にあげちゃった……」
「……あんたなにやってんのよ……なんでまだ葉山先輩なのよ」
「うー……だってぇ……」
……ったくこいつは……
「いやいや先輩方の事とやかく言えないくらい、あんたが一番ウジウジしちゃってんじゃん……」
「ぐぬぬ……そ、そんなん分かってるってのっ……でも……さ、わたしこんなの初めてだから、もうどうしたらいいか全然分かんないんだもん……」
……いろは……
「ぶっちゃけね?……どうせ勝ち目なんて無いの分かってるから、だったら大好きな先輩が本気で求めてる本物が手に入れられるように、先輩達の背中を押しちゃおうかな?なんて気持ちもどっかにあったりするんだよね……」
こいつ、そんな事まで考えてんのか……
あの一色いろはが、ここまで恋に思い悩むなんてね。
「でも、やっぱ本当はそんなのやだし、本音を言えば、わたしが先輩の本物になりたい……なってあげたい……」
そりゃそうだ。そんなに簡単に諦められるんなら、こんなに悩んだりしないもんね。
「でも、先輩にとっての幸せって、わたしが頑張ることなのかな……それとも雪ノ下先輩達を頑張らせることなのかな……。ねぇ香織ー、わたし、どうしたらいいのかな……」
ウルウルと、ひと昔前に流行った悪徳消費者金融のマスコットわんこみたいな目ですがってくる小悪魔いろは。
「……いろは?」
……私は、そんなぷるぷるチワワないろはの肩を、慈しむような笑顔を向けて優しくポンと叩いた。
「……あんた誰に聞いてると思ってんの?この香織さんに、そんな複雑な恋愛感情の質問されたって分かるわけないじゃないっ」
いや私もっと頑張れよ。慈しむ笑顔で言うセリフかよ。
でもそんなの乙女がバカンス中の私に分かるわけないじゃーん!
「……だよねー」
ばたーんとテーブルに突っ伏すいろはすさん。
そんなに即肯定しなくたっていいんだよ?
しゃーない。「あー……香織なんかに教えを請うても無駄だったー……」とかってとても失礼極まりない独り言をボソボソと呟いているいろはに向けて、私に言える精一杯のことを言ってやるか〜。
「ま、私には分かんないけどさ、でも分かる事が1つあるよ?」
「なに」
「なんか今のいろははいろはらしくない……かな」
「……は?」
「そりゃ色々と複雑かも知んないけどさ、なんか私が知ってるあんたなら、あれは本物だけどこれは本物じゃない!とかいちいち考えないでさ、どんなカタチであれ「最終的にわたしが本物になってれば勝ち♪」ってイメージなんだよね」
「……」
「なんかさ、恋が盲目過ぎて自分を見失ってんじゃね?……ワガママ言いまくって振り回しまくってあざとく迫りまくって、めんどくさがられながらも、最終的にハートを強引に捕縛しちゃうぞ?ってくらいの方が……ひひっ、あんたらしいじゃん?」
ばちこーんっ☆とウインクをぶちかましてやると、いろははぽけーっとした間抜け面で私を見つめてた。
「……ぷっ、なにそれ!わたしのことなんだと思ってんのー!?乙女が旅立っちゃった香織のくせにー」
かっちーん!やだなにこの女ったら!人がらしくなく頑張って慰めてやろうとしてんのによぅ!
だから私はそんなムカつく笑顔でニヤついてるいろはにこう言ってやるのだったのだ!
「ま!相手が相手だしー?振り回しまくってめんどくさがられた末に見事に玉砕すんだろうけどねーっ」
「酷っ!?」
図星突かれたぁ!って感じで、ばたーんと再度テーブルに突っ伏すいろはだったけど、私は見逃しませんでしたよ?
さっきと違って、突っ伏す前の口元が緩んでたのをねっ。
× × ×
さて、それではそろそろエンディングに向かうとしましょうかね!
私は未だテーブルに突っ伏したままのいろはに向けて声を掛けた。
「ったくぅ……ホントしょうがない女だねぇ。……よっし!んじゃ、そのウジウジした気持ちを晴らす為にも、パァッと歌いに行っちゃいますかー!」
「……は?そんな気分じゃないんだけどー。なにが悲しくてバレンタインに女二人でカラオケ行かなきゃなんないのよー。絶対行かなーい」
あ?その悲しみを乗り越えて女二人でカフェでお茶してんだけども!?あんたの愚痴の為の呼び出しでよう。
「ホンっトつくづくムカつく女だねぇ、あんたは。ふっふっふ……そう言ってられんのも今のうちだかんね?」
「な、なによ」
私は、訝しげな視線を寄越してくるいろはを嘲笑うかのように右手を高々と掲げると、ぱっちーんと指を鳴らすのだった!
「皆の者〜!準備はいいかっ!」
「ほーい」「はいはーい」「はぁい!」
私の号令でいろはの後ろの席でお茶をしていた三人客が立ち上がると、「は?え?なに!?」と唖然とするいろはをガッチリ押さえ込んだ。
「え!?ちょ、ちょっと待って!?なんで居んの!?」
「ふっふっふ……昨夜のうちに召集を掛けておいたのさ!なぜならっ、いろはのめんどくさい愚痴の被害者が私だけなんて嫌だからっ!」
「いやお前最悪だな」「いろはの為だって言うからとも君とのデート時間削って来たのに!」「香織ちゃんクズい!」
「ごっめーん、てへぺろ☆でもいろはの為ってのはホントだからね?あと襟沢はあとでトイレな」
「ひぃっ!」
そう。昨夜いろはからの電話を受けたあと、こいつらも呼んでおいたのだ。
もちろん巻き添えってのもあるんだけど、一番の理由は……ひひっ!ばか騒ぎしていろはを元気付ける為に決まってんじゃんか♪
「……かっ、香織ぃ!サシだって言ったのにぃぃぃ!」
「へへんっ、どうせ比企谷先輩の愚痴をみんなに聞かれんのが恥ずかしいだけなんだろうなって思って呼んどいたのですよー。ちなみに紗弥加たち最初っから居たから」
「じゃ、じゃあ……」
するといろははみるみる赤くなっていく。
でも両手を押さえられてるから、その林檎みたいに真っ赤に染まった顔を手で隠せなくて、恥ずかしそうにわなわなと悶えてる。
「せ、せんぱいの話とか……せんぱいへの思いとか……み、みんな、聞いてたの……?」
「もちろんバッチリ」「やー、いろは熱いねぇ」「いろはちゃん、なんかいじらしかったよぉ?」
「や、やぁぁ〜っ!は、恥ずかしくて超死にそうなんだけどー!わたしもう帰るー!」
「あんたあんだけ不機嫌オーラ撒き散らしてみんなに気ぃ遣わせてたんだから、みんなに思いを知られとくくらいは当然の義務なのよっ!……では皆の者!いろはをカラオケまで連行じゃぁー」
「了解しましたー」「ほらぁ、行くよ?いろはちゃん」「私、とも君待たせたままなんだから、いつまでも恥ずかしがってないで早くしてくんない?」
「やーだー!もうベッドに飛び込みたいのわたしー」と無駄な抵抗を続けながらも三人に連行されていくいろはの後ろ姿を見ながら、私 家堀香織は思うのです。
いろははホントに辛いんだと思う。
恋に頑張りたいのに。それなのに恋の勝負をするどころか、土俵にさえ上がらせてもらえない現状に藻掻き苦しんでるんだろうね。ホント独り相撲だもん。今の状況って……
でもさ、やっぱあんたは一色いろはだもん。
男なんて、自分を磨く為の道具くらいにしか思ってなかったあの一色いろはが、今までの自分なんか全部かなぐり捨ててまで選んだ本物の気持ち。
その本物を目の前にしてウジウジ悩んでるなんて、そんなのはやっぱりいろはじゃないよ。
だから……今はみんなでばか騒ぎして、モヤモヤぶっ飛ばしてスッキリしようぜ!
んで明日からはまたいつもの一色いろはに戻って、あんたの思うように自由にあざとく傲慢に、本物の恋に立ち向かってけばいいと思うよっ。
このバレンタインが明けたら、いろはは……あの人たちは、一体どうなってるんだろうか……?
分かんない。それは分かんないけど、でも…………簡単に負けんなよっ、私の友達一色いろは!
後悔なんてしないように、あんたらしく全力で当たって砕け散れぇ♪
砕け散っちゃうのかよ。
おわり☆
最終回だというのに、内容がヒロインの愚痴だけというそれはもう酷い内容でしたがありがとうございました!
やー、ついにあざとくない件最終回ですよ最終回!
……うん。終わった気がしねぇ(゚□゚;)
さて、今回のシリーズはお気に入り4000突破感謝記念という事で始めたif編でしたが、どう考えてもこっちがあざとくない件本編でしたね(苦笑)
もしかしたら最新巻の内容次第で、サブタイ変更してこっちを本編にしちゃうかもっ(^皿^;)
てか最終回じゃねーのかよ(白目)
てなわけで!とりあえずこれであざとくない件ともしばらくのお別れとなります。(新刊はよ)
皆々様!長い間本当に本当にありがとうございました(*> U <*)
またお会い出来るその日まで☆