最近友達の一色いろはがあざとくない件について   作:ぶーちゃん☆

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今回でついに30話になっちゃいました。

初めて「完結しましたありがとうございました!」と発言した話数から10倍ですねー(遠い目)




【番外編】最近宿敵の一色いろはがとっても気になっちゃう件っ③

 

 

 

二階の窓からこっそりと中庭の取材風景を見る。

ここからじゃ何を話してるのかまでは分からないから、本当は素早く中庭へと降りて近くで盗み聞…………こっそりと聞き耳を立てたいんだけど、私が到着するまでに居なくなっちゃったら元も子もないから、残念ながら動くに動けないのですっ……

 

むぅ……会話が聞こえないのってもどかしいぃっ!

 

でも、んー、やっぱり葉山先輩って超格好良いなぁ……!さすが三浦様が惚れ込んでるだけはあるわよねぇ!

私だって、もし憧れの三浦様が葉山先輩狙いじゃなかったら、もしかしたら葉山先輩狙いになっちゃってたカモ〜!

 

それに引き換え、あの比企ナントカってのは、どう見ても葉山先輩の引き立て役よねぇ。

だってホラ!いろはちゃんだって、葉山先輩と比企ナントカに話し掛ける時じゃ全然態度違うじゃない。

いろはちゃんって、ホントにあっちの先輩に惹かれてるのぉ!?

 

うわ〜……いろはちゃんがケラケラと馬鹿にしたようにナントカ先輩の腕をバシバシと叩いて、次の瞬間にはすぐに葉山先輩用のとびきりスマイルになって…………って…………え?

 

なに?なんだろう?この違和感……

いろはちゃんが二人の先輩に向ける笑顔が、全然違う……?

 

「あ……そっかっ」

 

葉山先輩に向けてる笑顔は確かに可愛い。

それはもうムカつくくらい……ってか、私がずっと嫌いで心底ムカついてた、最近はすっかり見なくなった一色いろはのあの媚びるようなあざとい笑顔なんだ。

 

でも、ナントカ先輩に向けてる笑顔は、一見バカにしてるように見えて、その実とっても自然な、私が見ても一切ムカついたりしない……なんていうか……イイ笑顔?

 

 

『てかあのいろはの顔見りゃ分かるか』

 

 

香織ちゃんの言ってたことって、こういうことだったのかな……?

 

あ、ぽけ〜っとしてたら、葉山先輩への取材が終わっちゃったみたい!

いろはちゃんは葉山先輩にペコリとお礼をすると、中庭から見えなくなったのをきちんと確認してから、待ちきれなかったかのようにすぐさまナントカ先輩に駆け寄ると袖をくいっくいっと引っ張ってる。

遠すぎてなんにも聞こえないのに、「ほーらー、先輩先輩!早く行きますよぉ」って声が聞こえてくるんじゃないかってくらいの甘えっぷり!

ふぁ〜……あんな甘々ないろはちゃん初めてみたよぉ!

いや、私が泣かされちゃった日もあんな風な甘々っぷりだったんだろうけど、あの時は私の目が曇ってたからなぁ……

 

 

って、あ!やっば!!

いろはちゃんが先輩の袖をぐいぐい引っ張ったまま行っちゃった!

うぐぅ……まだまだ見足りないのにこのままじゃ見失っちゃうっ!

 

 

私は、あの人たちが次にどこに向かうのかも分からないというのに、ダッシュで一階へと向かうのでした。

 

 

× × ×

 

 

靴に履き替えて昇降口から校庭へと飛び出し、すぐさま中庭周辺をくまなく捜索してみるものの姿は見えず。サッカー部への取材が終ったんだから次は一番近くのテニス部かな?とかって推理してはみたものの、やっぱり居ない。

どうやら予想外にも、サッカー部よりもテニス部の取材を先に行った模様ですね。

 

ハッ!?テニス部と言えば、超有名な王子様がいらっしゃるんじゃ無かったかしらっ!?

確か文化祭で葉山先輩とイケナイお芝居をしたらしくて、すごいプレミアチケットになったらしいのよねっ!

どなたが王子様なんだろう!?

見てみたい!!でもいろはちゃん達を捜さなきゃ!

 

 

くっ……お、王子様ぁぁ〜……

私は王子様に優しく後ろ髪を引かれながらも、涙を飲んで捜索を優先させることにした……っ。

王子様……またいつかどこかでお逢いしましょう……

 

しかし、そんな私の涙なしでは語れない程の覚悟など露知らず、いろはちゃん達は一向に見つかりませんでした。

手っ取り早く近くの運動部を見て回ったり、上履きに履き替えて体育館にバスケ部やらバレー部やらを見に行ってみたり、また特別棟へと引き返して文化部を覗いてみたりもしたんだけどどこにも居ない。

 

「あ〜……やっぱり中庭で発見した時に、覗いてないですぐ一階に降りれば良かったよぉ……」

 

くそぉ!せっかく今日はいろは観察のチャンスだったのにぃ……!

まぁ一応ナントカ先輩へと葉山先輩への違いは目撃できたし、なんもないよりはマシかぁ……

 

 

と、また校舎から出て校庭の裏の方をウロウロしている時だった。

 

「い、居たぁぁぁ!」

 

なんとなんと、外から校舎内を覗いてみた時に発見してしまったのでした!

なんと誰も居ない図書室で、二人っきりで撮影会をしているではありませんかぁ!

 

よぉしっ!今度こそ逃げられる前に確保しなくっちゃ!

ダッシュで校舎に入り廊下から図書室へと回り込むと、静か〜に扉を開けてこっそりと忍び込んで、二人の様子をじっくりとノゾキ…………観察してみることにしました♪

 

 

だ、大丈夫だよね……?

二人っきりだからって、なんかえっちな撮影会になっちゃったりしないよね……?

 

 

× × ×

 

 

「撮られ慣れてるな……」

 

私が本棚の隙間からノゾキを始めた時には、どうやら撮影もそこそこ進んでる頃だったみたい。

何枚か撮ったあと、次の撮影に向けていろはちゃんがコンパクトで身だしなみチェックをしていた。

 

それにしてもフリーペーパーの表紙を生徒会長が飾るってだけで、そんなに何枚も必要なの?

あんな笑顔のいろはちゃんが表紙のフリーペーパーが出回ったら、また人気出ちゃいそうじゃないっ!

ぐぬぬっ……私が生徒会長やっても良かったかもぉ……?

 

「そうですか?写真なんて普通にいつも撮りません?」

 

いろはちゃんはコンパクトの中の自分に視線を向けたまま問いかける。

 

「いつもは撮らないだろ」

 

男の人にはあんまり分からないかも知れないけど、女の子は記念とか大切なのよねぇ。

お洒落なカフェで可愛いデザートか出てきたってだけ、帰り道の夕暮れがいつもよりも綺麗だったってだけ、そんなちょっとしたことでも撮っておきたいって思っちゃうものなのよね。

 

まぁいろはちゃんの場合は良く男と遊びに行ったりするから、その度に写真撮ってたら慣れちゃったってだけなんだろうけど。

 

「思い出って大事じゃないですか」

 

いろはちゃんはコンパクトをパタンと閉じると、まだカメラを構えていない先輩に向けて、撮影の時とは全く違う笑顔を向ける。

 

わぁ……その笑顔を撮れば良かったのにっ……

 

果たしていろはちゃんの言っている『大事な思い出』というのは、今まで色んな誰かと撮ってきた写真の事なのか、それとも今この瞬間の心のファインダーの中の景色の事なのか。

 

「……そうだな」

 

ちょっと恥ずかしそうにそう肯定する先輩を満足そうに見つめてるいろはちゃんを見たら、それがどっちなのかなんてのは誰でも分かっちゃうよねぇ。

 

なんていうか……早くもいろはちゃんのこの甘い空気に胃もたれ気味なんですけど私っ!

そりゃ「あの顔見れば分かる」って香織ちゃんに言われるワケだよねぇ……

 

「ですですっ。それじゃあ先輩?さっさと撮り終えちゃいましょー」

 

「……だな」

 

そんな会話にも一段落ついたのか、先輩がカメラを構えてまた撮影が始まった。

なんかもうノゾキは十分な気がしてきたよ?お腹いっぱいですぅ!

 

 

「あ、ところでせんぱぁ〜い?」

 

「あ?……んだよ」

 

しかしまだまだ甘い空気は私を離してくれないようですね……いろはちゃんはレンズの向こう側の先輩に声を掛けた。

なんていうのかな……?普段のいろはちゃんとは全然違う、小悪魔じみた悪戯っぽさっていうの?

そんな声に、先輩が若干警戒してる。

 

「さっきなんですけどぉ、撮影が始まった直後ですかねー……」

 

いろはちゃんは甘ったるい猫なで声で、先輩を伺うように覗きこんだ。

 

「先輩、レンズだけ向けて、シャッター切るの忘れちゃってませんでしたぁ?」

 

「……へ?ななな、なに言ってんのお前……?」

 

そんなあからさまに慌てた様子に、我が意を得たりっ!っとばかりにニヤァっと悪そうに口元を歪める。

 

「先輩ってば、超わたしに見惚れちゃってましたよねぇ?……すっごい唇とかに視線感じてたんですけどぉ」

 

「ちょっとまて自意識過剰過ぎだろ。なにその言いがかり……そ、そうか。こうやって痴漢冤罪は生まれていくんだな……」

 

「へぇ……そういう言い方するんですかー。……えっとぉ、最初にポーズ取って先輩がカメラ構えてから〜、ポーっとしちゃってシャッターも切らずにわたしを見つめ始めて〜、咳払いして正気に戻させるまでの時間はぁ……え〜っと、いーち、にー、さーん……」

 

すっごいニヤニヤしながら、その時の体感時間を指折り数えてますよ?

そのニヤニヤたるや、最っ高の遊び道具を発見しちゃった悪魔のよう!

 

「ふむふむ。ざっと二十秒はわたしに見惚れてましたねー」

 

「は?馬鹿言ってんじゃねぇよ、そんなには見てねぇわ」

 

「……そんなには?」

 

キラーンッ☆と瞳を妖しく光らせたいろはちゃんと、対称的にドヨッと瞳を腐らせていく先輩。

 

「おやおやー?せんぱーい?そ、ん、な、に、はって、どういうことなんですかねー?そ、ん、な、に、はって」

 

「な、なにいってんの?んなこと言ってねぇっつの……」

 

「わたしー、記憶力には結構自信あるんですよ?『は?馬鹿言ってんじゃねぇよ、そんなには見てねぇわ』……一言一句間違えてないですよね?先輩も記憶力良いから分かってますよねー?なんならもう一回言ってあげましょぉかぁ?」

 

いろはちゃんもうやめたげてよぉ!

もうあなたの大好きな先輩が逃げ出しちゃいそうなくらいに悶えてるじゃないぃっ!

 

「ぐぬぬ……」

 

「まったく先輩は仕方ないですねーっ!ふふっ、撮られ慣れてるな……なんて言って見惚れてたコト誤魔化そうとしなくたっていいんですよー?」

 

「べべべ別に誤魔化してにゃんかねーし」

 

ふぇぇ……もう涙であの先輩の顔がよく見えないよぅ……

それにしてもいろはちゃん、ホントに嬉しそうに楽しそうにあの先輩をからかってるなぁ。

あの照れた様子をただ楽しんでるってだけじゃなくて、ホントは先輩が自分に見惚れちゃってたっていう事実が嬉しくってしょうがないんだろうなぁ……

 

 

いろはちゃんは真っ赤に照れた様子の先輩をくすりと優しげに見つめると、あっ!と人差し指を立てて、左右にぴょこぴょこさせて小首を傾げる。

 

「なんでしたらぁ、フリペ表紙用じゃなくて、先輩のスマホ待ち受け用とかパソコンの壁紙用に、特別にわたしの写真撮らせてあげましょうか?」

 

 

「いやいらんから……」

 

「またまた〜!こんなに可愛い後輩をいつでも見てたいって先輩の気持ちも痛いほど分かりますしー。こんなこと先輩だけの特別サービスですよぉ?」

 

「……いや、だからいらんっつうの……」

 

「だからそんなに恥ずかしがらなくたっていいって…………はっ!まさかわざわざ撮らなくたってお前の可愛い笑顔なんて常に瞼の裏に焼き付いてるぜアピールしてますか?なんか一方的にずっと見られてるみたいで正直キモすぎて引くんで今度からは一方的じゃなくてお互いに真正面から見つめ合うようにしてくださいごめんなさい」

 

ババッと両手を前に突き出して拒絶ポーズしてるけど、単に見つめ合いたいって宣言してるだけじゃないいろはちゃん!

 

「……へいへい……もうなんて言って振られてんのかも分かんねぇよ……アホらし。撮影も十分やったしもう行くからな……っ」

 

あ、逃げた。

 

「……へ?ちょ!ちょっと待ってくださいよせんぱーい!ホントに撮らなくていいんですかー!?」

 

耳まで真っ赤にして図書室から逃げ出そうとする先輩を、いろはちゃんはガッチリと確保した。

 

「だからいらんっつってんだろ……っておい!引っ付くんじゃねぇよ」

 

「えへへ〜、なんならこうやって腕に引っ付いてるトコをツーショットで撮って待ち受けにしたっていいんですよぉ〜?」

 

「アホか……いいから離れろ……こういうのは葉山にやれ」

 

「照れちゃって嬉しいくせにー!それじゃあこのままもう少し校内回って撮影の続きしちゃいましょー」

 

「いやもうしないから……てか鬱陶しいから取り敢えず離れてね……」

 

「捻デレはいいから早く行きますよー」

 

「……捻くれててもデレてはいねぇよ」

 

「はいはい♪」

 

 

 

 

次第に図書室から離れていく二人の声を聞きながら私は心の底から思いました……

 

 

なんてゆーか、ごちそうさまです……

うっ、もう砂糖吐きそう……

 

 

 

続く






番外編3話目になりますがありがとうございました!

なんかこういうあざとくない件らしい八色夫婦漫才ってスゲー久しぶりな気がします(*´∀`*)


ホントはこのままエリエリが寄生を始めるまでを書ききって番外編を終わらせちゃっても良かったんですけど、作者はあることに気付いてしまったのです!
それが最近いろはすの陰が薄いと言われている原因なのでしょう><


それは………………いくらいろはすを書いても、結局オチが香織かエリエリになっちゃうから、最終的にいろはすのインパクトが残らないっΣ(゚□゚)クワッ


というワケで、今回はあくまでもいろはすがメインということで、夫婦漫才にて締めさせて頂きました!
(今回はと言うよりは、この作品いろはすSSなんだけどな……)



ではでは番外編ラストの④でまたお会いいたしましよう☆

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