最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
どうも。完結詐欺に定評のあry
お久し振りでございます!
もう2ヶ月半ほど放置してしまいました(汗)
なんか12巻が発売される様子が一向に無いので、ついつい久々に新シリーズを書いてしまいましたっ☆番外編だけどっ!
ではではどうぞ!
「ひっ……ひぐっ……ふぇ、ふぇぇぇえ"え"え"〜ん!」
…………やっちゃった……やってしまった……
自分から騒ぎの中心の場にした癖に、その中心の場であるここ一色いろはの席の前で、クラスメイト達の大量の視線の前でとんでもない大泣きをしてしまった……
私は高校に入学してからというもの、常にクラスの中心であろうと意識し振る舞ってきた。
小学校低学年の頃はあんまり気が付かなかった自分の魅力も、高学年になるにつれて次第に意識し始め、中学生になる頃には自分の魅力を生かして常にクラスの中心に居るようになり、みんなもそんな私をお姫様みたいにチヤホヤしてくれた。
だから高校生になっても当然お姫様で居られるだろうと振る舞ってきて、実際にお姫様になれていたはずの私に、とんだ落し穴が待ち受けていた。
チヤホヤされる事に慣れすぎて私はすっかり忘れていたのだ。
私は……襟沢恵理は……元来とってもとってもヘタレだったのですぅっ……
× × ×
「うぅぅ……やだなぁ……」
とんだ醜態を晒しちゃった翌朝、私は教室の扉の引き戸に手を掛けたまま固まっていた。
昨日のお昼休みにアレがあって、五限の休み時間もLHR後もずっとしゅんとしてて、私のグループの子たちともグループ外の子たちとも一切言葉を交わさずに帰っちゃったんだよね……
だってもうずっとお腹痛かったんだもん……
みっともなく泣きじゃくって凹みまくって、そんな私を今までと同じようにみんなチヤホヤしてくれるんでしょうか……
「お、おはよぉ!」
カラリ……と扉を開けた私にグループの子たちから向けられた視線と言葉は……
「……っ!お、おはよー!」「おはよー!恵理ー……」「あっ……、恵理ちゃんおはよっ……」
お姫様を見る目、お姫様に掛ける言葉じゃなくって……とっても気を遣ってるかのような、痛々しい腫れ物に触るかのような、そんな空気を孕みまくったモノだった。
どうしよう……もうトイレ行きたいぃっ……
× × ×
結局あの日から数日。私はグループで……というかクラスで完全に浮いた存在になってしまっていた。
ふぇぇ……別に無視されたりする訳じゃないんだけど、本当に腫れ物扱いだよぉぅっ……!
お昼休みなんかも、一応グループで集まってはいるものの、私は完全に蚊帳の外なのです……
たまに話し掛けてきてくれても、とっても気を遣ってくれてる感じで、それが我ながらあまりにも痛々しくって……
くっそ!それもこれも全部アイツの……一色いろはのせいだっ!
アイツさえうちのクラスに居なければ、私は完全にお姫様……んーん?あの方みたいに女王様になれてたハズなのにっ!
───でも……さんざん突っ掛かったり勝手に生徒会長に立候補させたりと、ただでさえ酷い事してきてすっごい嫌われてるはずなのに、あの日、私が大泣きしちゃったときは優しいというか大物感が漂ってて、ちょっと格好良かったんだよねぇ……いろはちゃん。
『ひっ……ひぐっ……ふぇ、ふぇぇぇえ"え"え"〜ん!』
『……え!?ちょっと恵理ちゃん!?』
『うわっ……え、襟沢!?……マジで!?』
『ふぇぇぇええんっ!』
『ちょ!?い、いろはどうすんのコレ!?』
『いろはなんとかしてよー!』
『な、なんとかって言われてもっ!』
『あ"ぁぁぁぁ〜〜んっ!』
『うっわ……マジめんどくさっ……!た、たくっ……しょうがないなぁ……えっと、恵理ちゃん?』
『うぇぇぇええっ……』
『た、確かに先輩のことなんか一つも知らない癖に、勝手な噂と思い込みだけで酷いこと言った恵理ちゃんにはちょっとムカついたし、弄りで勝手に生徒会長にさせられそうになったことも一時期は正直ムカついてたんだけどね……?』
『……ひっ……ひぐっ……』
『んー、でもね?今は不本意ではあるけど、ホントに感謝してるんだー』
『……ひぐぅっ……?』
『私は恵理ちゃんに生徒会長に立候補させられたおかげでね?今まで味わったことないような素敵な出会いとか素敵な経験がたくさん出来たんだっ。んでその体験はこれからもずっと続いてく予定なの』
『……ぐすっ……』
『恵理ちゃんに陥れられなかったら、絶対に出会えなかった素敵な出来事だからさ、逆説的に言うと恵理ちゃんが私の恩人まである。……ってコレは誰かさんの物真似なんだけどっ』
『……』
『だからさぁ、先輩を馬鹿にしたムカつきは、その恩でチャラにしたげるよ。さっきの騒ぎは無かった事にしてあげるから、ね?』
とまぁそんな感じで私はようやく泣き止んだんだっけなぁ……
いろはちゃん、マジで変わったというか……強くなったというか……
前はあんなんじゃ無かったんだけど、今のいろはちゃんは、悔しいけど、悔しすぎるけど、ちょっと尊敬しちゃうトコがあるんだよね……
そんな変化したいろはちゃんの対応に感化されて、結局あの日以降クラス内での反いろは派の動きは衰えていく一方だったし……ていうか恐れてるフシさえあるしで、そして意図せずにそんな変化を引き出してしまった私は、なんといいますか……同じクラスになった日からずっと宿敵関係だと勝手に思いこんでたいろはちゃんが、妙に気になるようになってしまったのです。
早い話が……ちょっと友達になりたいなぁ……って。
だって!自分のショボさを自覚しちゃったからこそ、私もあんな風に変わりたいんだもん!
だから私はなんとか仲間に入れてもらえるように、いろはグループを観察するようになってしまったのですっ。
× × ×
あの大泣き事件から一週間以上経ち、あっという間にマラソン大会が終わってからも、今日もジィィィっといろはグループを観察する日々が続いていた。
「んー?いろはー、なんか土日に良い事でもあったのー?」
話し掛けてるのはいろはグループNo.2の香織ちゃん。
週明けの今日は、なんだかいろはちゃんが朝から上機嫌なんだよね。
グループの紗弥加ちゃんと智子ちゃんは、そんな緩みきったいろはちゃんの顔を呆れ眼でただ見ている。
「ふへへぇ〜……」
「ね、ねぇ……?い、いろは?」
「……ふへっ?な、なんか言った!?」
「あんた心ここに在らず過ぎでしょ……」
ここのところ、図らずもいろはウォッチャーと化してしまっている私は知ってるのっ。
あの緩んだ顔は、年が明けてからたまに見せるようになった表情なんだって!
……………てへっ!これじゃここのところどころか、年が明ける前からずっといろはウォッチャーだったみたいじゃありませんかっ!
「えへへ、ちょっと土曜日に先ぱ…………知り合いとデー……遊びに行ったんだけど、結構楽しかったなぁってさっ」
前から思ってたんだけど、いろはちゃんの言い直しって……素、なのかなぁ……
それもう意味無くない?
「おおぉっ!そ、それってまさか!比企がぁっっ!?」
「お前はまだ黙ってなー」
さっきまで呆れ眼で見ていた恋バナ大好き智子ちゃんが光の速さで反応したところを、紗弥加ちゃんが光の速さで頭をはたいて黙らせた。
まぁああやって止めとかないと、智子ちゃんていつも自分のラブラブな彼氏の話題に持ってっちゃうもんね。
それにマラソン大会終了直後のあのグループを見てると、いろはちゃんの真の想い人の話題に関しては、とりあえず黙認というか、いろはちゃんが自ら語りだすまでは見てみぬフリを通すっぽいしねぇ。
あっ!もちろん私、マラソン大会中も表彰式もあのグループの近くでこっそり観察してました!
なんかたまに冷たい目をした香織ちゃんと目が合った気がしたんだけど、それは恐らく気のせいのハズっ♪
「ほぅ……このリア充め……早く爆発すりゃいいのに…………で?どこ行ってきたの?」
「いや……そういう爆破計画はお得意の脳内で言ってよ……超聞こえてるから……」
か、香織ちゃんてあの見た目と元気な性格でかなりモテるリア充なのに、なんかちょっとスレてるんだよねぇ……
まぁ確かに可愛いくても裏では残念美少女って言われてるけどっ。
…………わ、私も言われたりしてないよね!?
「んーっとねぇ……えへへぇっ、卓球したりラーメン屋さん行ったり!……あとはー……あ、やー、な、なんでもなーい」
「なにそれ気になるんだけど。……ってか卓球にラーメン!?な、なんか『うっわ……この男最低ランクのレベルじゃね……?』とか『ポイント低くすぎて笑えるんですけどー。マジきもーい』とか言って、普段なら即お断り&そいつとは二度と行かないコースじゃね!?」
「…………香織がわたしの事いつもどういう目で見てんのかよーく分かったよー」
「ひぃっ!」
「てか紗弥加と智子もなにウンウン頷いてんの!?」
「べ、別にっ……!?」
「ききき気のせいだよやだなー!」
思わず私も一人でウンウン頷いてたら、なんかいろはちゃんにギロリと睨まれた気がしたんだけど、き、気のせいだよねぇ……!?
ちょ、ちょっとトイレ行ってこようかなっ?
「まぁ確かに普段なら帰ってるトコだけどぉ…」
「やっぱ帰んのかよ……」
「ふふふー、でもそれってさー、つまんないのはデートコースとかデートの内容じゃなくって、単純に相手ってだけの話なんだなぁ……って気付いたのっ……」
そう言ういろはちゃんは、その一昨日あった、瞼の裏にでも焼き付いてるのであろう素敵な出来事を思い浮かべるかのように一度瞳を閉じてからニンマリした。
「へへ〜!……うんっ、超楽しかった……!卓球は勝っちゃったしぃ、ラーメンも意外と美味しかったしっ!……ねぇねぇ知ってる!?ラーメン屋さんで食べるラーメンて、カップラーメンとかと違って超美味しいんだよっ!?えへへっ!また連れてってもーらおっと♪」
なんかホントに幸せそうだな、いろはちゃん。
相手はあの憎っくき二年生だろうけど、あのビッチ丸出しで超ムカつくいろはちゃんをあんな風に変えちゃったあの二年生って、やっぱりいろはちゃんが言うようにホントは魅力的なのかなぁ……?
「でもさぁ、ホント信じらんないんだよー?あの人!最初は卓球じゃなくて映画見に行ったのにさっ、なんと!わたしがこれ見たいって言ったら、「じゃあ俺はこれ見たいから、終わったらスタバで待ち合わせな」って、ナチュラルに別行動取ろうとすんだもん!」
うわぁ……
「うわぁ……」「うわぁ……」「うわぁ……」
あ、なんか私、今ちょっとグループの一員になれちゃったかもぉ!
いろはちゃんの衝撃告白に四人(三人+遠くから眺めてる一人)でシンクロしてたんだけど、当のいろはちゃんはブツクサ文句を言いながらもとっても楽しそう。
そんないろはちゃんを、香織ちゃん達は呆れながらも温かい目で見つめていた。
……いいなぁ……やっぱり私も、あのグループに入れて貰いたいよぅっ!
ついつい羨望の眼差しでガン見しちゃってると、香織ちゃんが急にヒソヒソ話を始めたみたい。
「……ところでさ、今日も襟沢が超見てんだけどー……」
「ねー……なんかここ最近ずっと視線感じてるー……」
「なにアイツ、私らのストーカーかなんかになっちゃったん……?」
「なんかキモいよねー!」
「智子声でけーよ……」
うぅっ……ぐすんっ……ぜ、全部聞こえてるんだからぁ!!
そして私は涙を滲ませながら真っ直ぐトイレへと向かうのでしたっ……
続く
お久し振りでしたがありがとうございました♪
今回はまさかのエリエリ視点でのシリーズです(^ω^)
あの劣化版あーしさんのエリエリが、クラスで醜態を晒してからいろはグループに寄生するまでのお話になります。
まぁシリーズと言っても三話くらいかな?
最近はこのいろはすSSも香織に乗っ取られがちなので、初心に返って『八幡に惚れちゃってない第三者から見た八色』を書いてみたいなぁと。
なので次回くらいには、初の香織視点以外からの八色夫婦漫才を用意してありますよー♪
そして本人視点以外から見る香織も初ですよね!
それではその②でお会いいたしましょう☆