最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
お待たせしましたっ!
それでは後編どうぞ〜
香織と愉快な仲間たちーズが見つめるその先でクラスの男共を手玉に取るジャグラー一色を、紗弥加は蔑んだ視線を送りながら一言物申す。
「……智子あんた本気で言ってんの?アレはいくらなんでも無いでしょ……」
「そっかなぁ……男の子ばっか周りに居るけど、一応どこのグループにも属してないし、意外と誘ってみたらいけるかもよ?」
あんたバカァ?
……こんなベタなツッコミさせんじゃないわよ……ったく。アレは属してないんじゃなくて……
「女子にハブられてんじゃないのよアレは。アレを仲間に引き入れたってむしろ私たちに対する風当たりが強くなったらどうすんのよ……あんたバカァ?」
もう一回言っちゃったよ!私……しかも脳内じゃなくてリアルでっ!
いやん恥ずいっ。
「そうだよ。それに大体一色じゃ襟沢と大して差が無いくらいムカつく感じじゃね……?」
「でも一色さんは私たちに敵対心持ってるワケでもないから私達的には別にムカつかないしー、」
はいはいスルー余裕ですよね分かってましたよ。
でも若干オタっぽい男子グループがハァハァと私に熱視線を送って来てる気がするのですが……
やめてっ?私そういうんじゃないですからっ!
「あの子がいくら男子たちを手玉に取っても彼氏持ちの私達に害ないしー、多少イラッときたとしても襟沢さんのグループに対抗する為だけに我慢して表面上だけ仲良くしとけばいいじゃん?それにホラ!やっぱり一色さんが原因で風当たりが強くなるようなら、それこそとっとと切り捨てちゃえばいいじゃない?罪悪感とか感じなくて済みそうだしー♪」
「…………」「…………」
……ちょっと聞きました!?奥さんっ!!
大友さんちの智子さんたらあんな酷いこと笑顔で言ってますのよっ?
あらやだっ!これだからおっとり系とかで通ってる女が一番腹黒くて怖いのよ〜っ!
やぁねぇ!ちょっと見てよあの笑顔!ゲスよゲス!
脳内井戸端会議が終了するのを見計らって紗弥加と頷き合う。
紗弥加はヒクヒクと引きつった顔で私に聞いてきた。
「か、香織。こういう時ってどんな顔すればいいのかな……?」
キ、キッタァーーーッ☆
「……笑えばいいと思うよ?」
人生で一度あるかないかのチャンスをモノした私はとてもとても満足顔でした。
× × ×
『やっぱ私も紗弥加と一緒で一色は無いと思うわ、今んとこね。ちょっと様子見てみようよ』
更なるオタグループからの熱視線を乗り越えて(やべぇ……早くもバレてね……?)、一色いろはをグループに引き入れるのかどうか?って案は一先ず棚上げにしておいた。
一色いろはかぁ……
私がC組に入ってきてまず目に入ったのが一色と襟沢だったんだよね〜。
襟沢が積極的にグループ作りに勤しんだのに対して、一色は一切動かずに男子が寄ってくるのをただ待っていただけだった。
待ってれば勝手に僕《しもべ》が集まって来るって事を良く理解してるんだろう。
襟沢に声を掛けられた時も甘ったるい声で応対してたけど、あれってどう見ても男に対する撒き餌でしかなくて、襟沢本体には一切興味なさげな態度を示してたっけ。
だからこそ襟沢もご立腹になっちゃって、未だに私達グループに対する敵対心よりも一色個人だけに向けられる敵対心の方が上なんだろうけどね。
いやまぁ私達もかなりぞんざいに扱いましたけどね?だって私の下に付かなぁい?って空気が見え見えだったんですものアイツ。
確かにあの人気者(男限定)をグループに入れれば、クラス内の勢力図がガラリと変わるかもしれない事は間違いない。
なにせあの襟沢が真っ先に仲間に引き入れようとした程の存在感だもんね。
でもやっぱかなりリスキーではあるんだよねー。
あんな敵ばっかの女なんか入れたらどんな目で見られることやら……
でも私達グループの元々の影響力に、一色いろはの良くも悪くも圧倒的存在感をプラスすれば、そんな有象無象の目なんか寄せ付けない程の強烈なグループにだってなりえるかも知んない。それこそ学年カーストのトップにだって!
フハハハハッ!圧倒的じゃないか、我が軍はっ!
でもそもそも一色が女子グループからの誘いなんかに乗んの?って問題点があるんだよねー。
だってアイツ男にちやほやされて男を利用する事しか考えてないでしょ……
なんだかんだ言っても、あの猫っ被りの態度はやっぱり気に食わないし…………なんだかんだと言われたら、あの猫っ被りの態度はやっぱり気に食わないしと答えるのが世の情け!
なぜ言い直した。
……とにかく襟沢の為にあんなしょーもなさそうな女を引き入れるのって、ミイラ取りがミイラになっちゃう感じでもあるのよねー。
白い明日はどこで待ってるの?
× × ×
「……はぁ、はぁっ…………はぁ」
ちょマジかよこの部活……
なんで文化系の部活に入ったのに長距離走らされて体力つけさせられんのよ私っ……
くっそう……騙されたぁっ……!ただちょっとトランペットを吹いてみたかっただけなのにぃっ……トランペットで鳩とコラボしたかっただけなのにぃっ!
「げほっ!ごほっ!………嗚呼、しんど……」
ようやく本日のノルマを終えて学校に戻り校庭の脇を通り過ぎようとすると、それはもうイラつく程の甘ったる〜い声が辺りに響き渡った。
「葉山せんぱぁい!お疲れさまでーっすぅ!タオルどぉぞ〜っ♪」
うっわ……と思ってチラリと目を向けてみた。
おお……!アレが巷で話題の最上級トップカースト葉山先輩かぁっ!
「ありがとう」とキラッキラした笑顔でタオルを受け取るそのイケメンはどうでもよくて、私が気になったのはそのキラキラ王子にタオルを渡している人物の方だった。
………なにあれ?サッカー部の女子マネ?
なに?最近のマネージャーってのは専属だったりすんのかい?芸能マネージャースタイルだったりすんの?プロデュースしちゃうの?Youやっちゃいなよ!
他にいくらでも汗ダラッダラかいて引き上げてくる部員もたくさん居るってのに、なんであの女子マネはそこから一歩も動かないで葉山先輩だけに笑顔を振りまいているんだい?
ホラホラ、ほかの部員もタオルとか欲しそうにしてんじゃんよ。
なんかウザそうな部員が「っべー!いろはすー!いろはすー!」とか喚いてるし!
なんだよそんなに天然水飲みたいの?
ま、理由は痛いほど分かるよ、いくら私だってさ。
でもコレは無い。マジお前みたいなのは部活やんなよ。ああいう女見てるだけで爆発すればいいのにと思っちゃいますよねー。
あ……そういえば一色も確か葉山先輩目当てでサッカー部に入部したって聞いたなぁ。
取り敢えず今は視界の中には居ないけども、あの女も部活中は大方あんなもんなんだろう。
なんだか一色とそこの馬鹿マネがあまりにも重なりすぎて、余計にグループに引き入れるのなんて冗談じゃないわよぉうっ!って思いが強くなってしまった。
ふむ。やっぱあの案は却下だな…………そう思いながら校舎裏を歩いていた時のことだった。
「いろはちゃーんっ!お洗濯はもう終わりそう〜?」
ん?いろはちゃん?
「ごめーん!もうすぐ終わるー!…………ってやっばい!もうこんな時間じゃん!?ドリンクとか用意して早く持ってかないと戸部先輩とか超ウザいっ!」
「大丈夫だよ〜!もうドリンク準備終わってるから、あとコレやったら持ってくだけだよっ」
「わ〜!さっすがぁ!……よしっ、干し作業完了っとー。やばいやばい早く行かなきゃ!行こっ!」
「うんっ!そろそろ戸部先輩がいろはすいろはす騒いでるかもね〜っ」
「もー!笑い事じゃないよ〜。あ〜、まっじウッザい……戸部許すまじ……」
そんな会話をしながら汗だくになって、女子生徒二人が猛ダッシュで駆けていった。
うっそ……今の一色なの……?
クラスで男に愛想振りまいてる姿と全然違うじゃん……
さっきの馬鹿マネと違って明らかな裏方作業を汗まみれで超一生懸命やってたし、友達と思われるもう1人の女子マネと楽しげに会話する姿もクラスの女に話し掛けられた時とは全っ然違う……
一色って……実は素は結構真面目で一生懸命で、心を許してる同性にはあんなにも本性を丸出しにするようなヤツなのか……少なくともさっき馬鹿マネ見ちゃった時の不愉快さなんて全然無い。
ヤバイどうしよう…………ちょっとだけ興味沸いてきちゃったかも私っ。
意外とグループに入れてもなかなか面白いヤツなのかも知んない……!
「……よしっ!」
私は明日紗弥加達に話すある決意を心に決めて部活動へと戻るのだった。
ちなみに帰ってくるの遅すぎィィィ!と、明日からの基礎体力作りメニューの追加を言い渡されて枕を濡らしたのはまた別のお・は・な・しっ☆
× × ×
翌日の休み時間。私は紗弥加と智子に告げた。
「昨日の智子の案だけどさ、なんか意外と面白そうな気がしてきたよ?あたしゃ!」
「だよねー!」
「はい?マジで言ってんの?いやいや無い無い!絶対ロクな事になんないって!」
ま、そりゃそうだ。私だって昨日の放課後の光景を目の当たりにしなかったら絶対無いと思ってたもん。
だから一応報告しておいてやろうかね。
「実は昨日さ〜」
そして私は昨日目撃した光景及びその際の自身の感情を打ち明けた。
「でもなぁ……」
さすがに強情ですね紗弥加さん。
まぁ実際に目撃しないと伝わり辛いのは良く分かる。
「えぇー?今度の日曜日ー?どーしよっかなぁ?映画もごはんも全部出してくれるって言われてもなー。午前中だけでも良ければ考えちゃおっかなー?」
………だってアレだもの。
だから私は昨日の智子の台詞を引用してこう言った。
「腹黒智子の言う通り、風当たりが強いんならとっとと切り捨てちゃえばいいしさ〜」
「ちょ!?腹黒ってヒドくないっ!?」
ちょっと腹黒はお黙り?
そして私は紗弥加を一発でオトす一言をニヤリとこう付け加えた。
「一色をうちのグループに上手く引き入れられた時の襟沢の悔しがる顔とか、想像しただけで爽快じゃねっ?」
「採用っっっ!」
こうして一色をグループに引き入れるという、法案提出当初はあまりにも馬鹿馬鹿しいと思われた案が、この度満場一致で可決される事となったのでした!
ま、一色が乗ってこなきゃ意味ないんだけどねー。
× × ×
四時限目終了のチャイムが校内に響き渡ると同時に、私達はすぐさま動き出した。
だって隙を見せると一色の元にすぐ男子が群がって来ちゃうんですもの!
私達3人は一色の待つ席へと足早に進む。
「えっと……一色さん」
思えば高校入ってクラスが決まって、あと少しでひと月が経とうという今日この日の今この瞬間が、私と一色いろはのファーストコンタクトであった。
先頭の私が一色に話し掛けると、教室は一瞬騒然とした。
クラス内カースト2位の私達グループが、昼休みに3人揃って異端児の一色に話し掛けるというのは、この狭い狭い世界の中では一大事!大事件勃発なのだ!
襟沢グループも固唾を飲んで超見てる!
てか襟沢超見過ぎぃぃぃ!
「えっと……家堀さん、だよね?……なに?」
訝しげな表情と、どうやら素らしいちょっと低めな声で警戒心剥き出しの一色に、私は一言こう言ってやるのだった。
「あのさー、私達と一緒にお弁当食べない?」
ほんの一瞬だけ唖然とした表情を見せたが、次の瞬間には私達3人を値踏みするかのように下から上へと舐め回すように観察する。
イヤッ!そんなに舐め回さないでちょうだいっ?まだ心までは許して無いんだからぁっ!
すると本当に一瞬だけチラッと襟沢を一瞥すると、すぐに私達に視線を寄越してニヤリとした。
なにこの子ニュータイプなのん?
やはりコイツは只者じゃあ無い。そのニヤリと笑った笑顔は、いつも教室で見るような……うーん、なんていうんだろう……あぁ、あざとい?って言えばいいのかな?
そのあざとさとか一切無い悪魔の笑みを浮かべたコイツは、私の想像通りなかなかに面白いヤツらしい。
そしてすぐさまいつもの営業用あざとスマイルを張り付けた一色はニコッとこう言うのだった。
「うんっ!いいよぉー?」
こうして私、家堀香織と一色いろはのファーストコンタクトは、それぞれの思惑を抱えながらも無事果たされたのだったのですっ!
× × ×
「ちょっと香織ー」
「ちょ!香織ちゃんっ!?」
「……んあ……?」
はれ……?なんだ私いつの間にか寝てたのか……
なんだよまた夢オチかよと思って辺りを見渡すと、そこにはコーヒーの香りと居心地のいい空間、そして友人達の呆れた顔が待っていた。
「ちょっと香織っ!今わたし説教中だよねー!?」
「香織ちゃーん……ずるいよぉ!私ばっかりこんなに怒られてるのに、なんで当事者の香織ちゃんが寝ちゃってんのよぉ!」
「? なんで襟沢正座してんの?」
「香織ちゃんのせいでしょお!?」
今日はバレンタイン当日。
私達グループは、バレンタインだというのに女5人で寂しく例のカフェに集合していた。いや、正確には集合させられていた。いろはの号令により……
あの流血のバレンタインイベントと魅惑のノーパンナイツから数日が経ち、私が比企谷先輩とこっそりデートしてた件&それを目撃したのに黙ってた件でいろはからお小言を頂戴しているのだった。
「香織あんたさー、略奪愛しようとした張本人の癖に寝てんじゃないわよ……」
「そうだよ香織のお馬鹿っ!私なんて今日とも君との予定バッチリ入ってたのにぃぃ!」
「ていうか紗弥加ちゃんと智子ちゃんだって私と同罪のはずなのに、なんで香織ちゃんと私だけ正座させられてるのぉ……?」
「はいそこ五月蝿い。まだ言いたいこと半分だって終わってないんだから静かにしようねー……恵理ちゃーん……?」
「ひぃっ!?……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!……でっ、でも正座はなんとかしない!?お店の人の視線がずっと痛いんですけど……」
「あっれ〜?なにか問題でもあるのかなー」
「無いです」
うふふふふ……かれこれ一時間以上続いているいろはの説教TIMEに、どうやら私は気を失ってたみたいっ。
それにしてもずいぶん前のことを思い出しちゃったなぁ。
私は正座しながらも、ふと友人達の顔ぶれを見渡してみた。
あんな出会い方をした私達が、約10ヶ月後にはまさかこのメンバーで、こんな風にお茶会を開いてるだなんてねっ。
正座させられて長時間説教受けてるお茶会ってどんなだよ。
紗弥加と智子は中1からの付き合いだからいいとして、あれほど敵対心を燃やして、なにかっつーと絡んできてウザくてウザくて仕方なかった襟沢が、まさかまさかの今や私らグループのマスコットキャラみたいなもんだなんてね〜。
そしてあんだけ男をジャグリングして、あんだけ女子から孤立してたあのあざとい小悪魔一色いろはが、今や私らグループの中心でもあり、そして今や私の恋敵とかっ(笑)
襟沢にしてもいろはにしても、どっちもこれっぽっちも想像してなかった異常事態のはずなのに、なんだかすでにこんな光景が当たり前のように感じる程になんだか自然で心地いい。
ま、実際はあの後もGWやら夏休み、林間学校やら文化祭と本当に色々あったし、いろはと本当の意味での友達になれたのももう少し先の話だったりしたんだけどねっ。
でもまぁそのお話は、いずれまた別の機会にでも思い出す事にしましょうかね♪
超説教してるいろはの膨れっ面と、それを聞きながら白目を剥きかけている襟沢。そしてそんな2人を見ながら何だかんだ言ってケラケラ笑っている紗弥加と智子の顔を見渡して、私家堀香織は気がつけばだらしなーく頬が緩んでいるのでしたっ☆
「ちょっと香織ぃぃぃ……なんでわたしがこんなに怒ってんのに、被告人の香織がなんでニヤニヤしてんのよぉぉ……………………?」
「ひぃぃやぁぁぁっ……!ごめんなさぁーい!」
終わりっ!
ありがとうございました!
まさかの出会い編は、無事に予告通り前・後編で終わらせる事が出来ました(・ω・)b
ラストシーンだけ現在に戻りましたが、過去編の中でも最も過去になった出会い編、いかがでしたでしょうか!?
名前は出しませんでしたが、つい別作品からゲストキャラも出しちゃいました(笑)
いっやー、やっぱ香織は本っ当に書いてて一番楽しいです♪
次に香織を書けるのはいつになることやら……今回のUA突破記念みたいに、もう詐欺を誤魔化せるイベントも無いしなぁ(苦笑)
お気に入り4000突破記念?さすがにそれは無理過ぎるw
それでは皆様!またあざとくない件でお会い出来たら嬉しいです☆