最近友達の一色いろはがあざとくない件について   作:ぶーちゃん☆

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よって私の友達は不意の遭遇に慌てふためく【前編】

 

 

 

2月のとある日曜日。

 

 

私家堀香織は、現在千葉駅前にて絶賛ナンパ被害中である……。

 

 

いやー…超しつこい…。

ま、なんだかんだ言っても、私もトップグループで中心張れるくらいの整ったお顔立ちですから?

そりゃ今までだって、何度もナンパくらいされまくってますよ、はい。

 

 

でも今日のは本当にしつこい!かれこれ20分くらいは足止めされてるよぉ…。

 

 

 

今日は女友達とショッピングでも洒落込みましょうかねと、千葉駅前にて待ち合わせをしていたのだ。

待ち合わせていた内の1人と落ち合うとほぼ同時に、チャラいのが2人やってきましたよ?

 

最初は笑顔で躱してたんだけど、あんまりにもしつこいから、私はウンザリ丸出しの顔してるし、友達なんかはいつお前をひっぱたいてやろうか〜!?お前を蝋人形にしてやろうか〜!?

とデーモン閣下の如き視線で睨んでる。

て古っ!いやいや私センス古すぎねっ?

 

 

しっかしこのチャラ男どもも、女の子に相手してもらいたいなら、この空気を感じとれるくらいの感性持ちなさいよ…。

ああ…無理だからこれなんですか…。

 

 

× × ×

 

 

おっと!そういえば友達の紹介がまだだったね!

 

本日は紗弥加と智子は都合が合わなかったので欠席です。

紗弥加は兄貴と秋葉に行くらしい。オイオイ大丈夫かよ?この兄妹。

智子は……。はいはいおたのしみおたのしみ。

 

 

で、もちろん今まさに同じく絶賛被害を受けている友達とは、肩下まで伸ばしたセミロングにふわりとパーマを掛けた茶髪の美少女。

 

そう!襟沢恵理だ。

 

 

 

 

………。いやいや、襟沢かよ!?

しかも金髪縦巻きロールじゃないのかよっ!?

ってツッコミが聞こえてきそうなんだけど、あの一件以来、色々あったのよ…。

 

教室で1人で暴走して1人で大泣きしちゃったもんだから、ちょっといつものグループが居心地悪くなっちゃったみたいでさぁ。

で、あの時泣かされたいろはに優しくフォローされたじゃない?

それ以来なんだか私達の方に視線を向けてきてたんだよね。

 

 

えりがなかまになりたそうにこちらをみている。

 

 

まぁちゃんと謝罪してきてたし、なんか求めるように視線を向け続けてきてる襟沢が正直ちょっとめんどくさくなっちゃったのもあったし、いろはも「木材屋みたいなもんでしょ。別にいんじゃない?」って言うもんだから、気付いたらウチらのグループに寄生するようになったのよねー…。

 

なんで木材屋さんが出てきたかは謎なんですけどね。

木を売る人ってめんどくさいの?

 

 

てかあれだけ突っ掛かってきてた癖に、ちょっと優しくされたくらいでコロッといろはに懐くって、どこの野菜王子だよってくらいチョロいなコイツ。

仮にも女王様目指してたんだから、フリーザ様くらい頑張れよ、ホッホッホってさ。

やっぱり元々いろは大好きだったんじゃね?こいつ。

 

んで髪型に関しては、いろはが

 

『あ、そうそう。恵理ちゃんさ、前々からずっと言いたかったんだけど、三浦先輩リスペクトすんのはいいんだけど、そのヘアスタイルは逆効果だよ?なんなら『……なんでコイツあーしと同じ髪型してんの?マジ不愉快だし』って一睨みされて終了まであるよ?』

 

と三浦先輩のモノマネ付きで言われた翌日にはヘアスタイル変えてきたからね!こいつ。

 

もう劣化版三浦どころか去年の文化祭実行委員長レベルの豆腐メンタルだよ…。

学名は、かまってちゃん類相模科エセ女王様目ミウラモドキと命名しよう。

 

 

 

おっと、正直出オチ感が否めない襟沢の話題はこれくらいにしとくとして、とりあえずはこの目の前の問題を対処しなければ。

これで遅れて来る美少女小悪魔iroha☆まで合流した日には、こいつら永遠に付きまとってきそうだし…。

 

果たして襟沢に出オチ以外の出番はあるのかしらん?と若干の心配をしつつ、なんかいい手段無いかな?と辺りを見渡してみる。

 

すると、見覚えのある猫背と淀んだ目の男性と目が合った。

 

 

× × ×

 

 

お…おおっ!まさかの比企谷先輩だ!

 

うっわ…。超めんどくさそうな顔して目を逸らしやがった…!

 

あれあれ?なんか見なかった事にして歩きだそうとしてますよ?

 

え〜…?行っちゃうの…?

 

あ、ハァ…と溜め息付いて、めんどくさそうにボリボリ頭掻きながらこっち来た!

 

どうやら思い悩んだ末に助けてくれるみたいですよ?

 

 

「おい、香織。お前いつまで待たせんだよ。待ち合わせとっくに過ぎてんぞ」

 

へ?まさかの待ち合わせシチュエーションプレイ?しかも呼び捨て?

 

「は?なにお前。この子の男?」

 

「あー…、すいやせんねえ。コイツこっちのツレなもんで、遠慮していただけませんかねぇ」

 

「ショッボっ!なに?君らこんなのと遊ぶの!?」

 

いや、別にそんな予定はありませんけど…。

 

「はぁ、まぁ」

 

「だったらやっぱオレらと遊ぼうぜ!こんなんほっといてさぁ」

 

いや、比企谷先輩はほっとくとしても、あんたらとは遊ばないよ…。

 

「しつけーな…。あんたらも良くここまで迷惑そうに蔑まれた目で見られてんのに心折れないよな。なに?不感症なの?」

 

「……………オイ。てめぇフザケてんのかコラ……」

 

ヤバい!比企谷先輩煽り過ぎだよ!

そして比企谷先輩は胸ぐらを掴まれそうになったその時、思いがけない言葉を口にした。

 

「なぁ、香織ー。もうめんどくせえから兄貴に電話して来てもらえよ…」

 

「……え?兄貴?」

 

どゆこと?私一人っ子ですけど!?

 

「ああ。昨日言って無かったっけ?家堀さん、確か今日はすぐそこの交番勤務だろ?」

 

「……!?」

 

なに言ってるんだろ?この人…すぐには理解出来ないでいると

 

「マジかよ……おいもう行こうぜ…」「そ、そうだな!」

 

とチャラいナンパ男君達、略してチャランパ君がそそくさと退散していった。

 

 

あ…、成る程。あの一瞬でそこまで考えてたのか…この人。

 

架空の兄の事を『家堀さん』と呼び信憑性を持たせる為に、あえて私の事は呼び捨てにしたのかな。

私と架空の兄をどっちも名字で読ぶよりも、私は名前で呼び捨ての方が、なんか家族ぐるみで親密っぽくて信憑性高いもんね。

 

 

とにかく姑息!決して格好いい助け方ではないし姑息だけど、なんか凄い。

さすがはいろはのお気に入りなだけあるわ。

 

隣では「香織ちゃんのお兄さんてお巡りさんだったんだ〜」と純粋に感動してる子もいますけど、とりあえず無視しとこう。

 

 

「比企谷先輩!ありがとうございました!」

 

「あ、いや、別になんもしてねえよ。じゃ」

 

と片手を上げて回れ右。おっと!早くもナチュラルに帰ろうとしてますよ?この人!

慌てて腕を掴む。

 

「ちょちょちょっ!?なんで行っちゃうんですか!まだきちんとお礼もしてないのに!」

 

「いや、だから礼を言われるような事は別になんもしてねぇって。じゃあな」

 

あれ?なんか若干顔赤くしてキョドってますね、この先輩。

あ!もしかして名前呼び捨てにしちゃったから照れてんの!?どんだけ純情なのよ!いろはがからかいたくなっちゃう気持ちがちょっと分かるかもっ。

 

「比企谷先輩!ちょっと待って下さいってば!ちゃんとお礼もしてませんし、この後いろはも来るから、このまま帰しちゃったら私いろはに怒られちゃいますよ!」

 

襟沢も居るからこの事いろはに言わない訳にもいかないし、そしたら何で帰しちゃったの!?ってプンスカするいろはが思い浮かぶよ…。

 

「一色も来んの…?じゃあ帰りますんで」

 

スチャっと右手を上げると本気で帰ろうとしだしましたよ?

もちろん慌てて止めて、何でですか!?と訊ねると

 

「いや、だって休日まで一色と顔合わせるなんてめんどくさいし」

 

 

 

……………。いろは。前途多難すぎるよ…。

 

 

そうこう揉めていると

 

「ごめーん!遅くなっちゃったぁ!…………っ!て、な、何で先輩が居るんですかっ!?」

 

 

良かったぁ…。帰られちゃう前にいろはさんご到着です。

このサプライズ、いろはもさぞや大喜びで比企谷先輩にちょっかい掛けに行くのだろうと思ってたら、いろはすったら顔を真っ赤にして「なんで?なんで?」とあわあわしてる……。

 

「……おう一色。なんかお前の友達に捕まっちまってな。いやいや急に居たからって、そんなに顔真っ赤にして怒んなくてもいいだろ…」

 

「あ、当たり前ですよ!ちゃんと心の準備が出来てない時にいきなり先輩の顔なんか見たら気持ち悪いじゃないですか!………、ちょ、ちょっとわたしトイレ行ってきますんでっ!」

 

私の横を通り過ぎる時、すっごい小さな声でボソッと「不意打ちとか反則だしっ…」と耳まで真っ赤にして駆けてっちゃった。

 

あらあらいろはすったら、そんなに自然な可愛らしい態度も取れるんじゃない!

さすがのいろはも不意打ちはダメだったみたいね。慌ててトイレに行って身だしなみをチェックしてくるのかな?

あらやだ可愛い。

 

 

比企谷先輩は唖然とそれを見送ると、スッと帰ろうとしました。もちろん全力で止めました。

 

 

いやマジで今帰っちゃったら本気で怒られちゃいますからっ!

 

 

「なんでだよ…。顔見るなりトイレに駆け込まれるなんて酷い拷問受けたのに、まだ帰っちゃいけないのかよ……」

 

 

× × ×

 

 

「で?なんで先輩のくせに日曜の昼間っからこんなとこに居るんですか?」

 

「うっせーな…本買いにきただけだよ。今日発売の新刊があるからな」

 

「で?なんで先輩が香織達と一緒に居たんですか…?」

 

「いや、なんでって言われても…」

 

「あ!違うのいろは!私達さっきナンパされて…」

 

「ナンパっ!?は?なに先輩のくせにわたしの友達ナンパしちゃってるんですか!?マジで気持ち悪くて腹立つんですけど!」

 

うわー…いろはちゃんたらマジギレですよ…。

 

「アホか。俺がナンパなんかすると思うか?俺が逆ナンされちゃうくらい有り得ないことだろ…」

 

「そっ!…そりゃそうですけどー…」

 

「違うってばー!私達がしつこいナンパに絡まれてた所を助けてもらったの!」

 

「へ?………あ、ああそういう事かー。そりゃそうですよねー。先輩がナンパなんてしたって、ゾンビが這いよって来るみたいなもんですもんねー。それくらい自覚のある先輩がそんな真似するはずないですよねー」

 

さっきまでの怒りはどこへやら、上機嫌で比企谷先輩を罵倒するいろは…。

いやだから生き生きしすぎだから!

 

「そんな自覚はねえよ……」

 

「てか先輩がナンパから助けるってどういう風の吹き回しですか?………はっ!まさかわたしの友達を助けた事によってわたしの好感度を最大限まであげてから告白しちゃうぞ大作戦を実行しようとか考えてましたかなんですかその恥ずかしい作戦気持ち悪いですすみませんもうちょっと考えさせてください」

 

「じゃあ俺帰らせてもらいますんで」

 

「ちょっとせんぱい!せっかくこんな所で会ったんですから、せっかくだから一緒に行動しましょうよー!」

 

「いや、今さっきまで嬉々として罵倒してた相手にそれ?俺忙しいんだけど」

 

「まぁまぁいいじゃないですかー。どうせ本買って、すぐお家帰って読むだけなんですよね?」

 

「そこが重要なんだが。早く買って帰って読みたいし」

 

「じゃあ急いで帰んなくたって、カフェとかに入ってまったりと読むのも一緒じゃないですかー」

 

「いやいや、それって単独行動での話だろ?なんでそれをお前としなきゃなんねえんだ?そもそもお前友達と遊ぶんじゃねえのかよ」

 

「香織達はどう思う?」

 

きゃるん☆と首をかしげ訊ねてくるいろは。

 

 

やだー、それもう強制じゃないですかー。

 

かしこまっ☆

 

 

 

ま、とは言え、実際私も結構比企谷先輩に興味あるんだよね。

前に一度会った時も、もうちょっと見極めてみたいと思ったし、さっきの手際のよさも凄いと思ったし。

 

だからこれから一緒にお茶するってのは、そんなに悪くないかも!

 

 

そう思って襟沢を見ると

 

「あたしはいろはちゃんがそうしたいって言うならそれでいいよぉ?」

 

と、大人しく従う模様です。手下か!

 

「うん。私も別にいーよー!助けてもらったお礼もちゃんとしてないし」

 

 

私達から言質を取ると満足そうに比企谷先輩と向き合ういろは。

 

「と言うわけで決定です!」

 

「なにが、と言うわけだ。俺の意見は聞かないの?」

 

「先輩に発言権なんてあるわけないじゃないですかー」

 

なに言ってんのやだー!とでも言わんばかりの小馬鹿にした表情で、いろはは比企谷先輩にとびきりの笑顔を向けた。

 

「それではレッツゴーですよ!先輩」

 

「まじかよ……」

 

てな訳で連行決定!

 

 

商業施設内のおっきい本屋さんへと向かう最中で比企谷先輩がいろはに訊ねる。

 

「………あー、ところで書店寄って本買うとして、そのあとはまたこないだ行った小洒落たカフェにでも行くのか?」

 

「えっ!?」

 

……え?いろはあそこに比企谷先輩連れてったんだ!

 

『彼氏とまではいかなくても、好きな人とまったり過ごしたい!』

 

いつぞやのいろはの台詞を思い出し、いろはに視線を向けると、いろはも頬を染めて気まずそうに私を見ていた。

 

「や、やだな〜…!ただフリペの取材で行っただけだよ!?……先輩まるでデートで使ったかのように言っちゃって気持ち悪いですっ」

 

ぷくーっと頬を膨らませ耳まで真っ赤にして俯いちゃった。先輩からかいすぎて墓穴掘ったねいろは☆

なんだか今日は照れ照れいろはすをたくさん見られるいい日ですねっ!

 

 

「え?俺そんな風に言った……?」

 

意味分からんと困惑する比企谷先輩はもう放置。

そりゃ意味分かりませんよねー。

 

 

× × ×

 

 

私達は商業施設内の本屋さんに隣接するカフェ(というか喫茶店て言うのかな?)にて、読書お茶会をしていた。

 

 

比企谷先輩は本屋さんでお目当ての小説をすぐ見つけたようなので、私もせっかくなので、初心者にも読みやすいようなオススメの小説を教えてもらって買ってみた。

比企谷先輩は今日は純文学作品を購入したのだが、ラノベも結構読むようなので、私が結構な漫画好きだと教えるとオススメしてくれたのはラノベだった。

ラノベというジャンルは前から結構気になってたので、ちょっぴり楽しみだ。

学校では恥ずかしくて読めんけど…。

 

『あっ!せんぱーい!コレこないだ借りた小説の新刊ですよねー。続き気になってたんですよー』

 

いろはは比企谷先輩の影響なのか、最近は結構本を読んでいるらしく、自分のお目当ての本を手に入れたようだ。

 

襟沢は、今泣けると話題の少女マンガを大人買いしていた…。

もうあんたのキャラが分からないよ…わたしゃ。

 

 

 

喫茶店に入ってからもう一時間ほど。

ほんっとに全くしゃべらずに本を読んでるよ、この先輩。

 

こんなの初めてっ☆

 

今までデートだったり合コンだったり単なる遊びだったりと、何度か男と遊んだ事はあるけど、会話を途切らせるような男は居なかった。

会話が途切れそうになると、それはもう無理に盛り上げようとウェイウェイ言ったりフゥフゥ言ったりね。

 

だから最初はちょっと困惑したけど、こういうのも意外と悪くないかも!

 

 

そしてそして、ソファーに深めに腰を掛け、脚を組み文庫本を片手にコーヒーを口へ運ぶ姿なんかは…。

うーん……。意外なほど格好良いんだよ!コレが!

 

結構整った顔立ちなのに、そのすべてを台無しにしてる淀んだ目も、真剣に本を読んでいる時は腐りがナリを潜めちゃったりしてさ。

 

いろはも比企谷先輩の隣に陣取り大人しく本を読んでいるものの、たまーにチラッチラッと比企谷先輩の横顔みては満足そうにニヤニヤしてるしねー!

私の隣では襟沢がハンカチ片手に少女マンガに夢中だが、もう何も言うまい……

 

 

なかなかいいもんだねぇ。こういうゆったりした休日も!

 

 

 

 

 

そんなまったりとした贅沢な時間を、刻が経つのも忘れて満喫していたのだが、あれ?なんかちょっと寒くなってきたよ!?空調の調子が悪いんじゃないですかー?店員さーん?

 

 

 

カッカッカッカッ……

 

 

 

なんだか寒いのが近寄って来ましたよ……?

 

 

 

 

 

「あら比企谷君こんにちは。とても珍しい不思議な光景ね…。これは一体どういった趣向なのかしら……?」

 

 

 

 

その凛とした美しくも冷たい声色のする方に視線を向けると、そこには美しく艶やかな黒髪をたたえ、息をするのも憚られるような凍える美しい笑顔と眼差しの極寒の女神が、私達(下界)を見下ろすように降臨していた……

 

 

 




この度もご覧頂きましてありがとうございます。

今回も前後編に分かれてしまいました。
まぁ誰も求めていない襟沢の出オチ話(なんかこのまま埋もれさせるのはちょっと勿体なかったんで)とかの無駄が多かったので、今回ははじめから一話にまとめるのは諦めてましたが。


後編は今週中には更新出来るように頑張ります!


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