最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
比企谷先輩の元へと舞い降りた、その元気おっぱ………いっぱいの美しき女神は……、あ!この人って由比ヶ浜先輩だっ!
さすが学年どころか今や学内の最上位トップカーストのメンバーでもあるだけあって超可愛い!!そしてバインバイン。
「どうした由比ヶ浜。なんか用か?」
「やー、別に用があったって訳じゃないんだけどさ、紅茶きれちゃってたから飲み物買いに来たら、ヒッキーいつもの場所にいなかったから、どうしたのかなーって思ってさー。………べ!別にわざわざ見に行ったとかじゃ無いよ!?ついでに寄っただけだし!」
あわわわとブンブン手を振る由比ヶ浜先輩。やだ可愛い。
それにしてもヒッキー…?…あ、ヒキガヤでヒッキーか。
あだ名からして悪口!?と思ったけど、悪意と言うよりは愛情を感じるな。むしろ愛情しか感じないまである。
由比ヶ浜先輩は比企谷先輩しか見えてなかったみたいなんだけど、ようやく私達の存在にも気付いたようだ。
「て、あれ!?いろはちゃんも居たんだ。いろはちゃんやっはろー!」
「結衣先輩こんにちはです!あ、こっちの子は友達の香織って言います」
「おー、いろはちゃんのお友達かー!香織ちゃんもやっはろー!」
「は、初めまして!や…やっはろ?です…」
謎の挨拶は一先ず置いとくとして……
やべー!噂通り超いい人だ!最上位だからさすがの私も緊張しちゃうかと思ったけど、全然そんな壁なんか無いカンジ!
たぶんこれが三浦先輩だったら緊張で速攻トイレに行きたくなっちゃうレベル。
とっても人当たりがいいし元気な人だなぁ。あとバインバイン。
ちょっとした雑談を交わすと、由比ヶ浜先輩は比企谷先輩へと向き直る。
「ねーねーヒッキー。今日なんてめっちゃ寒いのに、またこれからあそこでご飯食べるの?」
「まあな。俺にはあそこ以外に居場所ないしな。」
…やばいなんだか視界が滲むよ…
「じゃ、じゃあさ!…そのぉ、たまには…部室で、ゆきのんと一緒にお昼ごはん食べない…?」
上目遣いでヒッキー先輩におねだりする由比ヶ浜先輩…まぁなんて可愛らしいんでしょう!……ゆきのん?
「断る。俺は飯は1人で食う派なんだよ」
悪・即・斬!正に一刀両断の断りっぷり。
でも断わりながらも、ちょっと頬を赤らめて照れた様子で視線を逸らしてますね、ヒッキー先輩。なんか爆発しろって思いました。
「ノータイムで断わられたっ!?こんな寒い日くらいたまにはいーじゃんっ!」
ぷくーっと頬を膨らます由比ヶ浜先輩。
………こっ!これが天然モノの上目遣いと膨れっ面の性能というやつか!!
いつも見慣れてるやつとは何かが違うよ!
「大体昼間っからあんな百合の世界に入って行けるかよ」
おや?百合とはあの女の子同士でイチャイチャとかいうヤツですね!?
そ、そうかー…由比ヶ浜先輩は部室でゆきのんとゆるゆりしてるのね?…メモメモ。
すると由比ヶ浜先輩ははっ!とし、顔を真っ赤に染め上げるとモジモジし始める。
「きゅ!急に呼び捨てとか反則だし!…そ、それにあたしはユリじゃなくてユイだし!」
「は?」
え?
えっと…ちょっぴり残念な人なのかな?由比ヶ浜先輩って☆
百合の意味が分かんないとしても、その勘違いの仕方はちょっと…
そんな2人のやりとりをつい微笑ましく見ていたのだが、ふと隣を見ると、養殖モノの膨れっ面のいろはすが我慢の限界なのか、堪らずに比企谷先輩の袖をちょいちょい引っ張り、
「先輩。わたしを放置しないでくださいよー」
と、つまらなそうに口を尖らせていた。
「おう悪い。で何か用だったのか?」
「……別に先輩なんかに用は無いです。ちょっと先輩で暇潰ししてただけです」
「…暇潰しってひどくね?こっちは色々いそがしいんだが。まぁ用が無いなら俺はもう行くからな。あんまり遅くなると天使の舞いが終わっちまうし。じゃあな」
天使の舞いってなんだよ。
「あ!ちょっと待ってよヒッキー!だったらさいちゃんも呼べばいいじゃん!」
あ、由比ヶ浜先輩には天使の舞いで通じるんですね。どうやら天使の舞いイコールさいちゃんらしいナンノコッチャ
「確かにそれは名案だが、お前早く飲み物持って帰らんと、雪ノ下に罵られるぞ」
あ、ゆきのんて雪ノ下先輩の事だったのね。
………!?あの雪ノ下先輩がゆきのん…だと…?
てか由比ヶ浜先輩、雪ノ下先輩とゆるゆりしてるのっ!?
「はっ!ゆきのん怒ってるかなぁ……………って、ちょっとヒッキー待ってよー!………あ!いろはちゃんも香織ちゃんもじゃあねっ」
「はい、さよならです!先輩も結衣先輩もまた後でー」
そう言って胸の前でふりふり手を振るいろは。
私もペコリとお辞儀をした。
「…いや、だから何でお前は普通に部室に来ようとしてんだよ…」
そう言う呆れ顔の比企谷先輩に
「それは行くに決まってるじゃないですかー。今日も先輩を利よ……お願いしたい事が山ほどあるんですから」
と、精一杯のあざとい笑顔でお返しする。
でもなんかいつもと違う。無理してる感じ。
2人を見送り教室に戻ろうかといろはを見ると、なんだか寂しそうに悔しそうに頬を膨らませていた…
普段ならそのあざとさにウゼーなコイツと思う所だけど、今日ばっかりは何だかいとおしく思えてしまいました。まる。
× × ×
んー……さっき私が思った事を思い出してみる。
『いろはが本気出せば、落ちない男子なんて葉山先輩くらい』
ゴメンいろは、私が甘かった。アレは強敵だわ…
比企谷先輩本人だけでも大変そうなのに、それだけじゃないんだね。
最上位カーストで可愛くて人当たりが良く、男子人気も最上位クラス。
ちょっぴりおバカっぽいけど、そこがさらに魅力的でさえある。
その上、噂によるとあの人懐っこさと人当たりの良さなのに、男子に対して超ガードが固いんでしょ?由比ヶ浜先輩って。
そのガードの固さなのに、比企谷先輩にだけはあんなにあからさまな好意的な態度って……。もうなんていうか、私が比企谷先輩だったら由比ヶ浜先輩可愛くて仕方なくなりそう…
アレはいくらいろはでも相手が悪いわ…おまけにバインバイン。
さっきのいろはの言葉も思い出してみる。
『やっぱり男っておっきい方がいいのかな』
そりゃ悩みどころが多過ぎだよねー。
あのいろはが、あんなおかしな事を口走って悩んじゃうくらいに、敵は強大だもん。色んな意味で。
さっきの別れ際の精一杯のあざとい小悪魔笑顔…たぶんこんな風に落ち込んでる姿は、あの人達の前では絶対に見せないようにしてるんだろうな。
完全部外者の私なんかでも、ちょっと見ただけでもなんとなく分かっちゃうくらいの、あの特別な関係性。
しかもそこにはさらに、あの雪ノ下先輩も居るってんだから、恋する乙女には堪ったもんじゃない…
いつも嫌でもその空気にさらされてるのに、それでも尚、さらに自分からその空気に飛び込んでいくいろははホントに凄いと思う。
さっきの精一杯のあざとい笑顔は、弱音を吐けない自分への、そしてあの人達への精一杯の強がり…っていうか意地なんだよね…
………がんばれっ!
こうして噂の比企谷先輩との初会合を果たしたわけだが、流石にこんな短時間と一言二言の会話だけでは、いろはが言うような魅力も、なぜこのいろはがここまでご執心になるのかも、まだ正直分からない。
でもこんなにも素敵な女の子達に慕われてる比企谷先輩には、やっぱり不思議な魅力があるのだろう。
今度会う機会があったら、もうちょっときちんと話して見極めてみたいな。
すっかり不機嫌になってしまったいろはの肩をポンと叩く。
「よし!いろは。とっとと帰るよ!今日はヤケ食いだっ!私のお弁当のおかず、なんでも好きなものひとつあげるからさっ」
「……ヤケ食いとか…なんに対してのヤケなのか意味分かんないし…。……でも食べる…」
すっかりイジけ気味のいろはをなんとか宥めすかして教室へと向かう私は、先ほどの由比ヶ浜先輩の事、そして隣で可愛く膨れているいろはがさっき言ったことを思い出し、ふとこんな事を思うのだった………
……………雪ノ下先輩って、絶壁なんだな……………
了
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
この物語を書き始めた当初は、まさかガハマさんを…と言うよりもいろはすと八幡以外のメインキャラクターを登場させる事になるなんて、考えてもいませんでした。
初のメイン2人以外のキャラの登場、楽しんで頂けましたでしょうか??
それでは次回は過去編②でお会いしましょう。一週間以内には更新する予定です。