わたくしは楽様と結婚した。   作:イシジマ

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オフロバ

 

 

食事の後、お皿などの後片付けを楽様と済ませて、一緒に脱衣所に入る。わたくしは毎日楽様の背中をお流ししている。妻ならば当たり前ですわ。うふふ。わたくしのナイスボディに悩殺されてくださいませ。しかし楽様は衣服を脱ぐ際に私に背を向けて脱ぎはじめる。

 

「どうなさいました、楽様。わたくしの体を舐め回すように見てもいいのですよ?」

「やめとくよ……マリーの体みたら」

「みたら?」

「い、色々と耐えられなくなりそうだからな」

「えっちぃね、らっくん」

「やめてくれ、恥ずかしいから!」

 

激しく動揺する楽様にくすりと笑う。そんなとりとめのないやりとりを返しながら、腰にタオルを巻いた楽様と共に洗い場へと入る。わたくしはというとマイクロビキニ姿。

 

「いつも思うんだけど、水着が際どいな」

「その日によってつける水着を変えてますの。三角ビキニにホルターネックビキニ、チューブトップのビキニも持ってますわ」

「全部ビキニじゃねーか! なんかその露出度が高い水着は他の男には見られたくないな。まあ集は許してやるが」

「あら、案外欲張りですのね、楽様」

 

目線のやり場に困っているのか、あちらこちらに視点が動く楽様。

 

そんなに意識されるとこっちまで恥ずかしくなるとよ。

 

二人で浴槽に入ってるからか互いに密着してしまう。最近、楽様の体がたくましくなった。胸があつくなって、腕が太くなり、なんというか……男らしくなった。

 

高校時代、一度だけ宮本さんに聞かれたことがある。

 

一条楽のどこがいいのか、と。全力で尽くしているのにも関わらず、その恋が報われなかったらその感情の行き先はどうするのか、と。もし選ばれなかったから……怖くはないのか、と。事実、楽様の周囲にはわたくしも認める素晴らしい女の子がたくさんいた。

 

でも、わたくしは答えた。そんなの関係ないと。

 

きっぱりとそういうと宮本さんはかなわないわね、と薄く笑った。

 

もちろん、わたくしは楽様に恋い焦がれて以来、内面外面性格趣味嗜好全てを愛している。動物が好きなところも、優しいところもちょっとエッチなところも全てにおいて大好きだ。

 

しばらく浴槽につかっていると、楽様が浴槽から出て体を洗い始める。

 

「お背中、お流ししますわ……楽様。そういえば、背中たくましくなりましたね。惚れ惚れとしますわ」

「あぁ……暇があったらジムに通ってるからな」

「それは何故ですの?」

「その……お前の親父さんに結婚の挨拶しにいった時さ、言われたろ? 『マリーを頼むばい。ずった守って欲しい』

ってさ。警視総監なのにあそこまで頭下げられてさ。そんときーー」

 

胸の内側からなにかがこみ上げてくる。

 

同時に療養所のことを思い出した。その時わたくし、いやわたしは不安で

 

ずっと独りぼっちで不安だと。

 

もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれないと。

 

その時は言えなかったが、らっくんに会えなくなるのが寂しくてたまらない、と。

 

こらえきれずに泣いてしまう私に楽様は。

 

頭に手を乗せ、優しく微笑み、言ったのだ。

 

「ーーマリーをずっと守り続ける、って。子どもみたいだけどさ、そう思ったんだ……」

 

耐えられずに涙を流れる。心配に思ったのか、らっくんが振り返る。その大好きな人の胸に飛び込み、顔をうずめる。

 

「らっくんだいすきたい!もう離さんけん!」

「おい風呂内で泣くな!そして胸に顔をうずめるな!」

 

そういうらっくんだけど、頭に手をのせそっと撫でてくれる。

 

体つきも、年齢も、全て変わってしまったけれど、このぬくもりや優しさは何一つ変わっていない。

 

らっくん、いまね、ばり幸せとよ。

 

わたしは幸せを噛みしめながら、ただ泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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