二人の『ゼロ』   作:銀剣士

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オールド・オスマン

不意に目が覚める。

 

それは確信だったのだろう、過ぎる時間と共にそれは起こると、目を覚ましたのは。

 

何処からか聞こえてくる鐘の音を耳にしながら景色の狂う様を窓から眺め、背後の気配に声を書ける。

 

「こんばんは、こうしてまた君と話せる日々が始まるんだね」

 

「ファルロス……これは、どうして?」

 

紗久弥の問いに笑みを浮かべてファルロスは告げる。

 

「君が願った事だから、だよ。今、君はニュクスと共に在る事を忘れては無いよね?」

 

かつてのようになるのだろうか……

 

「不安に思うのも無理はないね、けど大丈夫。この影時間は君の自由、思うがままに起こして終わらせられるよ」

 

……今、何と言ったのだろう、私の自由と言った?

 

「ねえ、それって……」

 

「君のご主人様が目を覚ますよ、また今度ね」

 

冴えない頭ながら、隣の紗久弥が居ないことに気付き、慌てて飛び起きたルイズを見ると、世界は本来のモノに戻っていた。

 

(ホントに……思いのままだ……)

 

「ゴメン、起こしちゃった?」

 

「む……早く寝なさいよ~」

 

それだけ言うとふぁ……と一つ大きな欠伸をして再びベッドに潜り込む。

 

「……あれ?そう言えばこの子……棺になってなかったような……」

 

確認は後日にしてもう寝よう、そう決めてルイズの隣に潜り込んで、瞼を落とすーー

 

 

 

 

ーー寒い。

 

眠たい目を少し擦り、ある筈の布団を探す。

 

あった、が、すべてをルイズが巻き込んで寝ている。

 

(……仕方ない、起きよう……)

 

着の身着のままであることを思い出しルイズを見ると、可愛らしくも扇情的に見えるネグリジェ姿である事を思い出す。

 

不意に襲いたくなる衝動に駆られるも我慢して部屋を出た。眠りに落ちる前、ルイズに聞かされた事を実行に移すためでもある。

 

『洗濯お願い、後朝使う水はそこの洗面器とグラスに用意しておいて』

 

何処で、と訊く暇は無かった。

 

(誰か居ないかな……?)

 

紗久弥はまだ知らないが、学園に住む者で朝が早いのは使用人か、ごく少数の生徒しかいない。

 

ではこの女子寮に早くから起きている人物が居るか居ないかと問われれば、居ないことはないかもと言うものである。

 

そして、そんな女子寮に朝早く居るとすればそれは基本的に。

 

「……メイドさん?」

 

カゴ一杯どころかてんこ盛りになっている制服を抱えて、廊下を歩いているのは、紛れもなくメイドさん。

 

黒い髪が印象的な少女。

 

時おりバランスを崩しかけるものの、都度持ち直す辺り慣れているのだろう、あれが。

 

(そうだ、あの子に訊こう)

 

荷物を下ろした時に訊こうと思い、後につく。

 

下ろさない、階段も難なく降りて、下ろさない。

 

下ろさない、長い廊下を、下ろさない。

 

下ろさな「あのー何か御用でしょうか?」

 

「あ、うん」

 

バレていたーー

 

 

 

 

ーー案内された場所には井戸があった。

 

「ここの水を汲んで使っています」

 

「ありがとう、シエスタさん」

 

礼を言うと、呼び捨てで構わないと言われ、同じく呼び捨てで構わないと告げる。

 

メイドさんの格好をした彼女はシエスタ、黒い髪が似合う純朴な少女。昼寝は好きかと訊いたら、する暇が欲しいと返ってきた。

 

「貴族様相手の仕事だから仕方無いんだけど……そう言えばサクヤちゃんってミス・ヴァリエールの使い魔になってるんだよね?」

 

頷いて、左手にある『刻印』を見せると、シエスタは悲しそうに目を附せる。

 

「貴方がそんな顔しなくても」

 

「だって……平民と言ったってサクヤちゃんにも生活はあるのに……」

 

「私は……ルイズ、ご主人様の事、嫌いじゃないよ」

 

そう言った紗久弥の顔はやさしい笑みを浮かべていたーー

 

 

 

 

ーールイズは朝に弱い。

 

寝起きが悪い訳ではないが、思考回路が完全にボケてしまう。とは言え、やるべき事は出来る程度には働くが。

 

だが、其処に『日常に無かったモノ』があるとどうなるか。

 

「……あんた誰?」

 

昨日あれほど激しいキスを交わして、ベッドも共にした相手にかける言葉じゃないわ、としなだれる紗久弥に顔を真っ赤にしたルイズのお叱りが飛ぶ。

 

「ったく、何があんなに激しい夜だったのによ……」

 

ぶつぶつ言いながら紗久弥に髪を整えさせるルイズの脳裏に、昨日の召喚の儀の後の教師とのやり取りが浮かぶ。

 

『彼女が気が付いたら共に院長室を訪ねるように』

 

こう言われたが、気が付いたのは昨夜で今は朝食前だ。どうしよう、と悩んだところで可愛くお腹が鳴ってしまう。

 

(……朝食後にしよう、最初の授業は出られないけど、オールド・オスマンに伝えれば大丈夫よね?)

 

そこまで思考を巡らせたところで、出来たよと声をかけられ、鏡に意識を戻すと何故かアップに纏められていた。

 

「……たまには悪くないわね、でも明日からは指示の通りにしてちょうだい」

 

「ん、了解、じゃあそろそろ部屋出ましょうか」

 

鏡台を整理して振り向いた紗久弥の髪を纏めるヘアピンに、ルイズの目が止まる。

 

「何でそんなこんな妙な止め方してるの?」

 

ⅩⅩⅡ

 

この形。

 

「ん、何となく……かな、昔からの癖なの」

 

紗久弥がドアを開け、ルイズが通り、紗久弥に施錠を任せたところで、隣の部屋からも人が出てきた。

 

二人、だが。

 

「珍しいわねツェルプストー、タバサと二人でなんて」

 

「あらおはようヴァリエール、貴方は……彼女、気が付いたのね、初めまして使い魔さん、私はキュルケ、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー、キュルケでいいわ。この子はタバサ、私の親友よ……ってこら、隠れてないで、貴方の紹介してるんだから」

 

何故かキュルケの影に隠れる……と言うよりしがみつくタバサに、さすがに呆れた声を漏らしてしまう。

 

「ホントどうしたのよあんたたちーー」

 

 

 

 

ーー食事の時間も迫ってると言うことで、とりあえず歩きながら昨夜の出来事について話し出すキュルケ。

 

「じゃあなに、いきなり不気味な景色になったと思ったら、直ぐにタバサがあんたのベッドにとびこんできた、と?」

 

不気味な景色……と言うのは間違いなく影時間だろう。

 

(この二人も……資質アリ……かな?)

 

「さ、着いたわ、ここが食堂、アルヴィーズの食堂よ!」

 

「何で貴方が自慢気なのよ、ヴァリエール」

 

扉を勢いよく開け放ち、紗久弥に見せ付けるルイズに、食堂に居た生徒の大半の視線が集う。

 

「恥ずかしい」

 

集まる視線から逃れるようにタバサは席を探しに向かい、キュルケも後に続く。

 

クスクスと聞こえたところでルイズはハッとして、歩き出そうとした所で。

 

「おや、ミス・ヴァリエールおはようございます、貴女は……」

 

コルベールと挨拶を交わすルイズは、慌てながらもこの後に学院長室に向かう事を伝えて中に入っていった。

 

(……私はどうすれば?)

 

ルイズが先に行ってしまったせいで所在を無くし、キョロキョロと辺りを見渡す紗久弥に、コルベールが苦笑を浮かべて共に来るように伝えて入ってゆき、それに紗久弥が続く。

 

「ミス・ヴァリエールはあの辺りの席に居るはずだ、後の事は彼女に訊くといい」

 

指された先を見ると、ルイズのと同じ色のマントを羽織った者達が席についていて、話に花が咲いているようだが、幾つか『影時間』についても話す声が聴こえる。

 

「……言うなよ、んなこと」

 

「見ちゃったのよ……」

 

「やっぱり夢何かじゃ……」

 

それらと同じく、紗久弥に関する話も聴こえてきたが、ルイズへの侮蔑の色が濃い事に気付いてしまう。

 

やれその辺の平民を雇っただの、新入りのメイド何じゃないかだの、自身をダシにルイズをバカにされる事に、紗久弥に苛立ちが募るが、一つの共通したそれが耳に届く。

 

『ゼロのルイズ』

 

胸……では無いだろう、それならばこうも侮蔑に晒される謂れは無い。もっと別の何かを示しているのだろうかと考えていると、キュルケが手招きをくれた。

 

「サクヤ、悪いわね置いてきちゃって」

 

ルイズは隣の席に座るように伝えて、近くに居たメイドへ幾つか食器を持ってくるよう伝えて紗久弥に向き直る。

 

「さて食事が始まる前にあんたに訊いときたいんだけど、始祖への祈りって……ああ、良いわ」

 

説明によると食事の前には必ず『始祖ブリミル』とやらに祈りを捧げるのだと言う。キリストのような存在なのだろうか?

 

最もキリシタンではないから詳しくは比較できないが。

 

「まあ、私達に合わせれば大丈夫よーー」

 

 

 

 

ーー紗久弥の前には野菜中心に盛られたプレートが一枚とスープ。

 

プレートは始祖への祈りの後、ルイズ・キュルケの二人が盛った物で、スープはメイドがおかわりとして運んでいたものをタバサが受け取り、紗久弥に渡した物である。

 

「おいしー」

 

素直な感想である。

 

貴族の子息の集う学院の食堂であるアルヴィーズの食堂で出る料理は全てが一流。月光館の学生寮では味わう機会の殆ど無かった物。

 

一度桐条家の別荘で食べた料理と遜色無い味わいに紗久弥の頬はゆるんだままとなっている。

 

「本当はちゃんとしたメニューを食べてもらいたかったんだけど、手続出来なくてね。この後学院長室に向かうって言うのは覚えてってちょっと待ってサクヤ、その葉っぱは……!」

 

しゃく……モシャ……

 

止める間も無くルイズの耳には咀嚼の音が聴こえてしまう。

 

(ああ……サクヤ、貴女の尊い犠牲は忘れないわ……)

 

ルイズとキュルケ。自称終生のライバル同士の心が一つになった瞬間であった。

 

「苦味が強いけど、油っぽい料理の合間に食べるにはちょうどいいね、これ」

 

『うそぉぉぉぉぉぉっ!?』

 

ルイズとキュルケ。自称終生のライバル同士が一つの思いを共有した瞬間であり、紗久弥がタバサに好ましく思われる切っ掛けとなったーー

 

 

 

 

ーートリステイン魔法学院本塔をルイズと紗久弥の主従の二人と、コルベールが上ってゆく。

 

「ミス・ヴァリエール」

 

「はい」

 

階段に響く足音に引かれるように、又はこの塔の雰囲気に因るものなのか、自然と声のトーンも落ちている。

 

「オールド・オスマンにはある程度の事情は説明してはいますが、貴女から改めて現状の説明をお願い致します」

 

「かしこまりました、ミスタ・コルベール」

 

暫く沈黙の中を歩く三人の行く手に、重厚な扉が目に映る。

 

「あそこが学院長室?」

 

「粗相の無いようにね」

 

扉の前に来たところでコルベールは紗久弥の左手の刻印をスケッチしてその場を後にし、ルイズは一つ二つ深呼吸をして、ノックをする。

 

『開いておるよ』

 

「失礼いたします、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール参りました」

 

扉を開くと、其処には白眉白髯の老人と、緑の髪と眼鏡が似合う知的な女性の姿。

 

「よく来たのう、ミス・ヴァリエール、そして……」

 

「サクヤです、サクヤ・コシハタ」

 

うむ、と頷きソファに腰掛けるよう促し、二人が座るのを確認して自身も上座に腰を落とす。

 

「どうぞ」

 

「ミス・ロングビルや、済まぬが席を外して貰えるかね?」

 

「かしこまりました……では、失礼致します」

 

トレイを片付けたロングビルが部屋を後にしてから直ぐにオスマンは杖を振る。

 

「オールド・オスマン、何を?」

 

「ん、ディテクト・マジックをかけさせてもらったぞ、事後で済まぬがな」

 

 

 

 

『ディテクト・マジック』

 

主に魔法に関して効果を見せる魔法であり、使う者の技量に因ってその探知能力が変わる。

 

オールド・オスマンが使うディテクト・マジックの探知能力の程は如何なる物であろうかは、当人にしか解らないだろう。

 

(この娘……何じゃ……コレは……)

 

そのオスマンでさえ、紗久弥の内に眠るモノの全容を掴むことが出来ずにいた。

 

『そのくらいにしておきなよ、お爺さん』

 

(何者じゃ!?)

 

あまりにも唐突な声に、流れる冷や汗が増えてゆく。

 

『さあ、何者だと思う?』

 

(っ……)

 

吹き上がる重圧に思わずディテクト・マジックを解いてしまったオスマンは、ルイズと紗久弥にディテクト・マジックを黙って使った事を謝していた。

 

杖を仕舞い、流れた冷や汗と、激しく打ち付ける動悸を抑えつけ、極めて落ち着いた風に装うオスマン。

 

一口紅茶を啜り、小さく息を吐いて紗久弥に目をやる。

 

(……二度目……は無いんじゃろうなぁ……)

 

オスマンはこれまでの人生を振り返り、似た経験を二つ思い出す。

 

一度目は学院の宝物庫に所蔵されている『破壊の杖』に関する出来事。

 

二つ目は眼前に座る桃色の髪の少女の母親に吹き飛ばされた時の事。

 

(……ミス・ヴァリエールには悪いが、ワシ、彼女苦手じゃ……)

 

思い出すだけでもナニかが縮む。今夜はミス・ロングビルに慰めてもらおう、そうしよう。

 

「オールド・オスマン、お顔の色が優れないようですが……」

 

ルイズの心遣いに、優しい笑みを浮かべて大丈夫だと応え、気を取り直す為、居住まいを正す。

 

「んんっ、それでミス・ヴァリエール、彼女の今の境遇についてじゃが……聞かせて貰えるかね?」

 

その言葉に、ルイズはばつが悪そうに。

 

「余り時間がなく、然程話し合えておりません……」

 

「フム……中々に仲は良さそうじゃが?」

 

それは紗久弥の人となりと、使い魔の契約の際の『アレ』に因るところが大きいのだろうが、もう1つ大きな要因があった。

 

今朝のキュルケとの出会いである。

 

キュルケはルイズの部屋から聞き慣れない声が聴こえる事に興味を持ち、それが召喚したルイズの使い魔の声であると確信した際、明日からかって(本人は否定するだろうがハッパをかけるとも)やろうと思っていた。

 

だが、突如として訪れた謎の不気味な現象と怯えた親友に、それは揺らいでいたのだろう。

 

結果、キュルケはルイズをからかえず、ルイズは紗久弥を『平民』と見下す事も無かった。

 

そしてなし崩し的に紗久弥への態度は軟化し、何より、コントラクト・サーヴァントの時の、キスが、忘れられないのだ。

 

「えっとその……」

 

「ホッホ、よいよい、仲が良いのは実に良い、今後も仲良くするのじゃぞ?」

 

「はい!」

 

良い返事に、オスマンも思わず笑みが深くなる。

 

そして、紗久弥の生活については、食事・風呂は基本的に学院で働く平民達と共にするようにと伝えられた際、ルイズは憤慨し、オスマンに思わず詰め寄ってしまう。

 

「ワシやコルベール君、ミス・ヴァリエールが良しとしても、快く思わん者は少なくないじゃろ」

 

そう言われては、ルイズには何も言えなくなる。

 

思い当たる節は幾らでもあるのだ、悲しいかな、ルイズ自身にも。

 

「……ゴメン、サクヤ……」

 

「え?」

 

「ゴメン……」

 

貴族と平民。その間の隔たりは、トリステインに於いてあまりにも大きい。ルイズは今日、トリステインに於けるその『差別』を思い知ったのであったーー

 

 

 

ーーロングビルが学院長室に戻ってきたのはルイズ達が退室して四半刻程経った後。

 

オスマンはロングビルに紗久弥の生活サポートとして、学院での奉仕作業を提案した事、それをルイズがヴァリエール家での雇用と言う事にしたいと申し出た事を伝え、必要な手続きを任せた。

 

「オールド・オスマン、こちらにサインをお願い致します」

 

「うむ……ほう……」

 

「オールド・オスマン、私のスカートの中には書類は御座いません」

 

強く足踏みをするとネズミの鳴き声が聞こえたロングビルは、屈んでネズミの尻尾を掴み上げる。

 

「おお、モートソグニルや、かわいそうにのう……返してくれんか?」

 

「返すとお思いで?」

 

杖を抜き、カゴを『錬金』で作り、モートソグニルを放り込んで蓋をして『硬化』と『固定化』をありったけの力で行うロングビル。

 

「ああっ!?何をするんじゃ!」

 

「いい加減にしなっつってんのさエロじじい!どれだけアタシが耐えてると思ってんだい!」

 

知的な美人秘書の仮面は脱ぎ捨てられた。

 

「ええじゃないか、ええじゃないか……ケチンボじゃのうフーケちゃんは……」

 

げしっ

 

「おうふっ」

 

「アンタに取っ捕まって引退したろうが!」

 

ミス・ロングビルこと、元『土くれのフーケ』は、一昨年程前にこの学院の宝物庫を襲撃した。世にも珍しい『破壊の杖』目当てに来たのだと、コルベールの尋問で口にする。

 

その尋問で、フーケの目的がアルビオンに住む家族の移住だと訊いたコルベールは、オスマンの許可を得、フーケの語るその場所に赴き、そこでフーケの家族から真相を知る事となる。

 

魔法学院に戻ったコルベールはこれをオスマンに報告、それを訊いたオスマンはフーケ……否『マチルダ・オブ・サウスゴータ』に、秘書として働くなら一切の罪を死して尚語らぬこと、家族の移住の支援も秘書としての俸給から出そうと伝え、フーケは『ロングビル』と為る事を選んだ。

 

セクハラの嵐が待っているともしらずに……

 

「ええ、そりゃもう感謝しておりますわクソじじいには!おかげで『テファ』達と気軽に会えるのですから!」

 

どかっ!ぐりぐり!げすげす!

 

「ほ、ホントに感謝しとるのか!?ああっソコは止めて!?」

 

ふと蹴りが止み、ロングビルを見ると、下着も露に足を振り上げている。黒だった。

 

「おほってその足の行き先は!?」

 

「アンタの息」

 

どごぉぉぉぉっ!

 

「あー……ミス・ロングビルや」

 

「見積もってヴァリエール家に請求書も持っていくことに致します」

 

「任せた……」

 

二人して大きな溜め息がこぼれ落ちたーー

 

 

 

ーー少し時間は遡り、ルイズは紗久弥と共に教室に居た。

 

『赤土』ことミセス・シュヴルーズの授業に出るためである。

 

「ほあ~……見たこと無い生き物が多いなぁ……」

 

犬猫蛙に梟と見慣れた動物はともかく、ゲームでしか見たことの無いような動物も多い。

 

バグベアー、スキュラ、バジリスク……

 

(人間は……私だけか)

 

隣でキョロキョロと首を振る紗久弥を特に咎めることもなく、ルイズは耳に届く『昨夜の出来事』に興味を持っていた。


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