二人の『ゼロ』   作:銀剣士

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完全に見切り発車。

原作買わなきゃ(使命感)


春の始まりに

「な……何よ……今の……」

 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは困惑していた、呪文を詠唱し、杖を振る。その後に起こるのは何時もの爆発ではなく、全身を突き抜ける『死』の気配。

 

監督役の教師が咄嗟に庇ってくれたものの、その教師さえ、恐怖に震える程の『死』の気配。

 

「ミ、ミス・ヴァリエール御無事ですね、良かった……」

 

「あ、ありがとうございます、ミスタ・コルベール」

 

差し出された手を掴みながら周囲を見渡すと、先程まで煩いほどに野次を飛ばしていた者達の大半は気を失い、倒れているるようだ。

 

「ミス?どうしました?」

 

「そ、それが……その……」

 

手を掴みはしたものの、俯き恥ずかしそうに口ごもり、立とうとしないルイズに何かを察したのか。

 

「意識を手放さなかっただけでも上出来ですよ、ミス・ヴァリエール。今のは気絶してもおかしくない程のモノでしたから」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

そう口にしながら優しく引き起こすコルベールに、ルイズは顔を赤くしながら礼を口にし、先程の現象の中心へと顔を向ける。

 

「……ん?ミスタ・コルベール!あそこ誰か居ます!」

 

声につられ見た先には、確かに誰かが倒れていた。

 

(ミス・ヴァリエールが呼び出した……と、考えて間違いは無いでしょう)

 

覚束ない足取りのルイズを支えながら『そこ』に向かうーー

 

 

 

ーー一方、辛うじて気絶を免れた生徒達は側に倒れる者を起こしていきながらも、この惨状を起こした原因たるルイズに目を向ける。その中の一人、赤い髪を長く伸ばした女性と言うに相応しい少女、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーもまた、隣に立つ青い髪を短く整えた少女タバサと共にそちらを見る。

 

「今の、あのヴァリエールが起こした……のよね?」

 

「……解らない」

 

そりゃそうだ、髪を簡単に整えながらキュルケは呟く。

 

「あんな事、幾らあの娘が爆発しか起こせないと言っても出来る筈ないものね」

 

でも……そうなると……

 

「呼び出した何かが、あれを起こした……?」

 

キュルケの呟きに反応したかどうかは表情からは見えないが、タバサは『その』元に何かを見つけ、キュルケに伝える。何かが居る……とーー

 

 

 

ーー次第に後ろから聞こえるざわめきが増えて行く中、ルイズは漸く其処に着いた。

 

「女の子……?」

 

倒れたままの少女が確かに其処に居るその姿は、先程の現象の中心とは思えない。

 

コルベールに大丈夫ですと伝え、少女の側に立つルイズ。

 

横たわる少女からは、あの『死の気配』は感じる事は無かったーー

 

 

 

 

 

ーー青い部屋、幾度も訪れ、見慣れた扉の多い『エレベーター』を模した其処で紗久弥は目を醒ます。

 

「ベルベットルーム?どうして……」

 

時の止まったベルベットルーム。辺りを見渡し、鼻の長い老人の姿を、群青の制服を纏う女性の姿を求めるも誰も居ない。

 

「やあ、紗久弥」

 

聞きなれた、もう二度と会える筈の無かった『彼』がいつの間にかソファーに腰掛けていた。

 

「綾時……」

 

「久し振り、で良いのかな?今の僕は望月綾時ではなく君の半身、ファルロスだよ」

 

確かに、あのマフラー姿ではなく、いつかのストライプの服を着た少年の姿がある。

 

「不思議そうな顔だね、大丈夫、一つだけはっきりと解ることがある」

 

いつか見た覚えのある人懐っこいあの笑顔を浮かべ、ファルロスは続ける。

 

「君は一度肉体が与えられ『契約』を交わすだろうと言うことさ」

 

ただし、と置いて。

 

「その肉体は生来のモノではなく、かつて君が撃ち破った僕のモノと同じモノ……『ニュクス・アバター』」

 

「な……なん……!?」

 

驚くことしか出来ない紗久弥に、ファルロスは笑顔を濃くする。

 

「ちょっと、笑ってないで……」

 

「ああ、ごめんごめん、アバターが肉体だとはいえ君は『案内人』になる訳じゃない。君がその体ですべきは一つ、生きることさ、僕と共に」

 

これ迄、君が生きてきたままにと呟いたファルロスは紗久弥に重なり姿を消した。

 

(そうそう、然るべき『契約』の後、この部屋の住人は君の前に現れるよーー)

 

 

 

ーーん……

 

僅かに感じた揺れに意識が向く。

 

更に揺れが強くなる。

 

……もうちょっと……

 

ぺちぺちと頬に軽い叩かれる音。

 

同時に耳には女の子の声が届き、意識がはっきりとして、目を開けると飛び込んできたのは人形のように可愛らしい少女の顔。

 

「気が付きました、ミスタ・コルベール」

 

つられるように視線を送ると、其処には残念な頭髪の男の人が居る。あの人がコルベールと言う人なのだろう。

 

じゃあ、この女の子は誰なんだろう?

 

声を出す前に、女の子の顔が迫るのが解る、やっぱり可愛いな……と思った瞬間何事か呟いた少女に唇が塞がれた。

 

不意に芽生えるいたずら心に従うままに、紗久弥は少女の頭を掴んでキスを続けてみる。

 

「おおっ!」

 

「あら、随分情熱的な契約するじゃないルイズったら」

 

っとどこかで興奮気味の声が上がるのを耳に残し続行……

 

「っ!?」

 

突如左手に迸る痛みに、少女……ルイズと呼ばれた彼女を解放して身悶える紗久弥。

 

「うっぐ……うう……!」

 

痛みを堪えていると、コルベールと呼ばれた男の人から契約のルーンが刻まれているせいですなと説明があった。すぐ終わるとか言われてもすんごい痛いんですけど……

 

やがて堪えかねた紗久弥の意識は、再びあの場所へと飛んでいったーー

 

 

 

 

 

「ーーようこそベルベットルームへ」

 

「久し振り、イゴールにエリザベス」

 

長い鼻と、ギラついた目が特徴の老人、イゴールがソファーに深く腰掛ける側に立つ、群青色の服を着た女性、重厚な装丁の本を持つエリザベス。

 

「さてお客人、貴女が今一度この部屋に訪れる事になるとは、私も想像だにしておりませんでした」

 

「ですが、貴女様は目覚め、ここに居る」

 

「これから、貴女は某かの運命に向かわれるのでしょう。これを再びお持ちなさい、そしていつぞやと同じく絆を深めるのです」

 

群青色の鍵が目の前に浮かび、手に落ち消える。

 

「全書のご用意も出来ております、何時でもご利用くださいませ」

 

「うん、よろしく」

 

そう挨拶えおしたところで、突然遠退いていく景色と声。

 

『貴女の旅路にーー』

 

 

 

「ーーう……う?」

 

気だるさの残る頭を少し振り、上半身を起こして広い部屋を見渡し、意識をはっきりさせていく。

 

ふとお腹の辺りに重みを感じてそこを見ると、桃色がかったブロンドの髪の毛が映る。

 

(……やっぱり可愛いな……)

 

思う事は其処なのかと、自分に突っ込みを入れたところで件の少女、ルイズが目を醒ますも、紗久弥と目が合ったと思ったらすぐに俯いてしまう。

 

「どうしたの?」

 

そう声を掛けた時、ルイズの肩が僅かに震えているのが解る。

 

「ど……」

 

「ど?」

 

ぽつりと漏らした声に反応すると、ピクンと一際大きく震え。

 

「どうしたの?じゃ無いわよこんのバカァァァァァァァァァ!!!」

 

大爆発。

 

「み、耳が……」

 

キーンとなる耳を気にしながらルイズを見ると顔を真っ赤に染めている。

 

何かあったのだろうかと思い返していると。

 

「あ、ああああんなキ、キキキキスをしてくるなんて!それも!女同士でなんて!」

 

……あーあれか……

 

「でも先にしてきたのは貴方だし……」

 

そう、何かを呟いたと思ったらいきなりのキスだ、仕返しついでのイタズラ位いいと思うんだけど……どうもただのキスでは無いようで。

 

「『コントラクト・サーヴァント』?」

 

夜も更けてきた事もあって並んでベッドに横たわり、キスの事を話す。

 

「そう、主たるメイジが使い魔たる動物に『刻印』を入れる儀式の事よ」

 

そして、儀式によって『刻印』の入った使い魔には幾つか能力が付与されると、ルイズは語る。

 

その付与される能力の中で代表的なものが『人語の理解』と『感覚の共有』だと言う。

 

「で、感覚の共有についてなんだけど、これは使い魔の役割にも関わってくるの」

 

「役割?」

 

聞き返すと、こちらを向いて顔を真っ赤に染めてそっぽを向いてしまう。

 

「そ、そうよ、で、でもき、今日はもう遅いから、寝ましょうか……あ、今更なんだけど、あんた名前は?」

 

「越端紗久弥、こっち風に言えばサクヤ・コシハタだね」

 

「そ、私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ、ルイズでいいわ」




ハム子の名前は主公子。

あるじきみこ。

ではなく、自分のプレイ時の名前『越端紗久弥(こしはたさくや)』でいきますよー

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