男主とエリナをイチャイチャさせる小説   作:リルシュ

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※合作集出場作品です

クリスマスネタだよ!
GEらしさとクリスマスらしさを両方うまく混ぜ合わせることを目指し、恋愛要素全開な話にしました!



プレゼント

「雪だ……」

 

12/24

今日はクリスマスイブと言われてる日だ

自室の窓のスクリーンを切り替え外の景色を表示させると、静かに舞う白き結晶が朝日を反射しキラキラと光っていた

眼下に広がる外部居住区の家々も、その影響で屋根が真っ白にコーティングされている

 

…ここに降ってくるのは珍しいな

任務でよく行く廃寺で雪自体は見慣れているものの、それを支部周辺で見るということは滅多にない

 

「けど、別に雪かきしないといけないような豪雪でもないしな」

 

ふと、雪遊びに無邪気に励む恋人の姿が脳裏をよぎり俺は無意識に笑みを浮かべていた

 

 

 

寝起きで若干冷える体をさすりながらエントランスまで来てみれば、クリスマスのデコレーションが施されておりイルミネーションでピカピカと輝いていた

チカチカキラキラとても命懸けの職場の風景とは思えないぜ

まぁ、こういう気遣いで心が楽になってるのも確かなんだが

 

「あっ!せんぱーい!こっちこっちー」

 

エントランスでこれなんだからラウンジはどうなっているのだろうかとチラッと覗いてみれば、靴を脱ぎ机に乗って懸命につま先立ちしているエリナが窓に飾り付けするのを手伝っていた

俺が入ってきたことに気づいた彼女が笑顔で振り返りながら手を振ってくれたが、転げ落ちないか心配でヒヤヒヤする

 

「おうエリナ。その笑顔は可愛いけど、そんな高いところは無理せず他の人に変わってもらえ」

 

「はーい!じゃーせんぱいにお願いするね♪」

 

ぴょいーんと飛び降りて、俺の胸に持っていた飾りごとダイブしてきたエリナを傷つけないようそっと抱きとめた

やれやれ

任務行く前からご苦労なこったな

 

よく見れば、彼女以外にも見知った顔がちらほらと…

 

「みんなそんなに楽しみにしてたのか。クリスマス」

 

「ふふ♪すくなくとも、私は楽しみだったよ」

 

はいこれと持っていたものを押し付けると、彼女はさっさと次の飾りを受け取りに部屋の隅に置いてあった箱へと近づいていくのだった

…そんなあっけなく去っていくと俺はちょっと悲しいぞエリナ

人ごみに紛れて彼女が見えなくなってしまうまで視線で追っていた俺は、仕方なく飾り付けに取り掛かるのだった

そういえばどうして星の飾りは【✩】こういう形なんだろうな…

なんてくだらない疑問を抱きながら

 

 

 

任務場所の旧市街地

ここでもうっすらと雪が降っていたが、俺はそんな些細なことなど疑問に思ってなかった

それよりも…

 

「こんな簡単な任務…俺たちが請け負っていいのかよ?」

 

「だって今日発注されてるので一番難しいのがこれだったんだもん」

 

仕事の時間になり、とりあえず飾り付けを違うメンバーに任せてきたのだが…

 

「小型アラガミの一掃…受注できる最高難度の任務がこれとはな」

 

数が多いとは言え、俺とエリナの二人がかりでは相手の力量不足にも程があるぜ

目の前に横たわるコアを取り出されたアラガミ達の残骸を見渡して、神機を肩に担ぎなおす

アラガミもクリスマスだからって空気読んでるのか?…なんてな

 

「いいじゃんー。強いアラガミが全然いないっていうのはいいことでしょ?それに、早く終わったおかげで先輩とたくさんお話できるし!」

 

神機を持ったままだから流石に抱きついてくるようなことはしなかったが、ぴょこぴょこと近くに歩み寄りキラキラと輝く瞳で嬉しそうに俺を見上げるエリナはもう半端なく可愛かった

 

「そうだな。お前とふたりっきりになれるならなんでもいいや」

 

「えへへ…」

 

わしゃわしゃと空いた手を使って頭を撫で回してやれば、スリスリと自らそこを押し付けるように動かす彼女の甘えた様子に満たされるものを感じる

コイツの笑顔がこの先もずっと隣に見えますように…

 

「しあわせ」

 

「俺も」

 

なんの前触れもなく唐突にそう呟いたエリナの言葉に、俺は手の動きを止めず視線も逸らさないまま無意識で相槌をうつのだった

 

 

 

そういうわけで、今日の任務はなんの問題もなく達成して帰ってきたわけだが、あまりにも早い帰還だったうえに任務場所もそう遠くなかったため出かける前にやっていた窓周辺の装飾すらまだ終わっておらず、先ほどと寸分変わらずクリスマスの準備に張り切るエリナに引っ張られ俺は結局日が暮れてクタクタになるまで働かされた

…ま、エリナが年相応にあんな可愛らしくはしゃいでる姿なんて滅多に見れないしな

それがたっぷり拝めただけでも頑張ったかいがあるってもんさ

 

「せーんぱいっ!お疲れさま!はいこれ」

 

「おぅ、サンキュー」

 

キラキラとイルミネーションがそこかしこで点灯し、すっかりクリスマス風に飾り付けられたラウンジ

陽の光が入らぬ時間帯になったおかげでチカチカ目立つその風貌を椅子に座りながらぐるりと見渡していると、エリナが缶ジュースを持ってきてくれた

礼を述べてそれを受け取ると、彼女は俺のとなりに座って自分のジュースに口をつける

その横顔が心底嬉しそうに笑って見えて、釣られてにやけてしまいそうだ

 

「ふふ…クリスマスは先輩とふたりっきりで過ごすって決めてるんだ」

 

バタバタと落ち着き無く足を動かして、エリナは笑顔を崩さぬままコツンと肩に頭をあずけてきた

 

「別にクリスマスじゃなくても、ヒマな時は大体俺らふたりっきりでいるだろ?」

 

チビチビとジュースを飲みながらあんまり興味なさそうに言うと、彼女はむっと頬を膨らませる

 

「まさかみょーにやる気ないのって、そういう理由?」

 

「まぁ…うん。正直いつもと大差ない過ごし方かなって」

 

エリナと付き合い始めてから今まで、イベントや行事の時は必ず隣にいたしな

…ふたりっきりという状況に限定するならば、それも少しはしぼられるが

 

「ふーん…せっかく先輩のためにクリスマスプレゼント用意したのになぁ~」

 

俺の返答に拗ねてしまったのか、彼女はむすっとしたまま唇を尖らせる

 

「誤解を招いてるようだから言っておくが、別に楽しみじゃないわけじゃないぞ?お前とふたりっきりで過ごせるのにつまらねぇーわけないからな」

 

「へ?」

 

あっ、やっぱりそう思われてたか

キョトンとしながら目をパチクリとさせる彼女の肩にポンッと手を置きながら、安心させるように微笑んでみせる

 

「俺はエリナが隣にいる時はいつも幸せってことさ」

 

「っ///…すぐそういうこと言うんだから…もう」

 

キュッと俺の袖を握りながら赤面するエリナがニコリと表情を崩してくれた

うん。やっぱりお前には笑顔が似合うぜ

 

「で…プレゼントってなに?」

 

「…先輩?まさかそのワードに反応して適当言ったわけじゃないよね?」

 

一瞬でジト目に変貌する彼女に慌てて首を横に振る

 

「ちがうちがう!あれは本心さ。でも、用意されてるプレゼントって聞いたらそら興味沸くからな」

 

なんだろうな?

よくある

『プレゼントは私だよ♥』

的な…?

まさかな

ぶんぶんと頭に出てきた妄想を振り払う

 

「それは後でのお楽しみっ♪」

 

ツンと俺の頬を指先でつつくと、彼女は立ち上がって背を向けた

 

「さーて。ちょっと休憩したら今度はムツミちゃんのお手伝い!料理つくらなきゃ」

 

「やる気に満ち溢れてるなエリナ…あんまり働きすぎて倒れるなよ?」

 

ぐっとガッツポーズを決めながら振り返る彼女に再度心配の声をかけるも、だいじょーぶと笑い返される

 

「それよりせんぱい!せっかくだしこの機会に料理教えてあげよっか?だいぶ前から私に教わりたいって言ってたし!」

 

「あー…いや、今日はちょっと…」

 

はははとごまかしながらソロソロと後ずさると、案の定エリナは頬を膨らませた

 

「…ホントにいつか手料理ご馳走してくれるの?」

 

「も、もちろん!今日は俺も疲れたし、お前にするプレゼントでいろいろと…」

 

「え!?先輩もプレゼント用意してくれてたんだ!やった!」

 

クリスマスのプレゼントの話を持ち出せば、途端に笑顔に変わる

俺のこと言えないぐらい単純じゃねーか可愛いなコイツめ

なんてのんきなことを考えてる場合じゃない

…あー…やべ…まだプレゼント用意できてない…っていうか目処もたってないというか…

なんでその癖にエリナのプレゼントって言葉に平気で反応したんだ俺は

 

「クリスマスを特別視してないなら、プレゼントももしかしたら用意してないんじゃないかって心配だったんだよ~…よかった」

 

うんうんと一人頷きながら喜んでるエリナの様子を見ながら、内心ヒヤヒヤが止まらなかった

 

「私、とっても楽しみにしてるから!じゃーまた後でね!」

 

「あ、あぁ…また…」

 

軽いスキップまでしてご機嫌そうなエリナがムツミちゃんの隣に立ってニコニコ会話してる様子を見ながら、俺は窓際の席に座り固まっていた

 

どうするどうする!?

てゆうか、ぶっちゃけ思いつかない!

 

目を閉じて思考を集中させることで頭の中に浮かんでくるプレゼント候補達は…まぁ、あるっちゃある

だが、いずれも既に渡したことがあるものばかりだ

服…ぬいぐるみ…ゲーム…アクセサリ…指輪…景色

下着なんかもプレゼントしちゃったことあるし…

これってやっぱ手料理が最高の案だったのでは…

と、今更思ってももう遅いわけで…って、この後悔何回してんだ俺

はぁっとため息をつきながら目の前にあった窓から外の様子を見ると、朝方と変わらぬゆったりとしたペースで雪が降り続けていた

 

…ん?あ、そうだ

そういえばちょっと前にサカキさんが、中のものを凍ったまま持ち運びできる携帯保冷管なるものを発明したと嬉しそうに報告してたような…

それを使えば、雪とか氷とかなんか冬限定っぽいものでプレゼントを作ったりできないだろうか

おぉ…!

ちょっとだけアイディアが出てきたぞ!

 

「せんぱーい!そんなとこで座ってボーッとしてるなら手伝ってくれても良かったのにー…」

 

「ハッ!あ、あぁ…すまん…」

 

エリナに送るクリスマスプレゼントをひたすら考えていたら、けっこうな時間が過ぎてしまっていたようだ

いつの間にかラウンジはワイワイと賑やかな喧騒に包まれてるし、料理のいい匂いが嗅覚を刺激していることにも気がついた

 

「ほらっ!せっかくのクリスマスのご馳走だよ?私も作ったんだから、いっぱい食べてよね!」

 

肩をポンと叩かれ、目の前にド定番の七面鳥の丸焼きがドンっ!と置かれた

どうやら前にもやった自分の食べたいものを自由に取ってきて食事するバイキング形式のようだ

彼女が持ってきた七面鳥は、表面だけ見てもこんがり狐色に焼きあがっており光る肉汁が光沢を増していていかにも美味しそうだが…

 

「流石に俺一人じゃ食いきれないぞ」

 

「だいじょーぶ!一緒に食べるんだから!それにねー!これ、中にもいろいろ仕込んであって…」

 

そう言ってぴょこんと隣の席を陣取ると、エリナは持っていたナイフを使って丁寧に肉を切っていきながら嬉しそうに料理の解説を始めるのだった

 

クリスマスだからと、アナグラにいる俺達でさえ滅多にお目にかかれないような高級食材をふんだんに使った豪勢なディナーは最高に美味しかった

しかもエリナ製ときては俺が喜んでがっつかないわけがない

あまりの勢いにエリナ本人から落ち着いて食べてと注意されたぐらいだからな

そしてその彼女といえば、終始嬉しそうな顔で俺の隣を陣取りニコニコと笑みを絶やさずにいた

あの姿はそりゃー眼福ものだったね

更にそんなエリナを見ていたらひとつ、最っ高のプレゼントアイディアが浮かんできたのである

 

(よし…!これを実現させることができればぜったい喜んでくれるはずだ…!!)

 

「えへへ…先輩が楽しそうにしてくれてよかった」

 

俺がグッと握りこぶしを作ってニヤリと笑みを浮かべていると、その様子を脇から覗いていたエリナもニコりと微笑みを返してくれた

 

「あぁ!さっきは今日もいつもどおりなんてこと言って、クリスマス楽しみにしてたお前を不安がらせて悪かったな」

 

ポンポンと頭を撫でてやりながら先ほどの発言を詫びると、彼女はフルフルと小さく頭を横に振る

 

「そんなこと気にしないでよ!その後先輩、そのいつもがしあわせなんだ!って言ってくれたじゃない。私それ…す、すごく嬉しかったんだから…///」

 

「お、おぅ…」

 

どんどん小さくなっていく言葉を最後まで言い切って頬を染めながら腕にピタッと抱きついてくるエリナに、俺の胸も高鳴りを隠せなかった

しばらくそのまま密着状態が続いていたのだが、次第に周りから感じる視線が多くなるのを感じて小さな咳払いをしそれとなくエリナを諭す

 

「あっ…じゃ、じゃーあの…私食器の後片付けとか手伝ってプレゼントの最終準備をしなくちゃいけないから…またあとで…先輩の部屋に行くね!」

 

「あぁ。また後でな」

 

そう言って名残惜しそうに立ち上がるも、キュっと手だけは握ったままこちらを見上げる彼女を見て俺は思わず笑い声をもらしてしまった

 

「ははっ…今ここでか?」

 

この仕草がキスして欲しい時とか思いっきり甘えたい時のエリナ流サインだということを知ってるうえで、俺は尋ねる

 

「…ダメ?」

 

「ダメなもんか」

 

チュッ!

 

とはいえ流石に周囲の視線もあるので頬に軽く唇を落とす程度にしておくが

 

「っ!あ、ありがと…じゃー…後でね」

 

「おう。続きもな♪」

 

「う、うんっ…///」

 

 意味深な発言に頬を真っ赤にして、彼女は食事の後片付けに向かっていった

…俺も少しぐらいは片付け手伝ってからプレゼントの準備をしに行きますか

 

 

 

「よし…作るぞ…」

 

サカキさんの研究室を訪れると既に彼はここに帰ってきていたので、例の携帯保冷管をひとつ譲り受けたいとの旨を話すと快く承諾してくれた

どうやら3年ほど前に開発した初恋ジュースという地獄のドリンク(俺はコウタにそう聞いただけで実際に口にしたことはない)の時ほどではないにしろ、みんなからの評判は良くなかったらしいので興味を持ってくれたこと自体が嬉しかったようだ

 

まぁ…普通に生活してたら凍ったものを持ち運ぶなんて機会はあまりないかも知れないからな…俺たちは

 

実際に見せてもらったその保冷管は、サイズは…1ℓのペットボトルってあるだろ?あの太いやつ

あんな感じで、中身も透明な外観を通して確認できるようになってる

わかりやすく言えばまさに太くした試験管ってところだ

 

「流石にさっむいけど…我慢だ我慢…!」

 

そしてその中に入れようと思ってるプレゼントを『作る』ためには、入れる前も氷が溶けずにいる環境でなければならない

だから、サカキさんが使っているという特別性の冷凍室で作業をすることにした

 

「こういう時はゴッドイーターでよかったと思うぜ」

 

常人ならば長時間滞在したままだと命の危険があるぐらいの気温だが、俺達ゴッドイーターはある程度の異常気温ならば耐えられる体になっている

 

「ま、だからってあんまり長居したいとは思えないけどな」

 

寒いもんは寒いし

と、いうことで、俺はサカキさんがこんなこともあろうかと(どんなことだよというツッコミは返事が長くなりそうなので言わないでおいた)特別用意していた両手でやっと持てるぐらいの巨大な氷のかたまりを前に、それを削るために用意したアイスピックやらナイフやらを持って作業にとりかかるのだった

 

 

 

………………

………

 

「できたっ!」

 

手先の器用さには少し自信があったが、ぶっちゃけここまでキレイに形になるとは思ってなかったぜ…

 

「で…今何時だ?」

 

携帯保冷管にプレゼントをいれ、蓋をしっかり閉めて持ち出す

詳しいことはよくわからんが、この蓋に保冷効果が詰まってるらしいのできっちり閉めておかないとな

 

極寒の部屋から出て時刻を確認すると…

 

「やば…日付超えてる…!!!」

 

もうエリナは部屋にきてるかもしれない…

 

俺は外で待っていてくれたサカキさんに礼を言ってから、急いで自室へと向かった

 

 

 

「はぁはぁ…ついた…」

 

全速力で来たが果たして…

 

ガチャッ…

 

部屋は暗かった

…エリナはまだ来てないのか…?

 

一応合鍵は渡してあるからいつでも入れるはずだが…

 

とりあえず部屋の明かりをつけたその瞬間

 

「えいっ!」

 

「うわぁ!?」

 

突如ひざ下にかかる重みにバランスを取られ、持っていたプレゼントを落とさないようにしたら尻餅をついてしまった

 

「おかえり先輩!」

 

「エリナ!?びっくりさせ…る…な…っ!?」

 

ギューと足に抱きついてる人物の正体が愛しの彼女だとわかって、ほっと一息つき安心しながらお互い立ち上がりその姿を見て…

俺は絶句した

 

「どう?似合うかな…?」

 

ハロウィンの時といい、コイツはコスプレの趣味にでも目覚めたのだろうか?

 

スーパーキュートなサンタ服を着たエリナが俺の目の前にいた

そのミニスカから覗く白い健康そうな太ももが眩しいですっ…!

 

「ベリーグッド…最高に可愛いぞ!ニーソを変えてないあたり分かってるなエリナ」

 

ノースリーブは見ていて寒そうではあるが、華奢な二の腕が抱きしめたくなるほど魅力的なので問題ない

 

「あ、ありがと…よかった…今日のために作っておいたんだ!」

 

まさかの自作!?

赤いサンタ帽を深々と被って照れをごまかすエリナの健気さがとても可愛かった

 

「あ、それより先輩!さっきなんか持ってたよね?それなーに?」

 

はっとして帽子をくいっと上げると、目ざとく例の保冷管を発見していたらしいエリナがぐいぐいっと詰め寄ってきた

キラキラとした瞳で上目使いを繰り出す彼女の頭を撫でながら、ここにきて隠す必要もないので素直に告げる

 

「あぁ、これな…お前へのプレゼントだよ」

 

「っ!」

 

それを聞いた途端ピンと背筋を伸ばし姿勢を正すエリナ

そ、そんなに畏まられるとこっちまで緊張しちゃうんだが…

 

「楽にしててくれって…そんなたいそうなもんじゃねーし」

 

「先輩がくれるならなんでも宝物だもん…前も言ったでしょ?」

 

唇をキュッと結んで俺を見上げる彼女の態度は軟化しそうになかった

やれやれ

この空気は俺から渡す感じだし、さっそく受け取ってもらおうか

…あ、でもその前に

 

「こっちの方が雰囲気でるだろ」

 

「あっ…」

 

自室の窓を今朝と同じく外の景色を映し出すよう設定すると、この時間になっても降り止んでない雪がヒラヒラと舞っていた

 

「部屋の明かりも弱くして…ほらっ。どうだ?」

 

薄暗くなった室内を、雪が作る幻想的な影が動く

 

「うわぁ…綺麗…」

 

おまえの魅力には及ばないよ

なんてクサイセリフは心の中にしまい込み、俺はエリナの肩を優しく掴んで降り向かせるとプレゼントを差し出した

 

「っ!?オスカー…?」

 

そう

俺が作った氷細工…それは、彼女の神機であるオスカーを模したものだ

 

「え…すごいっ!?どうなってんのこれ!?」

 

マジマジと保冷管を見ながら、驚きで口をポカンと開けるエリナに俺は少し解説をする

 

「流石にこの形をひらべったいところに立たせるのは無理だからな。底一面にはうっすい氷を張って、そこに直結させる形でグリップ部分をつなげてんだ

あとはまぁ…見たとおりだな。流石にチャージ状態のやつ再現すんのは難しかったから、通常近接形態の形にしたんだけど」

 

「す、すごすぎ先輩…今帰ってきたってことは、これ今作ってきたってことでしょ?どんだけ手先器用なのよ!?」

 

「ははっ…まぁ、頑張ったよ。あ、この入れ物に入れてる間は絶対溶けないから安心していいぜ…あと、これをプレゼントにした理由なんだが…」

 

「う、うん…」

 

ゴクリと喉を鳴らす彼女の姿を見て、ちょっとばかし口にするには恥ずかしいそれを述べていく

 

「エリナにその神機を持ってこれから先も俺の隣に並んでずっと戦って欲しい…って意味を込めてだな…それでおまえがいつも使ってる神機をモチーフにしたんだが…」

 

あー…やっぱり、これすっげぇ恥ずかしいこと言ってんな俺

 

「…ありがとう先輩…私、頑張るから!先輩と距離を離されないよう追いつけるようにいっぱい頑張って、絶対絶対いつまでも隣に立って戦えるようにするから…!」

 

ギュッと保冷管ごとプレゼントを抱きしめると、彼女は嬉しそうにえへへと笑ってくれた

 

「あぁ…俺も、お前に追い抜かれないよう頑張らないとな」

 

「そうだよー?油断してたらあっという間においてっちゃうからね!」

 

「あ、言ったなこんにゃろー」

 

いたずらっぽく舌を出すエリナとしばらく小突きあったあと、彼女は保冷管を机の上に置いてポツリと呟く

 

「先輩がこんな素敵なもの用意してくれたのに、私…全然考えなしでこの日を迎えちゃったなー」

 

俺もこのアイディア浮かんだのは今日なんだけどな

ってことは言わないでおく

 

「なんだよー?エリナのプレゼントももったいぶらずに教えてくれよー」

 

「…うん…じゃー…あの、がっかりしないでね?」

 

パッと見た感じ見当たらないし、何か小さなものなのだろうか?

ま、大きさなんて関係ないけどな

 

「俺だってお前からもらえるものはなんだって嬉しいんだ。自信持ってくれ」

 

「…ありがと先輩。じゃー…プレゼントの内容…言うね」

 

サンタコスに負けないぐらい頬を真っ赤に染めたエリナが、胸の前で両手を組み小さな震え声で確かにこう言った

 

「…私です…っ///」

 

「………え?」

 

これは…まさかあれか?

俺がさっき冗談で予想した…

 

「わ、私が…プレゼント…」

 

やっぱりだぁ!!!

足をモジモジとこすり合わせて視線を合わせようとしないエリナの二度目の発言を聞き、さきほどのが空耳でないことを確信した

小さなものだなんてとんでもない誤解だった

これはとてつもなくビッグなプレゼントだぜ…いろんな意味で

 

「あ…あー…えっと…じゃー…ありがたく…もらいます」

 

まさか本当にこんな展開になるとは思っていなかったが、嬉しくないわけがないのでありがたく受け取ることにする

 

「…うん」

 

俺の返事に安心したのか、タタタッと素早く駆け寄ると、エリナはポフンッと胸板に顔をうずめてきた

背中に腕を回されるのを感じながら、その小さな頭を優しく撫でてやりつつちょっとだけ意地悪な問いかけをしてみる

 

「で、どのくらいエリナをプレゼントしてくれるんだ?」

 

ピクリっと肩を震わせながらも、回した手からは力を抜かず彼女ははっきりこう言った

 

「全部」

 

 

 

 

 

雪の影がチラチラ舞う薄暗い室内

俺がエリナと口付けを交わす様子を、氷の神機だけがしっかりと映し出していた

 

END




いやー…
便利な設定の道具作るときは、サカキさんの存在が非常にありがたいっすね!←

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