男主とエリナをイチャイチャさせる小説   作:リルシュ

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二人でお出かけしてたら雨降ってきちゃった…
っていうお決まりのパターン
短めですが終始イチャイチャしております


相合傘

「!…あっちゃ~…降ってきちゃったか」

 

灰色の雲が一面に浮かぶ空からポツポツと降り始めた数多の水滴

それに気づいた先輩が慌ててお店の外へ飛び出し、軒先に隠れながら天を見上げる

 

「だから早く帰ろうって言ったのに…」

 

その彼の隣に並んで私は唇を尖らせた

雲行きが怪しくなってたのは分かってたんだから

任務中だったら仕方なく雨に打たれながら仕事を続けるしかないが、今は休暇中でしかもデートの最中なのだ

濡れ鼠になりながらの帰還なんてやだもんね

 

「いやぁ…だってお前と一緒だと楽しくてさぁ。あっという間に時間が…」

 

「はいはい。嬉しいけど、言い訳はいいから」

 

「ちぇ~」

 

とりあえずここでぼーっと空を見ていても仕方ないので、店内に戻る

申し訳ないけど、しばらく時間を潰させてもらおう

 

「あの~…傘でしたら、ありますよ。ビニールのですが…」

 

雨を見てすごすごと退却してきた私たちの様子を見ていたのか、店員さんがわざわざ声をかけてきてくれた

 

「あ!マジっすか!じゃーそれください!」

 

その言葉に食いついた先輩がぐいっと詰め寄る

 

「え、あ、はい。でも、1本だけですしけっこう小さいやつなんですけど…大丈夫ですか?」

 

「何も問題ないですノープロブレム!な!エリナ!」

 

私が連れだということを考慮したうえで聞いてくれたのだろう

だが先輩の言うとおり、ちょっとせまいけど一本あるのとないのとじゃ段違い!雨の勢いもそこまで強くないし

ってことでコクリと頷きを返すと、

 

「そうですか…では、どうぞこちらを」

 

「おしっ!ありがとーございまーす!」

 

傘とお金を交換し、手早く外に出て雨を凌ぐ準備を済ませた先輩がくいくいっと手招きをする

走り寄って彼の左腕に抱きつくと、傘をこちらに傾けてくれるのがわかった

 

「そういやこういう…相合傘ってのはしたことなかったな」

 

「そうだね~」

 

雨粒が傘を叩く音に包まれながら、悪天候のせいで昼間なのに薄暗い外の景色を眺める

歩幅と歩くペースを合わせてくれているおかげで、きょろきょろとあちこち見ながら進んでも私が直接雨に晒されることはなかった

 

「…てゆうか、ちょっとこっち傾けすぎじゃない?傘」

 

気を使ってくれるのはすごく嬉しいけど、先輩が濡れちゃ意味ないからね!

 

「んー?そんなことねぇって…エリナ濡れてないか?」

 

「それはこっちのセリフだよ」

 

ひょいっと彼の背後から視線を覗かせてみれば、予想通り右半身が雨に打たれていた

 

「あー!だから言ったじゃない!先輩のバカ!思いっきり雨浴びてるじゃん!」

 

「いや…でもこうでもしないとお前が…」

 

意思を曲げるつもりはないのか、傘を持つ彼の手を引っ張ってみても全く傾きを直してくれる気配はなくびくともしない

 

「もう!貴方だけ濡れるなんて私が許さないんだから!」

 

こうなったら最後の手段だ

絡めていた腕をぐいっと引き寄せて更に体を密着させる

 

「…ほ、ほら…これなら傘まっすぐさしても二人共濡れないでしょ…///」

 

あたたかい

何度も何度も私を助けてくれた先輩のぬくもりは、周囲の雨に影響されることなどなくいつもどおりの安心感を与えてくれる

ただ…

 

「あの~エリナさん…流石にこれじゃちょっとばかし歩きにくくないですかね?」

 

そうなんだよね

提案者の私が言うのも難だけど、お互いの足や胴が擦れて思った通りに歩けない

 

あったかくて心地良いことには変わらないんだけどね

 

「だって先輩こうでもしないと自分だけ被害を被るつもりなんだもん」

 

だから私は現状でも十分満足している

ずぶ濡れになることさえ避けることが出来るのならば、こうやって彼とゆっくり雨の街を歩くというのも悪くない

 

「わかったわかった…普通にするよ」

 

降参した先輩は傘の傾き加減を戻してくれたけど、私は密着した体を離さなかった

そのまましばらく歩きにくい状態のまま進んでいたが、とうとう彼の方からお声がかかる

 

「…エリナ?」

 

その表情を見れば何を言いたいのかはすぐわかった

どうして離れないのか?

その理由を聞きたいに違いない

けれど、私は少しだけ意地悪してみた

 

「ん?なーに?せんぱい!」

 

「いや…あの体を…」

 

「えー?いいじゃーん!それに私は離れるなんて一言も言ってないもーん♪」

 

そう言って益々体を押し付ける私に先輩は戸惑うだろうと思って内心クスクスと笑いをこらえていたのだが…

甘かった

甘々だった

 

「そういえばそうだよな~。じゃーせっかくだしこのまま帰るか」

 

「へ?」

 

動揺どころか、彼はニヤリといつもの笑いを浮かべると傘を右手に持ち替えてなんと肩に腕を回しギュッと私を抱き寄せる

 

「!!!」

 

「いやいやー。エリナがそれでもいいなら、俺も遠慮なく密着できるってね!」

 

やられた!

いつも裏をかかれてるっていうのに、完全に油断していた!不覚…!

この人は最初から私がこういう行動にでることなんてお見通しだったんだ

 

「ほーら。転ばねーよーにゆっくり歩けよ~」

 

「っ…!」

 

まるで慣れない二人三脚をしてるかのように、私が一歩踏み出すと先輩も一歩踏み出す

さっきまでの歩きにくさとは違い、明らかに意図的に進むのを邪魔されている…!

 

「…ばかっ///」

 

だが、最初にこうして接近したのが私なので今更恥ずかしいだの歩きにくいだのと文句を言うのも悔しい

大した距離を進んでないのに歩き疲れてしまい、仕方なく彼の体に寄りかかるようにして立ち止まる

 

「ちょっと休憩!」

 

「ははっ、りょーかい」

 

「むぅ~!」

 

静かに降る雨の中、じっとその場に佇む私達

ぷくっと頬を膨らませて先輩の方を見上げれば、笑みを崩さず回したままの手で器用に頭を撫でてくれた

 

「ごめんごめん。からかいすぎたよ」

 

そして文句を言おうとした矢先に謝ってくる

 

「…ずるい」

 

そんなこと優しく言われて頭撫でられちゃったら、私が何も言えなくなること分かってるくせに

 

「悪かったって。…あーほら、お詫びにお前の言うこと何か聞いてやるから。な?」

 

「じゃーアナグラに着くまでずっと頭撫でてて」

 

「え?」

 

先輩の案に迷いなく速攻でお願いを述べる私に驚いた顔を見せてくれたのも一瞬だけで、すぐさま笑い声をあげる

 

「オーケーオーケー!それぐらいお安い御用だぜ」

 

ぽふんと一度手を置き直してからゆっくりと帽子越しに訪れるいつもの感触

いくらしてもらっても決して飽きることがないあたたかさ

 

「んじゃー、そろそろ行こうか」

 

「…うん」

 

歩き始めた私たちは結局ピタリと身を寄せ合って、二人っきりの時間を楽しみながらゆっくりと帰還するのだった

 

 

END

 




帰還したあと半身濡れていた先輩の服をエリナちゃんがお洗濯してあげたんだってさ

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