男主とエリナをイチャイチャさせる小説   作:リルシュ

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七夕の日ネタ
と、文字数の関係でプライベッターに投稿することになった『ビキニの日』ネタをオマケとして収録


七夕+

七夕

 

 

7月7日

今日は極東で七夕と呼ばれている日

ラウンジにはどこから調達したのか、笹の葉が窓際にもっさり用意されていた

 

テーブルには短冊が山積みされており、訪れた人達が各々願い事を書いては笹につるしている

心なしか、いつもより人が多い気もした

 

「先輩は見あたらないなぁ…まだ帰ってきてないのかな…」

 

既に窓からは明かりが射し込まない時間になっている

私と彼も例に漏れず、仕事を終えてからラウンジに集合して一緒に短冊を書こうと約束をしていた

 

流石に先輩と毎日同じミッションに行けるわけではない

私と所属部隊も実力も違うから、仕方ないんだけど…

 

「あ、そうだ」

 

それを願い事にすればいいじゃない!

 

『○○先輩といつも同じミッションに行きたいです エリナ』

 

………

書いてみたはいいけど、先輩の名前出しちゃったしこれつるすの恥ずかしいかも…

 

でも極東じゃ私達の関係なんてバレバレだし、別に変には思われないよね

 

「よっ!エーリナ♪」

 

「ひゃあ!?」

 

決心がつかずに笹の葉の前で短冊片手にうろうろしていたら、突然背後からガバッと抱きつかれた

 

「ちょ!せ、せんぱい!」

 

肩に乗る彼の頭の重みと、耳に吹き掛けられる息でカッ!と頬が熱くなる

でも…悪くない

背中から優しい温かみが私の体に染み渡り、とても心地よかった

周りの視線なんて気にならない程に

 

「もう…遅いから心配したよ。短冊も書いちゃったからね!」

 

胴に回されていた彼の腕にそっと手を添えると、少しだけ抱きしめてくれる力が強まった

 

「わりぃわりぃ、外出許可をとってたんだよ」

 

「外出許可?」

 

トクンっ

私の心臓が何かを期待して高鳴る

 

「あぁ、このあとエリナ時間空いてるだろ?」

 

「も、もちろん!」

 

先輩と外出!

どこに連れていってくれるのだろう…?

楽しみ!

 

「よし!じゃー短冊書き終わったら早速…って、エリナもう書いちゃったんだっけ?」

 

「え…あ!う、うん!」

 

書いた内容を思い出し、慌てて抱擁から逃れ握っていた短冊を後ろ手で隠した

 

「おいおい、なーに隠してんだ?ん?」

 

私の意図を察した先輩が、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら両手を広げてジリジリとせまる

 

「ちょ!だ、ダメ!先輩も書いてくれるまで見せてあげないもん!」

 

むすっと頬を膨らませて反抗的に見上げても、彼は笑ったまま頷くだけで

 

「よし分かった!なら、ぱぱっと書いて、一緒にかざろうぜ」

 

先輩に迷いはなかった

どうやら最初から願い事を決めていたみたいだ

宣言通り、パパッと書いて私の目の前に自信満々でつきつける

 

『エリナと結婚できますように』

 

「っ!?」

 

ストレートすぎるっ!

思わず目を疑ってごしごしこすってしまったが、書いてあることは変わらない

 

「先輩直球すぎ…」

 

私は照れ隠しに小さな声でそれだけいうのが精一杯だった

それでも嬉しさで震える体と赤くなる頬は、ごまかせてない自覚がある

 

「ははっ…だってこれが俺の今一番の願いだから」

 

大真面目な顔で私の頭を撫でながら、彼はその短冊をなんとジャンプして器用に笹の葉の上層部に貼り付けた

 

「ちょ!そんな目立つところに!」

 

慌ててその周囲を見渡したが、流石に誰もあんな高さまでは貼り付けていなかった

見てるだけで顔から火が吹き出そうな先輩の筆跡で書かれたあの文字が、ものすごく目立つ位置に…

 

「ばかっ…」

 

「いいだろべつに~、それより約束だ。エリナのも見せてくれよ」

 

…まぁ、先輩のに比べたら私のなんて恥ずかしくもなんともないよね

 

「はい…」

 

「…なるほどな…これは俺の願いでもある!」

 

あれ?

ちょっと嫌な予感が…

 

「ふっ!」

 

「あっ!」

 

やっぱり!

再びジャンプした先輩が私の短冊をつるした場所は…さっきのとなりだった

 

「ふたり揃ってめちゃめちゃ目立っちゃうじゃない!」

 

「目立っていいだろ~。俺達のだけすぐわかる!」

 

「それはすぐわかるけど…うぅ~」

 

流石に周囲の反応が気になって改めて周りを見渡すと、知り合いの人もこちらからは面識のない人もみんなニヤニヤしながら私達を見ていた

あぁ~!もう!恥ずかしいなぁ…

 

「んじゃーエリナ、外行くぞ」

 

「あっ…どこ行くの?」

 

「聖域だよ」

 

 

 

 

--------------

 

 

 

 

「ほら、足元気をつけろよ」

 

「う、うん」

 

私は先輩に手を取られ、聖域の山の中を歩いていた

…一体どこに向かっているのだろうか

 

「もうちょいだよ…ほら、あそこ」

 

「あそこ?」

 

彼が指さした場所は、ぽっかりと開けた何もない草っぱらだった

…ますます意図がわからない

 

「こんなところに何があるの?」

 

「いいから、寝転んで空見上げてみ」

 

「???」

 

またあのニヤニヤ笑いを浮かべる彼を若干訝しみながらも、私は言われたとおり寝転んで空を見てみる

 

「!!!」

 

飛び込んできた景色は満天の星空だった

 

「…きれい」

 

思わず口をついて出てきた言葉に、先輩がくくっと笑うのが聞こえた

 

「いやー、この景色を七夕の日にエリナと見たくてな~、ベストポジション探すのに苦労したぜ」

 

「もしかして最近夜中いなかったのって…」

 

「あー…うんまぁ…そうだな、これ探してたんだよ」

 

ぽりぽりと頭を掻いて照れをごまかす彼がすごく愛おしく感じる

 

「ありがと先輩!とっても嬉しい!」

 

「お、おう…どういたしまして」

 

先輩が寝転ぶ私の隣に腰を下ろした

そのまましばらく時間だけがすぎていく

弱い風が肌を撫で、揺れる草木の音だけが聴覚を支配した

視界にはいつまでも見飽きない綺麗な星空

…そして隣には

 

「「……あ」」

 

目があった

くすっとどちらからともなく笑うと、お互いの声が風に乗って交じり合う

 

「先輩も横になりなよ」

 

「あぁ、そうだな」

 

私の提案にのって体を横たえる彼

その手をすかさず捕まえる

 

「捕まえた♪」

 

「残念!これはトラップだ!」

 

それに反応してすかさず手の指を絡めてくる先輩

 

「ふふっ…流石先輩ですね」

 

「いやいや、エリナにはかなわないぜ」

 

こんなバカみたいな会話ですら、私はとても満たされるものを感じていた

 

「ねぇ先輩…」

 

空に浮かぶ天の川

それを見ながら、私は一つ先輩に聞いてみる

 

「どうした?」

 

「もし…彦星と織姫みたいに、天の川みたいな障害で私達が会うことが難しくなったら…どうする?」

 

自然と握る手に力がこもった

 

「安心しろ。川なんて走ってわたってやるぜ。そんでエリナをそのまま連れ出すついでにその川を叩き割ってやる。こうやってな」

 

先輩がもう片方の手を手刀のように振り、私に笑顔を向ける

 

「…ありがと、先輩。頼もしいね!」

 

「当たり前だろ。エリナを傷つける奴は許さねぇ。お前は俺が守ってやる」

 

上半身を起こした先輩が星空をバックに頭を撫でてくれるのを、私はずっと眺めていた

 

 

今日は7月7日

最高の七夕でした♪

 

 

END

 

 

 

 

~オマケ~

 

 

 

『ビキニの日』

 

 

 

「…あの…先輩…流石にこれはっ///」

 

「え?エリナに似合うと思うけど?」

 

もう夏だってことで、今度彼と支部内にある室内プールに遊びに行くことになった

水着なんて最近買ってなかったので、お店に来てみたはいいものの…

 

「こんな…ビキニなんて…うぅ」

 

先輩が決めてくれるのは確かに嬉しいけどさ…

恥ずかしいよ!

こんなの下着姿とほとんど変わらないじゃない!

 

「今更なに水着ごときで照れてるんだよ」

 

「う、うるさい!」

 

そういう問題じゃないの!

 

「そんなに嫌なら、ああいうのにするか?」

 

赤面する私をニヤニヤ見ながら、先輩が奥を指差す

 

「…殴りますよ?」

 

彼が指差している方向には全身覆うタイプの…いわば幼児向けの水着ってやつが陳列されていた

 

「いやいや似合うだろ!ほら!かわいいくまさんの帽子mぐぉおあおあぁあ!!!」

 

あろうことか、冗談だと思ってたのに先輩はホントにその水着の一つを手に取ってこっちに持ってきた

しかも私にぐいぐい押し付けながらそんなことを言うもんだから、流石にカチンときてボディブローを叩き込んでやる

 

「…ナ、ナイスパンチ…」

 

お腹をかかえてうずくまる先輩を無視して、私は最初に手渡されたビキニをレジに持っていった

 

「これください!」

 

「え…あ、は、はい!」

 

すごい剣幕でカウンターにビキニを置くと、一部始終を見ていた店員さんが慌てて受け取る

 

「エリナ…それ」

 

のっそりと起き上がった先輩が、目を丸くしてこちらを見ていた

 

「私だってこの程度の水着華麗に着こなせるってところ、先輩に見せてあげるんだから…!」

 

見とれちゃっても知らないからね!

 

「それは嬉しいし、いいんだけど…さっき渡したやつじゃサイズでかすぎなかったかぁあああぐぁあああぁあああ!!!」

 

 


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