男主とエリナをイチャイチャさせる小説   作:リルシュ

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見えなくてもお互い何してるのかわかっちゃうっていいよね( ˘ω˘ )
今回はほのぼのかなぁ~(´・ω・`)


平和

 

「それじゃーあたしはもう上がるけど…みんなはまだ温泉入ってる?」

 

せんぱいとの問答で一通り騒いだあと、ナナさんがザブンと豪快な音を立てて立ち上がる

 

「私はもうちょっといようかな」

 

さっき暴れまわっちゃったせいでゆっくり浸かれてないし

でも、リヴィさんもシエルさんも十分あったまったからと言って風呂場を後にしてしまった

 

「1人だけ…か」

 

個人で浸かっているにはあまりにも広い浴場の真ん中で、ポツンと座り込む

微かな水音以外何にも聞こえないし見える範囲で動きがあるものも特になし

 

「ねぇせんぱい。まだいる?」

 

ちょっとだけ寂しくなっちゃって、私はこの霧と木々の向こうにあるはずの男湯の方へと声をかける

やっぱり恥ずかしさもあって、あんまり大きな声は出せなかったけど

 

「…ん?エリナ、今俺の事呼んだ?」

 

でも、ちゃんと彼には届いていたようで

見えてないってわかってても、思わず頬が緩んでしまった

 

「うん。みんな上がっちゃったから…」

 

「寂しいってか?」

 

私が最後まで言い終える前に、笑い交じりのからかい言葉がかえってくる

 

「…うん」

 

「あれ?やけに素直だな」

 

だって二人っきりだし甘えたいんだもん

って言葉は胸の奥にしまいこんで、代わりにちゃぽちゃぽと浴場の端まで静かに移動した

ここがきっと彼に一番近づけるところだから

 

「せんぱいまだ上がらないでしょ?」

 

「そうだな、ここで上がるって言ったらお前泣きそうだし」

 

はっはっはとふざけた感じを崩す様子もなく笑い続けるせんぱいの態度に、むっと頬を膨らませる

 

「もう!またそうやってからかうんだから!」

 

見えるはずもないのにぷいっとそっぽを向いてしまう

 

「今お前頬膨らませてそっぽ向いたろ?」

 

「!?」

 

でも、それがバレちゃったことが悔しくもあるけど嬉しくて

 

「エリナの行動は手に取るように分かるもんなぁ」

 

「う~!!!…ふ、ふんっ!どうせせんぱいの事だから、どこか穴場からのぞき見でもしてるんでしょ!この変態!」

 

「そうだな。今お前しかいないみたいだし、それもありか…」

 

「え!?ちょ!ほ、本気で覗くつもりじゃないよね!?」

 

必死に反撃した言葉もサラっと流され、ビクッと更に私を焦らせる糧とされてしまう

 

「ははっ。冗談に決まってるだろ」

 

「なっ!…くっ!ほんっとにいじわる…せんぱいのばか!」

 

くるりと体の向きを変え、せめてもの反抗と彼の方向へ背を向ける

 

「悪かったって」

 

その言葉と一緒に、後ろから微かに水音が聞こえた

たぶん…彼が手を合わせるかなんかして、動きのある謝罪をしているのだろうということが分かる

 

「…この後夕飯まで二人っきりで一緒にいて」

 

ボソボソとつぶやいて出てきた言葉は、やっぱり私が彼に惚れ込んでしまってることを再確認するようなもので

 

「え?なんだって?」

 

「このあと二人っきりで私に付き合ってって言ったの!」

 

そうしたら許してあげないこともないから

なんてかわいげのない余計な事を言ってしまっても、彼は優しくこんな返事をしてくれるのだった

 

「オーケーわかったよ。ホントかわいいやつ」

 

「なんか悔しい…」

 

提案を受け入れてもらえて嬉しいはずなのに素直に喜べなくって、どうにか彼をぎゃふんと言わせたいという欲求がふつふつと湧き上がってくる

 

「悔しいって言われてもな…悔しがってるエリナの顔も可愛いからやめられないんだこれが」

 

「な、なによそれ!じゃーたまにはせんぱいが見せてよそういう顔!」

 

思わずその場で立ち上がり、彼が言うところの『かわいい顔』とやらでたっぷりと睨みを効かせてやった

 

「最近はけっこう見せてる気がするけどなぁ~。エリナ、そういうところ俺に似てきたし」

 

「えっ…!そ、そんなこと…」

 

嬉しそうな声で言うもんだから、なんだかこっちまでにやけてしまう

 

「特に夜なんかはかなり「ばっ!?そ、それ以上はダメっ!///」

 

彼が何を言おうとしてるのか察して慌てて口止めをする

 

「はいはい。初心なんだか積極的なのか…」

 

「ぅ~!!!もううるさい!」

 

「なんだよ~そっちから声かけてきたくせに~」

 

「うぐっ…」

 

ホントに反撃のスキがないというか…もー!

そういうのは任務中だけでいいの!

私にはもっとスキ見せなさいよ!

 

「とにかく!お風呂あがったら脱衣所の前で待っててよね!」

 

「了解了解~…っと?」

 

ガラガラガラッ!

 

せんぱいの言葉の後に、扉を開けるような音とガヤガヤと話し声のようなものが聞こえてきた

たぶん、残りの男性陣の人たちが浴場まで入ってきたのだろう

 

この状況で先輩と言葉を交わすのは流石に恥ずかしいし、待っててという約束も取り付けたことだし先に上がってよっと

 

体も十分温まったことだしね

 

 

 

 

脱衣所まで戻ってきた私は、洗面所の鏡の中にいる自分自身と見つめ合いながらわしゃわしゃと髪を拭いていた

ぎゅーっと傷めない程度に力を入れて、まとわりつく水分を真っ白なタオルで吸収していく

 

「………」

 

そういえば、せんぱいって出会ったころからよく頭を撫でてくれてたな~

 

ポンッ!

 

試しに自分自身で撫でてみたけれど、やっぱり特に何も感じない

自然と手のひらはタオルで水気をふき取る作業に戻ってしまう

 

むむ…

 

さっさと着替えてせんぱいに思う存分撫でてもらお♪

 

最後に触れてもらった時から対して時間はたっていないはずなのに、もう彼のぬくもりが恋しくなってきちゃった

ドライヤーまでありがたく用意されていたけど、その機械的な温かさと求めているものとの差異に早々に使うのを切り上げる

やっぱり私を一番あったかくしてくれるのはせんぱいだもんね

 

…とは言えみっともない姿は彼に見せたくないので、最低限身だしなみは整えてハイスピードで着衣をすましその場を後にした

 

「ん~!気持ちいい風…」

 

トンっ!と脱衣所である建物の壁に背を預けると、ふんわりという表現がピッタリの優しい風が頬を撫で髪を躍らせる

平和…なんて言葉とは無縁の生活を送る覚悟をしていたのに、この状況を表す言葉がそれ以外に思いつかなかった

 

もちろんそんな呑気な考えができるのもこの聖域の中でだけなのだが

まだまだアラガミ根絶という目標には程遠いし、油断せずに頑張らないと…

 

「よっ!待ったか?」

 

「あっ。せんぱいっ!…って、ちゃんと髪拭いてから来なよ」

 

ワシャワシャと白いタオルで自分の頭を拭きながら、よーっすと手を挙げて挨拶してきたせんぱいに思わず苦笑い

 

「そういうお前こそ、ちゃんと拭けてねーぞ」

 

あっという間に目の前まで歩み寄ってきた彼が、ポフンと優しく私の頭に手を置きながらクククッと笑った

 

「そんなに俺と二人っきりの時間が楽しみだったか?」

 

「そ、そうよ。悪い?」

 

いつもの意地悪な表情をムッと頬を膨らませて睨み返し、フンと置かれてた手を振り払ってやる

 

「ははっ!そんな怒るなよ~俺は心配しただけだって。ちゃーんと体乾かさないとまた風邪引いちまうぞってな」

 

「べ、別に怒ってはないもん!あとせんぱいだって人の事言えないじゃん!そんなびしょ濡れ頭でさ!」

 

「び、びしょ濡れではないと思うけど…」

 

それに…

 

「風邪引いちゃったら、せんぱいが看病してくれるんでしょ?」

 

こんなこと直接言うのはちょっと恥ずかしくって視線をぷいっと逸らして小声で言ったのだけれど、彼には聞こえてるだろうし自分でも頬が赤くなってるのが分かるほど熱を持ってしまっていた

 

「まぁそりゃもちろん面倒は見るけどな。だからって風邪をわざと引くようなことはすんなよ」

 

「そ、そんなことわかってるわよ…でも…」

 

「甘えたいときはいつでもそう言えって。それとも俺。風邪を引いてる人間にしか優しくしない奴に見えるか?」

 

「…ばか。そんなわけないでしょ」

 

うりうりと頭を撫で続けながら耳元で笑い交じりの声を出すせんぱいを、軽く肘で小突く

 

「まぁ?せんぱいは無断で女の子のおっぱいとか太もも触ってくる変態だし、不用意に風邪なんてひいてたら次こそ何されるか分かんないしね~♪」

 

「な、なにを言うんだ!俺がベタベタ体触りまくるのはお前だけだぞエリナ!俺はお前のおっぱいとか太ももだから興味あるんだ!てゆうかまだ覚えてたのかよ!」

 

「大声でそんなこと言ってよく恥ずかしくないね…」

 

急にまじめな顔で抗議したと思ったらこれだもんな~

すぐそばの温泉にほかの人まだいるっていうのに

 

「だいたい風邪の時誘ってきたのお前じゃねーか…」

 

「えー?そうだっけー?」

 

「こ、コイツ…」

 

ペロっと舌を出しいたずらっぽく満面の笑みを浮かべて走り出す

 

「ま、まてこのやろー!」

 

「あはは!待たないもーん!」

 

後ろからおしおきしてやるーとか叫びながら追いかけてくるせんぱいの気配を感じながら、私はとても幸せな気分で聖域の大地を踏みしめるのだった

 

 

END


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