インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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2020年最初の更新です。
4か月もかかってしまった(汗)

世界レベルでコロナウイルスの影響がありますが、
まさか映画のようなことが実際に起きるとは思いもしませんでした。

幸い、私の周りや家族に感染した人はいませんが、
みなさんも十分気を付けてください。


学園祭に向けて

「“一時の夢をあなたに ~織斑一夏のホストクラブ~”、

 “嵐を呼ぶ ~織斑一夏とツイスターゲーム~”、

 “ドキドキ♪ ~織斑一夏とポッキー遊び~”、

 “命令する?されちゃう? ~織斑一夏と王様ゲーム~”

 …………全部、却下」

「「「「「えええええ――!!!」」」」」

 

放課後、一年一組の教室で急遽特別HRが行われていた。

だが、上がった案をまとめた瞬間、一夏は即ダメ出しをしたので

教室にブーイングが響き渡る。

 

「あのな~。こんなのでお客が集まるわけないだろ?

 そもそも、やってきたお客を俺一人で全員対応しろってか?」

「いい~や~!学園で一番の目玉になるね!

 断言する!」

「織斑一夏は一年一組の共有財産である!」

「そうだそうだ!

 どうせ、明ちゃんとはそれ以上のイチャイチャを毎日やってんだろ!」

「二人っきりで、砂糖よりも甘~~~~~いスイート空間を作ってんだろ!」

「私達だって、味わいたいんじゃ!!!」

「目指せ、ハーレム王!!!」

「何だよハーレム王って……」

 

やいのやいのと騒ぐクラスメートに、机に思いっきり頭をぶつけている明を

尻目に、一夏はどうしてこうなったのかと頭を抱えるのであった。

 

現在、彼らは今月行われる一大イベント、学園祭の出し物を決めているのだ。

だが彼女達の熱の入りようから、ただの学園祭でないのは明白である。

その原因はこれが……『各部対抗男子争奪戦!』だからである。

元々学園祭は、各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行い、

上位組は部費に特別助成金が出るものなのだ。

しかし、今年はせっかく一夏をはじめとした男子(イケメン)がそろい踏み

なのだから、これを上手くつかっておもしろくしない手はないとばかりに

一位の部活動に一夏達を強制入部させると、IS学園史上最もカオスとなった

全校集会で楯無が宣言したのだ。

……最も、カズキと兄弟子達のインパクトが強烈すぎて、宣言時には

覇気も勢いもなく、生徒達も楯無の言葉を理解するのに数分以上かかった。

 

閑話休題。

 

そんなわけでの、特別HRなのだが各々の欲望が全開だったり、この様を

楽しんで笑ったりと、なかなか決まらない。

 

「砂糖よりも甘いスイート空間って、どんな味?」

「きっと、ほっぺが落ちてしまうぐらい、おいしいお菓子なんですよ」

 

混沌な空間の中、微妙にわかっていないアーニャとナナリーは

まだ見ぬお菓子を想像して目を輝かせる。

編入してきたルルーシュ達は、元々高校3年生であるミレイを除いて、

残りのメンバーは2年生のクラスに入る形になっている。

誰がどの組になるかは、あらかじめカズキが、

くじで決めたとかないとか。

無論、どのクラスでも出し物を決めるために同じく特別HRが行われているが、

女子達が大興奮していて、一年一組以上に混沌としているのは、言うまでもない。

 

そして、飛び級のアーニャとナナリーは、一夏がいるこのクラスに

入ることになった。

 

「山田先生もダメですよね?こういうおかしな企画は」

「えっ!?わ、私に振るんですか!?」

『(おいこら、副担任)』

「そ、そうですね……わ、私はポッキーゲームなんか……」

「先生もですか」

「ほほぉ~?山田先生は、そういうのが好みなんかぁ~」

 

助言をと、話を振る一夏だったが山田先生もクラスのみんなと大差ないと

肩を落とす。

若干、頬を染める山田先生を見てはやては、怪しく微笑むのであった。

 

「仮にこの中から決めたとして……千冬姉……織斑先生が納得すると思うか?」

 

目を細めて一夏が言葉を発した瞬間、騒がしかった教室は一瞬にして凍り付いた。

 

「報告する俺もだけど、そんな案を出したみんなもどうなるかな……」

 

どこか遠くを見るような目をする一夏を見て、クラスメート達は

ダラダラと冷や汗を流す。

何故、こんな反応をするのか……

それは、今の千冬は何をするかわからないからだ……っ!

 

 

 

全校集会でカズキの兄弟子が、雪を回収した後、カズキ自身も恋華を連れて姿を

消したのだ。

大変な顔になっている千冬を残して……。

呆然としていた者達も我に帰ると、“あれ?ちょっとヤバくね?”と理解した。

千冬が、明に嫉妬する箒達のように怒り狂ったら……ということはなかった。

 

同じく、我に返った千冬は……いつもと変わらない調子だった。

そう……“普段と変わらない様子”なのだ。

不機嫌になるわけでも、内心怒っているけど笑っているというわけでもなく、

いつも通りに過ごして、いつも通りの授業をしたのだ。

それが、一夏達にはとても恐ろしかった。

 

怒り心頭というのを感じれば、余計なことを

口にしたりしないように等、怒りに触れないよう気を付けることができるが、

今の千冬はどういう状態なのか全くわからないのだ。

恋華とカズキがどういう関係なのか気にしていないのか、それとも

顔や空気に出していないだけで、内心は……。

といった感じで、一夏達は何がきっかけで爆発するのか、それともしないのか

わからない重た~~~い時間を過ごしたのだ。

授業中も空気が粘土みたいになった中、ノートを取ったり、教科書をめくる音が

やけに響いたり、消しゴムを落とす音がとてつもなく大きく聞こえた。

聞くところによると、校舎もまるで上から押し付けられているかのように

ミシミシと音を立てたとか。

 

「わかったら、他に普通な案を……」

「では、メイド喫茶なんかどうだ?お兄ちゃん」

 

教室の全員が発言者に目をやる。

一夏をお兄ちゃんと呼ぶ者のなど、IS学園には一人しかいない。

 

「古今東西、メイドが嫌いな人間などいないと言うし、客受けの

 心配はないはずだ。

 それに飲食物だけでなく、ミニゲームも行い勝てば、何か簡単なサービスも

 行うなどすれば、被っていても他との差別化も図れる」

 

ラウラは淡々とした口調で自分の案を述べると、一人納得してうむと

最後に付け加える。

無論、メイド云々の話はドイツにいる副官経由のものである

 

「それ、ええで!ラウラちゃん!

 ミニゲームのサービスを執事服の一夏君にやってもらえれば、

 大繁盛や!!!」

 

グッドアイデアとばかりに、はやては目を輝かせて席から立ち上がる。

 

「なのはちゃんはあの翠屋の娘やから、お菓子作りもお手の物やし、

 すずかちゃんやアリサちゃん、セシリアちゃんはほんまもんのお嬢様で、

 メイドさんの指導もバッチしや!

 箒ちゃんや明ちゃんは、和風メイドが似合いそうやけど、

 フェイトちゃんと一緒にエロメイドでもええなぁ~♪」

「おい、はやて!」

「エロメイドって何ですか!?」

「エロメイド……そ、そんな恥ずかしい格好なんて……」

 

水を得た魚のように次々とラウラの案に追加していくはやてだったが、

最後は自分の欲望駄々洩れで、箒と明が顔を赤くして抗議の声を上げる。

二人とは違う意味で顔を赤くして、荒く呼吸を乱すフェイトを

気に留めることなく。

 

「織斑くんの執事……そうだ!

 だったら、原田さんも男装執事をしてもらおうよ!

 いっその事、メイド喫茶じゃなくて男装執事喫茶とか!」

「それ、おもしろそう!」

「逆に織斑くんが、女装してメイドなんてのもアリじゃ……」

「お帰りなさい、お嬢様♪」

「「「きゃぁぁぁっ!!!」」」

「みんな、ちょっと落ち着け……っ!」

『(ダメだ。誰も聞いちゃいない)』

 

一度走り出すと、ブレーキ―も壊れてしまうのか、なだめようとする一夏の声は

興奮するクラスメート達の耳には届かなかった。

何とか意見は取りまとめられ、メイド服はラウラがあてがあると言うので

一任される運びとなった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ねぇ、ちょっと……。あれ、何とかしてよ」

「むむむむむ無理無理無理……!!!」

 

一夏達が教室で話し合いをしてる頃、職員室は重苦し~~~~~い空気に

潰されそうになり、部屋全体から悲鳴が聞こえそうであった。

 

「…………」

 

この重い空気の発生源である千冬は、黙々と“いつも通り”に

仕事をしていた。

カズキの姿は、職員室にはない。

爆発の矛先が向かう者がいないので、職員室は爆発するかどうかわからない爆弾が

ある状態なのである。

 

「対処を間違えたら……」

 

一人の教師が尻すぼみに言いながら、天井からぶら下がっている“者”に

目をやる。

今朝見たことあるワンピースを着た者は、頭が完全に天井に突き刺さっており、

ピクリとも動かなかった。所謂、マ〇る状態という奴である。

 

「全然、見えなかったわよね。

 篠ノじゃなくて、プリティラビットが織斑先生をからかおうとした

 瞬間、天井に!だったもんね……」

 

訂正。爆発するかどうかわからない爆弾がある状態ではなく、

“どれぐらいの規模の爆発をするかわからない”爆弾がある状態であった。

彼女達が言うように、職員室にやってきたプリティラビットは、

喜々とした声で変態宇宙人ことカズキのことを話そうとしたら、

天井へと発射されたのだ。

 

「ああ~もう~!

 元凶の碓氷先生は、どこに行ったのよ」

「今の千冬をどうにかできるとしたら、彼だけなのに……」

「そんなこと言ってないで何とかしてよ、メイザース先生。

 世界最強のライバルでしょ!」

「無茶言わないでください、燎子!

 あんな見たことない千冬の相手なんて、専用機があっても嫌です!」

『みなさん。お茶でも、飲んで落ち着きましょう』

 

爆弾の解体をギャーギャーと押し付け合うエレンと燎子は、

機械音声と共に差し出されたお茶を取り、一息つくと改めてどうしたものかと

他の教師達と共に考える。

背後にお茶を運んできてくれた“人型の何か”を立たせて。

 

「「「「「…………ん???」」」」」

『おかわりをお持ちしますか?』

 

彼女達が振り返ると、そこにいたのは一体のロボットだった。

近年、受付案内やおもちゃとしてもロボットはテレビやマンガの中だけの

存在ではなく身近なものとなってきたが、彼女達が目にしている人間大サイズとなると

話は別である。

しかも、彼?はお盆を手に22世紀の子守ロボットのように自分の意志で

喋っているようなのだ。

 

「「「「「…………」」」」」

「はっはっはっ!!!

 驚いたかね、諸君!!!

 これぞ、私達スペシャルブレインスリーが作り上げた

 人工知能搭載万能ロボット“ナイトメア”だ!」

 

未来へとタイムスリップしてしまったかのような光景に、エレン達が

思考を停止しているのを気に留めず、これまたどこからともなく姿を見せたドクターJが

ナイトメアのことを自信満々に語り出す。

 

「内部フレームとか機体構造は、僕が~♪」

「動力関係はプリティラビット君が担当し、思考ルーチン等のプログラミングは

 このドクターJが担当!

 お茶くみ、書類整理にお掃除等々雑用から、模擬戦相手や護衛まで

 何でもござれ!

 優秀な事務員として、このナイトメア“サザーランド”を

 存分に使ってくれたまえ!!!」

『サザーランド1号機です』

『同じく2号機です』

『3号機です』

 

神出鬼没で現れ、マイペースなハイテンションでサザーランドの説明をする

プリン眼鏡とドクターJに唖然としている彼女達をよそに、3体のサザーランドが

挨拶をする。

そんな、何とも言えない空気の中でも千冬は黙々と仕事をするのであった。

 

「失礼しまーす……失礼しました」

 

職員室の扉を開け、一組の出し物の報告にやってきた一夏だったが職員室に

一歩入った瞬間に回れ右で退出しようとする。

誰がどう見ても、今の職員室にいたら面倒なことになるビジョンしか見えないからだ。

 

「「「待てぇぇぇぇぇっっっ!!!」」」

「よく来てくれたわ、救世主!」

「今、この空気を……織斑先生を何とかできるのは碓氷先生以外に君しかいない!」

「もうこんな空気耐えられないっ!」

 

職員室から去ろうとする一夏を教師陣は、必死に体にしがみつき

何とかしてくれと懇願する。

逃げようと思えば逃げられなくもないが、大の大人が年下の生徒に

懇願してくることに根負けしたのか一夏は重いため息をついて、千冬の元へ

向かった。

 

「で?何をするのか決まったのか?」

「は、はい。メイド喫茶をやることになりました……」

 

一夏は、天井に頭が突き刺さった状態のプリティラビットを気にしないようにして、

千冬に話し合いの結果を報告するが、内容にピクリと反応をする千冬を見て

ゴクリと生唾を飲み込む。

 

「……まあ、特に変なことはしないみたいだし、問題ないだろ……ん?

 メイド服の担当がボーデヴィッヒ?」

 

メイド関係のイベント事は数え切れないほど経験し、更に自分のクラスには

悪ノリする者達もいるが、これといった問題もないので千冬も承認しようとすると

各担当の中にに予想外の名前があって首を傾げる。

 

「この案の発案者だし、当てもあるから任せてくれと……」

「その当てと言うのは、さつきさんか?」

 

ラウラの言う当てを顔見知りと言い当てられた一夏は、冷や汗を流す。

別に隠しているわけでもないが、誰でも昔のことを知られるのは恥ずかしい。

気分は判決を言い渡される囚人と言っても過言ではない。

 

「……わかった。

 これが必要な機材や食材の申請書だ。期限は一週間だが、早めに出すように」

「分かりました」

 

特に何が起きると言うわけでもなく、一夏もそれを見守っていた教師達も

安堵の息をもらす。

しかし、本番はここからだとこのままカズキについて何も言わず帰るべきか、

フォローすべきかと一夏が考えていると……。

 

『よろしいですか、お二方』

「うおっ!何だぁ!?」

 

視界に入っていても気がついていなかったのか、サザーランドに話しかけられた

一夏は驚きの声を上げる。

 

『初めまして、織斑一夏。

 私は、人工知能搭載万能ロボット“ナイトメア”のサザーランド1号機です』

「は、初めまして」

『碓氷カズキから伝言です。

 学園祭の出し物の報告が終わったら、生徒会室に集合してほしいとのことです』

 

カズキからの言伝と聞いて、一夏は千冬の纏う空気が重くなったと感じる。

その傍では、ドクターJとプリン眼鏡が頼まれてたね~と言っているのを

耳にしながら。

 

『織斑一夏、そして皆さん。

 困っているのに何もできず、すいません。

 人間心理、“ヤキモチ”への対処はデータが不足しており、適切な

 フォローができませんでした』

『「「「「「(おいいいぃぃぃっっっ!!!!!)」」」」」』

 

ガソリンの傍で花火をするかの如く、危険な発言をする1号に

一夏やゲキリュウケン、教師達は心の中で絶叫する。

 

「…………」

『男女における恋愛関連の“ヤキモチ”は、数ある人間心理

 の中でも特に慎重さを要するとあります』

『加えて、織斑千冬は自分の心の内をさらすのが人一倍恥ずかしく、

 言葉と心中が真逆になると言う“ツンデレ”という人格タイプと

 データにあります。

 自分の気持ちを素直に口にする必要があると考えます』

 

1号に続いて、2号と3号もそれぞれアドバイスを口にするが、

一夏達は心の中で頬を両手で挟み、ムンクの叫び状態で悲鳴を上げる。

顔を俯かせている千冬を中心に、職員室の空気は最早、極寒がマシな温度である。

 

「ああ、サザーランド達にはこの学園の人間の基本情報が入力されてるよ」

「確かプリティラビット君がやってたよね~?

 織斑千冬くんのデータは、特に力を入れてたね~」

『はい。他の方よりも織斑千冬のデータは、多く入っています』

『特に、弟の織斑一夏が大好きでたまらないブラコンと言うデータが

 重要項目とあります』

 

職員室の空気の冷たさに気がついていないのか、ドクターJとプリン眼鏡の二人は

呑気にしている。加えて、1号と2号が自分達のデータに補足を付け足す。

その言葉を聞いた千冬はぐるりと天井に突き刺したプリティラビット

を見やるとそこに彼女の姿はなく、扉の陰にチラリとプリティラビットの服が見えた。

 

「ふっ……」

 

千冬は穏やかに微笑むと――――。

 

 

 

「ん?」

「どうした、カズキ?」

「いや、なんかどっかのバカがバカなことをしたのがバレて、

 しばかれたような悲鳴が聞こえたような……?」

 

学園のどこかで、師兄と話していたカズキは首を傾げる。

同時刻、多くのものが声にならない悲鳴を耳にしたと言う…………。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うん。全員集まってくれたね」

 

生徒会室には、一夏をはじめなのは達も含めた関係者が全員そろっていて、

人数が人数なため、少し窮屈であった。

しかし、千冬の放つ空気に圧されて文句を口にする者はいなかった。

余談だが、千冬の傍に放置されたウサミミのようなものを生やした

形容しがたい“モノ”を気にする者はいなかった。

 

「本当なら、これからの戦いについて話すはずだったんだけど、

 大分予定が変わっちゃったからね、この人の所為で……」

「ええ~?

 折角、かわいいかわいい弟弟子が私達を探していたから、

 やってきたのに、それはないんじゃなぁ~い?

 プンプン!」

「探していたのは、師兄だけなんですけどね……」

 

今朝の全校集会から半日ほどしか経っていないと言うのに、

カズキは疲れ切った様子でため息をつく。

そんなカズキに恋華は、抗議の声を上げるがかなりワザとらしく

ちょっとウザい感じであり、隣にいるカズキが師兄と呼ぶ少年も

同じようにため息をつく。

 

「取り合えず、この人達のことを紹介しようか。

 この人達は簡単に言うと同じ師父の元修業していた、兄弟子と姉弟子でね。

 まず、この人は日谷透也(ひたにとうや)

 見た目は俺達の中で一番下に見えるけど、一番の古株で実力者だ。

 少なくとも俺は勝ったことがないね。

 後、どこかの錬金術師みたいに背が小さいとか言われて、

 怒ることはないけど気にしているから、注意してね。

 そして、基本お人好しで世話焼きの苦労人」

「……日谷透也だ。

 まあ、よろしく頼む……」

 

カズキの紹介に眉をひそめる透也だったが、ぶっきらぼう気味に

挨拶をする。

 

「次に、この巫女装束の人が煌星雪(きらぼしゆき)

 俺のことを弟のように接してくれた人だ。

 刀を使わせたら右に出る者はいない」

「初めまして。煌星雪です。

 “私”のカズちゃんがお世話になってます♪」

 

強調してカズキのことを私のと雪が言うと、千冬から放たれる空気は

数倍に重く感じられ、一夏達は息をのむ。

 

「ああ、雪姉さん?

 俺の部屋にあった忘れものですよ」

 

そう言ってカズキが、雪の前に出したのは大量のカメラや盗聴器であった。

 

「え?あっ?あ、あの~……こ、これはね?カズちゃん?」

「後、何に使うかわかりませんが男物のシャツが欲しいなら、はい。

 まだ開けてない新品ですよ?

 部屋から持っていったこれは返してくださいね」

「ああ~!そんなぁ~!!!」

 

にっこりと笑いながら語りかけるカズキに、雪はイタズラがバレた子供のように

目をあっちこっちに泳がせてアタフタする。

 

「あの~?

 あれって、ひょっとして……」

「いつものことだ」

 

一夏がおずおずと透也に尋ねると、何が聞きたいのか分かっているのか、

透也は身内の恥を晒すように苦虫を嚙み潰した顔で額を指で押さえる。

 

「……最後が、いつの間にかIS学園を休学していたって言う……」

「源恋華だよ♪

 みんなよろしくね~」

「見た目は人懐っこくて明るそうに見えるけど、人の他人に知られたくない

 恥ずかしい黒歴史をばらしてイジメたりからかったりするのが趣味」

「うん?」

「他人を自分の手のひらの上で転がすのが何より好きで、基本めんどくさがりなのに

 そのためなら手間暇を惜しまない。

 その労力を他のことに注げばいいのに……」

「ねぇ?」

「下は小学生から男女関係なく守備範囲は広く、気に入った相手は

 連れ込んでたっぷりと楽しむ変態で、金遣いも荒い。

 俺の修業時代のアレやコレも

 知っているからたちが悪いことこの上ない」

「な~にを言っているのかな~?き・み・は?」

 

たっぷりとトゲのある説明に、恋華はカズキに笑みを向ける。

一夏達は、二人の間の空気に恐怖を感じ

そろりそろりといつでも逃げれように移動していく。

 

「何って、貴姉のことをありのまま……」

「どうやら、ここのかわいい子達と友達になる前に

 話し合う必要があるようね?」

「確か貴姉の言う友達って、自我を奪って自分の思い通りに動く

 人形のことでしたっけ?」

「ただの話し合いじゃなくて、腹を割って話さなきゃいけないみたいね……」

「すいません。

 貴姉の言葉って、なんか訛りがすごくてよく聞き取れないんですよね~?」

「ふふふ♪」

「あはは♪」

「「……ふはははははは!!!!!!!!」」

 

二人は互いに見惚れるような笑顔で笑っているのに、その空気が

とてつもなく冷たくて重い。

一夏達は、あまりの怖さにガタガタと震えるのであった。

 

 

 

 

 

オ マ ケ 6

 

「……何か喋りなさいよ?」

 

その日、燎子はサザーランド1号機と共に夜の見回りをしていたが、

無言で自分の後ろを付いてくる1号に耐えかねて、何か話すように促す。

 

『…………映りますよ?』

 

1号は、頭部を展開して情報収集用カメラ“ファクトスフィア”を作動させる。

 

「…………」

『…………』

 

暗がりの中、前を向く燎子とその背後にいる1号の間で、

カメラの作動音だけが静かに響き渡る。

 

「…………っ!」

『…………っ』

 

――燎子は、駆け出した!全力で!

――1号は、それを追いかける!

 

『後ろを振り向かないんですか?

 何が映ると思っているんですか?』

 

振り向いたら負けな鬼ごっこは、始まったばかりである――。

 




サザーランド達は、アニメの見た目そのままでサイズが人間サイズに
なっています。
最後のオマケは、ボンボンのSDガンダムフルカラー劇場から(笑)
ロボットを出すならやろうと決めていましたwww

緊急事態宣言で自由な身動きが取れなくなりましたが、
頑張っていきましょう!

感想・評価、お待ちしてます。

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