インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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8月中に一度は更新したかったのですが、なかなか時間を取れず。
何度目だよ、この言い訳は(苦笑)

本当はもっと長かったのですが、次の更新を考えてキリがいい所で
投稿します。

新キャラが登場しますが、本格的な登場はまだ先となります。



平穏とは学園には無縁なのかもしれない

2学期。

それは、夏の終わりを意味し新たな季節の幕開けである。

学生にとっては、終わってしまった夏休みを嘆いたり、久々に友達と

会えるのを楽しみにしたり、体育祭や文化祭等のイベントを控えたりと

学生生活の中でも一番動きがある学期と言える。

 

しかし!

 

一部の学生にとって、そんなのは全て些細な事な

出来事が起きていたりもしていた……。

 

「何ぃぃぃっ!!!?」

「別の学校に行った幼馴染に告白されたっ!?」

「憧れのお兄さんと付き合うことになっただと!!!」

「一緒に旅行に行っただぁ!!!?」

「何なんだ!

 その余裕のある大人の笑みは、何なんだ!?」

 

IS学園に響き渡る信じられないといった絶叫。

それは、明確な線引きがされてしまった瞬間であった。

すなわち、勝者と敗sではなく、リア充と負けぐmでもなく……つまり、そう!

いつもと変わらない夏を過ごした者とそうでない者がいるということである!

そして、それは何も青春真っ盛りな学生に限った話ではない――。

 

「何ですってぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!!!!!!!!」

「田舎にいる幼馴染にプロポーズされたぁぁぁっ!?」

「しかも、年下だとっ!!!?」

「昔からの弟分と付き合うことになっただぁぁぁっ!!!?」

「さささささ産休を取るぅぅぅぅぅっ!!!!!???」

 

職員室からは、教室以上の絶叫が上がりその声には驚愕よりも血涙を流さんばかりの

羨望が込められていた。

 

「それでは、これより“彼氏ができたら互いに紹介しようね☆”

 という女の友情同盟を忘れ、青春という夏を過ごしたリア充組達の

 裁判を執り行います!」

「「「「うぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」

 

学園全体が揺れんばかりの喝采で、いつもとは違う夏を過ごした者達への

裁判が行われるのも必然なのかもしれない。

 

「とりあえず――――。

 判決……告白から付き合うまでの流れというか

今日までの相手との思い出全部を一切合切嘘偽りなく全て話す!の刑に処す!!!!!」

「「「「「異議なし!!!!!」」」」」

「「「「「異議ありぃぃぃ!!!!!

     弁護士を呼んでぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」」」」」

 

と、まぁ……IS学園は2学期初日からあちこちで騒ぎが起きているわけですが、

そんな騒ぎとは無関係に揺れている場所もあったりした。

 

 

 

「落ちろぉぉぉっ!」

 

気合の声と共に“水”を纏わせた衝撃砲を連射する鈴だったが、

相対する者は空中をまるで海を泳ぐ魚の如く躱していく。

目標に当たることなく進んだ弾は、アリーナの地面にクレーターを

次々に作っていく。

 

「これなら……」

「どうですか!」

 

相手が鈴の攻撃に回避するのに集中している隙を狙って、セシリアは

ブルーティアーズ4機、簪は山嵐によるビームとミサイルを織り交ぜた

同時攻撃を行う。

異なる攻撃である以上、回避も防御も同じやり方で行うのは、難しい。

この攻撃は決まると二人は確信するが……。

その確信は、相手が見せた舞のような華麗な動きで攻撃を回避していく様に

脆く崩れ去っていく。

 

「そんな!?」

「嘘っ!?」

 

相手は速く動いているわけでないのに、攻撃の方が相手を避けていると

見える程自然な動きで弾幕の雨をかいくぐっていく。

 

「飛び道具がダメなら……!」

「接近戦で!」

「でぇぇぇいっっっ!」

 

セシリアと簪の攻撃を躱しきったところを狙ってシャルロット、ラウラ、箒が

三方向から同時に対戦相手……一夏に斬りかかる。

 

「っ!」

 

一夏はその奇襲を雪片と光子反射(フォトン・リフレクション)の盾、そして右足を使って受け止める。

 

「うおおおっ!」

 

あまりにも奇抜な防ぎ方に三人が動きを止めて硬直した隙を逃さず、

一夏は左足を軸にコマの如く自身を回転させ、箒達三人をまとめて吹き飛ばす。

その際に、受け止める力を巧みに崩して一塊になるようにというオマケつきで。

 

「いや、レベルアップしすぎでしょ」

「楯無さん」

 

観客席で模擬戦のデータ取りをしている明の元に、楯無が姿を見せ呆れた声で

模擬戦の感想を口にする。

 

「そうですね。

 1対6の状況で、苦戦どころか押してますからね」

「みんなも連携になった時の自分の役割も理解していているみたいだけど……。

 あああ!

 明日の全校集会の準備なんかほっといて、私も参加すればよかった!」

「虚さんを怒らせても知りませんよ?」

 

夏の修業の成果の確認ということで、早速行われた模擬戦。

その模擬戦で、一夏は何を思ったのか専用機が調整中の明を除いた6人を

一度に相手にすると言いだしたのだ。

最初は鈴を筆頭にカチンときた面々であったが、慢心や冗談で言いだしたので

ないとわかり気を引き締めて挑んだのだが、結果は見ての通り。

一夏が終始押しているのである。

 

「まあ、聞いた話によるとこれよりも不利な状況で歴戦の戦士達と戦った

 みたいですしある意味、当然の結果かもしれません」

 

聞くところによると、修行の総仕上げとしてリュウケンドーのモードチェンジのように

状況によって能力を変えるフォームチェンジの力を持つ仮面の戦士に対し、

基本フォームだけのハンデ戦や逆に相手のフォームチェンジ無しの逆ハンデ戦を

何度も行ったらしい。

 

「中でも一番厄介だったのが、3枚のメダルで変身する欲望の王だったとか。

 今はいない頭脳担当の相方の代理にカズキさんがその役をやった所……

 次から次に姿が変わって、手が付けられなかったとか」

「確か、そのメダルって5種類あったわよね?

 単純に考えても125の姿になれるわけだから、それが次々に変身して

 相手になるとか……考えただけでゾッとするわ」

 

視線を泳がせて語る明に、その光景を想像したのか楯無も頬を引きつる。

自分達なら絶対にごめんこうむりたい組み合わせである。

そこで、ズババッ!と甲高い斬撃音が鳴り響き二人が意識をアリーナに戻すと、

一夏が6人相手に勝利していた。

 

 

 

「う~ん……」

『どうした、一夏?

 彼女達6人同時に相手にして勝ったというのに、不満そうだな』

 

模擬戦を終えた一夏は、ロッカールームで悩まし声を上げて唸りを上げていた。

斬撃と砲撃のコンビネーションで、6人を一か所に集めたところに

白龍光翼(フォトン・ウイング)による超加速の一撃を叩き込むという達人的な試合運びを見せたというのに、

何か問題があるのかとゲキリュウケンが問いかける。

 

「いや。自分でもかなりうまく戦えたと思ってるよ。

 だけど、それを格上相手にもできるかってなると……。

 俺はまだ教えてもらったことを身につけているだけで、

 自分の技って言うか、剣って言うか、自分だけの“もの”で戦えてないんだよ」

 

一夏が思い起こすのは、修行の一環で訪れた並行世界で出会った

二人の少年。

どちらも自分と同年代にも関わらず、自分のものとは比べ物にならない巧みな技と

息をのむほどの揺るがない信念を持っていた。

更に驚くのは、二人が落ちこぼれだの最弱だのと言われていたことだ。

だが、そんな周りの評価など気にも留めず、二人はひたすら鍛錬を重ねた。

剣を振るい続けた。

自分の信念を貫くために――。

 

「上には上がいるって言うのは知ってるし、身をもって叩き込まれたけど、

 自分と同じぐらいであそこまでの奴らがいるってのは考えもしなかったぜ。

 ……もしも、俺が同じ境遇だったらきっと、最初の内にポッキリ折れてる……」

 

拳を強く握りながら語る一夏の声は、静かだが強い意志……対抗心が込められていた。

それが意味するのは……。

 

『(弾やタツミ、なのは達のように一夏と同年代で普通なら考えられない

 経験や強さを持っていることは、珍しいことではないかもしれない。

 だが、同年代であそこまで上をいかれたのはこいつにとって初めてだ。

 やはり、男にとってライバルというのが一番燃え立たせるのかもな……)』

 

自分を追い込むことで彼らのように自分だけの“剣”を模索し始めた一夏に、

ゲキリュウケンは不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

「だーれだ~?」

 

そんな時、突然一夏の視界が誰かに塞がれ闇に覆われる。

 

「へっ……?」

 

突然の事態に状況を飲み込めず、素っ頓狂な声を上げる一夏がおかしいのか、

謎の人物はクスクスと笑い声をもらす。

その声はどこかイタズラ好きな……例えるならカズキや楯無を思わせる

感じであった。

しかし、一夏は心中穏やかではなかった。

 

「は~い♪時間切れで~す~」

 

視界を解放された一夏は、即座に背後にいる人物から距離を取り、

いつでもゲキリュウケンを抜けるように構える。

 

「誰だよ、あんた……?」

「へ~……?

 咄嗟に戦闘態勢に入る判断は、悪くないわね」

 

一夏は、目の前の人物を観察しながらどう動くか思案するが、

動けずにいた。

動きを見せた瞬間にやられる、そんな予感がしてならないからだ。

着ているのは学園の制服だが、リボンの色からして上級生。

そして、まるでカズキのように

どうやってからかって遊ぼうかと企むかのように自分を観察してくる。

 

「(何より、この人全く気配を感づかせずに俺の背後を取った。

 敵意や殺意はないけど、その気になれば俺を簡単にどうにかすることだって

 できたはずだ。

 ……くそっ!

 目の前にいるって言うのに、目の前にいないような……

 本当に雲や霧でも相手にしているみたいだぜ……!)」

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ?

 ただ、君の顔を見に来ただけだから

 じゃぁ~ね~♪」

 

謎の先輩?がロッカールームから、完全にいなくなったとわかると、

一夏は大きく息を吐き出した。

ほんの数分間の対峙であったが、体感的には何日もにらみ合っていたような

疲労度だった。

 

「はぁ……はぁ……。

 な……何だったんだ、今の人?」

『わからん。だが、ただ者ではないことだけは確かだ。

 本当に人間か?』

「まさか……新しい創生種!?」

『可能性は、ある。

 ……ところで、一夏。

 時間は、大丈夫なのか?』

「え?時間?」

 

ゲキリュウケンの言葉に時計を見た一夏は、血の気が一気に引き、

先程までとはまた違ったプレッシャーに襲われた。

 

 

 

「それで?

 遅刻の言い訳はそれで全部か?」

 

地獄の鬼さえ、裸足で逃げ出す鋭い眼光を放つIS学園最強教師、織斑千冬が

今まさに一夏に審判を下そうとしていた。

罪状は、遅刻である。

 

「いや、あの、だから……怪しい先輩に絡まれましてね?」

「どういう風に怪しかったんだ?」

「何て言うか、掴みどころがないというか、とても一つ二つ

 違うだけの雰囲気でなかったというか……」

「なるほど。つまり、お前は年上のしかも、初対面の女の色香にやられて

 遅刻したと」

「ちょっと!言い方!」

 

聞く耳持たぬとばかりに、一夏の言い分を間違っているけど間違っていないように

解釈していく千冬を止めようとする者はいなかった。

 

「原田、デュノア。室内戦闘におけるISと非操縦者の連携実演をしろ。

 相手はこの馬鹿者だ」

「“この馬鹿者だ”……じゃなーい!

 何で、そんなに不機嫌なの!?」

 

いつにも増して過激な罰に、ギョッ!としながら二人に視線を向ける。

 

「「…………」」

 

返ってきたのは、見惚れるような笑顔であった。

 

「そ、そうだよな……!分かってくれるよな!

 二人は、そんなヒドイことなんかしないよな……!」

「じゃあ、織斑先生。実演を始めま~す♪」

「久しぶりに捕縛術を使うとしましょう♪」

「おう、やれ」

「いやぁぁぁっ!!!

 慈愛の天使じゃなくて、裁きを下す審判の笑みでしたぁぁぁ!!?」

 

バチバチと電気を走らせる警棒のような武器にリヴァイヴの腕を

展開したシャルロットと、どこから取り出したのか縄を構える明が

ジリジリと一夏ににじり寄っていく。

 

「あ、あの……シャルロットさん?明さん?」

「なぁ~に?織斑く~ん?」

「何だ?ん?」

 

にこやかに微笑みながら、額に青筋を浮かべる二人は哀れな罪人に判決を下した。

ちなみに、千冬が不機嫌だったのは夏休みに一夏があまり構うことが

できなかったためでは決してない。

……ないったら、ないのである。

 

「……で?

 お前は、一体何をしているんだ?」

 

弟の悲鳴を流しながら、千冬は教室で奇怪なことをしているカズキにツッコミを

入れる。

カズキが変わっているのは、周知の事実だが今行っているのは

いつにも増して変なことで指摘してもいいものかと誰もが

口にできずにいたのだ。今、カズキは……。

 

「は~~~ら~い、たま~え~。き・よ・め・たま~え~~~」

 

神主のような白い衣装を着て、焚火の前で怪しげなまじない?をしているのだ。

 

「いや~最近、妙な胸騒ぎを覚えてね……。

 何て言ううかこう……自分がこっそり書いている日記とかポエム的なものを

 知らない内に家族に読まれていたり、掃除してたら返すのを忘れていた

 レンタルDVD、しかも新作を見つけたりみたいな?

 ああ、この火は立体投影機だから大丈夫だよ。

 部屋の中で、キャンプファイヤーの気分をって奴」

「そ、そうか……」

 

カズキがいつになく深刻な顔で、いつもの調子で変なことを言うので

千冬もどう反応すればいいのか困ってしまう。

 

「とりあえず、お祓いはこれでいいとして、後は武器だ……。

 反〇兵器にブ〇スト・ボムはOK。

 後は、ネオ〇キシマ砲にゴル〇ィオン〇ンマーを……」

「待て待て待て待て……っ!」

 

今日の夕食は何を作ろうかみたいな、気軽なノリでとんでも武器を口にする

カズキに千冬は慌てて止めに入る。

 

「……もう!冗談に決まっているじゃないか、千冬ちゃ~ん?

 最後は22世紀の子守ロボットが何故か持っていた地〇破〇爆弾を……」

「戻ってこいこの馬鹿っっっ!!!!!!!!!!」

 

どこかへと旅立とうとしているカズキを千冬は日本刀とハリセンを

手にして引き戻そうとする。

IS学園最強カップルによる痴話げんかによる爆音と男子生徒の悲鳴が、

混在する恐ろしい空間でも、山田先生もクラスメート達も気にすることなく

授業を開始した。

慣れとは恐ろしいものである。

 

「誰か助けてっ!!!」

「くらえ!必殺、隠し撮りした修行中の一夏の写真!!!」

 

助けを求める切実な声は誰にも届かず、カズキが逃げるのにばらまいた写真は

一枚残らず千冬や一部の者達が、ハ〇パーク〇ックアップと見間違えるような

スピードで手中に収めたのであった。

 

「ああ、後来年は熱い夏を過ごしたい人は、なのはに

 色々と聞いてみるといいよ?

 したみたいだからね……“色々”と……♪」

「にゃぁぁぁぁぁっ!!!?

 ししししししてないよ、ユーノ君と色々なんて!

 キ……ぐらいしか……あっ」

 

ついでとばかりに、カズキに投入された爆弾によってなのはが幼馴染4人を

中心に問い詰められたのは当然の結果である。

 





一夏は様々な状況の経験を積むために、仮面ライダー達とハンデ戦や
逆ハンデ戦を何度も行いました。
フォームチェンジを封じたり、相手が封じた状態で等々。

一夏が対抗心を燃やしているのは、「落第騎士(ワーストワン)」とか
「無敗の最弱」と呼ばれる少年達。
でも、その実力は度肝を抜かれるもので!
どのように会ったのかは、日常の方で。ただし、ギャグ風で
行くと思います(笑)

千冬も一夏があまり構わなかったら、ちょっと拗ねるぐらいするんじゃ
ないかと(爆)

カズキの冗談ともとれる武器の用意ですが、本人はいたって
真面目に用意するべきかと悩んでます。
果たして、彼の悪い予感とは!

感想・評価、お待ちしてま~す。

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