インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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筆がのって書いてたら、想像以上に長くなりました(汗)
今回、ゲキリュウケンがさらっと重要なことをもらします。

IS10巻ついに発売が決定されましたね♪


奇襲

「それで、カズキさん。

 相手の行動が読みやすくなるって、なのはたちが何かしてくるのを

 待つってことですか?」

 

一夏は今後のなのはたちへの対応を聞くが、カズキの性格からしてそんなことはありえないと確信していた。

カズキは、緻密で大胆な相手がまさかと思うような作戦で、攻めて攻めまくるタイプなのでそんな受け身的なことをするとは思えなかった。

 

「いや。

 あいつらがこっちに仕掛けてこない限り、こっちから攻めるってことはしないぞ。

 そう。相手が先に仕掛ければ、後は正当防衛ということでな~~~んの遠慮もなく

 やりあえるからな、ククク……」

「そ、そうですか」

 

相変わらずのエグイ考えに、頬が引きつるのを止められない一夏であった。

 

「まあ、だからといって何もしないわけじゃない。

 戦いの主導権を握るのは、何も殴り合いだけじゃないっていうのを

 あいつらに教えてやるさ、フフ♪

 そのために、お前には――――」

 

 

 

 

「……というわけだ。

 これも修行の一環だと思って、がんばりな♪」

「は、はぁ……」

「それじゃあなぁ~」

 

カズキからの指示もとい修行?を聞き、

一夏は肩を落としながらため息をついて電話をきった。

 

「まじで、面倒なことになったなぁ……」

『だが、心理戦を学ぶという意味ではいい機会だ。

 それに、これでお前の鈍感も少しは改善するかもだぞ?

(実際、こんなことでよくはならないだろうがな……)』

「はいはい。わかりました。やりますよ、やればいいんだろ」

 

~~~♪

 

一夏が半ば自棄気味に、叫ぶと握っていた携帯からメールの着信音が鳴った。

 

「誰からだ?」

 

差出人の名を見た瞬間、一夏は――

 

 

 

その後、屋上から寮への道で

鼻歌を歌いそうなぐらい上機嫌な男子生徒が目撃されたそうだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『それにしても、最近“アイツら”の出現が多くないか?』

「そうだな……。

 ただ、単に俺たちに負け続けて焦ってやみ雲になっているだけか、

 はたまた本当の目的から俺たちの目を逸らすための陽動か……」

 

一夏への電話を終えたカズキは、ザンリュウジンと共になのはたちとは

別の本来の自分たちの敵たちについて考えていた。

 

『ぶっちゃっけ、どうなのよ?

 ISとか管理局の魔道士は、“アイツら”との戦いで戦力になるのか?』

「さっき、一夏が戦ったレベルのザコ相手なら

 並の操縦者や魔道士でも1対1で戦うことはできるだろう。

 それより上でも、代表候補生や魔道士のエースレベルでAランク以上なら、

 複数で連携を取れれば戦える……。

 まあ、そんな単純な問題じゃないけどな」

『と言うと?』

「まずIS、これは圧倒的に戦闘経験が少ない。

 試合形式ならともかく、命をかけた戦闘をしたIS操縦者なんて、世界で見ても

 数えるぐらいだろ。

 ましてや、見たことのない化け物に襲われたりしても本来の実力を発揮できる奴なんか

 そういないだろう……」

『いくら、とんでも兵器を使えるって言っても、女の子だからねぇ~』

「次に、魔道士。これは非殺傷設定がまずい」

 

非殺傷設定。

それは、物理的ダメージを伴わずに魔力ダメージを与えることで

相手を死傷させずに制圧できる攻撃法である。

ただし、それを使う魔道士の技能が低かったり当たり所によっては、大怪我を負うこともある。

 

「非殺傷設定自体は、別に悪くない機能さ。

 砲撃をぶっ放しても、相手を傷つけることなく気絶させられるわけだし。

 だが、それが戦いに最も必要なもの……、“覚悟”を鈍らせる――」

『だな』

「自分が持っている力が如何に、危険で恐ろしいものかの自覚が薄れ、

 覚悟で引くべき引き金も軽くなる……。

 しかも、相手が傷つかないから自分も傷つくわけがないと

 心の片隅で考えるようになる。

 そうなると、自分よりも強大な敵に会った時、何もできなくなってしまう……。

 それに、そもそも“アイツら”には非殺傷の魔法が効きにくいみたいだしね」

『てことは、やっぱり俺たちで何とかするしかないと?』

 

ISと魔道士。

どちらも、それぞれの長所があるが、それでもリュウケンドーとは違い戦ったことがあるのは人間が主であるため、未知の敵相手にパニックになって本来の実力を発揮できないとこを想像するのは難しくない。

そのため、対処は自分たちがすることになるとカズキはザンリュウジンの問いに無言で頷いた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「え~っと1025、1025は……、あっ!

 あったあった♪」

『(わかりやすいぐらい、上機嫌だな)』

 

屋上で送られてきたメールを見てから上機嫌な一夏に、

ゲキリュウケンはいろんな意味で呆れていた。

 

ちなみに、一夏とゲキリュウケンは念話とは

異なる魔弾戦士と魔弾龍特有のテレパシーで会話している。

他の魔弾戦士や魔弾龍と会話することはできないが、魔弾龍の感覚を魔弾戦士が共有することもできるので日常、戦闘問わず重宝している。

 

一夏はゲキリュウケンの呆れなど気にせず、渡された部屋の鍵をドアにさしこんだ。

 

「あれ?」

『(どうした?)』

「鍵があいてる……」

『(何?むっ!おい、一夏)』

「な、なんだよって、……」

 

ゲキリュウケンはその耳の感覚を一夏に送ると、部屋の中の音が彼の耳にも聞こえてきた。

 

ザァァァ――

 

「(……、これってシャワーの音?)」

『(どうやら、誰かと相部屋みたいだが、どうする?

 このまま入ると、向こうは女だと思っているから

 確実に面倒なことが起きるぞ?)』

「(さ、流石に今日はもう、騒動はゴメンだぜ~)」

 

男の自分が女子と同室なのも驚きだが、ゲキリュウケンの言うように

このまま部屋に入ると……

 

・シャワーに浴びている子が、男だと思わず体にタオルだけ巻きつけて

 自分の前に現れる。

・相手がパニックになって追い立てられる。

・部屋を出た後、必死に許しを請って入るものの結局ブッ飛ばされる。

 

そんな未来が、一夏の頭をよぎった。

 

「(参ったなぁ~

 山田先生が会議って言っていたから、カズキさんも遅刻だけど参加しているだろうから

 あの人のとこで時間をつぶすってわけにもいかないし……)」

『(それより、あいつがこんなおもしろそうなことをわざわざ潰すと思うか?)』

「(た、確かに。

 でも、このままドアの前に立っているわけにはいかなし、う~ん)」

 

一夏がどうしたものかと悩んでいると、こちらに近づいてくる子たちがいた。

 

「なにしてんのよ、一夏?」

「ア、 アリサ!それに、みんなも!?」

 

一夏が顔を向けるとそこにいたのは、ありさ、すずか、なのは、フェイト、はやて、そしてシャルロットであった。

 

「部屋にいても暇だから箒ちゃんのことが心配だし、

 遊びにいこうって……アリサちゃんが♪」

「ちょっ!すずか!!!」

 

本当は、目の前にいる朴念仁をおとすための作戦を練るつもりだったのだが、そんなことを本人の前で言えるわけもなく、すすかはすばやくフォローした。

アリサが、温かい目で見られるという代償に。

 

「にゃははは。

 それで、私たちもってことになって」

「はやてを呼びに行ったら、シャルロットが出てきて」

「僕、はやてと同室なんだ」

「で、せっかくやからみんなでGO!して驚かせよう♪ってことになったんやけど、

 何で一夏くんは箒ちゃんの部屋の前におんの?」

「えっ?ここって箒の部屋なの?」

「そうやで。昼休みのうちに電話番号を交換しといたから、携帯で

 部屋番号を聞いたから間違いあらへんよ?」

「マジかよ……」

 

一夏は、部屋に入らなくて安堵した。

もしもゲキリュウケンが止める前に入って、想像したようなハプニングが起きたら知り合い、

それも幼馴染みとかなり気まずい空気となっていただろう。

 

「ねぇ?一夏くん。ひょっとして、一夏くんの部屋って……」

「ああ。どうやら、俺と箒は同室みたいなんだ」

 

すずかの問いに、一夏が苦笑いしながら答えた。

 

「「「「えええええっっっっっ!!!!!?」」」」」

「…………」

 

シャルロットとすずか以外は驚きの声を上げるが、シャルロットは一夏の答えを聞いたとたんにニコニコと笑っている。

絶対零度の空気を纏いながら……。

 

「男と女が一つ屋根の下……」

「そそそそそれって、同棲ってこと……はぅ/////」

「フェイト、しっかりしなさい!

 何を想像したのかだいたいわかるけど……、とにかく落ち着きなさい!」

「ちょい待ちぃ!

 だったら、なんであんたドアの前にぼけ~っと立っとんの?」

 

みんな何を想像したのか顔を赤くしながら、

軽く混乱する中ではやてがふと疑問を一夏へ投げかける。

 

「えっ!あっ!あああ~、へ、部屋の中から水が流れるような音が聞こえて、

 シャワーでも浴びていたら、今はいるのはまずいと思ったんだ」

 

ゲキリュウケンの感覚を通してシャワーの音を聞いたなんて言えるわけもなく、ちょっと無理があるかなと思ったが嘘ではないので、そう答えた。

 

「あんた、何考えとんのやぁぁぁ!!!!!

 そのまま部屋に入ったら、シャワーあがりの女の子と対面っちゅう

 ドッギドッギイベントを何スルーしようとしとんのやぁぁぁ!!!!!」

「はぁ!お、お前何言って……!ひっ!?」

 

はやてがとんでもないことを熱弁して、咎めようとしたらシャルロットから発せられていた空気がさらに冷たくなり、一夏は思わず悲鳴をあげてしまう。

 

「だったら、私たちが入って簡単に説明してこようか?」

「そうだね。知らない人がやるより、いいかも」

 

いつの間に立ち直ったのか、悲鳴をあげる一夏はスルーしてフェイトが提案してきた。

 

「そりゃあ、グッドアイディアや!

 じゃあ、私が説明してくるわ♪」

 

ピコーン!といいアイディアが閃いたかのように、はやてはすばやく部屋の中に入った。

 

「はやての奴、なんであんなはりきって……まさか!?」

「フェイトちゃん!すずかちゃん!」

「うん、なのは!」

「急ごう!」

 

はやてが何をしようとしているのかわかったのか、アリサ、なのは、フェイト、すずかも部屋に入った。

 

……笑いながら、絶対零度の空気を纏っているシャルロットと一夏を置いて。

 

「お、おいちょっと待って!俺を置いていかないでぇぇぇ!」

「一夏?そんなにドッギドッギイベントを発生させたいの?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

部屋に入ったはやては、自分の部屋を見て分かっていたのかシャワールームのドアに耳を当てて、音を聞いていた。

 

「どうやら、ビンゴみたいやね♪

 では、早速……」

 

何を考えているのかウシシ♪と笑いながら、シャワールームのドアをノックした。

 

「同室のものが来たのか?」

 

長い黒髪を濡らしながら、箒はシャワーを止めて体をふき、バスタオルを巻いただけの体でドアを開けた。

 

「こんな恰好ですまない。私は、篠ノ之箒。

 今日からよろしくたの……」

「やっほ~♪箒ちゃん♪」

 

髪をふきながらドアを開けると、そこにいたのは再会したばかりの友達であるはやてだったので、箒は驚きで固まってしまった。

 

「は、はやて!

 お前が私の同居人なのか!?」

「いんや~、同居人は私やのうて、一夏くんやで♪」

「な、何ぃぃぃぃぃ!!!

 どどどどどどういうことだ!!!!!?」

 

予想もしなかったカミングアウトに、箒ははやての肩をつかみながら問いただした。

 

「せやから、一夏くんが箒ちゃんの同居人なんや♪

 もう部屋の前におるんやけど、中からシャワーを浴びとる音が聞こえたから

 どうしようかと悩んでる時に私らが、やってきて説明することになったんや~」

「そ、そうか……。

 うん?私“ら”?」

「そう。私だけやのうて、なのはちゃんたちもおるよ♪」

「なのはたちもいるのか……」

 

はやてから手を離し、箒は多少混乱から立ち直った。

そして、待ってました♪と言わんばかりにはやての目がキュピーン!と光った。

 

「ところで、箒ちゃん?

 箒ちゃんもフェイトちゃんやあの会長さんに、負けないぐらい大きくなったねぇ~」

「ど、どこを見て言っている!

 それに、なんでこっちに近づいてくるのだ!

 そしてその手の動きは、何だ!!!」

 

はやての言葉に箒は、彼女が見ていた部分を反射的に腕で隠すが昼休みにフェイトがやったのと同じくとても隠しきれていなかった。

むしろ、柔らかそうに押しつぶされてますますはやては、フフフと怪しい笑みを浮かべて手をワキワキさせながら箒にジリジリと近づいた。

 

「な~に、このはやてちゃんがその見事なものをテイスティング

 したろうかなぁ~と思って……、なぁ!」

 

言い終わるや否や一瞬ではやては、箒の後ろに回り込み知り合った時から

かなり大きくなったそれを握りしめた。

 

「ひゃっ/////!!!」

「おおお~

 これはこれは、エエ仕事してますね~♪」

「は、はや……て、やめ……ろ/////」

「ええやんええやん♪

 これを武器にして、一夏くんに迫ったらええんとちゃう?」

「な、何…言っ…て……/////

 いい、か……げんに……/////」

 

男どころか、同姓が見ても鼻血ものな光景にはやても息が荒くなりヒートアップしてきた。

 

「あかんこっちまで変な気分になってきた/////」

 ほ、箒ちゃん。こ、今度は邪魔なそれをとって直接……/////」

「なにしとんのじゃあぁぁぁ!!!

 このセクハラ狸!!!!!」

「ぼぎゃぁぁぁ――!!!!!?」

 

危うく変な扉をあけそうになったはやては、どこからとり出したのかハリセンを持ったアリサに

強烈なツッコミを喰らった。

 

「はやてちゃん……」

「大丈夫、箒?」

「す、すずか……。フェ、フェイト……」

 

すずかとフェイトは、吹っ飛ばされたはやてはスルーして箒の元にやってきた。

 

「はい。それじゃ、すずかとフェイトは箒を介護して。

 私はこのセクハラ狸に説教するから」

 

アリサはテキパキと指示を出して、シャワールームから箒たちを退出させた。

 

「いやな予感がしたと思って、慌てて駆け付けたと思ったら、アンタは!」

「いや~あんな見事なものを見たらつい♪」

 

アリサに説教されても、はやては悪びれもせず照れ臭そうに頭をかいて

ごまかそうとしていた。

 

「まあ、いいわ」

「あれなんか、あっさりやね?」

 

いつもならもう二、三発ぐらいツッコミが来るのにはやてはアリサの対応に首をかしげた。

 

「後は、アンタの後ろで笑っている奴に任せるわ」

「後ろ?」

 

そう言われて、後ろを振り向いたことをはやては後悔した。

そこにいたのは、先ほどのシャルロットのように笑いながら同じ……、いやそれ以上の

冷たい空気を放っている白い魔お……ではなく、なのはがいた。

 

「あっ……、あああ――」

 

その迫力に、逃げなければマズイと察するが体はヘビに睨まれたカエルのように

固まって動かなかった。

 

「じゃあ、なのは。

 セクハラ狸のお仕置きは、任せるわ」

「うん、任せて♪

 ちゃんとO・SI・O・KIするから♪」

「なんか、発音の仕方が普通とちゃう!!!」

「それじゃあ、ごゆっくり~」

 

アリサはそう言って、シャワールームから出て自分も箒の介護に向かった。

 

「待って!アリサちゃん!

 このままやったら私、永遠にゆっくりするはめに!!!」

「落ち着いて、はやてちゃん。

 ゆっく~~~りと頭冷やしながら……、O・HA・NA・SIをしようか♪」

『あきらめて、反省してくださいはやて』

 

瞬間、はやての視界は桃色一色に染まった――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ねぇ?どうなの?

 そんなに女の子との嬉し恥ずかしイベントに遭遇したいの?

 そんなに、大きいのがいいの?

 ねぇ?ねぇ?ねぇ?」

「シャ、シャルロット。と、とりあえず落ち着こう?な?」

「落ち着く?

 何言っているの?

 僕は、至って落ち着イてイるヨ?」

 

1025室の前では、一夏がまだシャルロットに問い詰められていた。

あれだけ、大きな声ではやてたちが騒いでいたので、他の子たちも話題の男の子がそこにいるのは分かっているのだが、シャルロットが放つ空気が怖くて誰も近づこうとはしなかった。

 

一夏も暴走?するシャルロットを何とかしようとなだめているが

目立った効果はなかった。

いつまで、こうしていればいいのかと思っていると一夏は不自然な揺れを感じた。

 

「(何だ?今の揺れは?)」

『(部屋の中からだな)』

 

一夏とゲキリュウケンが身構える中、部屋のドアが開きすずかが顔を見せた。

 

「一夏くん、シャルロットちゃん、もう入っていいよ」

「わかった。じゃあ、とりあえず入ろうぜ」

「……」

 

すずかに促されて、一夏とシャルロットは部屋に入った。

何で、自分の部屋に入るのにこんなに疲れるんだと一夏は心の中で嘆くが、

その思いは誰にも届くことはなかった。

 

 

 

「それで……、これどういう状況?」

「どういう状況なんだろう?」

 

部屋に入った一夏が、感じたのはそんな疑問だった。

どう答えていいのかわからず、フェイトも苦笑を浮かべていた。

 

頬を赤らめながら、剣道着を着てベッドに座っている箒、ひきつった笑いを浮かべているアリサとすずかにフェイト、すっきりしたような清々しい笑顔をしているなのは。

 

そして、うつぶせになりながら煙を上げているはやて……、こころなしか焦げ臭いにおいがする。

 

「簡単に言うと、オイタをした狸にもうだめだよって、O・HA・NA・SI

 をしたんだよ♪」

「お話?」

「そう。O・HA・NA・SI♪」

「(なんだろう……、俺が知っているお話となんか違う……)」

 

なのはからの説明に背筋が寒くなるのを止められない一夏であった。

 

「う、うううっんん!

 そ、そろそろいいか一夏?」

 

そこで、箒がわざとらしく咳払いをして一夏に話しかけてきた。

 

「えっ?あっ、ああいいぞ、箒」

「お前が、私の同居人というのは本当か?」

「そうみたいだな。山田先生からもらった鍵もここのだし、間違いないぞ」

「ど、どういうつもりだ/////」

「はい?」

「だから、どういうつもりだと聞いている!

 男女七歳にして同禽せず!常識だ!」

「あれ、本心では喜んでるわね(ボソッ」

「箒ちゃん、相変わらず恥ずかしがり屋だね(ボソッ」

 

内心ではすごくうれしいのだが、

照れ隠しでちょっと責め気味に箒は一夏に問いかけてきた。

そんな箒の心情を、アリサとすずかはあっさり看破していたのを箒は知らない。

 

「まあ、俺も十五の男女が同居するのは問題あると思うが……」

『(相手が“アイツ”だったら、そんなことはほざかないだろうな……)』

 

何か、重要なことが関係することを絡めて冷ややかなツッコミをするゲキリュウケンだが、

それを知る者は当然この場にはいない。

 

「お、お、お……」

「お?」

「お前から、希望したのか……?私と一緒の部屋にしろと……」

「いやいや。そんな生徒の我がままなんか通じるわけないだろ?

 大方、束さんの妹のお前と男の操縦者を纏めた方が護衛をしやすいとか、そんなんだろ」

「そ、そうか……」

 

頭をガクッと下げて落ち込む箒だが、一夏はなんで落ち込むのかわからなかった。

それを見て、なのはたちは改めて一夏の鈍感具合を再確認して頭を抱えた。

 

「話に聞いていた以上ね、これは」

「箒ちゃん、がんばれ~♪」

「一夏くんもO・HA・NA・SIが必要かな?」

「なのは、それは待って!」

「そっか~。やっぱり、箒が一夏と同室なんだ~」

 

気絶しているはやてはほっといて、ヒソヒソと話し合うなのはたちと笑顔を崩さないシャルロット。この部屋は、現実世界から切り離されたように、異様な空気に満ちていた。

 

「あっ!そうだ。

 さっき、部屋から揺れを感じたんだけどさ……」

「一夏くん?それは……」

 

一夏は急に思い出したかのように、先ほど感じた揺れのことを話そうとして、

なのはに遮られてしまった。

だが……

 

「なんか揺れ方が普通と違ったから……、

 なのはたちが何か不思議な力でも使ったのかって思ってな?」

「「「っっっ!!!!!?」」」

「いっ!」

「っ!」

「はっ?」

「へっ?」

 

一夏がズバリと真実を言ったことで、関係者は驚き、

箒とシャルロットは呆れたように目を丸くした。

 

「ひょっとしてさぁ~

 なのはたちはいろんな世界を守っている警察みたいな組織の一員で

 IS学園に来たのも、男なのにISを動かした俺を調べるためだったりして……」

 

一夏が目を細めながら、まるで全部わかっているぞ?と言わんばかりにニタニタと笑って

なのはたちから視線を外さなかった。

 

「(どどどどうしよ、二人とも!!!)」

「(おおおおお落ち着いて、ななななのは!)」

「(フェイトちゃんが一番落ち着きぃぃぃ!!!)」

 

秘密裏に行動しなければならないのに、よりにもよって調査対象に自分たちのことがバレたとなのはとフェイトはとんでもなくパニックとなり、そんな二人をいつの間に復活したのかはやてが落ち着かせたようとしていた。

 

「な~んて、冗談だよ。じょ・う・だ・ん♪」

「じょ、冗談?」

「そ、そうだよね~。冗談だよね」

「全く、何を言っているんだお前は……」

「ハハハ……」

「なんや、冗談かい……」

「「ほっ」」

 

冗談と言う言葉にアリサとすずかは安心し、箒とシャルロットは呆れていた。

当人のはやてたちも、ほっと胸をなでおろした。

 

「ごめんごめん♪

 でも、もしもそんな奴がいてこんなとこで不思議な力を使ったら……、

 相当の“バカ”だよな~♪」

 

瞬間、ビシリと空気が固まる音を関係者であるフェイト、はやて、アリサ、すずかの4人は聞いた。

 

なのはの周りから――。

 

「どういうことだ、バカとは?」

「周りに知られないようにしているならともかく、こんな人目につくような

 とこで力を使ったら、バレる危険がとんでもないだろ?

 そんなのにぶいにぶい言われる俺でもわかるぞ?」

 

箒が一夏にどういうことかと説明を求めるが、またも空気がビシリと音を立てた。

 

なのはの周りから――。

 

「(に、にぶい!?)」

「自分の都合で、そんな簡単に使うとかどんな単細胞って話だ」

 

知ってか知らずか、一夏の“口撃”は続く。

 

「(た、単細胞!?)」

「バレることを考えてやってなかったら、俺以上の

 バカでにぶくて、とんでもなく単細胞な突撃思考なんだよっていうんだよな~♪

 ハハハハハ」

「ふっ、そうだな。確かにそれはな」

「そうだね。こういうのを日本で“ちょとつもうしん”って言うんだっけ?」

 

自分で話しておきながら、よほどおもしろいのか一夏や箒、シャルロットは笑い転げた。

 

一方で、はやてたちは戦々恐々としていた。

なのはのまゆがつりあがり、頬も必死に何かを堪えているのかすごくひくついているのだ。

 

「そ、それじゃあ、私たちはこれでお邪魔するわ!いくわよ、すずか!」

「う、うん!じゃあまたね!箒ちゃん!」

「私らもいこか!シャルロットちゃん!」

「えっ!ぼ、僕はまだ!」

「ほ、ほらいこう、なのは」

「……そうだね。……バカ、にぶい、単細胞、突撃思考、猪突猛進……」

 

耐えかねたアリサを皮切りに、みな自分の部屋へと帰って行った。

なのははブツブツとつぶやいていたが。

 

「どうしたんだ、急に?」

「どうしたんだろうな~

(とりあえず、こんなものかな?)」

『(まずまずといった感じだな)』

「(それにしても、予想以上に動揺していたなあいつら……

 なんか癖になるかも……)」

『(ああ、とうとう無自覚だったものを自覚し始めたか……)』

 

なのはたちの急な行動に箒はいぶかしむが、一夏ははぐらすかのように返事をした。

内心では、少々危ないことを考えていたが――。

 

相棒が、新たな扉を開き始めてゲキリュウケンは遠くを見るような感じでつぶやき、屋上で聞いたカズキからの策を思い返した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そのために、お前にはズバリと真実を言ってもらう」

「ズバリと真実?」

「簡単なことさ、“お前たちは、違う世界からきた魔法使いか?”とか聞いてみるんだ」

「そんなことを直接言って、大丈夫なんですか?」

 

そんな、相手にスパイですか?と尋ねるようなド直球な質問をしたらかなりややこしいことになるのでは、一夏は危惧するが……。

 

「なぁ~に、そのすぐ後に冗談とか言えば軽く流されるさ♪」

「そんなに、うまくいきますかね?」

「まあ、これ自体はそんなに重要じゃない。

 これは、仕込みさ♪」

「仕込み?」

「そう、仕込み♪

 どんなことが起きるかは、その時のお楽しみということで♪」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『(本当にいろんな意味で、影響を受けたのを喜ぶべきなのか嘆くべきなのか。

 しかし、言われたことだけでなく挑発までするとは、お前もやるな)』

「(挑発って、なんのことだ?

 俺は思ったことを口にしただけだぞ?)」

『(す、素だったのか……。

 この調子でコイツが成長を続けていったら……、やめよう。

 何か考えるのが怖い……)』

「?」

 

一夏の成長はうれしくもあるが、カズキの影響を受けたこれからの未来に

一抹の不安を覚えるゲキリュウケンであった。

 

「と、ところで一夏。

 い、一緒に暮らすのだから、ルールというか線引きを決めようと思うのだが……」

 

話題を変えるように、箒が部屋の決まりごとを決めようともちかけてきた。

緊張しているのか、頬も赤くなっている。

 

「そうだな。じゃあ、まずは何から決める?」

「ま、まずはシャワーの使用時間だ。私は七時から八時で、一夏は八時から九時だ」

「う~ん、俺は早い方がいいんだけど……、まあいいか」

「そ、それでは次に……」

 

こうして、一夏と箒は部屋のルールを決めていき、そのまま眠りについた。

 

余談だが一夏は余程疲れたのかすぐに眠りにつき、グッスリだったのとは対称に箒は想い人が隣で寝ているせいで、ドキドキしてなかなか眠れなかったのは完全に余談である。

 

 

 

 

 

「話に聞いていた以上の鈍感だったわね、一夏って~

 おまけに、ライバルも多いし」

「ふふ。

 アリサちゃんも、それだけ積極的にいけばいいのに……、

 自分のこと♪」

「ななななな何を言ってるのよ、すずか!」

 

「~~~♪

 今日は後れちゃったけど、これから僕もドンドン責めていかないとね♪」

「(はやてちゃ~~~ん、なんかこわいですぅぅぅ~!)」

「な、なんかシャルロットちゃんの後ろに、

 怒った時のなのはちゃんが見えるわ……」

 

「かんちゃ~ん♪明日もおりむ~に、アタックがんばろうね♪」

「ほ、本音もあの人のこと聞けるようにがんばろうね/////」

「ふぇ?ふぇぇぇ~~~!?」

 

「さ~てと、次はどんな感じでいこうかしら?」

 

「はぁ~。お嬢様が仕事を早く片付けるのはいいのですが、

 その後の騒ぎは、どうにかしてほしいですね。

 織斑くんもトラブルを呼び込むような体質みたいですし……、はぁ~~~」

 

「ううううう~。

 あの後会いにいけませんでしたが、私はドジでないとちゃんとわからせないと……」

 

「カズキの奴め、今度ふざけたことをしたら……」

 

「な、なのは?一夏も別に悪気があったわけじゃないんだし……」

「何を言っているのかな、フェイトちゃん?

 私は、なにも怒ってナいヨ?」

「(だったら、その怖い笑みはなにぃぃぃ!!!?)」

 

恋に燃えるもの、応援するもの、同室のものに戦々恐々とするもの。

様々な思いが渦巻く中、運命の始まりである一日目の夜は更けていった――。

 

 

 

「これ、うまいな箒」

「そ、そうだな/////」

 

翌日の朝、一夏と箒は一年生寮の食堂にて朝食をとっていた。

どちらも、日本人だからか和食セットだ。

 

いい食材を使っているだろからか、二人の箸はすすんでいた。

 

「ねぇねぇ、彼が噂の男子だって~」

「なんでも千冬お姉さまの弟らしいわよ」

「へぇ~、姉弟そろってIS操縦者かぁ。やっぱり彼も強いのかな?」

 

周りでは「興味津々ですよ。でもがっつきませんよ」と一定の距離を保ちながらも、がっつりと一夏を観察もとい凝視していた。

 

「あっ!いたいた♪

 お~い、おりむ~」

「おおおおお、おはようございます/////」

「おはよう、一夏♪」

 

一夏と箒が朝食を楽しんでいると、きつねの着ぐるみ?をきたのほほんさんこと本音を筆頭に、簪、シャルロットが近づいてきた。

少し遅れる形で、なのは、フェイト、はやて、アリサ、すずかの5人もやってきた。

 

「おう、おはようみんな」

 

あっという間に、一夏の周りの席が埋まると周囲からざわめきが聞こえてきた。

 

「ああ~っ、私も早く声かけとけば……」

「まだ二日目。焦る段階じゃないわ!」

 

「なんか、目立っているね」

「そりゃあ、そうでしょう。

 ただでさえ一夏は有名なのに、こんな美人たちが周りにいたらね」

「び、美人って、アリサちゃん」

 

目立つことがあまり好きではないフェイトは周囲の反応に苦笑するが、アリサは誇らしげに返してきた。

その反応に、すすかもまた苦笑したが。

 

「一夏って、朝ごはんすごく食べるんだね」

「食事はきっちりと、取るからな俺は。

 逆に、女子はそれだけの量で足りるのか?」

「え~っと、私たちはこれだけで/////」

 

何気に一夏の隣に座ったシャルロットが、話しかけるが相も変わらず一夏はデリカシーというものが欠けたことを言ってきた。

 

「ははは♪

 一夏、そういうことを女子に言うから鈍感鈍感言われるんだぞ?」

 

すると、なんの前触れもなくたった一日である意味一夏以上に有名になった男、

碓氷カズキが彼らの前に現れた。

 

「カズキさん!」

「碓氷先生!」

「やぁ♪少年少女たち、おはよう♪今日もがんばっていこう!」

 

朝から、ハイテンションなカズキに何かあるのかと、皆自然と警戒を強めた。

そんな様子を気にすることもなく、カズキは話を続けた。

 

「ははは♪

 みんなにちょ~~~っと、聞きたいことがあったから早起きしちゃった♪」

「聞きたいこと?」

「そう。

 ねぇ、みんなはさ…………、

 時空管理局ってどう思う?」

 

 




どうでしたか?
ラッキースケベは一夏の代わりにはやてにやってもらいましたwww
O・HA・NA・SIされるというオマケつきで~

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