インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

62 / 75

GW連続更新、第三弾です!
一気に、全投稿作品を更新できました。

それにしても、楽しい休みというのはどうして
こんなに早く過ぎるのでしょう(泣)


人の話はちゃんと聞こう

「えへへ~♪

 あういうのを運命の出会いって言うのかな~」

 

虎白は、軽やかな足取りでスキップしながら屋敷に戻る

道のりを歩いていた。

 

「遠目だったけど、荷物を持ってたから旅行かな?

 てことは~てことは~♪

 しばらくは、ここにいるから探してその間に落としちゃえば!」

 

すっかり緩み切った顔の虎白の頭には、一夏を彼氏として

明とおばばに紹介した時のことが展開されていた。

 

“すごいじゃないか。私の彼氏より、いい男だ”

“かっかっか!虎白もやりおるの~。

若い頃の儂のようじゃわい”

「よ~~~し……このチャンスを絶対モノにするぞぉっ!

 ってあれ?何この靴の数?

 こんなにお客さんが、来てるの?」

「ああ、虎白。どこに行ってたの!

 今、魔弾戦士の方がお仲間さんと一緒に来てるのよ!」

「へ……?えええええ!

 ままま魔弾戦士って、あのっ!?」

 

捕らぬ狸の皮算用の妄想をしながら、屋敷に戻ると

思わぬ来訪者の存在に虎白は、現実へと引き戻された。

魔弾戦士は彼女達にとって、雲の上の存在であり、昔であれば

忍が仕える主君のようなものと言っていい。

それが目と鼻の先にいるとなれば、飛び上がるぐらいの驚きである。

 

「こうしちゃいられない!

 私のすごさを知ってもらわなきゃ!」

 

虎白は、急いで魔弾戦士がいる居間へと向かう。

 

「おばば様!魔弾戦士の人達が来てるって……」

「付き合っている彼氏です///////////////////!!!!!」

「ほん……と……」

 

意気揚々と今の扉を開けた虎白を待ち受けていたのは、ライバル視している

従妹の恋人紹介だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「この者は、私のもう一人の孫娘で虎白と申します。

 ほれ、固まってないであいさつせぬか」

「ハイ、ハラダコハクデス。

 ドウゾヨロシク、オネガイシマス」

 

明が一夏を自分の彼氏だと言った瞬間に入ってきた虎白は、

驚く暇もなく、運命の王子様が儚い幻想だと思い知らされ、ブリキのロボットのように

ぎこちない動きと喋り方で自己紹介をした。

 

「申し訳ありません。才能は明に劣らぬものがあるのですが、

 まだまだ未熟者でして」

「お気になさらずに。未熟と言うことは、伸びしろがあるということですよ」

「それにしても、まさかさっき助けた子が、明の従妹だったなんてな。

 世の中、狭いというかって……何でそんな鋭い目で俺をにらんでいるんだ?」

「「「「「「「自分の胸に聞け!」」」」」」」

「はぁ~」

「ふむふむ。

 これが、クラリッサが言っていた夏休みにお約束な

 鈍感お兄ちゃんの修羅場劇場か……」

 

おばばとカズキが世間話をしている傍らで、明達が一夏をジロリとにらみつける。

何故にらまれるのか、理解できていない一夏に千冬はため息をつき、ラウラは

自分の副官から教えられた(吹き込まれた)恋愛青春模様の醍醐味?にしみじみと

していた。

 

「(何よ何よ何なのよ!どう見ても、明だけじゃなくてこの美人さん達にも

 好かれているじゃないの、一夏は!?

 そりゃあ、一夏はカッコイイけどこんなハーレムに囲まれているなんて聞いてないよ!)」

 

文字通り突き刺す視線を送る明達とそれにたじろいでいる一夏を見て、

虎白は心の中で地面に手をついてうなだれる。

何より、彼女の心に一番突き刺さったのは……。

 

「(……同い歳なのに!同い歳なのに!

 明だけじゃなく、みんな私より大きい!?

 違うもん……!私が小さいんじゃないもん!普通ぐらいだもん!

 ……ん?)」

 

一人は一つ年上なのだが、それでも自分と同じ歳のはずの箒達のとある部分が

自分より遥かに大きく、虎白は悔し涙を堪えられなかったが鈴とラウラが

目に入りじっと見つめる。

 

「うん?」

「何よ?」

「ううん!何でもないよ♪(やった!この二人には、勝ってる!)」

「……ああ~。なるほど、そういうことか」

「何がなるほどだ、コラ。

 あたしの何を見て、元気になって、納得したんだオイ?

 ケンカなら買うぞ、ゴラァッ!!!」

 

この世の終わりを告げられたように絶望していたのに、自分達を見て

笑顔になった虎白にラウラは、どういうことかを冷静に理解したのとは

反対に、鈴は怒りの炎を身に纏う。

 

「おいおい、怒ったところで何も変わらねぇぞ鈴?

 年下の蘭にも負けてんだから、もう望みはなっ!」

「フザケタコトヲヌカスノハ……コノクチカッ!!!」

 

余計なこと言った弾は、鬼神となった鈴により強制的に口をふさがれ、

顔を握りつぶされようとする

 

『痛い目に合うとわかって、何故余計なことを言うのか理解に苦しむ』

『その気持ちはわかるぞ、ゴウリュウガン。

 太夏も何度痛い目を見ても、学習しなかったからな』

「…………っ!!!」

 

口をふさがれているので言葉を発せないが、必死にギブギブ!と訴える弾を

目にしてゴウリュウガンとバクリュウケンは、互いに共感を覚えるのであった。

 

「ところで、カズキ君?

 みんなまだまだ諦めずに、頑張っているみたいだけど一夏のお嫁さんとしては、

 やっぱり明ちゃんが一番の候補なのかしら?」

「ほほう~。あの明が一番の嫁候補とは~」

「そうですね。

 二人とも、学園でも人目のつかない場所でご両親のように

 色々とやっているみたいですし、明も元からそうだったのか予想もしない

 大胆なことをするようになってきましたしね~。

 俺が知らないこともひょっとしたら……♪」

「それって、お風呂で一夏の背中を密着しながら流してあげたり、

 耳元で声を囁いて起こしたりしたことよりも、他人に見せられないことかしら?」

「雅殿雅殿!

 他にも、お姉ちゃんはお兄ちゃんに

 猫のようにあごをナデナデされたり、アツアツの白いどろっと

 したものを顔にかけられたりしたことがあるぞ!」

 

命の瀬戸際に立たされた弾をスルーして、雅やカズキは一夏と明の二人だけの

秘密をこうだろうと推察する。

それに釣られて、ラウラも興奮してクリームパンぶっかけ事件のことを

暴露する。

カズキ達の話を聞いたおばばと太夏はほほう~♪と、冬音はあらあら♪と笑い、

千冬は頭を抱えた。

微笑ましく?笑う大人達と違って、落ち着ていられないのは年頃の若者達である。

明は完熟トマトのように顔を赤くして頭から煙を吹き出し、

恋する乙女達は、呪いを受けたかのようにビシリと固まった。

 

「てめぇ……何一人で、うらやましい青春を送ってやがんだ……っ!」

 

鬼神が手を放してくれたことで開放された弾は、血の涙を流しながら

悔しがり一夏に詰め寄ろうとするが、そこに一夏の姿はなかった。

 

「あっ……さらばっ!」

「逃げたぞ!」

「どこに行きますの!」

「そんなにおっきい方が、いいのか!あ゛あ゛あ゛~ん!」

「一夏~。教えてくれないと、ワカラナイヨ~?」

「一夏く~ん、お姉さん達とオ・ハ・ナ・シしましょう♪」

「追跡開始……!」

「俺は、まだデートもしたことないのにぃぃぃっ!!!」

 

ここにいたら危険と察したのか、一夏は弾達が固まっている間に

その場からこっそり逃げようとするが見つかってしまい、

捕まったら“きれいな川”を泳いでしまうかもしれない鬼ごっこが

開始される。

 

「逃亡役と捕獲役に分かれての訓練か!

 私もやるぞ!待ってくれ~」

「わわわわわ//////////////////。

 一緒にににににおおおおおお風呂って///////////////!」

「っ////////////!!!!!」

 

弾達に遅れる形で、ラウラも訓練と勘違いした鬼ごっこに参加し、

虎白は事態をうまく呑み込めないのか顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。

そんな空気に耐えられず、明も逃亡する。

残されたのは、思考停止してしまった虎白と大人組達だった。

 

「かっかっか!青春じゃのぉ!」

「青春ね♪」

「青春だよね~」

「じゃあ、私達も青春しに行こうか、太夏?」

「おう!行きますか」

『二人とも、私もいるということを忘れているだろ?』

「時に、おばばさんや。――薬みたいなものってあったりします?」

「ありますぞ?ですが、それをどうするので?」

「ふふふ……それはですね……♪」

「なんと!おもしろいことを考えますな……♪」

「待って。こうすればもっと……」

「「「ふふふふふふふふふ♪」」」

『うわ~。カズキだけでなく、雅やばーさんまで悪い顔してるぜ』

「……はぁ」

 

一夏達に感化されたのか冬音と太夏も外に出かけ、

カズキはおばばと雅と一緒に、よからぬことを画策する。

彼らの顔は時代劇で見る……

 

“越後屋、お主もワルよのぉ~”

“いえいえ、お代官様ほどでは……♪”

 

そのものであった。

もちろん、三人にはザンリュウジンの楽しそうな声も千冬の

ため息も耳には入っていなかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「何か、全員でいると走ってばかりだよな俺って!」

『お前が悪いということで、諦めろ』

「何でだよっ!ん?」

 

背中を預けて戦う仲間なのに、たまに本気で自分の息の根を止めに来るのは

何故なのかと考える一夏だったが、相棒から返ってくるのは

冷たいものであった。

そうやって、あてもなくひたすら逃亡を続ける中、自分に向けられる

いくつもの敵意に気が付く。

 

「弾達じゃないな。数が多いし……出てこい!」

「貴様が、明が連れてきたという魔弾戦士だなっ!」

 

一夏の前に現れたのは、忍び装束に身を包んだ者達だった。

覆面から覗かせる目には、ギラギラとした炎が灯されていた。

 

「ざっと見積もって、30人ってとこか……」

「我らは、明と共に修業の日々を送り、技を磨いてきた!」

「全ては、魔弾戦士の力となり、この世界を守るため!」

「そんな我らが、仕えるべき主君と言っていい魔弾戦士の力を

 見せてもらうぞ!」

『で?その本心は?』

 

声からして一夏の前に現れたのは全員男で、自分達が支えるに足りる存在であるか

一夏を試すようだが、ゲキリュウケンは彼らの目的はそうでないことを

見抜いていた。

 

「「「「「明と付き合っているなんて、認められるかっ!!!」」」」」

「うおっ!?」

『やっぱり、そういう類か……。

 つくづく似た者同士だな、お前達は』

 

人を吹き飛ばすような勢いの怒声に一夏は、たじろぎ

ゲキリュウケンは自身の勘が当たってげんなりする。

明自身は気が付いていなかったのだろうが、ゲキリュウケンは明が

一夏のように多くの異性に思いを寄せられていたのではないかと

考えていたのだ。

 

「ほほほ本当なのか、貴様!

 あ……明とつ、つつつ付き合っているって言うのは!」

「うううウソなんだろろろ?

 どうせ、虎白のははははは早とちりなんだろ、オイ!」

「そうに決まっているだろ!

 あの明だぞ!

 わき目も降らずひたすら修行して、恋愛ごとには一切興味を

 持たなかったあの明が!

 眉目秀麗!文武両道!成績優秀な完璧超人の明が!

 そんなマンガみたいに一目惚れとかじゃあるまいし!」

「いや、嘘でも冗談でもなく俺と明は、付き合っている

 恋人同士だけど?」

「「「「「ほきょぉぉぉっっっっっ!!!!!?」」」」」

『無自覚で止めを刺したか……』

 

現実を受け入れたくない男達は、必死に虎白が言っていたことを

早とちりだ間違いだと必死になって現実を否定しようとするが、

一夏(鈍感)の悪意無き一言に容易く現実を突きつけられて奇声を上げる。

 

「おい、しっかりしろ!」

「誰か、救急車……救急車を!」

「息……して、ない!?」

「バッカやろう!

 腹くくっとけって言っただろうが!

 まだ、希望はある!

 こ、い……人って言ったって、きっとキスどころか手をつなぐことも

 まだしてないような……う、初々しいものに違いない!」

 

一夏の一言で半数以上が地面に手を突いたり、呼吸が止まったりするも

残りのメンバーは、まだ自分達にも逆転の目があると鼓舞する。

噛みしめた口や、握ったこぶしから血を流して。

 

「う~ん、キスはもうしたかな~/////」

「「「「「%ぎゃ&ぼ$#@ぬ☆?\^へっっっ!!!!!」」」」」

『(キズでこれなら、それ以上のことを毎日人前で

 やっていると知ったらショック死するんじゃないか、こいつら?

 というか、何故こいつはキスより恥ずかしいことをしているのに

 そんなに恥ずかしそうに言う?)』

 

照れくさそうに話す、一夏(鈍感)の悪意無き一言に男達は

先ほど以上の声にならない奇声を上げる。

そんな彼らを見ながら、ゲキリュウケンは自分が“見させられている”キス以上に

人に言えない桃色空間のことを知ったら、彼らはあの世に

旅立ってしまうのではないかと冗談抜きで考える。

目の前で一人残らず倒れて痙攣する男達を見ると、十二分にそれは

考えられた。

 

「ええい!

 もう、こいつが明と付き合っていようがいまいが関係ねぇっ!

 IS学園なんて、周りが全員女なんて、夢のハーレム天国で

 青春している男に正義の鉄槌をくだせぇぇぇっ!!!」

「「「「「うおおおっっっ!!!!!」」」」」

「ハーレム天国って、こっちの苦労も知らないで……」

 

倒れ伏していた男達は、ゾンビの如く一斉に立ち上がると滅茶苦茶な言葉を

並べて一夏に襲い掛かる。

刀やクナイ、鎖鎌を構えて向かってくる彼らに一夏はため息をこぼしながら

構えを取る……。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「「「…………」」」

「……死んだか?」

「ご愁傷様……」

「まだ、生きとるわっ!」

「し、しぬ……死んじゃう……」

「勝手に殺さないでよ~。アカメ~、クロメ~」

 

とある世界の川辺で“鎧”を着込んだはやて、なのは、フェイトは息も絶え絶えに

死にかけており、監督役であるアカメとクロメに渾身のツッコミを入れた。

カズキの課題をクリアした3人は、基礎体力作りを行っていた。

 

「少し休憩するか」

「でも、3人とも体力無さすぎ……。

 本当に、戦闘がメインなの?まだ、カズキが作ったメニューの半分もできてないよ?」

「返す言葉もございません」

「というか、こんな鎧着て川を泳ぐなんてこの世界の訓練メニューは、

 色々とすごすぎる……」

「こんなのできる人いんの?」

「私やクロメは違うものをこなしていたが、タツミに一夏、弾も

 できるぞ?」

「何回も溺れてたけどね」

 

体力回復のために一休みするなのは達だったが、クロメの呆れ具合に

ぐぅの音も出なかった。

無表情でとげのあることを言ってくるので、なのは達の心には

グサリと刺さるものがあった。

その間に重たい鎧を着ての水泳という正気を疑う訓練メニューに疑問の

声を上げると、身近にできる人がいて何も言い返せなくなる。

 

「最近では、お前達が着ている鎧に更に重りをつけてユーノが泳いでいたぞ。

 3倍の距離を」

「「「いぃぃ!?」」」

「“人一倍弱いから人の倍以上やらないと強くなれない!”って」

 

自分達が知らないところで強くなる努力をしていたユーノに、なのは達は

唖然とする。

 

「体力作りは、大事だ。ここぞという時に、生かされてくる」

「ありすぎて困るなんてこともないからね」

「訓練はどう?アカメちゃん、クロメちゃん」

「セシル、来てたのか」

「3人ともまだまだだね」

 

基礎体力の大切さをアカメが説いていると、白衣

を着た女性セシル・クルーミーがやってきた。

 

「大変みたいね、3人とも。

 私みたいな技術者は、裏方からサポートしたり、

 こんな差し入れをするぐらいしかできないけど……」

「セシルさんのさ、差し入れっ!?」

「いいですよ!そんな気を使わなくても!」

「そ、そうですよ~!セシルさん達には、色々と十~~~分にお世話に

 なってますし!」

「これ、碓氷さんが作ったリカバ茶を私なりにアレンジしてみたから、

 遠慮しないで飲んでね♪」

 

セシルが用意した差し入れと聞いて、なのは達は慌てふためくがそれに構わず、

セシルは差し入れのドリンクを取り出す。

絵本の魔女が煮込む薬のように、この世のモノとは思えない色をして煙を

吹き出す飲み物?を……。

しかも、一夏とジノを飲んだだけで気絶させたカズキのドリンクを

アレンジしたという、まさに余計なことをして。

 

「さあ、休憩は終わりやで二人とも!」

「そうだね、はやてちゃん!」

「時間が無いもんね!」

 

差し出された飲み物?を無視して、3人はすぐさま立ち上がって

川へと飛び込んで猛スピードで泳いでいく。

 

「しっかり、水分補給しないと危ないわよ~。

 おいしいリカバ茶をもっとおいしくしたのに……もう!

 体を壊したら元も子もないのよ?」

「セシルの料理を食べた方が、体をこw」

「クロメ、しっ」

 

泳いでいくなのは達を心配するセシルだったが、クロメは

セシルが作ったものを食べたりした方が、体に悪いとツッコもうとするが

アカメにやんわりと止められた。

セシルの味覚はなかなか個性的であり、カズキの栄養ドリンクを飲んでも平気

なほどである。

彼女の差し入れを食べたことがあるものは、身をもってそれを知っているのだ。

なのは達もその例にもれず、食べた瞬間仲間の一人、

シャマルの顔が浮かんだとかそうでないとか。

そして、セシルとシャマルを決して二人一緒に厨房に立たせてはいけないと

なのは達は固く決意していた。

 

「せっかくだから、あなた達にあげるわ」

「いや、遠慮しておく」

「のど渇いてないし」

 

セシルの提案を冷や汗をかきながら断るアカメとクロメであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ほう~。これが、人間の町か~。

 なかなか風情があるでないか」

「龍士(りゅうし)さま。我らの目的は、観光ではないことをゆめゆめ忘れぬよう……」

「わかっておる!だが、これぐらいは許してもよかろう。

 それに、我が目に適う女子など早々……」

「どこに行った!」

「逃がしませんわよ!」

「修行の成果を試すから、サンドバックになりなさい!」

「何も怖くないから、出ておいで~♪」

「流石のお姉さんも話してくれなきゃ、プンプンよ~」

「記憶を読み取るメカを作る?そうするには……直接頭に電極を刺して……」

「いたぁぁぁ!!!!!?」

 

一夏が明の親衛隊(?)と激闘している頃、着物を着た若者とその従者らしき者が、

村に現れた。龍士と呼ばれた若者は、細見だが筋肉がついており

面食いの女子が見たら黄色い声を上げそうな美男であった。

そんな彼は、何やら物色しているとその目に、血眼になって一夏を

探す箒達が目に入り、大声を上げる。

 

「そこの者達。喜べ、お前達を我がt……」

 

髪をかきあげながら、箒達を呼び止めようとする龍士だったが、

彼女達は龍士のことなど目にも入れず一夏を探しに走り去っていく。

 

「おい、待てお前達!」

「待つのはあんただ、ダァホ」

 

箒達を呼び止めようとする龍士の頭に、従者の少年が手刀を

叩き込んで止めにかかる。

 

「ぬぉぉぉっ……。

 何をする佐助(さすけ)!」

「もうちっと、考えて行動しろって言ってんだ。

 あの者達は、至って普通の人間。

 龍士さまの妻には、ふさわしくありません」

「しかしだな、佐助。

 そういるものでもないだろう……我らが龍の力を

 宿せる女子など……」

 

 

 

 

「見つけたぞ、お姉ちゃん!」

「ラ、ラウラ……//////////////」

 

ラウラはかくれんぼうで見つけたように、屋敷から逃亡した明を

見つけてムフッ!とした顔をした。

 

「ふっ、どうやらこの訓練は私が一番乗りのようだな♪」

「無邪気なお前が、うらやましいよ」

「うん?」

 

青春の代表格である恋愛鬼ごっこ(命がけ)を何か勘違いしているラウラに、

明は脱力する。

 

「……せっかくだ。この村を案内するよ、ラウラ」

「“でーと”という奴だな!」

「あははは……」

「いやー!!」

「わははは!!

 我が側室になりたいのだろ?遠慮などいらんぞ!」

「「ん?」」

 

毒気が抜かれた明は、ラウラに村を案内しようとすると女性の悲鳴が

耳に入る。目を向けると、高笑いする龍士が女性を抱きかかえていた。

 

「だから、やめろっつーの」

「ぐおお……。佐助、従者の分際で……!」

「お目付け役としての当然の責務だ。

 何度も言っているでしょう。見境なく誘うのは、やめろって……」

「何を言っている!余ではなく、娘の方から……」

「誰がどう見ても誘拐にしか見えんわ!」

「あれは、日本の“まんざい”という奴なのか、お姉ちゃん?」

「違……わない、のか?」

「む……っ!

 う、美しい――」

「また……ん?」

 

 

従者が主に手刀を叩き込んで、暴走を止める光景を目にしたラウラは、

漫才かと尋ねるが明は強く否定することができず、何とも言えない笑みを浮かべる。

そんな二人のやり取りを遠目に見た龍士は、明の横顔に心奪われた。

 

「そこの娘!

 余の名は湖月龍士(こげつりゅうし)。

 オヌシ、名は何と申す?」

「なんだ?ナンパという奴か?」

「違う!オヌシでなく、そっちの女子の方に聞いておるのだ!」

「……どちらにしろ、ナンパに変わりないじゃないか。

 すまないが、急いでいるので……っ!」

 

明とラウラの前に、人間と思えないスピードで移動した龍士は、

上から目線で名前を尋ねてくる。

ナンパかと首を傾げるラウラに、明は何かに気付いたのかここを

離れようとする。

 

「ははは!そう照れるでない!」

「くっ!」

「ほぉ……」

 

立ち去ろうとする明の手を掴もうとする龍士だったが、明はラウラを

抱えて飛びのいて距離を取る。

その手際に、龍士は感心した声を上げる。

 

「どうだ、佐助!?」

「悪くありませんね。龍の因子とも相性が良さそうですし。

 ただ……」

「ようし!ならば、決まりだ!」

「聞けよ、人の話を」

「オヌシを余の妻にしてやる!!!」

「……はぁぁぁっ!!!?」

「何だと!?」

 

明を見て一人納得する龍士は、佐助の言葉を聞かずにとんでもないことを

言いだして、明とラウラを驚愕させる。

 

「簡単に説明しますと、こちらの龍士さまの結婚相手を探していまして。

 どうやら、あなたを気に入ったようです」

「突然何を言っているんだ!

 大体、結婚相手ってあなたは人でなく土地神ではないか!」

「気づいておったのか。

 瞬時に見抜く洞察力、ますます気に入ったぞ!」

「土地神?」

「土地神とは、その名の通り土地を治める神さまのことですよ。

 小さなお嬢さん。

 この方は、仙水湖の土地神にあらせられます」

「心配せずとも、我ら龍族は異種類婚によって栄える一族。

 人だのなんだのとは、些細なことよ」

「そういうことを言っているんじゃない!」

 

龍士が神の一種だと気づいていた明は、深く関わらず彼らに去ってもらおうとするが

明の話が頭に入っていないのか、龍士は上機嫌になっていくだけだった。

 

「とにかく、初対面のよく知らない相手と結婚などできるわけがないだろう!」

「ふははは!いやよいやよも好きのうちという奴だな!

 照れずとも、オヌシの本心は分かっておるぞ」

「お姉ちゃん、あいつは何を言っているんだ?

 結婚なんてできるわけないだろ。

 お姉ちゃんは、お兄ちゃんと結婚するんだから」

「ラウラ/////!?」

 

人の話を聞かないタイプの龍士を、不思議なものを見る目で見る

ラウラは当然のように明に一夏と言う相手がいることを口にする。

 

「お兄ちゃんだと?

 何を言っておるのだ、娘よ。

 血のつながりのある者が結ばれるわけがないだろ?」

「いや、別にお兄ちゃんとお姉ちゃんに血のつながりはないぞ?

 とにかく、お前とお姉ちゃんは結婚できない。

 お姉ちゃんはお兄ちゃんと同じ部屋に住んでいたし、一緒にお風呂に入った

 こともある。

 それに、人には言えない“えっちなこと”というのもやっている……と

 兄様が言っていたぞ!」

「は、裸の付き合いをしているだとっ!?」

「違わないかもしれないけど、言い方っ////////////////!!!」

 

眉をひそめる龍士に構うことなく、ラウラは明と一夏の付き合いを

喋っていく。

その内容に驚く龍士だったが、完全な誤解と言い切れない言い方に

明は顔を羞恥で染めて慌てふためく。

 

「おのれ~!余の妻になんという破廉恥なことを~!!

 こうしてはおれん!一刻も早く城へと連れていき、祝言をあげるぞ!」

「誰が、貴様の妻だ!結婚するなど一言も!」

「すいませんが、一緒に来てもらいます」

「なにっ!?

 (私が後ろを取られただと!?)」

「お姉ちゃん!」

 

思い込みで暴走を加速させていく龍士に、反論する明だったが佐助に背後を

とられ動きを封じられてしまう。

その際に、ラウラは明から離され龍士と佐助は空中に出現した

波紋へと消えていく。

 

「よせ、ラウラ!今のお前では、手に余る!

 私は大丈夫だから、一夏達に知らせてくれ!」

「くっ!お前達、覚悟しておけ!

 お姉ちゃんは、必ずお兄ちゃんが助けに行く!!!」

「いいだろう。その者には用がある……余の妻を辱めた礼を

 してくれる!」

「いい加減、話を聞け!」

 

ラウラは、連れ去られようとする明を追いかけようとするが

この二人の実力を感じ取った明はラウラを呼び止める。

悔しさで顔を歪めるラウラは、一夏と共に助けに行くと約束するが

同じく龍士も一夏に怒りを燃やす。明の言葉を全く耳に入れず。

 

「お嬢さん、悪いことは言わない。余計な事は、しない方がいい。

 こんなんでもこの方は、神霊だからね。

 人間がどうにかできる相手じゃないよ。

 まあ、彼女は悪いようにはしないから……」

 

そう言い残し、彼らは明を連れてラウラの前から姿を消した。

 

 

 

「あれ?」

『どうした、一夏?』

「いや、何かわかんないけど胸騒ぎが……」

 

自棄となって襲い掛かってきた男どもを軽く片づけた一夏は、

山のように積まれた彼らを背に、何か不穏な気配を感じるのであった。

 

『多分、それはあれだろうな……』

 

そうやって考えに耽る一夏を、恋する乙女たちが視界に入れるまで

残り十数秒――。

 

 





なのは達は、アカメ達監修の元、基礎体力つくりをしていました。
そこにカズキのドリンクをセシルがアレンジするという
恐ろしいことを(汗)
原作のように、彼女の味覚は個性的?でカズキの
ドリンクも平気でグイグイと。

後半の部分は、前回と同じくジャンプのゆらぎ荘から。
というわけで次回、一夏が――(ガクブルガクブル)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。