インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話です。
もうすぐ、GW。
たまったガンプラを作ったり、遊戯王のデッキを作ったり、
家の片づけと忙しくなりそうwww
ビルドダイバーズやVRAINSを見てるとなおさら♪

後、家族で楽しむために色んなDVDをレンタルしないと。

今回、新キャラ登場!


夏の思い出を作ろう

「太夏も一夏もまだ帰ってきませんね~。雅さん?」

「そうね~。

 よっぽど、すごい修行をしてるんでしょうね。

 束ちゃんのところに行った千冬は、連絡をたまに入れるけど、太夏は

 何してるのかしら?

 一夏の方は、カズキ君が連絡をくれるからいいけど、太夏は一人で

 別行動……。

 ……また、教育が必要か……な?ふふ♪」

「じゃあ、いつ帰ってきてもいいように美味しいものを

 たくさん用意しておかないと♪」

 

夏も中盤に差し掛かってきたある日、織斑家の台所では

洗い物をしながら冬音が、修行に出たきり帰ってこない一夏達が

何をしているのかとふけっていた。

連絡は入っているので、無事だというのは分かっているが、連絡を

寄こさない太夏に雅は“キレイ”な笑顔を浮かべるのであった。

 

ピンポーン。

 

何にしても、くたくたになって帰って来るであろう家族のために

食事を準備しようとする冬音と雅の耳に、家のチャイムの音が届くと

続いて玄関のドアが開く音が聞こえた。

 

「ただいま~」

「噂をすれば、何とやらね?」

「一夏、帰ってきたんだ♪

 太夏も一緒かな?おかえり~」

 

チャイムを鳴らして家に入ってきたのは、息子の一夏だとわかり

冬音は、早足で玄関に向かう。

やけに弱弱しい一夏の声に疑問を持つことなく……。

 

「遅かったね~。あれ?

 みんなも一緒だったの?」

「「「「「「「「お、お邪魔しま~す……」」」」」」」」

「い、生きて帰ってこれた……ガクッ」

『おい、一夏!』

『一夏だけでなく、全員限界のようだ』

 

玄関に向かった冬音が見たのは、ボロボロとはこのことを言うというような

姿の一夏と弾、7人の専用機持ちだった。

そして、糸が切れた人形のように倒れた一夏を合図に、全員がその場に

倒れ伏した。

 

「みんな?そんな所で、寝たら風邪ひくよ?」

「あらあら。しょがないわね~」

 

呑気な声で首を傾げる冬音の傍で、雅は一夏達が

どんな修行をしてきたのかを察したのか、楽しそうに微笑むのであった。

 

「麦茶が……麦茶がうまいな……!」

「生きてる……俺達、生きてるんだよな……!」

「今まで飲んだ、どの麦茶よりもおいしい……くっ」

「ええ……素晴らしいお味ですわ」

「たかが、麦茶で何泣いてんのよ、あんた達」

「そういう鈴だって……」

「体中の細胞が、喜びの声を上げているぞっ!」

「ラウラちゃんの言う通り、本当に私達の体も喜んでいるわ!」

「感謝感激……」

『随分と大げさな……と言いたいが……』

『至極まともな感想である』

 

雅によって、リビングに“運ばれた”一同は、冬音が持ってきた

麦茶を飲むと涙を流して喜んでいた。

 

「みんな、よっぽど喉が渇いていたんだね~。

 どんな修行をしてきたの?」

「「「「「「「「「っ!!!」」」」」」」」」

 

悪気など一ミリもなく、冬音が何気なく修行の内容を一夏達に聞くと

全員くわっ!という効果音が響きそうなぐらい、目と口を見開いて

固まったかと思ったら、ガタガタと震え出した。

 

「ん~?」

「あらあら」

 

そんな彼らの様子を冬音は不思議そうに頭に?を浮かべ、

雅は苦笑する。

 

『(思い出したくはないだろうな、全員。

 口にしたら、あの地獄が頭の中を駆け巡るのだから……)』

『(毎日聞いただけで吐き気がする内容の基礎体力作りメニューをこなし、

 その後は疲労が最も出るタイミングで、今の彼らがギリギリ勝てない強さあるいは

 戦闘スタイルの相性が最悪な相手との模擬戦をひたすら行う……。

 気絶したら、回復させてそれを一日にできるギリギリの密度、回数になるまで

 やらせる……人はそれを生き地獄と言う……)』

『(他にも様々な事態を想定しての内容も行われたが……よく、あんな

 内容をやらせたものだ)』

 

ゲキリュウケンとゴウリュウガンも共に、地獄の修業を生き抜いてきたが、

彼らも思い出すだけで震えが止まらなかった。

そして、クロノやレジアス中将の元に集まった局員達も同じように

地獄のメニューを受けさせられ、現在進行形で悲鳴を上げていることを

彼らは知らない。

 

「冬音。

 流石にみんな、帰ってきたばかりで疲れているみたいだから、ゆっくりさせてあげましょう。

 ところで、太夏はどうしたの?

 一緒に修行してたんじゃないの?」

「あ~。父さんなら、俺達とは別行動してたんだ。

 俺達と合わせるようなレベルじゃないからって……どこかマンガに出てくるような

 秘境みたいな場所で冒険して楽しんでるんじゃないかな?

 ター〇ンごっこしたり、10秒で千ステップの動きをするダンスを猿の王様

 と踊ったりして」

「あの子は、もう。

 冬音や一夏達をほったらかして、遊んでいるなんて~~~……。

 冬音?帰ってきたら、これを持って迎えてあげなさい♪」

「これって、前に雅さんが貸してくれた……」

『な、何でそんなものを……?』

 

一夏から聞いた太夏の現状に、雅は仕方ないなといった感じで微笑むと

冬音にあるものを渡す。

そのあるものを見て、ゲキリュウケンは引きつった声を上げる。

いや、ゲキリュウケンだけでない。

雅と冬音以外が引きつったり、怪訝な表情をしていた。

どこからどう見ても、それは“鞭”であった。

 

「ああ、これはね?

 前に雅さんが、男の人は女の人に叩かれるのが嬉しいって貸してくれたんだ~。

 太夏もね?

 叩くと止めてー!って言ってたけど、喜んでたよ~。

 泣きながらそう言ってくるときは、嬉しい証拠なんだよね、雅さん?」

「そうよ♪

 特に太夏みたいな素直になれないツンデレさんは、そういう時は

 本心と真逆のことを言うのよね~」

「あの時の太夏は、泣きながらおびえて可愛かったなぁ~」

「「「「「「「「(て、天然のドSだ!)」」」」」」」」

「何故叩かれて喜ぶのだ?」

『(一夏のドSは、彼女からの遺伝だったのか!?)』

 

ごくごく自然に、太夏の泣き顔を褒める冬音とそれを勧めた雅にラウラ以外の全員が

戦慄した。

そんな冬音を見て、ゲキリュウケンは一夏のサドの意外なルーツに驚愕を禁じえなかった。

 

「(真逆のことって……父さん、ガチで怖かったんじゃねえのか?)」

『(と言うか、太夏をイジメて楽しんでいるのは冬音ではなく、雅の方ではないのか?)』

「どうかしたのかしら、二人とも?」

「『いえ!何でもありませんです!』」

 

太夏を楽しませるというより、自分が太夏をイジメて楽しんでいるのではと雅を

訝しむ一夏とゲキリュウケンに、雅が微笑むと二人は背筋を伸ばして何でもないと

答える。冷や汗を流しながら。

 

「それで、みんな?

 修業は終わったから、残りの夏休みはゆっくりできるのかしら?」

「それは……ですね……」

「ゆっくりできるには、できるみたいなんですけど……

 はっきりしないんですよね……」

「碓氷先生が、とりあえずここまでって言って、帰させられたんです」

「ただ、その時の碓氷先生の顔が後ろからだったけど、すごくいい笑みを

 してたのがわかるから不安……」

「簪、その不安はおそらく……いや確実に現実となるぞ」

「そうよね……。

 あのサディスティック星出身のドS教師が、意味もなく私達を休ませるわけがないわ」

「昔からそうだった……。

 計画していた訓練をある程度進めると、成長による修正を訓練に反映させるために

 インターバルを挟む……。

 だが!それが罠なのだ!

 反映後の訓練は、反映する前のものが優しかったと思えるほどになるのだ!」

 

これで修行は終わったのかと疑念を感じる者達に、カズキの本性を知る箒達は

本番はこれからだと直感し遠い目をする。

特にドイツで、それを直に味わったのかラウラの慌てようはただ事ではなかった。

 

「いや……今回のはそれだけじゃ済まないかも……」

「俺達、聞いちゃったんだ……」

「聞いたって……何よ、一夏?」

 

そんなラウラの主張がほんの序の口と言わんばかりに、弾と一夏が口を挟む。

暗い影が差しているのを見えるぐらい落ち込む弾と一夏に、鈴は聞きたくないけど

聞かないわけにはいかないと、意を決して尋ねる。

 

「こっちに帰ってくる前に……ザンリュウジンが

 カズキさんに聞いていたんだよ。

 どうして、ここで休みを入れるのかって。そしたらさ……

 “だって、楽しい思い出があった方がキツ~~~い修行(じごく)

 乗り越える原動力になるだろ?”って……」

「しかも、すっっっごい輝いた笑顔で……」

『あいつは、やると言ったら必ずやる有言実行なタイプだからな……』

『楽しかった思い出と言う原動力がなければ、やりきれない

 修業内容になるのは、確実である』

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

一夏と弾、魔弾龍達から告げられた内容に箒達は言葉を失う。

カズキの訓練を受けてきた彼女達は、一夏達の言葉が脅しでも冗談でもない

ことを察してしまったのだ。同時に、それから逃げることができないことも……。

 

「あは……ははははは!

 そ、そんな先のことを考えてもしょうがないわよ!

 いいい今は精いっぱい、高校生の夏を味わいましょう!」

「そうだよな!先のことより、今を楽しまないとな!」

 

鉛のように重たくなった空気を吹き飛ばすために、夏休みを楽しもうと

盛り上げる鈴と弾だったが、その目からは涙が流れていた。

強がって現実逃避して目を背けるしか、迫りくる恐怖(じごく)

忘れる方法がないのだ。

 

「みんな、楽しそうだねぇ~」

「そうね、冬音。こうやって、苦難を乗り越えていくのも青春よ、みんな♪」

「やあみんな、お待たせ~。

 あれ、なんか空気が重たいね?」

 

引きつった笑いを上げる一夏達をどこか勘違いする冬音と雅が温かく見守っていると、

カズキがすっとぼけた声を上げてリビングに入ってきた。

 

「カ、カズキさん……」

「どうした、みんな?

 オバケを見たような顔をして?」

「「「「「「「「べ、別に…」」」」」」」」

「まあ、いいや。

 さて、突然だが諸君!

 せっかくの夏休み……人里離れた忍者の里へ旅行に行くぞっ!」

『イェ~イ!』

 

何の脈絡もなくカズキから告げられた内容に、一夏達は

呆然となり、思考が全く追い付かなかった――。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「――――っ」

 

広大な屋敷の庭で、白装束の少女が井戸から汲んだ水を

かぶり、禊をしていた。

少女の体には白装束がピタリと張り付いて肌の色が、うっすらと

透けて見えた。

もしも異性が見たら、全力で息を潜めて目に焼き付けることになるだろう。

最もこの屋敷は、少女の家であるためそんな不審者の心配をする必要は

ないのだが、どこからか誰かが気配を殺して近づいてくるのを

少女は感じ取った。

 

「っ!」

 

タイミングを見計らって、少女がその場から飛びのくと少女がいた場所に

クナイが飛んできた。

そして息つく暇もなく、少女へクナイが襲い掛かるが、少女は

鮮やかな体裁きで苦も無くそれを避けていく。

 

「っ!?」

 

しかし、襲い掛かるクナイの動きを見誤ったのか胸元をかすってしまう。

 

「あははは!ちょっとしたあいさつ代わりのつもりだったのに、

 都会暮らしで、腕が落ちたんじゃないの明!」

「虎白(こはく)か」

 

白装束の少女……明の元に鈴のように髪をツインテールにまとめた小柄な

少女が妙に自信に満ちた顔で、現れた。

 

「久しぶりだな、虎白。

 しばらく、見ない間に腕を上げたようだな」

「まぁ~ね~♪

 もう、明を超えちゃったかn……」

 

上機嫌に胸を張る虎白の服に、突然いくつもの切れ筋が走った。

 

「んなっ!?」

「確かに腕を上げたようだが、まだまだだな。

 私に隙ができたと思ったみたいだが、相手を誘うためにわざと隙を

 作るということもある」

 

驚く虎白に、いつの間にどこからか取り出したクナイを手にして

明は先ほどの攻防の解説をする。

先ほど、虎白の攻撃は避けそこなったのではなく、彼女の油断を

作るために避けそこなったように見せたのだ。

その一瞬の隙に、明は電光石火の早業で反撃を行っていたのだ。

 

「過度な自信は、慢心となって自分の足元をすくう……

 気を付けた方がいいぞ」

「くぅ~~~」

 

虎白は、悔しさで目尻に涙をためて明をにらみつける。

その時、クナイがかすった明の胸元から白装束の下に

あるものを目にし、自分のものと見比べる。

言葉に表すなら、明は“ポヨ~ン♪”で、虎白のは“ちんまり……”と表現される。

何がとは敢えて言うまい。

 

「…………っ!!!」

「虎白!?どうした!おい、やめろ!」

「(何なの何なの何なの!

 何で、あんなに大きくなってるのよ!

 同じ歳で、従妹なのに、この差は何なの!?)」

 

原田虎白(こはく)。

明とは、母親が姉妹の従妹であり、幼い頃から明をライバル視

している少女である。

何をとっても明に勝てたことが無い虎白は、今また最大級の敗北感に

自棄となってクナイを投げまくる。

 

「かっかっか!

 相変わらず、仲がいいの~お前達!」

「「おばば様!」」

 

クナイが飛び回る中、どこからともなく声が聞こえ、二人が

顔を向けると、そこには最初からいたかのように一人の老人が笑いながら

立っており、明と虎白はその老人……祖母の元へと駆け寄る。

 

「二人とも共に、腕をあげておるわい。

 特に、明よ。

 魔弾戦士殿達の元に行く前は、ただ硬いだけだったのに、

 硬いだけでないしなやかな強さを手に入れたようじゃな?」

「ええ。彼らのおかげで、色々と」

 

祖母の言葉に、明は苦笑する。

一癖も二癖もある一夏達と関わって、自分もかなり変わったという

自覚はあるようだ。

 

「それに若い頃の儂に似て、ますますぐらまらすになってきたわい♪

 さては、お主……“男”ができたな?」

「なっ///////!」

「明に、男っ!!!?」

 

いやらしくニヤリと笑いながら、明の成長の理由を推察する祖母に

明は図星を突かれて驚く。

それ以上に、虎白は激しく動揺する。

 

「いやいやいやいや!おばば様!

 いくら何でもそれはないよ!

 明は、昔から男キライだったし!」

「わからぬぞ?

 明みたいに、あまり男と関わってこなんだ者ほどコロっと

 簡単に落ちるものじゃからの~。

 それにほれ。揉むと大きくなると言うし、その者に夜な夜な揉ませて……」

「揉ませるわけないでしょ////////////!

 確かに、あいつには事故で揉まれたことはあるけど……」

「揉ま、れ……た?」

「ほう~~~。なるほどの~」

「はっ!」

 

口を滑らせたことに気が付く明だったが、時すでに遅く

祖母はニヤニヤと笑みを浮かべ、虎白は顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。

 

「そ……そんな……!?

 私なんか、隣の席の子と話すので精一杯なのに……。

 男なんか眼中にないって感じの使命一筋な明が……大人の階段を

 登っているなんて……!?

 うわーーーん!!!

 明のムッツリスケベェェェッ///////////////////!!!」

「虎白っ///////!?」

 

虎白の頭には、朝日が差し込むベッドの上に

生まれたままの姿で男(顔はボヤケている)と抱き合っている明

の姿が映し出され、耐えられないとばかりにその場から駆け出す。

明が呼び止めるもその声は、虎白の耳には届かずあっという間に

その姿は見えなくなる。

 

「これもまた青春よの~。

 虎白のすたいるは明に比べれば、貧弱じゃが何事も

 使いようじゃと言うのに。

 さて、冗談はこれぐらいにして……。

 明よ、支度をせい。まもなく彼の者達……魔弾戦士殿達がやって来るぞい!」

「やって来るって……一夏が!」

 

祖母から一夏達の来訪を知らされた明は、何故?とか走り去った虎白を

追いかけるのを忘れて、すぐさま自室へと戻り着替えの服を探し回るのであった。

 

「うう~。まさか、恋愛方面まで先を越されるなんて……。

 あの堅物委員長にその手で負けるなんて、ショック~。

 負けられない……。

 明の男よりずっとずっとず~~~っっっと素敵な男子と

 大恋愛してやるんだからっ!!!」

 

飛び出した虎白はトボトボと落ち込んだ空気を放ちながら歩いていた。

途中、“明に男ができるなんて……”と何度もつぶやいたことで、大勢の者が

それを耳にし、もう数時間もかからなず村中に知れ渡ることになることを

虎白は気づいていなかった。特に、聞いた瞬間石像になったみたいに

固まった男が大勢いることなど、彼女は知る由もなかった。

 

「ねぇ、そこの彼女~♪

 僕とお茶しない?」

「え?誰?」

 

一人歩く虎白に、今のご時世では滅多に出会えない如何にも軽そうな

男が声をかけた。

金髪に頭にサングラスをのせ、服を少しだけ着崩した男は誰が見ても

チャラそうという印象を抱くだろう。

それ以前に、周りの落ち着いた雰囲気とは合っていない服装に

違和感がバリバリである。

 

「(はっ!これって、いわゆるナンパって奴では!

 ふふふ、どうやら私の魅力は自分で思っている以上のようね!

 だけど……うん。この人は無いかな……。

 なんて言うか、全体的にこう……軽そうだし、弱そうだし……)

 ええ~と、お誘いはうれしいけど、その気は無いから……じゃ!」

「おい!待てよ!」

 

虎白は、人生初のナンパに浮かれるも目の前の男は無いと早々に

断りを入れてその場を去ろうとする。

だが、男はその対応が癇に障ったのか乱暴に虎白の肩を掴む。

 

「痛っ!」

「そんなこと言わずにさ~。

 俺に夏の思い出をあげると思ってさ!」

「ちょっ!だ、誰かぁっ!」

 

まともにやれば、こんなナンパ男等虎白の敵にもならないのだが、

相手の予想外の行動に虎白は恐怖でパニックとなって、助けを求める。

 

「いでっ!?」

「こんな低レベルなナンパって、初めて見たよ」

「へ?」

 

自分の肩を握っていた男の手が離れたかと思うと、続いて男の苦悶の声を

耳にし、虎白が振り向くと見知らぬ男がナンパ男の手を捻っていた。

 

「(何、この人!女の子のピンチに現れるなんて、王子様みたい/////////!)」

「お兄さん?

 嫌がる女の子を無理やり誘うのは、カッコ悪いんじゃないかな?」

「く、くっそ~!覚えてろぉ!!!」

「捨てセリフに覚えてろって」

 

自分を助けてくれた王子様?に虎白が見惚れてる間に、

ナンパ男は退散し、その場には二人が残される。

 

「君、大丈夫だった?」

「は、はい////////!」

「お~い。何やってんだ~」

「悪い、今行く!

 じゃあ、連れが呼んでるからこれで」

 

虎白を助けた王子様?は、彼女の無事を確認するも当の本人は、

少女マンガのような展開に、頭が沸騰寸前であった。

 

「あっ、待って!私、虎白!

 あなたは/////!」

「俺?俺は、織斑一夏」

「織斑……一夏」

『…………』

 

自分の元から去ろうとする王子様?にせめて名前だけでもと

尋ねる虎白に、にっこりと微笑んで自分の名を告げた一夏は、彼を呼ぶ

弾達の元へと駆けていった。

 

「これは……正に運命よ!!!

 あんなカッコイイ人を彼氏にすれば、明もビックリよ!」

 

一夏が去った後しばらく呆けていた虎白は、体中からピンク色な幸せオーラ

を放出して、これから先の未来を妄想もとい想像してウキウキ気分となる。

……この後、人生最大の絶望が待ち受けているなど露も思わずに。

 

 

 

「突然、駆け出してどうしたのだ、お兄ちゃん?」

「あっちで、助けを呼ぶ気配がしたからさ。

 ちょっと人助け」

「助けを呼ぶ……気配?」

 

どうやら、一夏は周りに何も言わずに虎白を助けたようだ。

その中で、箒は疑問の声を上げる。

 

「助けを呼ぶ声とかじゃなくて、気配って何よ。気配って」

「俺達が今修行しているものにさ、気配察知して相手の動きを読む

 っていうのがあるんだよ、鈴。

 それで、俺も一夏も声とか音とかを聞くよりも早く、

 気配に気づけるようになってきたんだ」

「まだ、何となくだけどな」

「何かだんだん一夏が、碓氷先生みたいになってきたような……」

「それは今更だと思うよ?シャルロット」

「そうね。簪ちゃんの言うように、一夏君も碓氷先生と同じイジメっ子属性持ち

 だもんね~」

「嘆かわしいことにな……」

「千冬。一夏が自分じゃなくて、カズキ君に似てきたからって、拗ねないの」

『いや、雅。

 こいつが一番に似てしまったのは、やはりあの男のようだ』

 

一夏がいよいよカズキみたいに人外じみたことをやれるようになってきて、

苦笑する彼女達にゲキリュウケンはある男に顔?を向ける。

彼らの後ろから、背中や両手にいくつもの旅行カバンを持っている(?)

太夏が息を切らしてついてきていた。

 

「ぜぇ~ぜぇ~。

 お、お前ら一体何を入れてんだよ……。

 そもそも、何で俺が全員の荷物を持たされてんだよ!」

「それは、もちろん家族をほったらかしにして、一人で遊んでいた

 罰だからよ?」

「遊んでたって、俺も修行してたんだけど……」

「冬音~。太夏が、また鞭を持って遊んで欲しいそうよ~」

「そんなにコレが好きなの太夏?」

「喜んで、持たせていただきます!」

「それで、ゲキリュウケン?

 一夏は、このいじられる宿命の元に生まれたこの人の何が、似たんだい?」

『今しがた一夏が助けたのは……年頃の女の子だ。

 去り際には、目を潤ませてたよ』

 

太夏が持っているのは、ここにいる全員の荷物のようだが、どうしてこんな

理不尽な目に合うのかと文句を言うと、雅と冬音の言葉に自分から持たせてくれと

懇願する。

そうやって、いつもの姉弟?もしくは親子?のやり取りを見てカズキが

ゲキリュウケンに何が一夏に似ているのかと聞くと、返ってきた答えに

冬音とラウラを覗く全員の視線が、一夏に集まる。

 

「何だよ、みんな……?」

「はいは~い。みんな、言いたいことはわかるけど、

 今は明ちゃんの家に急ぎましょ♪

 帰りの荷物は、一夏に持ってもらうからお土産をたっっっぷり

 買いましょう!」

「「「「「「はい!!!」」」」」」

「何で!?」

 

雅の元、心を一つにする仲間達に一夏が驚きの声を上げるが、誰も助け船を

出さなかった。

 

「何でも何も……なぁ?」

『当然の流れである』

「説明の必要がある?」

『人助けもいいけど、同時に自分の首も絞めてるぜ?一夏』

「一夏よ~。

 そういう、女の子の気持ちは分からないとダメだぜ?」

『お前が言うな。お前が』

「太夏~?後で、“お話”をしましょうね~」

『はぁ~~~』

 

魔弾戦士達とその相棒は、それぞれ呆れた声を上げて

ゲキリュウケンは全く成長しない一夏のそういう所に、ため息をつき、

太夏のきれいな川“いき”が決定した。

そもそも、彼らがこうして明の生まれ故郷にやってきたのは、旅行目的ではない。

この村に、保管されている魔弾戦士の資料を調べることである。

カズキは以前にもこの村の資料を調べたが、その時に調べたものは当時戦っていた

ジャマンガのものだけで、全ての資料に目を通してはいないのだ。

その中に、ひょっとしたら未だ謎の多い創生種達に関するものが少なからず、

あるかもと全員の息抜きと織斑家の家族旅行もかねてやってきたのだ。

 

 

 

「ここが、明の家だよ」

「デカっ!」

 

一度来たことがあるカズキの案内の元、目的地である明の家の前に

やってきた一同を代表して、一夏が感想をもらす。

 

「ようこそ、いらっしゃいました。

 魔弾戦士殿――」

 

驚く彼らの前に、明の祖母が音もなく現れ歓迎する。

 

「どうぞ、お上がりください」

「これはこれは、ご丁寧にどうも」

「お世話になります」

「大人数でおしかけ、申し訳ありません」

「今回もよろしくお願いします。

 ここにいる者は、全員魔弾戦士のことを知っていますので、

 秘密裏に話すといった気遣いは無用です」

「え、あ、お邪魔しま……す?」

「「「「「「「「「お、お邪魔します……」」」」」」」」」

 

雅達大人組は、丁寧にあいさつし気圧され気味の学生組(太夏を含む)は、

たじろぎながらあいさつをする。

 

「よく来たな、みんな。それに、一夏も//////////」

「久しぶりだな♪」

 

そんなガチガチ状態のメンバーも、明と会って瞬時に二人だけの空間を形成する

一夏を見て、瞬時に真っ黒い炎を背中に燃やすのであった。

 

「ほほう~。これはこれは♪」

「今年の夏は、色々と面白くなりそうだ♪」

 

青春真っ盛りの少年少女達を見て、明の祖母とカズキは“すご~~~く”

楽しそうに笑うのであった。

 

 

 

「なるほど……此度の敵は、そのような者達とは……」

「ええ。底が、知れない相手です」

 

居間に案内されたカズキ達は、先ほどまで遊び的な空気と打って変わって

静かな空気の中、創生種について話していた。

 

「奴らが何人いるかもわからない上、姿を見せている者も

 一人一人の実力もかなりのもの……。

 打てる手は、全て打った方がいいでしょう」

「もとより、我らは魔弾戦士殿の力になるべく技を磨き、力を蓄えてきました。

 今こそ、その真価をお見せしましょうぞ」

「ありがとうございます」

 

手を合わせ頭を下げるおばばに、カズキも頭を下げ、一夏達も

慌てて同じように頭を下げる。

 

「それにしても、明から聞いておりましたが、

 明と同い年の者達が、魔弾戦士となるとは……」

『魔弾戦士になること、つまり私達に選ばれるかに、年齢や力の強さも関係ない』

『必要なのは、恐れに立ち向かい、己の弱さを認める勇気――』

『要するに、“心”って奴さ♪』

『こいつを選んだのも、ちょうど今の一夏と弾と同じくらいの時だったな』

 

実際に一夏達を見て、意外という顔をするおばばに魔弾龍達、それぞれの

相棒を選んだことを何一つ後悔してないことを告げる。

 

「そうでございますか……。

 ところで、明はそちらでどうでしょうか?

 私としては、ひ孫の顔を見れると期待に胸を膨らませているのですが?」

「おばば様////////////!!!」

「そうですね~。

 まだ3か月ぐらいしか過ぎてないのに、

 IS学園のブラックコーヒー消費量が、年間平均の3倍以上になるぐらいには……

 甘い空気を作っていますね~」

『いや、半分以上はお前と千冬の所為だからな?』

 

真面目な顔で、全く関係のないことを聞いてくる祖母に明は、

顔を真っ赤にして抗議するも、カズキはサングラスをかけた司令官のように

両手を組んでニタリと笑みを浮かべて答える。

ザンリュウジンがツッコミを入れるも、何の意味もなかった。

何故なら、慌てふためく明とニコニコと笑みを浮かべる一夏に

全員の視線が集まっていたからだ。

 

「かっかっか!

 灰色の青春を過ごしてないかと心配しておったが、なかなかの

 リア充っぷりよの~。して?

 一体、どの者とイチャイチャな学校生活を送っておるのじゃ?ん?」

「イチャっ////!?」

「ははは。そんなにイチャついてはいませんよ?」

『どの口が言うか。ど・の・口・が!』

 

祖母の言葉に頭から煙を出す明に対し、一夏はいつも通りで何でもないと言うが

ゲキリュウケンが異論をはさむ。それに同意して、恋する乙女達はギロっと

一夏をにらみつける。

 

「ほう~。では、そなたが?」

「はい。俺が、魔弾戦士のリュウケンドー、織斑一夏です。

 それで明と……俺が言っていいのかな?」

「い、いや……じ、自分で言う///////」

 

一夏に言わせたらあることあること言われそうなので、明は自分で口にする

決心をする。

 

「え~~~その……こ、ここここちらの織斑一夏がです……ね?

 わわわわわ私の――」

「おばば様!魔弾戦士の人達が来てるって……」

「付き合っている彼氏です///////////////////!!!!!」

「ほん……と……」

 

家族への紹介という一世一代の告白のタイミングで、虎白が

居間に入ってきて、その場の時が止まった――――。

 





太夏は鞭で叩かれたことがありますが、フェイトと
同じ属性は持っていません(キッパリ)。
一夏が推測したように、ガチのガチで泣いていらぬことを雅から
吹き込まれた冬音に許しを乞いました。
普段と変わらない笑顔で、自分に鞭を振るってくる冬音に(汗)
今までのドS組とはまた違った、ドSですwww

一夏達のクワッ!は、もちろん錬金術兄弟のあの顔です(笑)
でも、今回の休みは次のステップのためのもので・・・(汗)

局員達は、氷を操るドS将軍にしごかれてMと書かれた扉をくぐって
真理にたどり着いてしまった者がいるとかいないとか。

新キャラは明の従妹。
お分かりの人がほとんどでしょうが、後半のネタは
ジャンプのゆらぎ荘からです。

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