インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話、できました。
初めて、戦闘シーンなるものを書いたのでいつもよりドキドキしております(汗)

展開の都合上、いつもの半分ぐらいの長さになっています。

そしてUA5000、お気に入り50件を突破しました!
ありがとうございます!


画策

「ギギギ……、ギィィィ!!!」

 

カマキリに酷似した“ソレ”は、リュウケンドーへと変身した一夏の気迫に押されるものの先手必勝とばかりに両手のカマを勢いよく回してリュウケンドーに“飛ばしてきた”。

 

「……っと!

 なんで、カマキリみたいな姿なのにカマを投げるんだよ!」

『無駄口をたたく暇はないぞ!』

「ギィィィィィ!!!!!」

 

その姿から、てっきり斬りかかってくるかと思いきやカマを飛び道具として使ってきたのにリュウケンドーは驚くが、そのカマを難なくかわす。

 

しかし、そのカマは使い捨てなのか一回打つと瞬時に新たなものが現れ次々とリュウケンドーへと飛ばしていく。

 

「くっ!

 武器を飛ばしたから、その隙を突くってのはムリそうだな!」

『無限というわけではないだろうが、時間をかけての持久戦は得策ではないな……』

 

飛んでくるカマを喰らうまいと走り回って、避けていくリュウケンドー。

たちまち、周囲は避けられたカマで斬り裂かれていく。

斬られたモノの切り口はきれいにスパッ!となっており、もしも人間の体に当たったらタネも仕掛けもないお手軽な切断マジックを見ることができるだろう。

 

リュウケンドーは武器であるゲキリュウケンを見ても分かるとおり、近接タイプの戦士であり、こういった飛び道具主体の敵とは相性が良くなく更に、時間をあまりかけていられない理由がリュウケンドーにはあるため、戦局は客観的に見てイイとは言えなかった。

 

……だが、それはリュウケンドーが普通の戦士であったらの話である――。

 

『どうする?このままでは埒があかないぞ?』

「決まっているだろ?こうするんだよ!!!」

 

言い終わるや否や、鎧を纏ったリュウケンドーでも当たればイタイでは済まないカマの弾丸の中へと突っ込んでいった。

 

「うぉぉぉぉぉ――!!!!!」

 

すると、リュウケンドーは飛んでくるカマを片っ端からゲキリュウケンで斬り落して“ソレ”との距離を縮めていった。

 

「ギ、ギィィィ!?」

 

あまりの突拍子のない光景に、“ソレ”は目を見開く。

驚きで一瞬動きを止めた隙を逃さず、リュウケンドーは一気に懐へと潜り込む。

 

「おりゃぁぁぁ!!!」

 

咆哮と共に、袈裟切りで“ソレ”の体を斬り裂き、反撃をさせる間もなくゲキリュウケンを振り上げて今度は左のカマの根本を叩き切った。

斬られたカマは新しいものが出てくることなく、残された部分がただ浮いている形となった。

 

「どうやら、カマの一部でも残っていたら新しいのは出せないみたいだな!」

「ギィィィヤァァァ!!!」

 

だが、“ソレ”もこれ以上舐めるなとばかりにカマをリュウケンドーに振り下ろす。

 

そのカマを避けることなくゲキリュウケンで受け止めようと構えるが、

リュウケンドーはその攻撃を受けるのではなく、受け流すかのように体とゲキリュウケンをコマのように回転する動きでかわしてみせた。

 

攻撃をかわされたことでバランスを崩した“ソレ”の横腹を蹴り飛ばして

ダメージを蓄積させていく。

 

「ギ……ギィィ……」

 

蹴り飛ばされた“ソレ”はうめき声を上げるが、最初の袈裟切りが効いているのか、動きは鈍い。

 

「経験を積む前に、俺たちと出会ったのが運のつきだったな」

『このまま、一気に決めるぞ!』

「ああ!ファイナルキー、発動!」

 

決着をつけるべく、リュウケンドーは変身に使ったものとは別の鍵を取り出し

ゲキリュウケンに差し込んだ。

 

『ファイナルブレイク!』

 

ゲキリュウケンの刀身は力を溜めているかのごとく光輝き、リュウケンドーは一直線に“ソレ”へと走り出す。

 

「はぁぁぁぁぁ――!!!!!」

 

そして、“ソレ”の頭上へと高く飛びあがった。

 

「ゲキリュウケン魔弾斬り!!!」

 

上段に構えたゲキリュウケンを振り下ろし、“ソレ”の体を文字通り真っ二つに斬り裂いた。

 

「……ギ…ギ……ギ…………」

「闇に抱かれて眠れ――」

 

見送るかのごとくリュウケンドーが静かに、

言葉を紡ぐと“ソレ”は光の粒子となって消滅した――。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

時は少しだけ遡り、一夏が“ソレ”と対峙する前へと戻る。

 

「(そんじゃ、あらためて今回の任務の確認をするで)」

 

はやて、フェイト、なのはの三人は寮への道を歩きながら念話という

魔法が使えない者には盗聴されることのない一種のテレパシーで会話をしていた。

 

「(一つ目は、この世界に逃げ込んだと思われる監視基地の襲撃犯の調査)」

「(二つ目は、派遣された調査員を襲った謎の怪物とそれと戦ったリュウケンドー、

 リュウガンオーについて)」

「(最後に、それらと関わっているかもしれないISや)」

「(こうして、考えると雲をつかむよりも難しそうだね……)」

「(そうだね。特にISは、本当に関係してるかもわからないし……)」

「(せやけど、襲撃犯やリュウケンドーは何の手がかりもない以上、

 調べられるISのことから始めやんと一歩も進まへん。

 何事も小さなことからコツコツとや!

 ……と言いたいけど、碓氷先生がなぁ~)」

「「(ああ~)」」」

 

三人は今回の調査について話し合っていたが、襲撃犯や謎の怪物の唯一の手掛かりかもしれないISの調査に早くも暗雲が立ちこみ、消沈していた。

ISの調査の対象として、開発者である篠ノ之束、世界から逃亡している彼女と連絡する手段を持っている可能性が高い親友である千冬と束の妹である箒、そして世界初の男性操縦者である一夏が上がっていたのだが、イレギュラーが発生したのだ。

 

碓氷カズキの存在である。

今日一日見ただけでも、千冬や一夏と浅い関係でないのは火を見るよりも明らかであり、そうなると必然的に開発者であり、二人とも親しいであろう篠ノ之束との関係も怪しくなってくるのだ。

 

どうやら他人の秘密を探ることが得意であるみたいなので、ひょんなことで

自分たちのことを知られたら、何の関係もない一般人を余計な騒動に巻き込んでしまうことを危惧しているのだ。

 

自分たちの秘密を守りながら、相手のことを調べるという難しさを噛みしめながら三人は寮への道を進んでいた。

 

「(う~ん。誰かが、碓氷先生を足止めしてその間に調べるって言うのは?)」

「(悪くないけど、もうちょっと考えてみよ)」

「(そうだね。まだ一日目だし、焦ってもいいことはないからね)」

 

とりあえず今日のところはここまでということでまとまったが、

突如はやての鞄から光があふれた。

 

「マイスターはやて大変です~~~!」

「リイン!どうしたん、そんなに慌てて?」

 

鞄の中から、妖精のような子が慌てながら飛び出しはやての目の前に現れた。

 

彼女の名はリインフォースⅡ(ツヴァイ)。

はやての人格型ユニゾンデバイスである。

 

デバイスとは、魔道士が魔法の補助として使用する機械の総称であり、

様々な種類が存在し、リインはその中でも珍しい部類だが普段は剣十字のアクセサリーで待機しており、今日も寮の部屋に着くまでは大人しくしているように言っていたはずなのだが……。

 

「大変なんです~~~!!!

 この学園内で、結界反応をキャッチしたんです~~~!!!」

「なんやて!」

「はやて!ひょっとしたら、あの謎の怪物たちが!」

「だとしたら、皆が危ない!」

「リイン、場所はどこや!」

「そ、それが反応が途切れ途切れで正確な位置は……」

「かまわへん、大体の場所が分かればそれで十分や!」

 

そう言って、なのはたちは反応がある場所へと駆けて行った。

 

そして、魔道士なら感知することができるような空間の歪みとも言えるドーム状のものを遠目に見つけることが出来たのだが、その途端彼女たちの目の前でそれは消失してしまった。

 

「ああ!」

「とにかく、急ぐんや!」

「うん!」

 

結界があったと思われる場所に辿り着いたが、やはりというか何の痕跡も残ってはいなかった。

結界は、空間を別の空間へと切り離すので結界内での戦闘による破損はほとんどの場合、元の空間には残らないのだ。

 

「一足、遅かったみたいだね……」

「で、でもここに結界があったことは間違いないから、魔力残滓を調べれば何か……」

『Sir!』

「どうしたの、バルディッシュ」

 

何か手掛かりをと思ったら、金色の三角形のペンダント、フェイトのデバイスであるバルディッシュが話しかけてきた。

 

『周囲に拡散している魔力が、どんどん消失しています!』

「なっ!?」

「っ!レイジングハート!」

『ダメです!魔力反応、計測可能レベルを下回るまで残り2.7秒……、

 ロストしました……』

 

ありえない事態に、なのはも自分のデバイスであるレイジングハートに呼び掛けるが無情にも手掛かりは消失してしまった。

 

通常自然界に存在する魔力を除いて、例えば大気中に散布された個人の魔力は消えるまで、状況にもよるが数日間は残留したままなのである。

それが、ほんの数秒で全て消えるなどなのはたちはとても信じられなかった……。

 

「どうやら、今回の調査任務は一筋縄ではいかんようやな……。

 いつまでもこんなとこにおるわけにはいかんから、寮の部屋にいこか…」

 

大きさも厚さも良く分からないような、得体のしれない壁が目の前に立ちふさがった感覚を覚えながらも彼女たちはその場をあとにした。

 

……自分たちのその姿を見ていたものに、最後まで気付くことなく――。

 

 

 

『やれやれ、魔力を察知されないようにしただけで俺たちに気がつかないなんてな』

「まあ、当然だろ。

 普通、誰かの秘密を探ろうとしている自分たちが、逆に調べられたりするなんて

 思わないもん」

 

その場にある一本の葉に覆われた木の上部に立ちながら、なのはたちを見ていたのは彼女たちの悩みのタネであるカズキであった。

そんな彼は、ゲキリュウケンに似た機械的なそれでいて明るさを感じさせる声と会話をしているがどこにもカズキ以外の“人影”は見当たらなかった。

 

『それにしても、なんで駆け引きに向いてなさそうなのを調査員に選ぶのかねぇ~?

 しかも生徒って』

「一回、調査員を送って失敗しているからな。

 それに対抗することを第一に考えて、そういうことは頭に入っていないんだろうよ~

 向こうのお偉いさん達は。

 もちろん、一夏たちもあまり向いているとは言えないから

 化かし合い探り合いは俺たちの仕事だぜ、“ザンリュウジン”」

『全く、世話がかかる連中だぜ』

 

カズキが話をしていたのは、

ザンリュウジンと呼ばれる龍の顔を模したブレスレットであった。

そして、カズキは携帯を取り出し誰かにかけ始めた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ふぅ~。何とか、無事に終わったな」

『まさか、初日からいきなりとは予想外だ』

「それはそうと……ここは屋上か?」

 

一夏とゲキリュウケンは、さっきまで戦っていた場所とは違い、校舎の屋上にいた。

 

Prrrrr!

 

「うん?あっ!カズキさんからだ。

 はい、もしもし?」

「よう!どうやら、無事に離脱できたみたいだな」

「おかげさまで。

 いきなり、あんな指示をされた時は焦りましたけどね」

 

カズキからの電話をとりながら、一夏は先ほどのことを思い出していた――。

 

 

 

 

 

 

 

一夏とゲキリュウケンが感じ取った気配を追って駆けていた時、

カズキからの電話が鳴り響いた。

 

「カズキさん?今、あいつらの気配を……」

「分かっている。俺たちも感じた。

 ところで、あの鍵はちゃんと持っているな?」

「ああ、持ってるぜ“ワープキー”」

 

ワープキー。

それは、ある協力者の力を借りて開発された新タイプの魔弾キーである。

 

魔弾戦士であるリュウケンドーは、この魔弾キーの力を用いて戦うのだが、元々魔弾キーも魔弾龍と同じく太古から存在しており、その製造法は永らく失われていた。

 

しかし、近年現代の技術とのハイブリッドによって、全く同じではないがいくつかのキーの作成に成功したのである。

 

その一つ、ワープキーとはその名の通り、

発動した場所から違う場所へと瞬間移動するのだが……。

 

「確か、これってあらかじめマーキングをした場所にしか移動できないんでしたよね?

 俺、そんなのしていないですけど……」

「それは、大丈夫。

 この学園のあちこちに人払いの法と一緒に、俺がしかけといたからそこで

 でかい声とかをあげない限り、突然その場に現われても気付かれる心配もないよ」

「ハハハ、流石ですね」

 

カズキの抜け目のなさに、笑うしかない一夏である。

 

「今回は、敵を隔離する遮断結界を使用して撃破した後、すぐにワープキーを

 使ってその場から離脱しろ」

「でも、それだと管理局……、なのはたちにバレません?」

「バレるかじゃない、バラすんだよ。

 ただし、なのはたちが来る前に決着をつけて離脱するんだ。

 ワープキーに追加した機能も合わせて、その内おもしろいことになる、フフフ……」

 

一夏とカズキは、なのはたちが時空管理局の調査員であることを既に知っていた。

 

彼らは、管理局の中にいる協力者から内情を掴んでおり、この世界にやってくるであろう調査員にある程度の絞り込んでいたのだが、変装すらしていない姿でやってきたことに逆の意味で驚かされていた。

 

「まあ、ともかくこの気配からして、そんなに強くないだろうけど油断だけはするなよ」

「もちろんですよ!」

 

一夏はそう言って、携帯をきり現場へと急いだ。

 

 

 

 

 

「で、あのカマキリもどきを倒した後、すぐにキーを使って離脱したわけですけど、

 どういう作戦だったんですか?」

「なぁ~に。

 人間、目の前で非常識なことが起きると冷静に行動できなくなるってことさ♪」

「はっ?それって、どういう……」

「あいつらは、目の前に壁があったらよく言えば真正面から、悪く言えば力づくでしか

 ぶつかったことがない。

 あの手この手で、やりこめる変化球な戦法の敵とは戦ったことがないし、

 自分たちもそんなやり方を思いつかない」

「確かに、そんな感じでしたね」

「今回は、キーに追加した痕跡消去の機能で魔力残滓が自分たちの目の前で

 消えていくという現象を体験してもらった。

 これだけでも、軽く混乱して周囲への注意がおろそかになる、

 つまりは行動が読みやすくなるのさ♪」

「相変わらず、腹の読み合いとかであなたと勝負したくないですね」

 

相手の性格や癖を読みきり、自分の手のひらの上で相手を翻弄するカズキのやり方にそういう土俵では戦いたくないと心底感じた一夏だった。

 

「そんなに褒めるなよ~///」

「いや、褒めてませんって」

 

こうして、一夏の長~~~い一日は終わろうとしていた――。

 




戦闘シーンは初めてなので、どこかおかしいかもしれません。
そういう点は遠慮なく指摘してもらって結構です。

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