インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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やっと、夏休み編のメイン(のはず)となる修業に
入れます(汗)
それでも、半分は前回からの続きでwww
修業は、細かくやる予定はなく、終わった後に回想という形に
なっていくと思います。
龍の戦士たちの日常の方で、その時の様子を上げるかも。

気づけば、投稿を始めて3年がたつのにまだ物語は中盤。
これもひとえに、私の遅い執筆が原因です(苦笑)
しかも、最近は自分に合っていない仕事をやっていくことの
苦しさに悩んでいます・・・。

その度に、皆さんの作品に活力をもらって助けられています。


修業開始!

「ふふ♪いいじゃないの~。

 あなた達と同じで結婚前だから、健全なお付き合いを

 しているみたいだし。

 娘の人生最大の見せ場であるウェディングドレス姿を

 写真や録画じゃなくて、実際に見ることができるんだから♪

 孫の顔もね~」

「雅さん/////////!」

 

あっけからんと笑いながらとんでもないことを口にする雅に、千冬は

顔を真っ赤にして反論し、一夏達は苦笑するしかなかった。

 

「ま、孫の顔はいいけど、あんたには孫って言うか曾曾孫じゃねーの?」

「…………」

 

フラフラと雅からの効果はバツグンな攻撃から起き上がる太夏の余計な一言に、

一夏達は“懲りないな~”と心を一つにしていると雅は無言で笑みを崩さなかった。

 

「な、何だよ……。や、やるって言うのか!」

「太~夏~?あんたって子は、本当に……はぁ~。

 しょうがないわね。

 これだけは、勘弁してあげようと思っていたけど……」

「?」

 

来るであろう制裁に身構える太夏であったが、雅は呆れのため息をこぼすと

誰もが普通に使っている何の変哲もない学習ノートを取り出した。

 

「それじゃあ……こほん。

 “もう間もなくだ。幾度となく繰り返された運命の戦いの幕が開くのは……。

 来るべき戦いに備えてきたが、俺は迷っている。この馬鹿馬鹿しくも

 愛おしい日常と別れねばならないことを……”」

「そ、それはぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!???????」

 

雅がノートの中身を朗読し始めると、太夏はムンクの叫びのようなポーズで

驚愕の声を上げる。

 

「“わかっている。この日常を守るために、戦うのが正解だと……。

 だが、いつの間にか当たり前になっていたこの日常は……!”」

「ああ~。それって、太夏が昔書いていた小説だよね?

 雅さんが持っていたんだ~。懐かしい~」

「ま、待て冬音!待ってください!

 それ以上は、らめぇぇぇぇぇっっっ////////////////////!!!!!」

 

雅が朗読しているモノの正体がわかった冬音は懐かしそうに微笑むが、太夏は

それどころではないと止めてくれるよう懇願する。

 

「なるほど。今、雅さんが読んでいるのは、中学生の頃にかかる病気的な

 “アレ”か~」

 

カズキが、暴露されている太夏の黒歴史の正体を明かすと、

それが分かった面々は苦笑するが、何が何だかわからないと

箒、明、ラウラは頭に?を浮かべ、弾と鈴の二人は頬が引きつっていた。

 

「許してつかぁさい!堪忍してくらぁさい!」

「しょうがないわね~。

 そこまで言うなら……今度は、音楽と友達になろうとギターにハマった時のこれを……」

「ごべんなざいぃぃぃ!

 もう生意気なことを言いませんから、許じてぇぇぇ//////////!!!!!」

「他には、小学生の時にトイレの花子さんに会ってから、怖くて夜にトイレに

 行けなくなったとか♪」

「い…………やぁぁぁぁぁっっっっっ~~~~~///////////////////////////!!!!!」

 

その後、小一時間程かけてたっぷりとタイムマシンや時の電車を見つけたら全力で

止めに行くであろう過去の出来事を一夏達に知られてしまった太夏は、生気の抜けた

搾りカスとなった。

時折、聞き捨てならないことを雅が口にしたがツッコミを入れる勇気のある者は、

一人もいなかった。

 

「……し、死んだ……。あ、あんなのを……娘や息子、その友達に知られたら

 もう生きてけない……」

「ほほほほほ♪」

 

虚ろな目で、現実逃避をしたくても逃げられない太夏を見て優雅な笑いをする雅に、

全員が絶対にこの人を敵に回すまいと固く誓うのであった。

 

「さて、そろそろ夕食の準備を再開しなければな。

 人数が増えたからもう少し待っていてくれ、お兄ちゃん」

「お兄ちゃん?」

 

何とも言えない空気の中、それを読んだのか読んでないのかラウラが

中断していた夕食の準備をしようと声を上げるが、一夏がお兄ちゃんと呼ばれ

冬音が首を傾げた。

 

「うむ!一夏は私のお兄ちゃんなのだ!」

「簡単に説明しますと、妹分と言いますか……」

「つまり……私の新しい娘ってことかな?

 ……ラウラちゃんだっけ?

 じゃあ、おいで♪」

 

ラウラが胸を張って説明するのをカズキが要約すると、冬音はう~んと

何回か首を傾げると何かを納得したのか、膝の上をポンポンと叩いて

ラウラを自分の下に誘って、抱きかかえる。

 

「よ~し~よ~し~」

「ほわっ/////////////!?

 シャ、シャルロット!何か、すごくフワフワするぞ////////!!!」

 

千冬のように冬音に抱かれて頭を撫でられるラウラは、雷に打たれたような

初めての感覚に衝撃を受け、ほわわ~な緩んだ顔を見せる。

 

「ラウラが喜んでいるのは、うれしいけどちょっと複雑……」

『これが、母親というものか』

『全次元世界で、最強に上げられるのも納得である』

『色んな意味で、勝てる気がしねぇ~な~』

『冬音に勝てるのは雅殿ぐらいだろう』

「それよりも、千冬ちゃん?

 自分の席がラウラに取られて嫉妬とかしてない?」

 

ポカポカしているラウラを見て、シャルロットは何とも言い難い感情が沸き、

それを見ながら魔弾龍達は母親という生き物の偉大さを知るのであった。

そんな中、今まで気を伺っていたのか、不意打ち気味にカズキがいつものからかいを

千冬に振り激しい応酬が始まる。

 

「本当に千冬はカズキ君と仲良しね~。

 そう言えば、もしも妹が欲しいって言っていたら、

 妹とカズキ君の取り合いをしたのかしら?」

「妹が欲しいってどういうことですか、雅さん?」

 

IS学園名物の痴話喧嘩も雅にとっては、昔から見慣れたものらしく

止めもせず楽し気に眺める中、雅がこぼした言葉に一夏が疑問の声を上げる。

 

「あら、言ったことなかったっけ?

 昔、千冬の誕生日に太夏が“プレゼントは何が欲しい?“って聞いて、

 弟が欲しいって言ったから、あなたが生まれたのよ?」

「はい?」

「ちょっ/////!」

「だぁぁぁぁぁっっっ!!!

 何でそんなことを知っているんだ!?」

 

サラッと明かされた一夏誕生のきっかけに、全員目が点となり、千冬と太夏は

悲鳴を上げる。

 

「え?だって、弟が欲しいって言う千冬に、太夏と冬音に頼むといいわよって、

 教えたのは私よ?」

「そ、そう言えば、そうだった/////////////////」

「太夏は、女の子の頼みには弱いわよね~。

 赤ちゃんが欲しいって冬音に頼まれたから……♪」

「ひょうぇぇぇぇぇいぃぃぃぃぃっっっ///////////////////////!!!!!」

「ははは//////」

 

最早何語かもわからない言葉で奇妙な悲鳴を上げる太夏を見ながら、冬音は

その時を思い出したのか頬を染めるのであった。

 

「俺……何か間違っていたら千冬姉の弟じゃなくて妹になっていたの?」

「俺としては、そっちの方が蘭的に助かったけどな」

「千冬さんが姉さんのように、シスコンでなくブラコンでよかった」

「そうですわね」

「全く、ブラコンさまさまね」

「それだったら、僕達が逆に男の子だったら……」

「シャルロットちゃん?

 一夏君が女の子で私達が男の子だったら、IS学園で会えないわよ?」

「今が一番ベストな形……」

「そういうIFは、考えるだけにしておきましょう」

 

好き勝手に自分のブラコンに感謝する一夏達を見て、後でどう料理してくれようかと

考える千冬に一夏達は気が付かなかった。

 

「さてと!楽しい昔話は、また次にするとして。

 ラウラちゃんの言ったように、夕飯の準備を再開しましょうか?」

「じゃあ俺はコーヒーの準備を人数分しておくよ……」

「えっ、カズキさん?」

「それぐらい、俺が……」

「いや、いい。多分だけど、大人の味な苦~~~いのが必要になる気がしてね……」

 

大人組だけでなく人数分のコーヒーを準備しようとするカズキに、頭に?を浮かべる

一夏達を雅は意味深な笑みで見つめるのであった。

 

 

 

「……なあ、みんな?

 どれぐらい、砂糖を入れたんだ?」

「甘い方が美味しい♪とか言って、袋ごと入れたりしてないよな?」

 

それぞれの料理が出来上がり、机に並べられたものを食べながら一夏と弾は、

顔をしかめて料理を作った女性陣に尋ねる。

机の上に並んでいるのは……

 

『カレイの煮付け』 by箒

『コゲた鍋』 byセシリア

『肉じゃが』 by鈴

『唐揚げ』 byシャルロット

『おでん』 byラウラ

『夏野菜の揚げびたし』 by楯無

『豚の生姜焼き』 by簪

『かぼちゃと牛肉のバターじょうゆ』 by明

 

一部チョイスがおかしかったり、料理となっていないものもあるがどれも

申し分のない味であり、マンガでよくある“砂糖と塩を間違えた!”的な

問題も起きてはいない。

ISの武装を使って火力を足そうとした者が、一名いるが。

そう、料理手順に落ち度はない(約一名を除いて)。

何の問題も間違いもないのだが…………。

 

「はい、太夏。あ~ん♪」

「あ~ん♪」

 

目の前で繰り広げられるバカップル夫婦が発する桃色オーラによって、

甘味が付け加えられているのだ。

この二人、子供やその学友の前でもお構いなしに食べさせあいっこをしているのだ。

微塵も恥ずかしがらずに。

 

「甘い……」

「何だか、胸やけしてきましたわ……」

「お菓子食べてるどころか、砂糖をそのまま食べてる感じね……」

「見ているこっちが恥ずかしいよ~/////」

「これが、クラリッサが言っていたバカップルがやる、

 伝説のあ~ん♪という奴か……!」

「こうなったら、私達も一夏君にしてもらいましょう!」

「お姉ちゃん……ナイスアイディア!」

「それをするのなら、私が最初です……/////」

『この二人は、昔からこうやって甘い空間を展開して、

 周囲の人達を走らせたり、壁を殴らせたりしていたな……』

「忘れてたよ……。

 父さんと母さんは人目もはばからず、イチャイチャして

 激辛カレーだろうがマーボー豆腐だろうが、砂糖をかけたような

 甘い料理にしていたのを……」

「全く、イチャつくなら時と場所を考えてくれよ~」

『『『……』』』

 

明達が口の中に広がる甘味に苦戦していると、太夏と冬音のイチャつきをこの場で

一番理解しているバクリュウケンと千冬は遠い目をしたり呆れたりした。

それに続いて一夏も二人に呆れるのだが、魔弾龍達が一夏と千冬にジト目を

送り、ラウラを除く女性メンバーと弾はそれぞれハリセンを構えると、

一夏と千冬の頭を思いっきり引っ叩いた。

 

「っ!お前ら、何を……」

「いっ!お、おい!」

『『『「「「「「「「「黙れ」」」」」」」」』』』

「「……はい」」

 

反論しようとする一夏と千冬は、有無を言わさない一言に押し黙るのであった。

 

「???」

「まあ、自分達も同じような空間をよく広げているのにふざけるなって、感じよね~」

「なのはの両親もお二人のように桃色空間を広げるらしいですが……。

 会わせることがあったら、気を付けないと」

 

頭に?を飛ばすラウラの横で、雅とカズキは優雅にコーヒーの苦みを堪能するのであった。

 

「それにしても、この二人のやり取りを告白したばっかりの頃の二人に見せたら

 どんな反応をするのかしらね~。

 付き合い始めた頃は、見ている方がじれったくなるぐらい初々しいかったわよ~」

「そうなんですか?

 ……ああ、そう言えばお二人の告白は、

 とりとめもない会話をしてうっかり一夏が自分の気持ちをこぼしたのと

 そっくりなものだったらしいですね?」

「ええ、そうよ。

 冬音の友達が海外に引っ越すことになって、大好きな友達と

 いつまで一緒にいられるのかって話してたら、

 悩む冬音に同じように“家族になってずっといてやる!”って♪

 告白通り越して、プロポーズをね♪

 まさか、人生の大きな決断を勢いでするなんてね~」

「へぇ~」

「「ぶふぅぅぅぅぅっっっ//////////////////!!!?」」

 

世間話をする気軽さで、消し去りたい過去とは違った自分達の恥ずかしい

出来事を話されて、太夏と一夏は思いっきり吹き出す。

 

『うむ。あの時は、私も目が点となって驚いたぞ。

 プロポーズした太夏もされた冬音も、顔がリンゴのように真っ赤だったよ』

『そこは、親子だな。

 一夏も自然と口にしたのが告白だと気づいたら顔を真っ赤にして……』

「それ以上言うなっ!ゲキリュウケン!」

「お前も何サラっとバラしてんだ、バクリュケン!」

 

しみじみと当時を懐かしむそれぞれの相棒に、声を荒げる一夏と太夏で

あったが時すでに遅く……三度の飯より恋バナというのが好きな生き物である

乙女陣は冬音や雅に色々と話を聞くのであった。

根掘り葉掘り隅から隅まで。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「まさか、新たな魔弾戦士が現れるとは……」

 

とある空間でクリエス・レグドは、一夏達とデグス・エメルの戦闘映像を

眺めて考え込んでいた。

 

「デグス・エメルは敗れましたが、その役目は果たし、

 不確定要素であるオルガードも消えましたが……

 このイレギュラーはあまりにも大きい……」

 

今回の戦いは他所の誤差はあったが、9割方自分達の思惑通りに進み

大局的に見ればこちらの勝ちと見てもよいのだが、最後の最後で

それをひっくり返す存在が現れた。

 

“バクリュウケン……無刀――魔弾斬り!!!”

「新たな魔弾戦士が現れるのを考えなかったわけでは、ありませんが……。

 バクリュウケンドー。

 リュウケンドーこと織斑一夏の父であり、かつて地球を救った魔弾戦士。

 そして、新たな仲間の帰還は、家族の絆の蘇りでもある……」

 

太夏が変身したバクリュウケンドーの戦いとその後の冬音との再会の映像を

見ながらクリエス・レグドは口元に手をやる。

 

「彼らの強さは、絆が増え深まることで大きくなっていく。

 それに、オルガードも消えたとは言っても彼らの心には、新たな決意が

 生まれたようですし……。

 全く……本当にことごとく、私の予想を超えていきますね――」

 

本来の自分を取り戻して逝き、一夏達の心に何かを残したオルガードに

新たな魔弾戦士の参戦、そして一夏の家族の帰還。

今回創生種達が得たモノより、魔弾戦士側が得たモノの方が大きいと言って

いいだろう。

その事実を素直に受け止め、クリエス・レグドは楽しそうに笑うのであった。

 

「ならば、こちらが打つ次の手は……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「――てなわけで!修行だ!」

「待ってました!」

「何喜んでんだよ、一夏!

 どう見ても、ここは今までよりヤバそうな空気がビンビンじゃねぇか!」

 

太夏と冬音が一夏と千冬の元に帰ってきてから数日後、

一夏と弾は本格的な夏休みの修行を行うために、カズキに連れられてある世界の

ある草原へとやってきていた。近くには、森や川もある。

 

「ここに来たのは今回の修行で会得してもらうモノを

 見せるだけだから、心配しなくても大丈夫だよ弾。

 それを身につけない今のお前達じゃ1時間も生き残れないだろうから、ここでの

 修行はまだ先だよ」

「てことは……夏休みの終わりには、こんなヤバそうな場所で修行すると?」

 

今いる場所がどれだけ危険なのかを察した弾は、冷や汗をダラダラ流すが、

カズキから返ってくるのは楽しそうな微笑みであった。

 

『夏の思い出を修行だけにしたくなければ、強くなるしかないということである』

『生き残るためにもな』

「ゴウリュウガンとゲキリュウケンの言う通りだよ。

 ところで、二人とも。

 何で二人は、俺に勝てないかわかるかい?」

「いきなりなんですか。藪から棒に……。

 俺や弾が勝てない理由?」

「そんなのありすぎる気がするけど……

 体力とかスピードとか技とか上げだしたらキリがないぜ」

 

カズキから振られた問いに、一夏と弾は首をかしげる。

改めて考えると自分達がカズキに勝っている点など、無いように思える。

 

「……相手の動きを読んで、戦略を立てる経験かな?」

「う~ん……勝機を見逃さない集中力?」

「確かにどちらも重要だけど、そうじゃない。

 二人が勝てないのは、お前達が会得していないある力を使っているからだ。

 そして、これは鍛錬を積めば誰でもできるんだ……ちょうどいいな」

 

カズキが森の方に目をやると一夏も弾も何が?と森を見て数秒後……。

一夏と弾は反射的にゲキリュウケンとゴウリュウガンを構える。

それと同時に体長50メートルはある、巨大なトラが姿を現す。

 

「デカっ!?」

「デビル大蛇よりヤバそうじゃねぇか!?」

「落ち着きなよ、二人とも。慌てる相手じゃないから、

 そこで見ているといい。それと俺は、風術は使わないから」

 

変身キーを取り出す一夏と弾を止めて、カズキは目隠しをして巨大トラに近づく。

 

「ガラァッ!!!」

「カズキさん!」

「危ねぇっ!」

「左斜め10時方向から、右前足による振り下ろし……」

 

格好の獲物とばかりに目隠しをしたカズキに攻撃を加える巨大トラだったが、

その攻撃は目が見えないはずのカズキに簡単に避けられてしまう。

 

「おい……。カズキさん……避けただけじゃなく、攻撃の方法を言い当ててたよな?」

「ああ……。風術は、使ってないはず……だよな?」

『何かの術を使っている気配もないな』

『音や気配で避けているわけでもないようだ』

 

驚きの声を上げる一夏達の前で、カズキは巨大トラの攻撃を目隠し状態で

軽々と巧みにかわしていく。

 

「これがお前達に習得してもらう“覇気”というの力の一つ、“見聞色の覇気”だ」

『『「「“覇気”?」」』』

「感覚は気合や殺気といったものと同じで、人間ならだれでも潜在するものを

 実践レベルにまで鍛えたモノさ。

 見聞色の覇気は、身に着ければ視界に入らない相手の位置や数を把握したり、

 相手の次の行動を先読みしたりすることができるようになる」

「位置や数がわかって次の行動を読めるって……あっ」

「あっ」

「「あああっ!!!」」

 

カズキからの説明に、一夏と弾はそろって互いを指さす。

今の説明をカズキの戦いや模擬戦に当てはめると、ピッタリと一致するのだ。

 

「そして、覇気にはこういう使い方もある……ふん!」

「ゴベッ!」

 

巨大トラの攻撃を避け続けていたカズキは、一転して攻めに転じて

パンチ一発で巨大トラを気絶させた。

 

『『「「……!?」」』』

「これは、“武装色の覇気”。体の周囲に見えない鎧のような力を作る覇気だ。

 鎧と言っても、今みたいに攻撃に転用することもできるし、自分の体だけでなく

 武器にも纏わせることもできる。

 こんな風に……ね!」

 

口を開けて驚く一夏達に、カズキは目隠しを取りながら面白そうに“武装色の覇気”

の説明をし、足元に落ちていた枝を拾うとやり投げみたいにそれを放る。

円を描いて地面に落下すると落下音と共に大きなクレータを作り出す。

 

「ほとんどの人間は得意などちらかに力が偏るけど、強化していくと

 できることの幅はどんどん広がっていく。

 最後に“覇王色の覇気”。

 これは、他の二つの覇気と違って、使える者が限られている。

 簡単に説明すると、戦うまでもないぐらいの実力差の相手を気絶させることが

 できる。

 俺には使えないし、お前達も使えるかどうかわからないから、

 とりあえずは頭の隅に置いておいておく程度で構わない」

「す、すげぇ……」

「ああ……それしか言葉が浮かんでこねぇよ……」

 

人間は生身でもここまでの強くなれるのかと、一夏と弾は唖然とする。

 

「本来なら“覇気”を使いこなそうとするなら、長い年月が必要だけど

 お前達二人には資質もあるし、今までの修行は下積みでもあったから、

 死ぬ気でやれば何とかなるだろう」

「死ぬ気でやれば……ね~」

「おもしれぇ……やってやろうじゃねぇか!」

 

ニヤリと笑って修行の見込みを話すカズキに、一夏や最初慌てふためいていた

弾も俄然やる気になり、挑戦的な笑みを浮かべる。

 

『最初にすごさを見せつけて、ガッチリとハートを鷲掴みにするとはね~』

「その方が集中力も違ってくるしね……。

 何とかなるって言ったけど、二人なら習得するのもそんなに難しくないだろう。

 (まあ、その後は涙と鼻水を垂れ流しながら喜ぶ地獄のメニューが、

 待っているんだけど……ね♪)

 さて、まずは……食の礼儀作法を身につけようか♪」

「「……はい?」」

 

カズキが口にした最初の修業内容に、何が来るかとワクワクしていた

一夏と弾は揃って間の抜けた声を上げるのであった。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

『こんなことが……!』

「どうなってんだよ、一体……」

『パワー、スピード……総合力ではこちらが上であるが……』

 

最初の修業を行うために再び別世界へと移動した一行は、

美味なる食材であふれているグルメ世界の“食林寺”という寺へと来ていた。

しかし、そこは不思議な寺であった。

深い森の中にあり、そこに向かう際もカズキが先頭を行き、

もしも自分が歩いた道を一歩でも外れたら、永遠にこの森から出ることが

出来なくなると言われて、細心の注意でカズキの後を追ってたどり着いたのだ。

更に、入り口だと言われた場所には何もなく、合掌と一礼をするように言われ、

それを行うことでようやく姿を現したのだ。

何でも、乱暴な生物が近づくと姿をくらませる隠形樹という樹木でできているらしい。

 

そこで、一夏と弾は食林寺師範代のシュウという青年と戦ってみろと

カズキに言われたのだ。しかも、変身してだ。

勝負の決着はどちらかが、“参った”と言うまで。

いきなりのことで戸惑う二人だったが、結果は二人の敗北であった。

ゴッドリュウケンドーの斬撃もマグナリュウガンオーの銃撃も、

全てシュウに容易くかわされてしまったのだ。

反対に、シュウからかすり傷とも言えない細かな傷を気付かない内に

数え切れないほど負わされた。

もしもこの攻撃が、カズキや自分達と変わらない威力であったら、

傷の数だけ自分達の命は消えていただろうという事実に、二人は背筋がゾッとする。

そして、二人が座り込むまで体力を消耗したところで、一夏と弾は

“参った”と自分達の負けを認めたのだ。

 

「二人ともお疲れ様」

「一夏君、弾君。

 お二人ともよく鍛えられています。

 ですが、無駄な動きがまだまだ多いです」

 

座り込む二人にカズキは飲み物を渡し、それを見ながらシュウは

今の戦いの感想を述べる。

 

「無駄な動き……ですか」

「はい。

 そのため、お二人の技や攻撃は本来の威力を出し切れていません。

 もし、これからの修行をこなし……“食義”を会得すれば、

 今の数倍の威力の攻撃を数分の一の消費体力で、より正確に

 出すことができるでしょう」

「いぃっ!?で、でも食義って礼儀作法なんですよね?

 何で、それでそんなことが……」

「食義っていうのは、精神修行だけじゃなくて技術面にも

 生かされるんだ。

 まあ、これ以上は修行を進めていけばわかるさ。

 食義を会得できれば、覇気や色々な他のものを身に着けるのに

 ショートカットすることができる」

「一夏君。弾君。

 お二人には、素晴らしい才を感じました。

 是非とも“食義”を会得してほしいと思えるほどの……!」

「そして、何よりうま~い食べ物が食べれるようになるよ♪」

 

食義に隠された力とシュウの言葉に、一夏と弾は拳を叩きながら

目をランランとやる気で燃やした。

 

「――っしゃぁ!じゃあ、まずはその食義!会得してやろうじゃねぇか!」

「シュウさん!まずは、何をすればいいんですか!」

「ではまず……」

 

早速修業をシュウにお願いする一夏と弾は、最初の修業として……。

 

「「何じゃこりゃぁ!!!?」」

 

5メートルの箸でお椀の豆を食べるという内容だった。

 

「それじゃあ、一夏と弾のことを頼みます」

「はい、お二人に、必ず食義をお伝えします」

「食義を会得しなければ、とても時間が足りないからね。

 “裏のチャンネル”を使おうにも、“ペア”を飲まなきゃいけないし、

 何より“猿舞”ができないと……」

「それらを身に着けた上で、“覇気”も習得しなければならないほどの

 敵なのですか……」

「今、わかっている相手でもまだまだ強さの上限が見えてこないし、

 何よりあいつらが復活させようとしているものは、想像もつかないよ……。

 だからこそ、打てる手は打っておかないと。

 親父さんも癒しの国“ライフ”で、万全の体調に戻れるよう治療してもらっているし、

 他のメンバーの修業も始まっている」

『女性陣は、大丈夫かね~』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ええい!何故、ナイフなのだ!切りにくい!

 どうせなら、刀の方が……」

「それより!シャワーもない、こんな無人島で

 どうやって一月も過ごすんですの!」

「あんた達!

 文句ばっかり言ってないで、さっさと食べ物を探しなさぁぁぁい!」

「これでもかってぐらい、森の背景が似合ってるね、鈴」

「何をしている、シャルロット。

 鈴の言うように、食料だけでなく、日が沈まないうちに水と活動拠点を

 見つけなければならないんだぞ」

「私達もそれなりにサバイバルの訓練はしてきたけど、

 現役軍人には負けるわね、簪ちゃん?」

「うん。だけど、カズキさんからの課題もクリアしないと

 意味が無い。

 “一は全 全は一”って何だろう……?」

 

どこかの無人島で、乙女七人はそれぞれサバイバルナイフ一本を渡されて

一か月の生活をカズキから修行として与えられていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「心配いらないさ。

 彼女達ならきっと答えを見つけられるさ。

 無人島も一夏と弾を放り込んだのと変わらない島だしね」

『いや、俺が心配しているのは修行をクリアできるかより、

 あいつらの命なんだけど……』

「大丈夫さ。

 少なくとも、身体能力だけなら昔の一夏と弾より上なんだし、

 取れる連携も格段に上。

 サバイバル能力に長けたラウラもいるから、食べ物に困ることもないだろう。

 何より、魔法使いの家族に協力してもらって、時間の流れが異なる空間を

 用意してもらったから、修行時間を短縮することができる」

『そんなのあるんだったら、一夏と弾の修業もそこでやればよかったんじゃねぇの?』

「残念ながら、食義の修行に用いる食材は繊細な面がありますので、

 異世界へ持ち込むのは難しいでしょう」

「そういうわけさ」

 

いきなりサバイバル生活を課せられた面々を心配するザンリュウジンだったが、

カズキはそれほど問題とは考えていなかった。

 

「俺が心配なのは、なのは達の方だね。

 世界を救ってきた自信ってのがある分、なかなか自分が

 弱いっていうのを認めないからね……。

 一夏と弾は、何十回と転んで立ち上がって自分の弱さを知っているけど……。

 彼女達に今一番必要なのは――」

 

強さで言うなら、一夏達にも引けをとらないはずのなのは達にカズキは、

懸念を感じていた。

弱さを知り、受け入れて行くことで、人は強さを知っていく。

だが、弱さを知らない強さは慢心となる。

知らず知らずに、自分の中に芽生えていた慢心になのは達は、

気付くことができるだろうか……。

 

 

 

 

 

「うっ……」

「い……っ……」

「性質が悪すぎるで……碓氷先生っ!」

 

それぞれ別の空間でカズキからの課題を受けているなのは、フェイト、はやての三人は、

静寂の闇の中で燃える炎に囲まれながら倒れ伏していた。

――双子のように自分と同じ顔の者に見下ろされながら……。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

オ マ ケ 3 ☆

 

「ああ、そうだった~。

 明ちゃん、いつもはお客様用の部屋で寝てもらっているけど、

 今日は私と一緒に寝ましょ♪」

「えっ?」

 

夕食が食べ終わる頃、雅は何の脈絡もないことを言い出し、明はきょとんとなった。

部屋の隅で、色々とばらされた太夏が両手で顔を隠しながらうずくまっているが

誰も気に留めない。

 

「今日はひさしぶりに、冬音と太夏が帰ってきたから千冬も一夏も

 二人と一緒に寝たいでしょうから、寝るまでのおしゃべりに付き合って

 ほしいのよ~」

「「はぁ~~~!?」」

「家族で川の字だね♪

 私達がいなかった間のことをゆっくり教えてね~」

 

驚きの声を上げる千冬と一夏とは逆に、冬音は楽しそうな声を上げる。

 

「じゃあ、ゲキリュウケンとバクリュウケンは俺が預かりますか」

『ああ。

 家族水入らずというのを、久方ぶりに堪能するといい』

『たまには、魔弾龍同士というのもいいだろう』

『では、私も今日はゲキリュウケンの言うようにカズキの家に

 泊まるとしよう』

 

反論をしようとする千冬と一夏の外堀を埋めるかのように、魔弾龍達が

お泊り会を計画していく。

 

「いいじゃねぇか、一夏。家族に存分に甘えちまえよ♪」

「千冬ちゃんもね♪」

「弾……てめぇ……」

「カズキ……」

「そんなに照れても、手遅れだよ?

 冬音さんにいい子いい子されるのは、俺達だけじゃなく……」

 

からかってくる弾とカズキに、一夏と千冬は拳を震わせるが

カズキが意味ありげに窓の方を指さすと……メカニカルなウサ耳だけ

隠し切れていない誰かがこちらを覗いていた。

隠れている誰かはウサ耳を生き物のみたいにビクッ!とさせると、

風よりも早くその場から逃亡した。

 

「ねぇ、箒……今のって、どう考えても……」

「言うな、鈴……っ!」

「…………束ぇぇぇぇぇっっっ/////////////!!!!!!」

 

今までのやり取りを見ていたのは、誰なのかは誰の目にも一目瞭然であり、

鈴が何とも言えない声で箒に尋ねると、箒は頭痛がしてきたのか頭に手をやって

押さえるのであった。

そして、覗き魔を退治するべく、両手に日本刀を構えた千冬が

超スピードで家の外へと飛び出していく。

 

「はやっ!でも、千冬さんなら覗きぐらい気が付くんじゃ……」

「多分、想像以上に母さんに会えたのが嬉しくて、気づかなかったんじゃねぇか?」

 

弾と一夏が、しみじみとどこから聞きつけたのか照れる親友を見に来た天災兎に

千冬が気づけなかった理由を考察していると、女性らしき必死の命乞いと悲鳴が

近所一帯に響き渡った。

 

帰ってきた千冬が握っていた日本刀からは、ピチャ……ピチャと

赤い液体が滴り落ちていた。

 

余談だが、覗き魔が録画していたものは、年齢不詳のご婦人と

暗躍教師Kのコレクションに収められたらしい。

 





言い忘れていましたが、冬音のプロポーションは
所謂”どたぷ~ん”です。
コスプレは、閃乱カグラやハイスクールDxDのソシャゲのカード
のようなものを恥ずかしがらずに(爆)

弾と鈴も太夏のように中学生の頃にかかる病気的なものに
かかったことがあり、当然のようにカズキのノートには
記録されております(笑)

太夏が会ったという花子さんは、”ぬ~べ~”で広が会ったタイプです。
太夏も広のようにwww
虚ろな目は、殺せんせーが夏休みでビデオ鑑賞が終わった時と
同じ感じです(笑)

雅のおしおきでボツとなったのに、冬音にむちを持たせるものが
あったりしました。
冬音がむちを持っているのを見ると、太夏は発狂します。

なのは達を見下ろしているのは、マテリアルではありません。

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