インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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お待たせしました(汗)
残業に次ぐ残業と転勤による新しい生活のスタートで、
なかなか執筆できませんでした。

おそらく、次もこれぐらいになるかも・・・。

本当に色々と時間がない。執筆とかガンプラとかゲームとか・・・。

ポケモンだけでなく、メダロットまで新作出るのに!




偶然が交じり合って、運命となる

「それで、カズキさん?」

「行くのはいいですけど、どうやって行くんですか?

 確か、本局ってそう簡単には行けないんですよね?」

 

カズキから連絡を受けた一夏と弾は、自分達の拠点へ急いでやってくると変身して

いつでも出撃できるようにする。

しかし、弾の言うように目的地である時空管理局の本局へ行くのは容易いことでない。

 

「そうさ。仮にも防衛組織の本拠地だからね、警備も半端じゃない。

 だけど、穴はある。敷かれている警備は、魔法を使って攻め入られることを

 前提として考えられているから、魔法以外の警戒レベルはかなり低い。

 例えば、こういうものを使われるなんて夢にも思わないだろうね~♪」

「これは……」

「で、でけぇ……」

 

格納庫へと向かうカズキに続いていくGリュウケンドーとMリュウガンオーは、

そこにあった巨大な“モノ”に言葉を失う。

 

「ふぅ~。何とか、形にできたね……」

「全く、毎度のことながら無茶を言うよね~君も。

 やっと実験段階ができるまでに形になったものを、いきなり使いたいだなんて~。

 調整が大変だったんだよ~」

「でも、できたんだろ?ジェイル、ロイド?」

 

唖然とする二人を置いて、急ピッチでそれの調整をしていた

紫のロングヘヤーのジェイル・スカリエッティと

丸眼鏡をかけおどけた態度のロイド・アスプルンドが姿を見せる。

 

「出力系を強化したから、これで本局の警備網に探知されてもその時には

 もう到着できるぐらいの速度が出せれるよ」

「いや~なかなか面白い作業だったよ~♪」

「あの~……お二人とも……」

「速度が出るとか到着とかって言ってますけど……これ、戦闘機とかじゃなくて……」

『どこからどう見ても、ミサイルだろこれは』

『ロケットでないのは、確かである』

 

肩を回したり首をゴキゴキ鳴らして苦労をアピールするロイドとジェイルに、

魔弾戦士と魔弾龍達は目の前にあるそれにツッコミを入れる。

格納庫にあるのは、誰がどう見ても“ミサイル”という間違っても、誰かを乗せて

移動を行う代物ではない。

 

「これは、前に一夏達を異空間に飛ばしたESミサイルさ。

 空間転移できるこれなら、本局の警備網もすっ飛ばしていくことができる」

「できるって言ったって……ミサイルです……よね?」

「まさか……これに乗って行くんです……か?」

「当たり前だろ?」

『何故、何を言っているんだ?な顔をするんだ……』

『しかし、通常のモノより速いのは事実である』

 

自慢のおもちゃを見せびらかすように胸を張るカズキに、引きつった声で

間違いであってほしい予想を口にするMリュウガンオーだったが、あっさりと

その願いは打ち砕かれる。

 

「当たり前だろって……百歩譲ってこれで行くにしても、試験とかは……

 したんですよね?」

「大丈夫~大丈夫~」

「爆薬は乗せてないし、乗り込む部分は一番頑丈にしているさ♪」

「つまり……何かあっても生き残れそうな俺達で稼働試験をする……と?」

「「…………アハッ♪」」

 

仮面の下で冷や汗を流しながら、開発者二人に安全はどうなっているかを

尋ねるGリュウケンドーとMリュウガンオーは、返ってきた笑顔を

見るや否や回れ右をして格納庫から逃亡しようとする。

 

「おいおい、どこに行くんだい?二人とも?」

「あの二人が作ったものってだけでも不安なのに、あの笑顔は絶対碌なことにならないって!

 てか、あんたも何気に変身しているじゃないか!」

「離してくれぇっ!誰か、助けてぇっ!」

『……つまり、カズキも変身しないと危険だと感じているのか……』

『爆発しなくても、途中で撃墜される可能性もある』

『撃墜される前に、ちゃんと着けれるのかね~。

 下手したら異空間で迷子になるかもな♪』

 

魔弾龍達の不吉な言葉に、GリュウケンドーとMリュウガンオーは、

血の気が引いていく。

 

「その辺りは心配ないよ、諸君!」

「例え迷子になってもちゃ~んと見つけられるように、発信機もつけてるし、食料も

 あるから~♪

 他にも色々な機能を付けたんだけどねぇ~」

「そのおかげで、最後の安全確認の時間が削ってしまったが、まあ大丈夫だろ♪」

「「大丈夫じゃねぇぇぇ!!!!!

 何一番大事なことを削ってんだぁぁぁっっっ!!!」」

「それじゃ、とにもかくにも出~発~」

「「嫌だぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!」」

 

抵抗むなしく、リュウジンオーによって無理やりESミサイルに詰め込まれた

二人の悲鳴をかき消しながら、ESミサイルは発射された。

 

「そう言えば、ジェイルく~ん?

 調整している時、なんか大量のネジが余ったんだけど、何か知っている?」

「う~ん……?これは、姿勢制御のネジに似ているような……」

 

幸か不幸か、二人のマッドな科学者のそんなつぶやきは魔弾戦士達の耳に届くことは

なかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「何しに来たかって?君を止めに来た以外、何があると思うんだい?」

「ああ……。それは、見ればわかるが、後ろの二人は……」

 

オルガードは視線を、崩れ落ちているGリュウケンドーとMリュウガンオーに

向かわせながら何とも言えない声を出す。

 

「ははは。ここに来るのに、無茶苦茶な方法を使ったからね~。

 なかなか刺激的だったよ♪」

「どうして、あなたはそんなに平気なんですか……?」

「絶叫マシンなんてものじゃなかったっすよ……」

 

よろよろと立ち上がるGリュウケンドーとMリュウガンオーは、

疑問の声を上げる。

そもそもESミサイルは、ミサイルである以上人が乗ることなど想定しているわけがなく、

乗り心地がどうだったかそういったレベルの乗り心地などではなかったのだ。

普通の人間なら数秒で気絶するGに、縦横無尽の回転やスピード。

下手に変身して耐性があっただけに、絶叫マシンなどでは味わえないスリルを

同様に体験したはずなのに、どうしてここまで差が出るのか……。

 

「それは、あれだよ?鍛え方の違い?」

「うっわ~……正論だぁ~」

『不思議と納得してしまうな』

「反論できねぇ……」

『単純明快な回答』

「後は、そうだね~……風を使って自分の体を浮かして

 ESミサイルの動きの影響を受けない様にしていた……とか?」

「「そんなことできるなら、俺達にもしてくれぇっ!!!」」

 

リュウジンオーの答えに再び崩れ落ちそうになる二人だったが、平気だった

本当の理由がわかって、一気に復活する。

 

「ちょっと!あんたら、ここに漫才しに来たのか!?

 そうじゃないなら、そろそろ助けて!切実に!!!」

 

ユーノの必死な声に魔弾戦士の三人が目を向けると、今にもオルガードの剣で

両断されてしまいそうな、ユーノの姿があった。

これ以上は付き合いきれなくなったのか、オルガードは魔弾戦士達を無視して

当初の目的を果たそうとする。

 

「止めろオルガード!」

「ふんっ!」

 

一瞬で戦闘へ気持ちを切り替えたGリュウケンドーが、オルガードに斬りかかるが

その剣はたやすくかわされてしまう。

 

「残念。かわされるのはわかっているよ」

「なっ!?」

 

Gリュウケンドーの攻撃をかわしたオルガードに待っていたのは、リュウジンオーに

よる力任せのタックルだった。

そのままリュウジンオーはオルガードを、突き破ったESミサイルにたたきつける。

 

「おらぁっ!」

「こ、のっ!離せっ!」

 

オルガードは、リュウジンオーを突き離そうと剣を振り下ろそうとするが

剣を持つ腕を今度はGリュウケンドーが押さえつける。

 

「悪いけど、ここから退場してもらうぜ?

 ワープキー!発動!」

 

押さえつけられオルガードの動きが止まった瞬間を狙って、Mリュウガンオーが

魔弾キーを発動させ、艦橋は目もくらむ眩い光に包まれる。

 

「き、消え……た……!?」

 

光が消えるとそこに魔弾戦士達とオルガードの姿は、どこにもなかった――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「……っと!」

「おわっ!」

『ひとまず上手くいったな』

『作戦は、ほぼ成功』

 

リュウジンオーとMリュウガンオーは、一面岩だらけの場所へと現れた。

その際、Mリュウガンオーはバランスを崩して着地に失敗する。

 

「オルガードにとってあそこは敵地だから、周りを気にせず戦えるけど

 俺達はそうはいかないからね~。

 彼を止めようと思ったら、俺達も本気を出さないと……」

『だから、ワープキーを使って近くの世界に来たんだよなぁ~』

『通常ならワープキー単体でここまでの移動は不可能だが、

 ESミサイルも使うことで大規模な転移を可能とした』

「だけど、実験段階の合わせ技だったから、精度はまだまだだね。

 予定のポイントと全然違うし、何より……」

「あれ?Gリュウケンドーは?」

 

ザンリュウジンを肩に担ぎながら、ため息をこぼすリュウジンオーに、

Mリュウガンオーはようやく現状を理解する。

 

 

 

「どわぁっ!」

「ぐっ……!」

 

Gリュウケンドーとオルガードは、リュウジンオー達が現れた場所に

よく似た場所へ弾き飛ばされ、転がり出た。

 

「いてて……。ここは……」

『作戦通り近くの世界に来たようだが、別々の場所に飛ばされたようだな』

「……くっ!やってくれたな……!」

 

周囲を見渡すGリュウケンドーに、オルガードは忌々しく苛立ちをぶつける。

 

「これ以上、邪魔をするというのなら容赦はしない!

 障害として、お前達を排除する!」

「本当にこうするしかないのか?

 創生種も絡んでいる以上、確かに

 時空管理局は倒さなきゃいけないのかもしれない……。

 だけど、あんたのやり方は間違っている!」

「今の私は、ただの復讐者……。目的のためなら手段は選ばん!

 奴らを滅ぼさない限り、この胸に燃える怨嗟の炎が消えることはない!!!」

『Gリュウケンドー……決意を固めた者を言葉で止めることはできない』

 

ぶつけ合う想いはどこまでも交わらない平行線であることを互いに、

悟ったのか、Gリュウケンドーとオルガードは剣を向け合う。

 

「「…………はぁぁぁっ!!!」」

 

譲れない想いを剣に込め、二人の戦士がぶつかる。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「こういう偶然を運命と言うんですかね?

 どちらかを優先するべきか、はたまた両方を取るか……」

「どっちも捨てるにはもったいないチャンスだよね~、レグド様~?」

「人間達の言葉に“二兎を追う者は一兎をも得ず”というのがありますが……。

 どの選択にもリスクがあるなら、賭けに出るのも一興でしょう。

 頼まれごとをしてもいいですか?

 デグス・エメル?」

「クリエス・レグドの仰せのままに――」

 

人知れず魔弾戦士と復讐の騎士を見据える創生種は、静かに動き出す……。

小さな波紋がやがて大きな波紋を呼ぶように、無関係な行動の一つ一つが積み重なり

世界の命運をも左右する結果となっていく。

オルガードの復讐、阻もうとする魔弾戦士達、裏で暗躍する創生種。

様々な思惑が交差するこの戦いで、

それぞれの道が大きく変わることをまだ誰も知らない――。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「だぁぁぁっ!一体、何なんだこいつらは!?」

『襲い掛かってきている以上、友好的な存在でないのは確か』

「魔物じゃないみたいだけど、

 どう見ても普通の生き物じゃないから、縄張りに入ったとかそんなんでもないね!」

『てか、進化の過程はどこに置いてきたんだよ、こいつら!』

 

Mリュウガンオーとリュウジンオーは、謎の生物達による襲撃を受けていた。

はぐれてしまったGリュウケンドーを探しに行こうとした矢先に、突如として

襲い掛かってきたのだ。

この程度の不意打ちで、倒される二人ではなかったが襲撃者達の姿には驚きを

隠せなかった。

 

――筋肉隆々で頭部が無い人の形をしたもの

――4本腕のはさみを持つ牛の頭をしたもの

――ドロドロとした体を引きずり、耐え難い腐臭を放つスライムのような生物

 

どこからどう見ても、“普通”の生き物や魔物でないもの達が群れをなして

押し寄せてきているのだ。

 

「これは多分生物兵器の類だね……それも人間が“作った”……」

「はぁっ!?生物兵器!!!?」

「ああ、間違いない。魔物なら魔物らしい魔の理ってものがあるし、

 生き物なら自然の理ってものがある。

 だけど、こいつらはその理ってものを捻じ曲げられている……。

 ここまでセンスの欠片もない捻じ曲げ方をする生き物は、この世には“人間”

 しかいない……さ!」

 

襲撃してくる獣達の正体を見抜いたリュウジンオーは、忌々し気に言葉を吐き捨てながら、

ザンリュウジンや風術を用いて“作られた”敵を薙ぎ払っていく。

 

「そんなの一体誰が!何のため……に!」

「世界が変わっても、人間って奴はロクでもないってことさ!

 兵器っていうのは、高く売れるし……何より量産もできる……。

 で?何か気付かないか?」

『あっ!時空管理局!

 創生種の奴らが仕向けて、万年人手不足で悩んでいるから、まさか……!』

「戦力不足を解消するために、こんな化け物を作ったって言うのか!?」

『あるいは、こんなものを作るというのも創生種が描いたシナリオの可能性もある……』

 

リュウジンオーの問いかけに、Mリュウガンオーと魔弾龍達は襲い掛かる

獣達を“作った”者達の正体と目的に驚きの声を上げる。

 

「まあ、今はこいつらをどうするかが先決だ。

 おとなしく尻尾巻いて逃げてもいいけど、ちょっと向こうに集落が

 あるみたいなんだよね~」

『ってことは、ここで食い止めないとそこが襲われるわけね』

「そうなると思ったよ!」

『確かになかなかの強さだが、我々の敵ではない』

 

取るべき行動が決まるや否や、様子見の戦いから一転してリュウジンオーと

Mリュウガンオーは、反撃に転じる。

 

「烈風――!」

「ダブルショット!」

 

迫りくる敵の群れをリュウジンオーが高速移動で薙ぎ払うと同時に撹乱し、

Mリュウガンオーが正確無比な射撃で撃ち抜いていく。

 

「(さぁ~て……。こいつらを“作った”奴らの相手もしなくちゃ

 いけなくなったから、一夏の奴と合流するのは時間がかかるけど……大丈夫か?

 今までのオルガードとは、何か違う感じがしたけど……)」

 

ザンリュウジンを振るいながら、カズキは一夏を気にかけていた。

そして、その懸念は的中していた――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ふんっ!」

「……っ!」

 

Gリュウケンドーとオルガードの戦いは、前回とは変わって

一方的な展開となっていた。

オルガードの剣に押し負け、Gリュウケンドーは吹き飛ばされ、

倒れ伏す。その鎧には、いくつもの斬撃が刻まれていた。

 

『くっ!気付いているか、Gリュウケンドー?

 オルガードの剣には、前と違って迷いが無い……つまり……』

「これが、あいつの本来の力ってことか……。

 でも、何でこんな……?」

 

こちらは前と同じく、何故か戦いたくないと本来の力を出し切れないのに

オルガードの剣はこれが本当の力と言わんばかりに鋭く、重い……。

 

「まあ……こっちが全力を出せなかろうが……相手がどれだけ強かろうが……

 やることは変わらない!」

『ふっ……そうだな!』

「まだ、立ち上がるか……。いいだろう……引導をくれてやる!

(何だ?胸がざわつく……?)」

 

力の差は歴然としていても、Gリュウケンドーは闘志を一層燃やして

立ち上がり、その姿を見てオルガードの心に何かがよぎる。

 

「うおおお!!!」

「はぁぁぁっ!!!」

 

互いの剣がぶつかり合い、凄まじい衝撃が辺りへと広がり鍔迫り合いとなる。

Gリュウケンドーはオルガードに押し負けない様、ありったけの力を込めてこの拮抗を維持する。

 

「貴様も分かっているはずだ……!

 管理局の傲慢がこれ以上、世界に広がる前に奴らは消さなければならないと!

 いずれは、お前の世界も襲われるかもしれないんだぞ!」

「わかっているさ、そんなこと!

 確かに管理局は、どうにかしなくちゃいけないさ!

 でも、手当たり次第に犠牲を生み出していく、あんたのやり方は絶対に間違っている!」

「正論だな……。だが、復讐に正論も綺麗ごともない!

 奴らが存在している限り、この胸の内に燃える復讐の炎が消えることはない!」

「人間、綺麗ごとを言えなくなったら終わりだろうが!

 このまま行ったらあんたは、成り下がるどころか……本当にあんたが憎む管理局と

 同じじゃないか!弟に胸を張れるのかよ!」

「っ!!!」

“にいさーん!”

 

自分の前に立ちはだかるのなら、誰であろうとも容赦等しないオルガード

だったが、Gリュウケンドーの悲痛な叫びに一瞬の動揺が走る。

 

「……例え、弟が誇れる兄でなくなろうともこの復讐は!

 がっ……!」

「ようやく……隙を見せてくれましたね」

「なっ!?」

 

胸に走る動揺をGリュウケンドーごと断ち切ろうとしたオルガードの

背後に、突如として何者かが現れその腕をオルガードの背へと突き刺し、

何かを抜き取る。

その者は、宝石のように緑色に輝く体に銀の装飾が骨のように走り、危うい美しさを

感じさせ顔は、ゴーグルで覆われていた。

 

「ふふふ。素晴らしいマイナスエネルギーですね……」

「お前!何者だ!一体、何をした!」

『気をつけろ!こいつ……かなりできるぞ!』

 

オルガードから距離をとった乱入者の腕には、紫色に輝く球状の結晶が握られていた。

Gリュウケンドーは、崩れ落ちるオルガードをかばうように彼の前に立ち

相手の出方を見る。戦闘中だったとはいえ、自分達に気配を悟られることなく僅かな

隙を突いてきた乱入者に警戒を強める。

 

「私は、デグス・エメル。

 クリエス・レグドの命により、不確定要素であるその者を消すために参上しました。

 先ほどの一撃で仕留めるつもりだったのですが……まあ、

 変わりにその者の上質なマイナスエネルギーを手に入れられたので、

 よしとしましょう。放っておいても直に、その命は尽きるでしょうしね」

「どういうことだ!」

 

上機嫌に結晶を眺めるデグス・エメルに、Gリュウケンドーは焦り交じりの声で

問いかける。今回のような収集方法は見たことないが、理解はできる。

だが、直接的に死の恐怖を与えようとしたのならともかく

マイナスエネルギーの抜き取りが命の危機に直結することなど、

今まで見たことがないのだ。

 

「別に、特別な事などしていません。

 マイナスエネルギーをこうして直接奪う方法も、相手によって質は異なりますし、

 奪った相手はしばらく人形のように無反応となる……、

 何より一人一人からでは効率が悪すぎる……。

 だから、滅多に使うことはないのです。

 その者のように、内に世界を滅ぼさんばかりの怒りと絶望を持った者に

 狙いを定めない限り……」

「…………」

「そもそもマイナスエネルギーといった負の感情は、どんな生物も多かれ少なかれ

 持っているのです。表や裏しかないコインがないようにね。

 あなた達、魔弾戦士達にもマイナスエネルギーは宿っていますし、逆に

 私達のように魔の存在にもプラスエネルギーはある。

 光と闇、正と負、希望と絶望……互いに存在し合うからバランスというものが

 取れているのに、どちらかが消えれば変調をきたすのは、自然なことです。

 ですが、その者の命は元々かなりすり減っていたようなので、

 そこで無理やりマイナスエネルギーを奪えば……ふふふ」

「まさか、オルガード……あんたが本局に攻めたのって!?」

「そうだ……。辛うじて今まで生きながらえてきたが、

 星の大樹の恩恵がないこの体の限界は……近い……。

 その前に何としても、管理局を滅ぼさねばならないんだ!」

 

デグス・エメルが語る言葉に、オルガードの身に起きていることを察した

Gリュウケンドーは、息をのむ。

 

「我が身に変えても目的を達しようとするのは結構ですが、

 あなたは魔弾戦士達とは、また違ったイレギュラー……。

 ここで、消えてもらいます!」

「させるかぁっ!!!」

 

右手の鉄球のような砲門をオルガードへと向ける、デグス・エメルだったが、

その前にGリュウケンドーが地面にゴッドゲキリュウケンを振り下ろし、

土煙を巻き起こす。

 

「くっ……!やってくれますね……」

 

巻き起こる土煙を薙ぎ払うと、そこにGリュウケンドーとオルガードの

姿はなかった。

 

「つい先ほどまで戦っていた相手すら助ける……全く人間というのは、

 理解に苦しむ行動をする……。

 まあ、それ程遠くには行っていないでしょうし、

 じっくり確実に追い詰めていくとしましょう。

 その前に、このマイナスエネルギーはクリエス・レグドの元へ送りましょう」

 

デグス・エメルがマイナスエネルギーの結晶をレグドに転送すると、

ふと顔を別の方へと向ける。

 

「さて……あちらも面白いことになってきましたね――。

 しかし……オルガードから感じたあのプラスエネルギーは一体――――」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「くそっ!どんだけいるんだ!次から次に!」

「全く……手こずるほどってもないのに、数だけはいるっていうの……は!」

 

Mリュウガンオーとリュウジンオーは、謎の生物兵器の迎撃を行っていたが、

後から後からと湧いてくる数に手こずっていた。

更に背後にある集落に向かわせないために、一体たりとも自分達を超えさせるわけには

いかないというプレッシャーが彼らの体力と集中力を奪っていた。

 

『このままじゃ、埒が明かないぜ!』

「確かに、これ以上時間をかけるのはね……。

 まあ、そこそこ数も減ってきたし一気に片づけるぞ、Mリュウガンオー!」

「了解!」

「「ファイナルキー!発動!」」

 

リュウジンオーとMリュウガンオーは、距離を取るとザンリュウジンとゴウリュウガンを

構える。

 

『『ファイナルブレイク!』』

「ザンリュウジン――乱舞!」

「マグナドラゴンキャノン――発射!」

 

放たれた必殺の一撃は、生物兵器達を一掃する。

 

「よし!」

「まだ、終わっていないよMリュウガンオー。

 あの出現具合からして、どこかに生産工場があるはずだ。

 俺はそこを叩いてくるから、お前は他に奴らがいないかの確認と集落の方の

 防衛を頼む」

「はい!……って、もういねぇ!だけど、カズキさん何か隠していなかったか?」

『可能性はある。確かに防衛には、射撃ができる我らが向いているが……』

 

リュウジンオーことカズキの様子に疑問を抱きながらも、Mリュウガンオーは

倒し損ねた敵がいないかを確認しつつ、集落へと向かった。

 

『で?わざわざ、一人で向かう理由は何だよ?』

「簡単なことさ。俺達を襲ってきた奴らは、色んな生物が合成されたり、

 改造されていたりした……。まるで、命を作品のようにな……。

 恐らく……いや……ほぼ間違いなくこの先には、見るモノじゃない

 “裏の所業”っていうのがある――!

 本当に人間がやったのかと疑いたくなるような……」

 

リュウジンオーは、直感から自分が向かう先のものを一夏と弾には見せるべき

ではないと感じ取っていた。

嫌な予感程当たってしまうことを考えながら、風で見つけた暗闇の先へと

リュウジンオーは進む――。

 

 

 

「ええい!何なのだ、奴らは!?

 私の合成魔獣達(キメラ)を、ああも容易く!!!

 大体、何故リンカーコアもないのに魔法を使えるのだ!?」

 

とある部屋に設置されたモニターで、Mリュウガンオーとリュウジンオーの

戦いを見ていたある者は金切り声でわめいていた。

 

「ふざけるなよっ……魔法を戦いにしか使えぬ愚か者風情が!!!!!

 愚か者の分際で、この私の邪魔をしたことを後悔させてくれるわ!!!」

 

歳を刻んだ証であるしわのある顔を醜悪に歪ませる者は、未だ気付かない。

自分が戦おうとしている者が、如何なる存在なのか。

今日この日まで自分が、ある者達の手のひらで踊らされていることを……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はぁはぁ……」

「おい……放せ……私を置いていけ……」

 

Gリュウケンドーは、フラフラのオルガードに肩を貸しながら

ひたすら歩いていた。

 

「今にも死にそうな奴を置いていけるかよ……」

『諦めろ。こいつのお人よしは筋金入りだ』

「褒めても何も出ないぜ?」

『褒めてなどいない。どうしようもないバカだと言っている』

「ははは……って!バカってなんだ!バカって!」

『事実を言っているだけだ』

 

油断できない状況にも関わらず、いつもの口喧嘩を始める二人に

オルガードは何とも言えなくなる。

 

「……ふん。これで私に、恩でも売るつもりか?

 それとも、私が心を入れ替えるとでも思っているのか?」

「どうして、素直に感謝とか言えないのかな?

 まあ、どうしても理由が必要だっていうんなら、この間助けてくれた借りを

 返すためでいいか?」

「甘いな。

 そんな理由で、敵を助けるなど……いつかその甘さが、お前を滅ぼすぞ……!」

「甘くて結構……!それで、誰かを助けられるならいくらでも甘くなるさ」

「誰かを助けられるなら……か……。

 私が、お前の父である織斑太夏を利用しているとしてもか?」

「……今……何て言った?」

 

差し伸べられた助けを受け取ろうとしないオルガードに、若干呆れながらも

Gリュウケンドーは自分の信念を貫こうとする。

だが、オルガードが告げた言葉を聞いて、Gリュウケンドーは言葉を失った。

 

 

 

夏の日差しが差し込む織斑家のリビングで、机の上に広げられたアルバム――。

その中の一枚の写真には赤ん坊の一夏と、抱き抱える織斑太夏が輝くような満面の

笑みを浮かべていた…………。

 

 





一夏達に協力する科学者コンビは、確かに天才ですがそれだけぶっ飛んだ
発明品も多く、周りは散々な目にあってます。
そこにいずれ、天災ウサギも混ざるので・・・(汗)

リュウジンオー達を襲った怪物は、「トリコ」の灰汁獣のように醜悪な
怪物です。当然、作った者がいます。

最後に、オルガードのモデルはギンガマンの黒騎士というのはバレバレで
この展開も予想されていたでしょうが、ラストはマジレンジャー風にしました。

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