インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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今回は一夏と千冬の親について、掘り下げていきます。
エグゼイドは、いよいよ来週ファイナル・・・。

来月は、仕事の方でちょっとした動きがあるので更新できないかもしれません。


復讐の襲撃

「お待たせしましたっ」

 

大人の社交場のとある店、『バー・クレッシェンド』に走ってきたのか息を切らして

IS学園の教師の一人、山田真耶が姿を現す。

 

「いいわよ、こっちが呼び出したんだし」

「マズダー!生おがわりぃぃぃっ!」

 

真耶を待っていたのは、同僚の日下部燎子とエレン・ミラ・メイザースであった。

エレンはジョッキを片手に顔を真っ赤にしており、既に酔っ払っているのが

一目瞭然であった。

 

「それで、私を呼んだのってまさか……」

「私だけじゃ“コレ”を何とかできそうにないからね……」

「いぢがぁ~~~~~!」

 

顔を引きつらせる真耶と燎子を目に入れることなく、エレンは涙を流して

一夏の名を叫ぶ。

 

「何でも、今織斑先生の家にいつもの面々がいて、オマケに少し前から

 原田が泊まっているらしいのよ」

「泊まっ!それって原田さんと織斑くんが同棲ですか!?」

「いや、もう寮で似たようなことはしているし、保護者もいるから

 友達の家に泊まる?な感じらしいんだけど、もう耳には入らなくて……」

「わだじだって、おりょうりできぎるようれんじゅうじてるもん!

 ぞうじだっでぜんだくだっで、できるようがんばっでるもん!

 うわ~~~ん!」

 

燎子は疲れた目で、ジョッキを振り回す酔っ払いに視線をやり、ため息をこぼす。

 

「で、“コレ”の面倒で呼んだって言うのは建前で、真耶?

 ……合コンでもしない?」

「はい?」

 

真耶が自分の注文を終えると燎子が突然出してきた誘いに、目を点にして固まる。

 

「いや、ほら?私達もこのままだとこうなりそうだからさ、今の内にって

 思ってさ?

 私も後数年したら20代が終わる……し……」

「そ、そんな気にすることありませんよ!日下部先生にもすぐにいい人が、

 現れますって!」

 

体からどんよりとしたオーラを放つ燎子を真耶は、必死に励ます。

 

「……それと似たようなことを言っていた先輩が、親友に先越されたらしいのよね……。

 後数か月で20代が終わる先輩が……ね?」

 

燎子の言葉を聞いて、真耶はビシリと石像のように固まる。

 

「先輩と同じく親友さんも出会いに恵まれなくて、よく先輩に“嫁に貰ってくれ!”って

 言っていたらしいんだけど、先輩の知らぬ間に“いい人”と出会っていたみたいなのよ……。

 しかも、来月結婚するとか……」

「……」

 

とある司令官のように腕を組みながら吐露する燎子に真耶は頬が引きつるのを、

止められなかった。

 

「小学校からの同級生で、誕生日やクリスマスも毎年一緒に遊んで、

 バレンタインなんか互いにチョコを交換し合っていたらしいわ……。

 で、久々の近況報告で結婚を知ったみたいだけど、電話越しでも先輩が

 どんな顔してたのかが、簡単に目に浮かんだわ……。

 下手したらこれが、私達の未来の姿になるかもしれないっていうのもね……」

 

燎子の“重たい”言葉に、真耶の額から冷や汗が滝のように流れ落ちる。

自分達がそんな風に、呪詛の如く愚痴を吐かないという保証はどこにもなかった。

 

「何より……恋路とか一番縁が無いと思っていた織斑先生が、私達の中で

 真っ先にゴールしそうだし……」

「そ、それは……」

 

昼間にも関わらず、夜に変えられそうなほどドンヨリとした空気を放つ燎子に

真耶はかけられる言葉が出てこなかった。

 

「……こうなったらいっそのこと、私達も弟君にアタックしてみようかしら?

 大人の魅力で攻めれば、私達にも一発逆転の可能性が……」

「日下部先生っ!戻ってきてください!!!」

「うがぁぁぁ!!!いぢがは、わだじまぜんよ!!!」

 

目から光を消し、迷走する燎子を真耶は呼び戻そうとする。

まだまだ夢を見たい乙女達は、果たして人生における勝ち組になれるのかどうか……

それは神にもわからない――。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「この絵に描いたようなワンパク坊主な男の子が、二人の父親の太夏(たか)。

 面白いことが大好きな子でね~。

 ツチノコを探して夜になるまで山の中を駆けまわったり、凍った池の上を

 自転車でスケートしてみたり、数え上げたらキリがないわね~」

「ツチノコ?」

「自転車でスケート?」

「ははは……」

 

雅は出来の悪い弟や息子の愚痴をこぼすように楽し気に語ると、

明と簪は呆然とつぶやき一夏も渇いた声で笑う。

何度も聞かされたのか、一夏と同じように何とも言えない表情を浮かべる

箒と鈴を除いた他の面々は唖然とする。

 

「ふふふ♪

 でも、いつも騒ぎの中心にいるトラブルメーカーだったけど、困っている人を見たら

 ほっとけないお人よしの優しい子だったから、みんな大好きだったのよ?

 まあ、そうやって助けた女の子達を“男”の笑顔で次から次に落としていったのは

 問題だったけど」

「ん?なんだよ、みんな?そんな顔をして」

 

一夏の顔を見ながら雅が父親の困ったことを語ると、ラウラを除く全員が

雅に続くようにジト目で一夏を見る。

 

「別にぃ~~~?」

「一夏は、お父さんに似たんだなぁ~って……」

『うんうん』

 

困惑する一夏に鈴とシャルロットが皮肉気に返すと、全員(ゲキリュウケンを含む)が

頷いて一夏とラウラは首を傾げる。

 

「う~ん……全く似てないわけじゃないけど、一夏のそういうところは

 むしろ冬音(ふゆね)に似たのよね~」

「ん?冬音というのは、母上のことですか?

 母上は、お兄ちゃんより教官にそっくりですが……?」

 

そんなジト目の視線の中、雅はおもしろそうに一夏の母について語り出し、

あっているけどあっていないラウラの指摘に、笑みをこぼす。

確かに写真に写っている少女は、顔だちは千冬にそっくりであるが雅が言いたいのは

そういうことではないのだ。

 

「ふふ♪そうじゃないのよ、ラウラちゃん。

 冬音はクールというか一緒にいるとほわわわ~♪な気分になれて、

 太夏と同じかそれ以上に、みんなに好かれてね~。

 老若男女関係なく、大人気だったわ♪

 もちろん、男の子からの誘いもしょっちゅうだったけど……。

 “付き合ってください!”って言っても、素で“どこに?”とか、

 “好きです!”ってストレートに言っても、

 “うん、私もだよ。大事な友達だからね”って返事をしたのよね~」

「聞くたびに思いますけど、鈍感ってレベルじゃないですよね、それ?」

「うむ。これが噂に聞く、唐変木と言う奴か……」

『…………』

 

雅の呆れ口調と同じく呆れたという顔をする一夏と変に納得するラウラに、

明達は先ほど以上のジト目を一夏に送る。

その視線は“お前が言うな!”と雄弁に語っていた。

 

「まあ、冬音はlikeの好きは分かってもloveの方の好きは、分らなかったのよ~。

 太夏の方は、幼馴染の冬音に小さい頃からベタぼれだったから、他の子は

 目に入らなかったのよね~。

 ……一夏も千冬も二人の良いところだけでなく、そういうところまで似ちゃって……。

 まさか、見ててこけそうになる恋愛模様をまた見ることになるなんて

 思っても見なかったわ~。

 みんな、苦労してるでしょ?色々と」

 

ヤレヤレな感じで苦笑いを浮かべて、かつて太夏と冬音への想いをバキバキに

折られた者達と同じ苦労をしているであろう明達に雅が同情の眼差しを送るとみんな

深く深~~~~~く頷いた。

 

「あれ?それじゃあ、二人はどうやって結婚までいったの?」

「いい指摘だわ~簪ちゃん♪

 ふふふ♪私が一番驚いたのは、そこなのよ~。

 親子揃って、同じような告白をするなんてね~♪」

「ぶふっっっ!!!」

「同じような告白?」

 

カズキがイタズラを企んでいる笑顔と同じ笑顔を浮かべて、雅が一夏の秘密を

さりげなく暴露すると一夏が吹き出した。

そして、明がピクリと反応すると他の面々は獲物を狙う狩人の如く、目を

光らせる。

 

「へ~~~。それはお姉さん、すごく気になるなぁ~?」

「私もどうやってお二人が付き合うようになった話は、初めて聞きますね……」

「私もよ」

「是非ともお話し願いますわ」

「僕も気になります……特に一夏の方が……」

「これは、聞き逃せない……」

「私も!私も!」

「いや、あの、み、みなさん?」

「お、おいみんなちょっと落ち着けって。目が笑ってないぞ」

『(諦めて観念しろ、二人とも……)』

 

目が笑ってない笑顔で、一夏と明の退路を断っていく箒達に悪あがきの抵抗を

するも今度ばかりはどうしようもないと、ゲキリュウケンは腹をくくるように呟く。

何故なら、一人キラキラした笑顔のラウラの隣で、雅がクスクスと笑っているのだから。

 

「まあまあ、みんな落ち着いて。

 せっかくだから、その話は晩御飯の後にしてあげるわ。

 みんな、食べていくでしょ?

 その頃には、千冬もカズキくんと一緒に帰ってくるだろうから、

 そっちの方が色々と……ふふふ♪」

『はい!ご馳走になります!』

「ちょっ!」

「何を勝手に……!」

 

追い詰められる一夏と明に雅はダメ押しとばかりに、カズキも加えて話の続きを

しようと提案し、息ぴったりのシンクロで箒達は賛同する。

二人の反対に聞く耳を持つ者等、この場にはいなかった。

 

「さぁ~て、それじゃあ食材を買いにもう一回買い物に行かないとね~。

 ああ~そうだ。どうせなら、みんなの料理の腕がどれぐらいか見たいから、

 一人一品作ってもらおうかしら?

 みんな、構わない?」

 

瞬間、乙女達の纏う空気は戦士のそれとなった。

 

「微塵も問題ありません!」

「このセシリア・オルコットが、最高の一品をお見せしますわ!」

「昔のあたしとは、違いますよ!」

「一夏が好きなのは、何かな……」

「うむ、料理は初めてだが、みんなには負けんぞ!」

「私の隠してきた刃を見せる時が来たわね!」

「……負けないっ!」

「一夏は、本当に幸せ者ね~♪」

 

背後に炎を燃やす乙女達に雅は、楽しそうに笑い、一夏と明は

呆然とするしかなかった。

 

「タイムサービスまでは、まだ時間があるから買い物に出るのは、夕方前ね。

 私はちょっと出かけてくるから、みんなそれまでゆっくりしててね~」

 

火種を蒔くだけ蒔いて、雅は家を後にした。

残された一夏と明は、何とも言えない空気の中、まるで判決を言い渡される罪人

のような状況に置かれた。

 

「……き、気まずい……」

「み、みなさん……?」

 

にんまりと笑う一同に、一夏と明が話し合おうとした時、一夏の携帯が

着信を知らせる音を鳴らした――。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「な、ん……だと……!?」

「…………」

 

ミッドチルダに存在する時空管理局の地上本部。

そのとある一室にて、十代の乙女が見たら黄色い声を上げるであろう端正な顔立ちの

青年クロノ・ハラオウンが苦悶の声をあげ、傍らで座る小太りの中年レジアス・ゲイズが

苦虫を噛み潰したような苦い表情を浮かべていた。

 

「……以上が、創生種が語ったことと僕達が独自に調べた時空管理局の設立と

 管理世界の成り立ちの真実だよ……」

 

彼らの正面で、ユーノは毅然とした表情で手にした資料の説明を終えるが、その手には

力が込められていた。

 

「……管理局には、表に出せない裏の面があるのは知っていた。

 それでも、この広大な次元世界を守るには管理局が必要だし、何年かかっても

 過ちを正すつもりだった……。

 僕だけじゃない……自分達の力は、力の無い人達のためにあるんだと思っている者は

 大勢いる!

 なのに……寄る辺になる管理局そのものが手遅れだなんて……」

「儂もかつて間違っているとわかっていながら、間違った道を進もうとした……。

 人々を守る力を得るために……。

 だが、それでは結局悲しむ者が出て、変えたいものを変えられないことに気付いた。

 そして、今度こそ本当の意味で守れるよう……正しいことを正しいと言える

 組織に時空管理局を変えよう!……そう思っていたのだが、まさか元から間違っていた

 とは……」

 

自分達が所属する組織が清廉潔白でないことは、わかっていたがまさか根底から

歪んでいたとは思っていなかった二人は、明らかになった事実に打ちのめされる。

 

「しかし……ここで逃げ出すのは耐えられんな……。

 自分の間違いに気づいた時から、それを恥じなかった日はない……!

 今こそ、局員としての本分を果たす時だ!」

「こんなはずじゃなかった世界……。

 今ほど、それを痛感したことはないな……。

 だから、そんな世界はここで断ち切る!」

「二人とも落ち込むどころか、逆に火がついたみたいだね。

 まあ、二人の協力を得られなくても僕達は戦うつもりだったけど」

 

事実を知ったら使い物にならないかもという、ユーノの懸念は完全に的を外れる

結果となった。

 

「レグド……創生種が時空管理局を創ったのは自分達だと明かしたってことは、

 管理局を仮に打倒したとしてもまだ先があるってことを、暗示している……。

 試されているのさ、僕達は。……光栄じゃないか」

「意外と余裕だな……ユーノ」

「そう見えるかい?

 でも、常識じゃ考えられないような化け物と戦うたびに自分がちっぽけな人間だって、

 思い知らされるよ……。

 そんなちっぽけな人間の意地を見せてやる!って、心が燃えてくるのもね……」

 

不敵な笑みを浮かべるユーノにクロノとレジアスも立場や階級関係なく、つられて

同じ笑みを浮かべる。

 

「さしあたって、まずやることは奴らが仕掛けを施しているであろう魔法に

 頼らない戦いをできるように……か?」

「そっちはこっちで目途が立っているよ、クロノ」

「人員の方も信頼に足る者達を集めておるから、何とかなるが

 一番の問題は時間だな……」

 

改めて戦う決意を固めたユーノ達は、今後の方針について話し合いある問題に

頭を悩ませる。

魔法に頼らない戦いができたとしても、実戦レベルに扱えるようになるには

時間が必要だった。

 

「ええ。今すぐと言うわけではないでしょうが、それでもこちらに残されている

 時間は多くはないでしょう……。

 でも、そこは何とかする方法があるそうです。

 文字通りの“裏”技を使って……。

 ああ、忘れるところでしたが、泳ぎの技術も必須です。

 綺麗な花畑にある川を泳いで、こっちに戻ってこれるようにね……」

 

どこか遠くを見て渇いた笑みを浮かべるユーノに、レジアスとよく空気を読めないと

言われるクロノも空気を読んで何も口にしなかった。

そうして、ユーノがこちらに戻ってくるまでそっとしておこうと二人が考えていると、

突然通信機に連絡が入る。

 

「何だ?」

「た、大変です!リベリオン・ナイトが、本局に攻め入rうわっ!?

 …………」

「おい!どうした!何があった!」

 

通信をしてきた者からの連絡は突如として切れ、レジアスが返答を求めるが

返ってくるのは雑音だけだった。

 

「リベリオン・ナイト……オルガードが本局に?

 一体、どうやって……いや……何が目的だ?」

「重要なのはそこじゃないよ、クロノ……。

 本局は基地とは比べ物にならない戦力が配置されているのは、あっちだって

 わかっているはずだ。

 なのに攻め込んできたってことは、相応の覚悟でなりふり構わずってことだよ……!」

「っ!」

 

ユーノの指摘にクロノは歯ぎしりする。

捨て身の覚悟をした復讐者など、性質が悪いなんてレベルで済むものではない。

 

「カズキさん達にも連絡を入れます!レジアス中将!」

「ああ。後の面倒ごとは、任せておけ!」

 

レジアスが力強く答えるのを見て、ユーノとクロノは飛び出していく。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はぁ……はぁ……。こ、これだな……」

 

息も絶え絶えなオルガードは、その場にいた局員を全て三途の川の向こう側に送ると、

端末を操作してあるものを起動させようとする。

 

「時空管理局よ……自らの力で消え去るがいい――!」

 

オルガードが操作する端末の画面には、

“アルカンシェル起動シークエンス開始”の文字が浮かび上がっていた――――。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「オルガードが、管理局の本部を襲撃している!?」

「どうやってかはわからないが、時空の狭間にある本局に侵入して

 巡行艦一隻を乗っ取ったんだが、その艦にはある武装が積んであるんだ……」

「なんですかその武装って?ものすごく嫌な予感がするんですけど……」

「アルカンシェルだ」

「なっ!?」

 

カズキからの連絡を受けた一夏は、その内容に頭を抱え続いて知らされた情報に

目を見開く。

 

「何だそれは?」

「かなりヤバかったりする?」

「確か、管理局でも許可が下りなければ使用を許されない武装だったはずです。

 空間歪曲と反応消滅で、発動地点から百数十キロの範囲を殲滅するとか……」

「意味はよくわかりませんが……」

「とんでもない武装みたいだね」

 

一夏の反応と明の説明を聞いて、箒達は血の気が引くのを感じた。

 

「創生種が絡んでいるわけではないが、どうにもオルガードは俺達が止めなくちゃ

 いけない気がするんだ……」

「ええ、俺も同感です!」

 

拳をぶつけながら一夏は立ち上がり、他の面々もその目に闘志を宿らせる。

 

「じゃあ、私達も……」

「いや場所が密閉空間である以上大勢……ISで行っても上手く連携することは

 できないだろう。オルガードは弾を入れた俺達魔弾戦士が何とかする。

 明達には、俺達が離れている間の創生種の襲撃に備えてほしい。

 それに、管理局は魔法以外の力にうるさいし、顔がわれてない俺達の方が

 何かと動きやすい」

 

カズキの正論に明達は反論できず、悔しそうな声を上げる。

 

「お前達に動いてもらうのは、もう少し先になる。

 だから、今は俺達に任せてくれ」

「ところで、カズキさん。千冬姉は、どうしてますか?

 さっき、カズキさんの所に向かったみたいなんですが……」

「千冬ちゃんなら、横で渋い顔をしてるよ?

 今すぐぶった斬りたいけど、流石にそんな場合じゃないってのはわかってくれたみたい」

「あははは……」

 

姉のそんな顔を思い浮かべて一夏は、苦笑いしか浮かばなかった。

 

「それで、管理局に行く方法だけど……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「くそ!まさか、アルカンシェルを搭載した艦が帰還したタイミングで

 襲撃してくるなんて!」

「偶然にしろ狙ってにしろ、急がないとマズい!」

 

警音が鳴り響く艦内をクロノとユーノはバリアジャケットをまとって、全力で駆けて、

艦橋を目指していた。

艦内の通路は入り組んでおり、飛行魔法を用いるより自らの足で駆けた方が早いのだ。

 

「もうすぐ、艦橋だ!」

「でも、多分……」

「くそ!早く開けるんだ!」

「お約束というか、当然だよね……」

 

艦橋にたどり着いたクロノとユーノは、扉の前で立ち往生している局員達と

合流する。わざわざ、自分が立ち籠る場所への扉を開けておく理由など無いのだ。

 

「ハラオウン提督!スクライア司書長!」

「挨拶はいい、状況を!」

「はっ!敵は艦橋に立てこもり、ドアの開閉機能を物理的に破壊したらしく、

 外からも中からも開けることができません!」

「リベリオン・ナイトは、アルカンシェルを起動させていますが、始動キーは

 こちらにあるので今のところは発射の心配はありません!」

 

報告を聞いたクロノとユーノは、渋い表情となる。

 

「立て籠もっただと?逃げ場所の無い、こんな所にわざわざ?」

「普通なら、要求があるものだけど……。

 それにアルカンシェルを撃つには、搭載艦の提督が持つキーが必要なのに

 知らなかった……?

 何を考えt、離れて!!!」

 

オルガードの行動の意図が読めず、これからの行動をどうするか考えた瞬間

凄まじい勢いの爆発によって扉が吹き飛ばされ、

傍にいた局員達もまとめて吹き飛ばされる。

 

「ふん……オーバーSを一人二人消せれば、御の字と思ったが……

 そう上手くはいかないか……」

 

爆発によって生じた煙の中から、オルガードが剣を携えながら歩み出る。

 

「立て籠もったのは、これが狙いか……」

「扉を開けようと集まったところを狙って、守りの要である扉ごと吹き飛ばす……。

 常識の枠から外れた見事な不意打ちだね……」

「その不意打ちから、ほぼ全員を守って見せた貴様もたいがいだがな……。

 こんな裏エースが、隠れていたとは……」

 

苦々しく舌打ちするオルガードの前には、うめき声を上げたり気絶したりしている

局員で埋め尽くされていたが、全員の前には小さなシールドが展開されていた。

このシールドにより、何とか致命傷を回避できたのだ。

それでも、戦闘可能な者は数えるぐらいしか残っていなかった。

 

「大人しく投降しろ!

 間もなく応援も駆け付ける!逃げ場はないぞ!」

「投降?ふっ……それより、自分達の方を心配した方がいいのでないか?」

「何?」

 

よろよろと立ち上がった者が投降を促すが、オルガードはどこ吹く風と涼し気に

逆に忠告を返す。

訝しく思うクロノがオルガードの背後に目をやると、危険を知らせる警告が

端末の画面に浮かび上がっていた。

 

「まさか君は、アルカンシェルのエネルギーを使ってこの艦を爆弾として

 使う気なのか!?」

「なっ!?そんなことをしたら、艦の動力部も誘爆してとんでもない破壊力になるぞ!」

「ああ、この本局を吹き飛ばすぐらいのな……」

 

驚愕するユーノとクロノが叫ぶオルガードの狙いに、そこにいた局員達は絶句する。

それが本当なら、アルカンシェルの始動キーがあってもなくても関係ない。

自分達が今いるこの艦そのものが、自分達を脅かす危険物となったのだ。

今すぐ逃げなければ、文字通り自分の体が塵も残らないほどの……。

 

「ハ、ハッタリだ……!そんなことをしたら、こいつだって!」

「いや、彼は本気だ……。彼の目に、自分の明日は映っていない……!」

 

オルガードが自分の身がどうなろうと本気で、この本局をつぶすつもりなのだと

見抜いたユーノは即座に身柄を拘束しようとバインドをかける。

 

「ふん!」

「甘い!」

 

ユーノのバインドは後方に飛ばれてやすやすとかわされるが、狙ったかのようにクロノの

バインドが襲い掛かる。

 

「ちぃっ!」

「今だ!ユーノ!」

 

クロノのバインドも横っ飛びでかわすオルガードだったが、

着地が悪く体勢を崩してしまう。その隙に、クロノは一気に距離をつめオルガードを押さえ、

ユーノを端末へと向かわせる。

 

「っ!なるほどな……。下手に攻撃魔法を使えば、ここの端末まで破壊してしまい、

 アルカンシェルの起動を止められなくなる……。

 だから、止めるための者を行かせるために足止めに徹するか……!」

「そうさ……。確かに、お前を倒すのは難しいが、あいつが操作するのに必要な

 数分の足止めぐらいなら、僕でも何とかなる……。

 あのフェレットもどきは、攻撃はからきしだが、防御やこういったサポートなら

 右に出る者はいないからな……」

「お前は素直に人を褒められないのか、腹黒!」

 

自身のデバイスであるデュランダルでオルガードの剣と鍔迫り合いながら、軽口を放つ

クロノにユーノは文句を言うが、それに構う余裕は本人にはなかった。

 

「確かに、彼の能力の高さは認めよう……。他人の力を引き出し、

 十二分に力を発揮できるようにできる者は、一流の戦士より厄介な存在だ。

 しかし……悲しいかな……。私の足止めは、貴様には荷が重いようだ!」

「ぐわぁぁぁっ!!!」

 

オルガードの剣から稲妻が走り、クロノは密接していたため避けることができず、

直撃を受け床に沈んでしまう。

 

「クロノ!」

「ふん!」

 

倒れ伏すクロノに目もくれず、オルガードは端末を操作するユーノへためらうことなく

剣を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

だが、ユーノは振り下ろされた剣をシールドで受け止める。

 

「これは……」

「腹黒が言ってただろ?僕は、攻撃魔法はダメダメだけど、防御には

 ちょっと自信があるのさ」

「そのようだな……。エースオブエース以上の硬さだが……いいのか?

 時間をかける余裕が無いのはお前達の方だぞ?」

「それは、どうかな?」

 

自分の攻撃を受け止めたシールドの硬さに驚くオルガードだったが、

そこに焦りはなかった。

確かにユーノの防御力は、相当のものだが時間をかければかけるほど

アルカンシェルの起動解除の時間を削られるユーノ達が不利になるからだ。

しかし、ユーノも負けじと不敵な笑みを浮かべる。

 

「何を狙って……っ!?」

 

オルガードはユーノに詰め寄るが、その言葉は途中で遮られた。

背後から扉を破壊した以上の爆発で、ユーノごと吹き飛ばされたのだ。

 

「ぐっ……何が……!」

 

オルガードが振り向くと、そこには艦橋をつぶさんばかりの大きな何かが刺さっていた。

まるで、“ミサイル”のような……。

あまりの光景にその場にいた者達は、言葉を失う。

唯一、それの正体を察して苦笑いを浮かべるユーノを除いて。

 

「やれやれ……まさか、こんなモノでやってくるなんて……」

「……っと!この姿では、はじめましてだね、オルガード。

 宇宙ファイターXあらため、リュウジンオー……よろしく」

 

突っ込んできたミサイルの様なものの中からリュウジンオーが飛び出し、オルガードに

気さくに挨拶する。

 

「ぜぇ………ぜぇ……あだっ!

 こ、今度ばかりはマジで……死ぬかと思った……」

「お、俺……きれいな川の向こうで手振っている……じいちゃんそっくりなじいさんと

 会った……ガクッ」

『大丈夫か、おい』

『既に戦闘不能状態に近い』

 

リュウジンオーに続いてゴッドリュウケンドーとマグナリュウガンオーが、姿を見せるが

既に息も絶え絶えであった。

 

「……一応聞くが、お前達……何しに来たんだ?」

 

オルガードの呆れ交じりの言葉は、その場にいた者全員の代弁であった。

 

 

 





序盤はデート・ア・ライブでの結婚関連話を持ってきました。
燎子の言う先輩は、その話をする時目から光を消していたとかなんとか(汗)

一夏と千冬の両親は、
父親の太夏はエルドランシリーズのメインパイロット組なイメージです。
子供っぽさもにじませた男の笑顔で、何人もの女の子のハートを打ち抜きましたwww
でも、本人は幼馴染の冬音一筋(爆)
冬音のイメージは「ひなこのーと」の萩野 千秋(はぎの ちあき)です。
ある時、見ていたらガチリとイメージが沸きましたwww
話にあるように、一夏と同じようにフラグをバキバキに折っていきました。


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