インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの 作:すし好き
会社の研修や仕事にようやく一段落ついたので、更新します。
だけど、目標としている一話一万字には届かなかった(苦笑)
「ごめんね、一夏。手伝ってもらって」
「気にするなよ」
日が沈みかかり、世界が赤く染まる放課後の廊下で、一夏とシャルロットは
プリントの山を抱えて歩いていた。
「でも、よかったの?
今日は、明達と一緒に訓練するはずだったんでしょ?」
「あいつらには、遅れるって言ったしそれに……
シャルロットと一緒にいたかったからな//////」
「えっ……?」
そう言った一夏の顔を見ると赤くなっているのは、夕日のせいだけではないだろう。
同じように自分の顔も同じように赤くなっているのも……。
「シャルロット……」
「一夏……」
瞳に互いだけを映した二人の顔が近づいていくのを夕日だけが、見守り――。
「……あれ?」
顔を近づけてくる一夏に目を閉じたシャルロットが、目を開けるとそこには
一夏の顔ではなく、見慣れた天井があった。
「もしかしなくても……ゆ……めってオチ?」
夢の内容と、状況を見たら十人が十人そう答えるであろう認識したくない“現実”を、
シャルロットは呆然として呟き、脳が徐々にそれを認識していく。
「はぁ~~~~~……。
そうだよね。あの一夏が、そんな事言うわけないよね……」
夢でがっかりというのが見て取れるため息をこぼして、シャルロットのテンションは
朝から下降し始めた。
ウィ~~~ン――
「ん?」
がっくりと肩を下していると隣から、機械の音が聞こえて顔を向けると……。
「…………」
「…………何しているの?ラウラ?」
“じぃ~~~”という擬音が聞こえてきそなぐらい、ラウラはシャルロットに
視線を向けていた。ビデオカメラを持って、服を身に着けず生まれたままの姿で。
「うむ。たまに、シャルロットは寝ながらうなされている(?)ことが
あるのでな?
兄様にどうすればいいのかと、相談したらそのうなされている(?)所を
録画して見せてみるといいと助言をもらったので、試していたところだ」
真顔で、自分の行動を説明するラウラにシャルロットは、聞き捨てならない人物の名が出て
額から冷や汗が流れるのを止められなかった。
「兄様って……碓氷……先……生が?」
「それで、これがさっきまでうなされていた(?)お前の様子だ」
ラウラはビデオカメラを操作して録画を再生し、シャルロットに見せた。
“だ、だめだよ一夏///////。
こんなとこ……ろを……誰かに見られ……ひゃん///////!”
「兄様はこれを見せれば、うなされることは少なくなるかもしれないと
言っていたが……どんな夢をみていたのだ、シャルロットよ?」
「…………。~~~~~っっっ/////////!!!!!!?」
純粋な目でこちらを心配し疑問に首を傾げるラウラの背後に、
こうもりのような翼を背に生やしたカズキが悪魔な笑みを浮かべる姿が見えたのは、
果たして本当にシャルロットが見た幻だったのかどうか……。
声にならない羞恥に染まった乙女の悲鳴が、休日のIS学園の朝を告げた。
「う~~~~~////////」
「さっきら、どうしたのだシャルロット?」
いつもより少し早い朝食を取っている二人だったが、シャルロットは
未だに羞恥で頭を抱えていた。
この時間、食堂には部活動の朝練をしている面々がちらほらといるぐらいなので、
あまり今の姿を見られていないのがシャルロットにとって多少幸いだったかもしれない。
「ラウラのそのマイペースには、怒る気にもならないよ……」
「?」
もぐもぐと朝食を食べながら、自分が原因だというのに堂々と聞いてくるラウラに
シャルロットは脱力するのだった。
「ところで、ラウラ?朝からステーキって……胃がもたれない?」
「そんなことはないぞ?朝に一番食べる方が、体の稼働効率はいいのだ。
逆に後は寝るだけの夕食に、一番食べると消化されないエネルギーはそのまま
脂肪となって蓄えられる……らしいぞ」
「それ……一夏から聞いたの?」
「うむ。よくわかったな。
お兄ちゃんやお姉ちゃんは何かと、食事は楽しいものだと色々教えてくれるのだ♪」
楽しそうに話すラウラに、シャルロットや食堂にいた他の面々も何となく一夏達が
ラウラにあれこれする気持ちがわかったのだった。
「そうだラウラ!せっかくだから今日は、町に出て一緒に買い物をしようよ!」
「買い物?……今日は、普通に訓練をして……」
「い・く・よ・ね?」
買い物に誘うシャルロットに、ラウラは断ろうとするが、そんな彼女にシャルロットは
“にっこり”と笑いかけるのであった。
「わ、わかった!わかったから、その怖い笑顔はやめてくれ!」
本能から、この笑顔に逆らってはいけないと感じたラウラは瞬時に白旗を上げた。
十数分後、シャルロットは夏らしい白のワンピース、ラウラは“制服”でバスに乗っていた。
ラウラは私服というのを持っておらず、公用の軍服で出かけようとしたが頭を押さえた
シャルロットによって止められ学園の制服で出ることとなり、目的地に到着後――
「シャルロット……もうこのぐらいで……」
「ラウラ!次はこれ着てみて!」
ラウラはシャルロットの着せ替え人形となっていた。
まずは、ラウラの私服からということで、適当な店で試着をしてみたのだが、
絵本の中から抜け出た妖精のような容姿に、疑うということがどこか抜けている
純粋さがその服と合わさって、シャルロットの何かのスイッチが入ってしまったのだ。
オマケに従業員も同様のスイッチが入り、クール系や可愛い系等の服をあれやこれやと
着せられ、逆らうに逆らえないラウラはされるがままとなった。
「楽しかったね~ラウラ♪」
「う~~~」
ホクホクと楽しそうに笑うシャルロットとは、対照的に
ラウラは購入した服の一着を着たままテーブルに突っ伏していた。
試着時、それを見ていた他のお客が写真やら
抱き着きスリスリなどをお願いしてきて、ラウラの疲労は更に増したのだった。
「お昼を食べたら、次は生活雑貨を……」
「はぁ~~~。困ったわね……」
シャルロットが次の予定を考えていると、隣でメイド服を着た女性が頭を抱えていた。
その女性は、視線を感じたのかシャルロットとラウラの方に顔を向けると目を見開いた。
「あなた達!バイトしない!」
「えっ?」
「ん?」
救世主を見つけたと言わんばかりに、目を潤ませながら目を輝かせるメイドさんに
シャルロットとラウラは揃って、首を傾げるのであった。
「メイド喫茶……ですか?」
「そうなの!今日限定で、執事のサービス付きイベントをやっているんだけど、
予想以上に助っ人に来てくれた執事君が好評で、手が足りないの!」
「それで、私達に手伝ってほしいと……。
どうする、シャルロット?」
「う~ん。アルバイトは別に禁止されてないけど……」
「お願い!今日だけでいいから!」
女性の申し出に、シャルロットは少し渋るが女性は必死に説得をする。
「まあ、今日はこれって用事もないし……」
「私も別にいいぞ?」
「ありがとう!私はさつきって、言うの!よろしくね!」
そう言うと、二人はさつきにその店へと案内される。
「さあ、ここが私のお店。“メイド・ラテ”よ!」
「ここが……」
「ふむ、これがメイド喫茶か……」
「「お帰りなさい♪お嬢……様……」」
「へ?」
「ん?」
さつきに案内された店に入って、シャルロットとラウラは固まった。
扉を開けて出迎えてくれたのは、執事とメイドの衣装を身に纏った一夏と明であった。
「ええ~っと……それじゃ、一夏と明は碓氷先生に頼まれてここに?」
「ああ。本当は、カズキさんが来るはずだったんだけど、色々とやることができたからって
俺達に代役をね」
「私は、ほとんど説明無しだったがな……」
「まさか、二人が一夏くんと明ちゃん、それに碓氷くんの知り合いだったなんて~。
世間って意外と狭いのね~」
思わぬところでばったりと会った一夏達は、休憩室でここまでの経緯を説明していた。
「でも、碓氷先生とメイド喫茶って、どういう関係なの?」
「碓氷くんは、このお店の常連さんだったのよ♪」
「「ええっ!?」」
「ほ~」
一夏と明がここにいる理由がわかったシャルロットだったが、発端であるカズキとの
関連がピンとこなく、さつきの答えに明と共に大声で驚く。
「店の常連って言うより、千冬姉の常連でしょうね。
その時の二人が簡単に想像できますよ」
「お兄ちゃん。何故、ここで教官の名が出てくるのだ?
教官も常連だったのか?」
「いやいや。常連じゃなくて、従業員だよ。
高校時代、ここでバイトしてたんだよ千冬姉」
「「えええええっっっ!!!!!?」」
「なにぃっ!?」
一夏のカミングアウトに、明とシャルロットはさっきよりも大声で驚いた。
「おおおおお織斑先生が、このお店でバイト!?」
「ということは、私と同じめめめメイド服を!?」
「うん。そうだよ」
「教官がメイドというものを……一度見てみたいものだ……」
「懐かしいわね~。あの時は、まさにメイド・ラテの黄金期だったわ~♪」
「そうですね。もしも、千冬姉がここでバイトしなかったり、メイド・ラテが
なかったりしたら、今の千冬姉やカズキさんはいないでしょうね」
大混乱の明とシャルロットを余所に、さつきと一夏は懐かしそうに思い出話に
話を咲かす。
「しかし、一夏。何がどうしたら、あの織斑先生がメイド喫茶でバイト
をするんだ?」
「まあ、確かに明の言うように千冬姉は自分からメイドをするって
がらじゃないよな。
流れとしては、だいたい俺達と同じかな?
雅さんを通して、さつきさんから助っ人を頼まれたんだよ」
「雅さん?」
「雅ちゃんは、一夏くんとちゆちゃん……千冬ちゃんの保護者よ。
昔から彼女には、色々とお世話になってね~」
シャルロットの疑問に、さつきが微笑みながら答える。
「そうやって、雅さんを通じてさつきさんからど~~~してもって頼まれて
根負けした千冬姉がここでバイトするようになって、それを偶然見た
カズキさんが千冬姉に興味を持つようになったのが、俺達の関係の始まり
なんだ」
「お~。そういうのが、人に歴史ありというのだなお兄ちゃん!」
予想もしなかった千冬とカズキの出会いのきっかけに、明とシャルロットは
呆け、ラウラはうんうんと感心した。
「そうそう。さつきさんはイベント好きだから、○○DAYって感じで
いろんなイベントをやりましたよね。カズキさんから聞きましたけど、
巫女さん、男装、メガネっ娘、妹……アニメの魔法少女もの
なんてものやったんですよね?」
「うんうん!やったやった♪」
「妹……?」
「魔法……少……女?」
もたらされた事実を何とか飲み込もうとする明とシャルロットに、またも衝撃の
事実が明かされ、顔が驚きに染まる。
自然と二人の脳裏に、一夏が口にした衣装の中でも特に信じられない
ものを着た千冬の後ろ姿が映し出されて……
“何を想像した――?”
「「っ!!!?」」
ここにいるはずのない人物の声が耳元で、聞こえた気がした二人は
後ろを振り向くが当然そこには誰もいない。
「どうしたのだ、二人とも?」
「い、いや……」
「べ、別に……」
明とシャルロットの行動を怪訝に思うラウラだったが、二人はそれを
ひきつった笑いでごまかす。
「きゃぁぁぁ///////!!!想像以上に素敵よ、ラウラちゃん!!!」
「似合っているぞ、ラウラ」
「自分では、よくわからないが……」
メイド服に着替えたラウラの姿を見て、さつきは黄色い声を上げ
一夏も関心する。そんな二人の反応が分からず首を傾げるラウラだったが、
それすらも彼女の魅力を引き立てていた。
人形のような可憐な容姿に長く伸びた銀髪。
一目見たら、自分はおとぎ話の世界に迷い込んだのかと疑うだろう。
「あの~……何で、僕は執事の恰好なんでしょうか?」
「どこもおかしくはないと思いますよ、シャルロット?
普通に似合っています」
対してシャルロットは、若干気落ちした声で自分に渡された衣装について
尋ねる。
こちらは、一夏と同じく執事姿であり、社交界に混ざっても違和感を
感じられないほど似合っていた。
「うんうん♪こっちも私の想像以上ね!
一夏くんとは違って、カッコ良さの中に可愛さがあるわ~!」
「あははは……」
さつきの上がりっぱなしのテンションに、シャルロットは乾いた笑いを
返すしかなかった。
「(僕もメイド服がよかったなぁ~。だって、メイド姿の明を見る目が
いつもより輝いているんだもん……)」
心の中で、ため息をこぼすシャルロットの視線の先には明を見つめる一夏が
いた。テンションがいつもより高めに見えるのは、気のせいではないだろう。
「(ううう~~~。明も方向性は同じはずなのに、この差は何なの?)」
自分と同じく、男装をしたら“女顔の男の子”となる明との理不尽とも言える
差に嘆きながらも、接客マニュアルを読んでいく。
こうして、ラウラとシャルロットのアルバイト体験が始まった。
「お待たせしました、お嬢様。
ご注文のふんわりオムライスです」
「は、はい///////♡」
「ケ、ケチャップでメッセージをお願いします//////!」
「かしこまりました」
「明ちゃん!3番テーブルにドリンク4つ!5番テーブルの片づけ!
6番テーブルにご主人様のご案内をお願い!」
「わかりました!」
「す、すごい……」
シャルロットは、目をパチクリさせて接客をする一夏と明の手慣れた動きに
驚いていた。
フランスの実家にも執事やメイドがいて、その働きをよく知っているが
一夏と明の動きは本職のそれに負け劣らずものだった。
筆で書いたんじゃないかと思えるきれいな文字や♡マークをケチャップで
書き出す一夏に、沢山の品を載せたトレーを崩すことなく運ぶ明。
最早、その道を目指してもいいんじゃないかと思える二人の働きぶりに、
シャルロットは圧倒される。
「それに……」
「ふむ。日替わりケーキセットが二つだな?
少し待ってくれ」
「ゆっくりでいいからね?」
「気を付けてね?」
不安があったラウラが意外にも、ちゃんと接客をできていることにも
シャルロットは驚いていた。
言葉遣いは、多少上から目線だが一生懸命がんばるという気持ちが感じられるのか、
客はお手伝いをがんばる妹を見守るような感じで接していた。
「僕も頑張らないと!」
「すいませ~ん。注文いいですか?」
「あっ!はい!承ります!」
結論から言うと、シャルロットとラウラが加わったことで
スムーズに回るようになった。
ラウラに感心していたシャルロットだったが、彼女もまた初めてのアルバイト
とは思えない働きを見せていた。
動きの一つ一つから気品を感じ取ったのか、お客も同僚たちもただ見入って
ため息をこぼしていった。
彼女達が来る前の忙しさは、助っ人に来た一夏や明とお近づきになろうと
色々と話しかけ、それの対応に時間を取られ他のお客に回るのに時間がかかっていた
からなのだが、今はシャルロットの方にも注目が集まり見入っているので
一夏と明にも余裕がでてきたのが大きい。
それでも、手の回らない客にはラウラがムフッと頑張って接客しているので、
客数は増えてもうまくさばけているのだ。
「お砂糖とミルクはお入れになりますか?よければ、こちらで入れさせていただきます」
「お、お願いします。え、ええと、ええと、砂糖とミルク、たっぷりで!」
「わ、私も!」
砂糖とミルクが欲しいと言うより、美形執事に奉仕してもらいたい女性陣に
シャルロットはにっこりと微笑みかけて、砂糖とミルクを紅茶に注いでいく。
「では、お嬢様方。ごゆっくりと楽しんでください」
「あ、あの!で、できたら一緒に食べたいなぁ~/////。
なんて//////」
「申し訳ございません。お嬢様」
華麗な執事と甘い一時をとシャルロットに同席を頼もうとすると、
シャルロットが断る前に、一夏が割って入った。
「こちらの者は、本日入った新人でございまして、お嬢様と共に席につき
満足させるにはまだまだ未熟。
ここは、お嬢様方の寛大な心でお許しを頂けないでしょうか?」
「い、いえ//////!こちらこそ、変なことを言ってすいません!」
左手を胸に当て恭しく頭を下げる一夏に、お客は手を振って慌てて謝罪する。
「じゃ、じゃあ……あなたが一緒に///////」
「ふっ。わたしがお嬢様と席を共にするなど、おこがましい……。
わたしは……あくまで……執事ですから――」
それは、何と言って表現していいのか。
笑顔からは程遠い冷たい感情が現れているはずなのに、誰も今の一夏の笑顔から
顔を真っ赤にして目を逸らすことができなかった。
表情と感情が合っていないのに、その場にいた全員がゾクゾクと言い知れぬ
快感に酔いしれた。
じっくりと獲物を狙う“悪魔”が浮かべたようなその笑みに――。
「(ふぅ~。上手くいったかな?カズキさんから、こういうお客さんが来たら
こう言えって言ってたけど、すごい効き目だな。
流石、カズキさんだ)」
『(いや、多分何かが違うと思うぞ?)』
心の中で、自分の行動にやれやれとなっている一夏にゲキリュウケンは
静かにツッコむのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~~~~~~」
実家の翠屋にて、なのはは長いため息を吐いて窓から空を眺めた。
心ここにあらずとは、正にこれだというのを体現している状態であった。
「ねぇ?一体どうしたのなのは?」
「さあ?どうしたんでしょうね?」
「知りません!」
「ふふふふふふふふふ…………♪」
「首輪とリード?縄で縛り?それとも教師や上司で逆に……」
妹の様子にみゆきは、同じく翠屋にいるはやて達に何があったのかと
尋ねるが返ってきたのは、はぐらかすような返事だった。
はやてはニコニコと笑いながら、アリサはそっぽを向き、はやてと同じ笑顔のすずかは
黒い何かをその笑顔からにじませ、フェイトはブツブツと何かを呟いていた。
返事らしい返事はもらえなかったが、彼女達のそんな反応で
みゆきは何があったかおおよそ察した。
「あっ……うん。大体わかったわ……」
「あらあら♪」
「おい、本当になのははどうしたんだ?」
投げやりな返事を返すみゆきとは反対に、桃子は楽しそうに笑うのであった。
そこへ翠屋の店長でなのはの父である高町士郎が、姿を見せた。
「いいのいいの。お父さんには、特にどうしようもないから」
「何だそれは……」
娘であるみゆきからぞんざいに扱われて、士郎はしょげる。
妹の恋愛事情など、父親に相談しても余計にこじれるのは目に見えているからだ。
「ところで、なのはもそうだがフェイトちゃんもはやてちゃんも
いつまでこうしてゆっくりできるんだい?」
「さぁ~どれぐらいでしょうね?」
話題を変えるように士郎が質問をするが、はやては苦笑しながら表情に影を
落とした。
現在、なのは達3人は療養という名目で長期休養中なのである。
クリエス・レグドから明かされた時空管理局に隠された真実。
その場にいた者には、カズキから今は口外しないように口止めをされたが、
それでも明るみになったら、次元世界が大混乱になる真実。
自ら明かした以上、レグド自身がなのは達が知ってしまったことを管理局に
知らせることは考えにくいが、それでもどこから情報が洩れ
管理局がなのは達を口封じのために動く可能性は十分に考えられた。
そのため、ユーノやカズキが手を回して、オルガードや創生種の魔物との戦い
で負ったキズを治すという理由でなのは達を時空管理局から半ば無理やり遠ざけたのだ。
無論、一夏や明達にも暗殺の可能性はあるのだがこの世界にいる以上、
暗殺をするなら向こうからこちらの世界にやってくるしかないため、常に目を光らせている
監視システムで転送の反応を察知することができ、瞬時に全員に知らせが届くようになっている。
「まあ人生、時に立ち止まって悩むことも必要さ。
それもまた青春の一ページになるよ」
優しい口調で人生の助言をする士郎だが、彼は知らなかった。
娘を持つ父親ならいつかはやって来る、決して来て欲しくなかった時が……。
「こんにちは~」
「あら、いらっしゃい。ユーノくん」
「っっっ////////!?」
来てしまったことに――。
「君が来るなんて、珍しいね?」
「ええ、これから忙しくなりそうだから、何とか時間を作ってきたんです。
今を逃すと次に、いつこれるかわかりませんから」
「うちに何か用があるのかい?」
士郎とユーノが会話をしている横で、なのははあわわと顔を赤くしてパニックとなり、
フェイト達はその様子をじ~っと眺めて空気を重くしていた。
その重さに耐えられず、店にいた客達は次々と店を後にした。
余談だが、ユーノが翠屋に来るために無限書庫を抜けたため、物言わぬ骸となって
無限書庫を漂っている司書が無数にいるのだが、今は関係ない。
「翠屋にというより、士郎さん達にですね。
恭也さんはいませんが、それでも言います。
今日は、皆さんへ宣戦布告に来ました。
僕、ユーノ・スクライアはなのはを愛しています。
そして、あなた達から奪い去ります」
ピシリと時が凍り付いたかのような音が店の中に響き、
全員が同じく氷像のように固まる中、ドスッとなのはは頭から煙を
上げて椅子から転げ落ち、唯一人桃子はそれをあらあら♪と見守るのであった。
「もう僕は、過去からも自分の想いからも逃げません。
正々堂々となのはを振り向かせて、堂々とあなた達家族から奪い去っていきます」
不敵な笑みで宣戦布告をするユーノをみゆきはズレた眼鏡からポカーンと見つめ、
士郎は固まったまま何の反応も返さない。
「今日はまず、これを伝えたかったので。また、来ます。」
……言ったでしょ、なのは?全力全開で行くって?」
獲物を狙う様な獣の笑みをなのはに向けて、ユーノが立ち去ると、
なのはは頭からだけでなく耳からも煙を出して気絶した。
今回は本格的な夏の序章回でした。
千冬のメイド喫茶バイトはマジです。それがあったからカズキと
関わる様になりました~。
店の名前で気づいた人もいるでしょうが、モデルは「会長はメイド様」からです。
偶然見つけた時に、主役が千冬そっくりだなと思ったので
いつかやってみたかったんです♪
一夏が見せたとある執事の笑みとセリフもね。
ユーノの宣戦布告を受けた士郎さんははにわのような表情になったとか(爆)
更新スピードは更に遅くなると思いますが、これからも
応援よろしくお願いしますm(_ _)m